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コンプライアンスに関しては、まず「倫理規範」は、①公共性の自覚、②法令遵守、

③自己責任(自己責任に基づく健全経営に徹する等)、④企業行動(企業の公器性を再確 認し、法令を遵守するとともに厳正かつ公正な企業行動を実践します等)と定めている。

行動基準は、当該4要件を、更に細目化している。

コンプライアンス規程は、「法令ならびに社内規程等社内ルールのほか、社会規範を遵 守することをコンプライアンスと定義し、コンプライアンスを経営上の最重要課題とし て位置づける」(1条)とし、管理プロセス(2条)やリーガルチェック(3条)などを定 めている。

ビジネスガイドラインでは、上記各種規程のほか、「法令遵守編」として、①規範遵守 について、②守秘義務と情報管理、③個人情報保護法、④コンプライアンスについて、

⑤行動憲章、⑥ルールを守る、⑦ヘルプラインなどの項目について、詳細に説明してい る。業務の手続に関しては業務手続が定められ、その他方針やマニュアル、ルール等が 定められている。

(2) コンプライアンス組織、活動状況

コンプライアンス規程 3 条により、コンプライアンスの基本方針等の重要事項は取締 役会並びに経営会議において策定すること、コンプライアンス委員会及びコンプライア ンス・情報セキュリティリスク委員会を設置することとされている。経営企画部コンプ ライアンスが、コンプライアンスを統括する(同条2項)。全部店に、コンプライアンス の責任者および内部責任者を配置する(同条5項)。これらの責任者は各部店のコンプラ イアンス責任者として統括し、コンプライアンス・チェックリストの報告、内部責任者 の任命、部店内のコンプライアンス体制の整備及び研修・指導を行うこととされている

(同規程4条)。

年度ごとにコンプライアンス・プログラムを策定し(同規程6条)、それを推進する。

コンプライアンス・マニュアルとして「ビジネスガイドライン」を策定する(同規程5 条)。

内部責任者は、コンプライアンス・チェックリストに基づくチェックを年に2回行う。

社員は、コンプライアンス違反等を認識したときには、コンプライアンス責任者等に

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コンプライアンス・ヘルプラインを設置する(同規程8条の2)。

苦情・トラブルについては「お客さまの声業務手続」によって対応する。

社員以外の不正行為等については、社員は、それが発生または発生しようとしている と認識したときには、コンプライアンス責任者に報告しなければならない(同規程10条 の 2)。同責任者は、直ちに監査部臨店監査部長に報告し、同部長は、関係各所に報告す る。経営企画部管掌役員、経営企画部長は、不正行為等の概要を精査し、報告が必要と 認められるときはコンプライアンス委員会に報告する。

(3) コンプライアンス・プログラムの状況

コンプライアンス・プログラムは、年度ごとに起案され、取締役会に付議される。

議案によると、基本方針、基本項目、証券・保険業務、外為業務に大分類され、基本 項目の中では、マネロン、反社対応、情報セキュリティ、リーガルチェック態勢、不祥 事件未然防止への対応、法令等遵守態勢の整備などの項目が記載されている。その実績 と評価については、取締役会において、コンプライアンス委員会報告の中で報告される。

(4) 研修

社員に対する教育、研修については、経営企画部人事部が所管しており、研修規程が 定められている。同規程によると、2条が研修種目を定めており、コンプライアンスや業 務知識なども項目に上げられている。研修の責任者は所属長並びに上席者とされている

(同規程4条)。研修体系は各コース別・グレード別とされている(同規程5条)。 「グレード別研修体系【価値観の理解浸透・コーポレートガバナンス】について」で

は、スルガ銀行の価値観やコンプライアンスなどがカリキュラム項目とされている。

具体的な研修計画は、人事部研修企画が毎年月別の研修計画を作成している。

(5) 新商品の法令審査・リスク審査

新商品のリーガルチェックについては、コンプライアンス規程 2条の2 第1項が定め ている。新商品等のチェックに際しては、「商品・業務の新設および改定に関するチェッ クリスト」が作成される。検討項目ごとに関係部署が評価し、企画担当部署も評価する。

毎年10件から20件前後がチェックされている。

経営企画部コンプライアンスは、定期的または随時にコンプライアンス委員会ならび にコンプライアンス・情報セキュリティリスク委員会にリーガルチェックの状況を報告 する(同条5項)。

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(6) ヘルプライン

コンプライアンス規程 8条の 2 に基づき、ヘルプラインが設置されている。窓口は、

社内と社外があり、スピークアッププログラムも存している。経営企画部が所管する(同 規程8条の5)。通報があったときは、調査を開始し、その旨20日以内に通報者に連絡す る。通報内容は直ちに経営企画部管掌役員に報告し、指示を受ける。調査結果も管掌役 員に報告する。管掌役員は、通報者に回答する。内部通報処理規程では、「ヘルプライン 利用者の保護」として、「あなたが、この制度を悪用したり単なる誹謗中傷をしたときを 除き、このプログラムを利用したことにより、その後に身分上の不利益が生じることは ありません。」との記載がある。制度の周知資料としては、2018年3月8日付のコンプラ イアンス・メールマガジンの記事が当委員会に提供されている。

所管部署は、通報内容、調査結果をコンプライアンス委員会に報告する(同規程8条8)。 コンプライアンス委員会は、通報内容、発生原因、対応策について検証を実施し、その 結果を経営会議に報告する。通報内容及び調査結果は、原則として開示される。

通報状況は、毎年10件前後である。通報内容としてはパワハラが多い。

(7) お客さま相談センターへの通報等とその対応 ア お客さまの声への対応の態勢

お客さまの声については、1990 年代から銀行本店の代表電話等にかかってくる苦情や 要望を取りまとめ、半年に一度通告文書で共有していた。2001 年7月に「お客さまの声 業務手続」を定めて、制度化した。この業務手続は、その後たびたび改正されて現在に 至っている。

担当部署は、お客さま相談センターであり、同センターは、もとは業務部の中にあり

(その後業務管理部に変更)、その後営業本部(カスタマーサポート本部)の品質マネー ジメント部の中に移設され、品質サポート部に変更になり、その後2017年に再び業務部 の中に置かれた。

「お客さまの声業務手続」によると、2001 年の制定時は、お客さまの声を受け付けた 者は、「お客さまの声責任者」に報告する。当該責任者は、その声への対応をするととも に、事務リスク管理責任者及び相談センターに報告する。相談センターは、当該報告を、

毎月、CEO、COO、管掌役員、リスク管理部検査等に報告する。「経営に重大な影響を与 えると判断される問題」については、管掌役員に報告し、管掌役員はCOO、CEOに報告 する。苦情の状況と改善策は、半期に一度全店に文書で通告される。

2006年11月の改訂では、相談センターは、対応状況を毎月定期的に把握し、①担当部

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署では解決困難な事案についてはコンシェルジュコミッティや業務改善委員会等の委員 会で対応するとともに、毎月経営会議に報告し(上記COO、CEO等への報告が経営会議 への報告に改められた)、②経営に重大な影響を与える場合の報告先は「当該本部」と改 められ、③同様の苦情が繰り返し発生した場合には「対応が不適切な案件」として、毎 月経営会議に報告し対応策を実施することとされ、④そのほか四半期に一度、苦情等の 対応状況を経営会議に報告することとされた。

2016年10月には、制度をペーパーレス化し、システムを通じて報告等させることとな った(お客さまの声報告システム)。経営層への報告制度は大きな変更はない。

2017 年11 月には、内部告発や投書等についても情報を一元管理することとし、「通報 情報等対応シート」の仕組みを新設した。

イ 「お客さまの声」を含む経営情報収集についての考え方

2001 年以降、以上のようなお客さまの声を拾い上げて経営に役立てる仕組みが構築さ れていったのであるが、その考え方については、2003 年度日本経営品質賞の申請書に詳 細に記載されている。同申請書のカテゴリー7では、経営情報の選択と分析と題して、基 本的な考え方などが説明されている。スルガ銀行では2001年にAim15という長期経営方 針を策定しているが、そこではコンシェルジュ・バンク、ライフ&ビジネスコンシェルジ ュを目指すとしているところ、その戦略課題を実現するためには「お客さまの声」など の情報が重要であるとする。それはお客さまからの評価の向上という目的のためにも必 要であるし(顧客満足度の向上)、それに限らず、緊急を要する対応やコンプライアンス に関わる事項などは経営幹部に直接報告され即座に対応を図る必要があるとしている。

そのため、ここにいう「お客さま」というのは、銀行取引の相手方だけを指すものでは なく、株主やチャネルなどの関係先、その他全てのステークホールダーをあまねく指す ものとされている。この「お客さまの声」は外部情報の中でも最も重要なものと位置づ けられている。そこで上記のようなお客さま相談センターによる一元的管理をして全容 を把握し、その情報を分析し、経営層に報告するという仕組みを構築したのであった。

そのため2017年の制度改正で「通報情報等対応シート」の仕組みを新設したが、従前 も、内部告発や投書等についても当然お客さまの声に含まれるものであって、一元的な 管理をすべき対象ではあった。

ウ 現実の運用状況

「お客さまの声」の運用状況をみると、営業店から報告が上がってきたお客さまの声 については、エクセルで一括管理されている(エクセルでの管理は、2016 年のペーパー レス化以来、お客さまの声シートの報告データから自動的に構築されている)。その件数