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(1) 概要

人事については、経営企画部人事部の所管業務とされている。最新の組織規程には、

人事部の所管業務が次の通り定められている。

[人事]

(1) ES(従業員の福利厚生、安全衛生、健康管理等を含む)にかかる企画・立案

(2) 各種ハラスメント(パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント等)に対す る防止策の策定ならびに処置

(3) 従業員の採用、任免ならびに登用、昇格昇号、異動、休職、復職、賞罰

(4) 人事評価の調整ならびに査定

(5) 従業員の給料、諸手当、賞与および退職金の算定等企画・管理

(6) 就業規則等人事関係諸規則の制定、改廃の企画立案

(7) 従業員名簿および人事記録の整備ならびに保管

(8) 労働法規関連の調査、管理

(9) 労働組合とその加盟団体との交渉

(10) 従業員の勤怠ならびに時間外勤務の調査、管理

(11) 従業員の給料、諸手当、賞与および退職金の支払等

(12) 所得税、地方税および法定社会保険料の源泉徴収

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(13) 従業員の福利厚生、安全衛生、健康管理の実施

(14) 各種ハラスメントに対する相談・苦情の処理

[研修企画]

(1) 各種研修の企画立案、運営管理

○従業員の能力開発ならびに人材育成

○営業推進関連の研修業務(リテール・ミドル・スモール)

人事部を管掌する役員は、経営企画部の管掌役員であり、2012 年以降の取締役会議事 録によれば、同年以降は白井専務取締役が経営企画部を管掌している。

2012 年以降の人事部に係る本部態勢表によれば、人事部には、役職者として、部長 1 名、副部長1~2名、グループ長及びマネージャー(チーフマネージャー、マネージャー、

アシスタントマネージャー全てを含む。)1~3名が置かれている。

(2) 人事に係る基本方針等

取締役会議事録等を参照する限り、人事に係る大綱のような基本方針は、特に定めら れていない。

最新の取締役会規程によれば、以下の事項が取締役会決議事項とされている。

5.執行役員に関する事項

(1) 専務執行役員、常務執行役員および執行役員の選任ならびに解任

(2) 執行役員の所管業務の決定

(3) その他執行役員に関する重要事項 6.理事に関する事項

(1) 理事の選任ならびに解任

(2) その他理事に関する重要事項 7.人事に関する事項

(1) 部長、営業店長、出張所長等の選任ならびに解任

(2) 従業員の採用計画の大綱

(3) 従業員の給与体系に関する重要事項

(4) 従業員の労働条件に関する重要事項

(5) その他従業員に関する重要事項

取締役会議事録及び資料によれば、これに従い、例えば、執行役員の選任及び所管業 務の決定、理事の選任、部店長の人事といった事項が付議され、決議されている。もっ とも、内容に立ち入った議論がされた形跡はなく、実際上も、これらの人事に関する案

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件に関して、実質的な議論がされたことはなかったようである。後述の通り、人事異動 に関しては、実質的に、非公式の人事会議等により決定されていた。

また、行員の人事に関し、意図的に複数の業務を経験させる(例えば、営業一辺倒に ならないように審査や管理部門を経験させる)とか、定期的な人事ローテーションとい った制度は、特段存在しなかった。

(3) 人事評価制度(賞与)

ア 人事評価の基本方針

「支店・個人の評価制度と実態」と題する資料によれば、「業績管理制度」を導入して おり、期初に各人の成果責任の確認、成果責任を達成するための業績目標について所属 長(上位者)と面談を行い、各人の役割と目標を明確にした上で半年毎の目標達成プラ ンが策定される。そして、半期末にその目標の達成度について所属長(上位者)との面 談を通して確認し、評価が行われる。業績・人事評価は、BSC(バランス・スコア・カー ド)制度にて運用しており、各個人はBSCの視点毎の評価ポイントより総合評価ポイン トを算出し、このポイントを基に業績評価(賞与査定)、人事評価(昇給査定)が行なわ れている。

業績評価(賞与査定)の基本フローは次の通りとされている。

1.【各部署】目標設定面談

 部店長(上位者)と面談にて目標設定 2.【各部署】業績評価面談

 部店長(上位者)と面談にて実績を評価

 各人の評価は評価ポイントとして算出される

 部店長は各個人の評価ポイントを人事部へ提出 3.【人事部】業績評価案作成

 各部署からの評価ポイントを集計し、評価ポイントの調整作業(一般社員 のみ)

 人事部にて業績評価案を作成し、各所管執行役員等へ確認・修正を依頼 4.【所管執行役員等】人事部案の確認・修正

 人事部案の確認ならびに修正

 所管執行役員等確認修正後の案を人事部へ 5.【人事部】業績評価稟議作成

 所管執行役員等に確認いただいた評価を基に、最終的な人事部案を作成

 業績評価(賞与)稟議を作成・申請

- 68 - 6.【社長等】最終的な決裁

 稟議内容の確認・修正

BSC 制度

スルガ銀行では、2003年より、人事評価にBSCを使用している。

BSC シートでは、①評価視点毎にウェイトが設定され、②定性評価項目に関しては評 価基準が設定される。そして、各項目の達成率に基づき、③自己評価ポイントが入力さ れ、上席者との面談後に面談者が決定する④面談者評価ポイントをもって評価が確定す るようになっている。

評価ポイントは、0~9.5 の範囲とされている。評価基準表によると、定量的成果責任

(計数・収益)の達成度評価に関しては、マイナスの場合が0、達成度90%以上同100%

未満の場合が5.5、同100%以上110%未満の場合が6.5、同130%以上の場合が9.5とされ ている。また、定性的成果責任の達成度評価に関しては、「取組んだが、評価に値する成 果をあげることができなかった」場合が 0.5、「ポジションに期待されている成果を達成 できた」場合が 5.0、「本人の不断の努力が結実し、通常は達成し得ない極めて大きな成 果を生むことができた」場合が9.5とされている。

評価視点は、2015年度までは、「ビジョン・ミッション」「財務・営業」「お客さま」「プ ロセス」「イノベーション」の5つで構成されていた28。2016年度以降は、「ミッション・

成果責任」「財務」「独自価値向上」「顧客と市場創造」「業務アプローチ」「能力向上と成 長」の6つで構成されている。このうち、2015年度までのシートにおける「財務・営業」

の項目に、営業推進項目の達成率による定量評価が含まれている。他方、2016 年度以降 のシートでは、営業推進項目の細分化された個々の項目について、上記 6 つの評価視点 のいずれの中に包摂するかの裁量の幅が拡大した。すなわち、ある担当者についてみる と、大半の項目を「独自価値向上」に包摂させている例もみられる一方、「財務」「独自 価値向上」「顧客と市場創造」「業務アプローチ」等に分割して包摂させている例もみら れる。

「BSC ウェイトガイドライン」によれば、幹部社員、一般社員及びスタッフ職につい ては、半期毎に、ウェイトの数値や設定手法が微修正されているが、大まかな仕組みと しては、次の通りである。

 営業店の長(支店長・センター長)については、ウェイトは固定

 その余の幹部社員(支店所属の営業・業務グループ長、推進役)、一般社員、スタ ッフ職については、ウェイトガイドラインによって視点毎にウェイトの幅が指定さ れ、当該幅の範囲内で、半期毎の期初に当該従業員と上席者の面談において、ウェ

28 なお、幹部社員については、このうち「財務・営業」を「財務」と「営業」とに区分して、6つで構成 されていた。

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イトが設定される(すなわち、ガイドラインで定められた幅の範囲内で、各項目の ウェイトを調整できる)

 2015年度までの「営業」(営業推進項目の達成度が反映される評価視点)に関して は、営業店の長は35%、HLC の長は40%(いずれも固定)とされていた。一方、

その余の幹部社員(支店所属の営業・業務グループ長、推進役)、一般社員、及び 営業系のスタッフ職はその上限が 50~60%、業務系のスタッフ職についてはその

上限が30%とされていた

 なお、2015 年度までは営業点の長を除いた幹部社員(支店所属の営業・業務グル ープ長、推進役)、一般社員、スタッフ職については、グループ指標と個人指標と の評価比率も設定されており、幹部社員については5:5、マネージャーについては

3:7、専担社員については 1:9 といった形で、職位が上がるほどグループ指標が重

視されるようになっていた

 2016 年度以降に関しては、上述の次第で、各評価視点の細目の設定の仕方次第で は、2015 年度以前のシート以上に、営業推進項目の達成度が業績考課に強く反映 されるようにすることが可能となった(例えば、「独自価値向上」に関しては、営 業店の長は30~35%、HLCの長は40~45%(いずれも半期毎に固定)とされてい た。一方、その余の幹部社員(支店所属の営業・業務グループ長、推進役)、一般 社員、及び営業系のスタッフ職はその上限が 70%、業務系のスタッフ職について はその上限が60%とされていた。また、「顧客と市場創造」に関しては、営業店の

長は10%、HLC の長は5%(いずれも半期毎に固定)とされていた。一方、その

余の幹部社員(支店所属の営業・業務グループ長、推進役)、一般社員、及び営業 系のスタッフ職はその上限が 20%、業務系のスタッフ職についてはその上限が 30%とされていた。こうした複数の評価視点に割り振ることにより、全体として、

営業成績の反映度を大きくすることが可能となった)

ウ 一般社員の業績評価

一般社員については、半期毎に、上席者との目標設定面談が実施され、BSC シートに おける視点毎のウェイト設定と、目標設定が行われる(上記アのフロー1.)。

半期が終了した段階で、一般社員各自がBSCに自己評価のポイントを入力(ただし、

定量評価に関しては各計数より自動入力)し、上席者との業績評価面談が実施される。

業績評価面談を踏まえて、上席者が面談者評価ポイントを入力し、人事部に提出する(上 記アのフロー2.)。評価ポイントは、項目別の素点にウェイトを乗じた加重平均値をも って、総合評価となる。

人事部は、各部署から提出された評価ポイントを集計し、評価ポイントの調整作業29

29 所属長毎の評価の偏差(全体的に厳しめに評価ポイントを付す所属長と甘めに評価ポイントを付す所属