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物件関係資料の偽装の典型例がレントロールの偽装である。収益不動産ローンの融資 基準では満室想定賃貸収入の 70%を返済原資とみて融資限度額を算出することとされて いたため、物件価格が高い場合など、その取得資金をできる限り多く貸し出すために、

レントロールが偽装されたものと推認される。また、収益不動産ローンの融資限度額は 収益還元法による担保評価額によっても左右されることから、担保評価額をつり上げる 目的でレントロールが偽装されることもあり得る35。似たような偽装としては、サブリー ス契約におけるサブリース金額の偽装も存在する。また、新築の収益不動産の場合、物 件建築後に実際に予定されている現実的な家賃設定額の見込みを超えた家賃が記載され ることもあり、そうした場合も実勢価格との乖離という意味でレントロールが不適切に 作成されたものといえる。

当委員会のフォレンジック調査においてレントロールの偽装が認められた事例は、例 えば下記の通りである。

No. 時期 支店 内容

48

2014.2.20 渋谷 行員が業者に「レントロール利回りを現況収入の70%=返

済額以上にしていただきたいです」と、出来上がりの数値 を示してレントロール作成を依頼

49 2014.6.10 川崎 業者が行員に対して、同一物件について複数のレントロー

ル(入居済みの部屋の賃料が違うもの)を送付

35 なお、不動産の販売価格が高くなれば、本来であれば債務者に要求される10%の自己資金の金額も当然 高くなるのであるが、自己資金のエビデンスの偽装を併用することによって、投資家側は自己資金ゼロで 不動産を購入することができた。

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50 2014.7.24 渋谷 行員が業者に対してレントロールの修正を指示

51 2014.9.19 大阪 業者が行員に対して、同一物件について複数のレントロー

ル(入居済みの部屋の賃料が違うもの)を送付

52

2014.9.22 横浜東口 行員が業者に「利回りは 8%で仕上げて下さい(最近うる

さくなってきています)」と、出来上がりの数値を示して レントロール作成を依頼

53 2014.11.18 福岡 業者が行員に対して同じ日に複数のレントロール(入居済

みの部屋の賃料が違うもの)を送付

54 2014.12.23 名古屋 業者が行員に対して同じ日に複数のレントロール(入居済

みの部屋の賃料が違うもの)を送付

55 2015.3.9 福岡 業者が行員に対して同じ日に複数のレントロール(空室が

15室から2室に激減しているもの)を送付

56 2015.4.9 京都 業者が行員に対して同じ日に複数のレントロール(家賃が

大幅に異なるもの)を送付

57 2015.4.13 横浜東口 業者が行員に対して同じ日に複数のレントロール(家賃が

大幅に異なるもの)を送付

58 2015.7.9 大阪 業者が行員に対して、同一物件について複数のレントロー

ル(入居済みの部屋の賃料が違うもの)を送付

59

2015.9.25 たまプラー

業者が行員に対して二重価格の資料及び投資家への案内 資料を送付し、その中で銀行用の募集家賃金額と実際の保 証家賃金額(サブリース)が異なっている

60 2016.4.4 福岡 業者が行員に対して同じ日に複数のレントロール(家賃が

大幅に異なるもの)を送付

61 2016.5.30 湘南 業者が所属長に1週間のうちに複数のレントロール(入居

済みの部屋の賃料が違うもの)を送付

62 2016.6.7 大宮 行員が所属長に同じ物件について複数のレントロール(家

賃が大幅に異なるもの)を送付

63 2016.7.5 二子玉川 行員が所属長に同じ物件について複数のレントロールを

送付

64

2016.9.19 2016.9.20

二子玉川 業者が行員(所属長含む。)に対して、同一物件について2 日連続で違う内容のレントロール(空室数が大幅に異なる もの)を送付

65 2016.12.7 日本橋 業者が所属長に同一物件について複数のレントロール(空

室数が大幅に異なるもの)を送付

66 2016.12.16 大宮 業者が行員に同一物件について複数のレントロールを送

付。片方に「銀行提出」という表題がある。

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2017.2.17 新宿 行員同士で、「既存送金明細の賃料が合わない」「レントを

(業者が)いじってないと話していたがやはり違う」「流 れが分かる契約書依頼願います」等の相談

68 2017.6.6 湘南 業者が所属長に3日間で複数のレントロール(入居済みの

部屋の賃料が違うもの)を送付

69

2017.6.7 横浜東口 行員がスマートライフにレントロールの手配を依頼。維持

管理費月額は行員自らが依頼メールに列挙。この要請の通 りにスマートライフ側がレントロールを作成して返送36

70 2017.9.21 横浜東口 スマートライフ内部で、スルガ銀行からの指示により、空

室の部屋を申込予定でレントロールを作成する旨の連絡

71 2017.11.8 名古屋 業者が行員に対して同じ物件について複数のレントロー

ル(片方には「銀行用」との記載あり)を送付

72

2018.1.22 新宿 業者が行員にレントロールを送付し「これだとちょっと安

いですよね?」と質問。行員がそれに対して「そうですね。

金額の調整をお願いしたい」と返答。その後、具体的な偽 装金額を業者と行員で相談

73 2018.3.13 首都圏営業

(特推)

業者が行員に対して同じ日に複数のレントロール(入居済 みの部屋の賃料が違うもの)を送付

74 2018.5.12 首都圏営業

(特推)

行員間で、別の行員が複数のレントロールを使い分けてい ることについて「偽造王」と揶揄するやり取り

(2) 物件概要書(事業計画を含む)の偽装

レントロールは物件から得られる収入のみであるが、これ以外に、稟議申請に当たっ ては、物件購入後の事業計画(稼働率、運営委託費用、修繕費、保険料等を予測して、

投資家のキャッシュフローが融資の返済を上回るか否かを検証するもの)も必要であっ た。

当委員会のフォレンジック調査において物件概要書の偽装が認められた事例は、例え ば下記の通りである。

No. 時期 支店 内容

75 2014.7.24 渋谷 業者が行員に対して1日で3種類の事業計画を「調整」と

称して送付

76 2015.9.14 名古屋 業者が行員に対してサブリース契約書記載の戸数とレン

36 なお、このやり取りは、融資の審査時ではなく、実際に建物が建設されて賃貸を開始するタイミングで 行われているので、厳密には融資を引き出すための偽装ではない。とはいえ、レントロールの虚偽につい て銀行側が深く関わっていたことを示す1つの事例である。

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トロール記載の戸数が異なる物件情報を送付

77

2017.10.6 横浜東口 業者が行員に対して物件の資料を送る際に「賃料は原本+

3,000 円で作成しました」と記載。資料に投資家用と銀行

用があることを自認

78

2017.12.5 横浜東口 業者が行員に対して物件の資料を送る際に「色々訂正して

います。以前お送りしたのは他の物件と間違えたと思って ください。」といったメッセージを添えている

79

2018.3.1 首都圏営業

(特推)

業者が行員に対して、2 日前に物件概要書を送ったのと同 じ物件について、「修繕無しでお願いします」というメッ セージと共に金額を増額した概要書を送付

なお、2018年8月7日時点でスルガ銀行がレントロール、サブリース契約及び物件概 要書の資料に偽装の可能性があると認識している件数(資料の数)は、シェアハウス等

(シェアハウス、簡易宿所及びコンパクトアパートの合計)で11件である。

また、当委員会が 99 名の行員を対象として実施したフォレンジック調査(そのうち、

直接収益不動産ローンに関するエビデンスを業者から取得する可能性のあった者は87名 である。)の結果としてレントロール、サブリース契約及び物件概要書の資料に偽装が疑 われる件数(資料の数)は、423件である。上記と比べて数が多いのは、当委員会が行っ たフォレンジック調査がシェアハウス等に限らず、中古マンション等を含むためである。

(3) 入居状況の偽装-①賃貸借契約書の偽装・空室募集情報の取り下げ

レントロール(実際には空室があるにもかかわらず満室を前提としたもの)の偽装工 作を確実にするために、虚偽の賃貸借契約を作成する行為や、ウェブ上に掲載されてい る空室についての賃借人募集の情報を、業者に命じて取り下げさせる行為も発見された。

その例は下記の通りである。

No. 時期 支店 内容

80 2014.3.27 新宿 業者が行員に対して複数の賃貸借契約書(賃借人と日付が

同一で賃料が異なるもの)を送付

81 2017.4.22 ミッドタウ

業者が行員に対して「賃貸募集消えましたので、評価だけ すすめてください。」と連絡

82

2017.7.14 首都圏営業 業者が行員に対して「ご指摘いただきました○○(注:大

手不動産サイト)△△店落ちました。現状落とせる物は落 とし・・・」などとするメッセージを伝えている。これに 対して行員から、「今後のご参考としまして基本的にネッ ト等おちる段取りを取った上で,契約のサイトや決算まで

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のスケジュールをお願い致します。」「全ては案件を仕上げ る事や、御社を守っていくことに繋がりますので今後もお 願い致します。」と返答

83 2017.11.20 新宿 行員同士でレントロールを送付しており、「105号室と407

号室は実際には空いています。」とやり取り

84

2018.3.16 首都圏営業

(特推)

業者が行員に、「賃貸借契約書を送信しますが、空室2室 のでいいですか?」と連絡(空室なので本来契約書はない はずである)。

(4) 入居状況の偽装-②カーテン等による入居の偽装

収益不動産ローンにおいては、融資の稟議申請を行う前に、物件の現地調査を営業本 部の行員(1億円以上の物件であれば部長クラス、1億円未満の物件であれば所属長クラ スが原則であった)が確認するルールとなっていた。

そのため、行員の中には、物件の調査者が現地に向かう前に、業者に対して調査者が 現地に向かうタイミングを教えることがしばしば行われた。これにより、調査が行われ る物件について、業者が(空室が少なく見えるように)カーテンを引くこと等の偽装工 作を行うことが可能となっていた。

行員と業者との間で入居状況の偽装工作が行われていたことが認められる例として、

下記が挙げられる。

No. 時期 支店 内容

85 2014.7.17 2016.12.2

首都圏営業

(特推)

行員が業者に「物件の調査スケジュールを送信させて頂き ます」として、調査のタイミングを事前に伝達

86 2017.4.22 ミッドタウ

業者が行員に対して「○○日に現地行ってカーテンやって きますので、完了したらまたご連絡致します」と連絡

87

2017.7.14 首都圏営業 業者が行員に対して「カーテン設置の写真です。ご確認下

さい。」というメールと写真を送付。その直後にガスメー タについてガス止め表示がされているとして困った業者 が行員にどうすればいいか相談

88

2017.10.30 新宿 業者から「空室部屋、カーテンつけたほうがいいです

か??」という質問があり、行員から「評価が出ているの でそのままで」という返答

(5) 違法建築の黙認

一部の案件では、違法建築であることを承知で融資を実行している形跡が認められた。