• 検索結果がありません。

42 具体的には、①所得確認資料を自ら偽装して融資を実行したことがあるか、②所得確認資料が業者によ って偽装されていることを知りながら、もしくは黙認し、融資を実行したことがあるか、及び③所得確認 資料が業者によって偽装されているという疑いを持ちながら、融資を実行したことがあるか。

43 具体的には、①レントロールを自ら偽装して融資を実行したことがあるか、②レントロールが業者によ って偽装されていることを知りながら、もしくは黙認し、融資を実行したことがあるか、及び③レントロ ールが業者によって偽装されているという疑いを持ちながら、融資を実行したことがあるか。

44 なおスマートライフはもともとチャネルPRMに登録されていないため、この順位には含まれない。

45 もっとも、こうした回答は客観的な証拠に裏付けられたものではなく、また営業職員が自己の偽装への 関与の正当化根拠として誇張した数字を回答している可能性もないとは言えないため、当委員会としてこ うした回答に基づく事実認定は行っていない。

- 101 -

(1) 営業職員レベルにおける関与 ア フォレンジック調査

上記のような各種の偽装について、多くの行員が認識を超えて認容(関与)をしてい たこと、及び関与が認められる支店が、一部に偏ることなく、多くの支店に亘っている ことは、上記1から3で記載した各種のメールからも明らかである。

イ 行員アンケート

当委員会による行員アンケートにおいて、①自己資金確認資料の偽装を知りながら融 資を実行した又は実行したことを見聞きしたと回答した行員が 126 名、②レントロール の偽装を知りながら融資を実行した又は実行したことを見聞きしたと回答した行員が 128名、③売買関連資料の偽装を知りながら融資を実行した又は実行したことを見聞きし たと回答した行員が121名存在する46

なお、行員の側から偽装を示唆したことがある又はそのようなことを見聞きしたと回 答した行員は、①について54名、②③が合計で84名存在する。

このほか、当委員会とは別にスルガ銀行が行った行員アンケート(上記4(1)イ参照)に おいても、①自己資金確認資料の偽装を知りながら融資を実行したと回答した行員は 36 名、②レントロールの偽装を知りながら融資を実行したと回答した行員は38名、③売買 関連資料の偽装を知りながら融資を実行したと回答した行員は21名である。

ウ スルガ銀行のコンプライアンス部によるヒアリングの結果

さらに、スルガ銀行のコンプライアンス部が41名の行員(当委員会によるフォレンジ ック調査の対象者と一部重複しているが包含関係はない。)からヒアリングを行ったとこ ろ、下記のような供述を得ている。

質問 回答

審査資料の偽装 ・黙認35名

・疑いを持ちつつ拒絶はしなかった者5名

46 このほか行員アンケートでは、偽装に関与した者についても質問したところ、81名から具体的な行員に ついての回答があった。なお、さらに「大阪支店内の融資担当経験者全員」「首都圏チーム、日本橋、ミッ ドタウン、大宮、千葉、渋谷他ドリームプラザ担当者全て」「投資不動産ローンに携わっていた営業担当者 ほぼ全員」「投資用ローン業務に携わったことのある社員の大多数」といった包括的な回答をする者も一部 存在する。

- 102 -

レントロールの操作 ・自ら偽装したことあり11名

・偽装を業者に指示5名

・黙認13名

・疑いを持ちつつ拒絶はしなかった者7名 空室情報の操作 ・業者に指示1名

空室の現場偽装 ・偽装に積極的関与3名

・業者に調査日連絡16名

エ 当委員会によるインタビュー

当委員会による営業職員のインタビューにおいても、そのほぼ全員が、書類の偽装が 行われているであろうことを認識しながら融資をしたことを認めた。

これに対して、ごく一部に偽装に気付かなかったと証言する行員がいるが、それらの 者については、フォレンジック調査において、業者に対する偽装の指示や取扱停止とな った業者のダミー会社の設立に関与するメールが検出されており、偽装を了知していた と認められるから、その証言の信用性は乏しい。

以上のように、当委員会が直接インタビューをした行員の中で、偽装に何らかの形で 関与したことがある証拠が全く見つからなかった者は、一人も存在しなかった。

オ 小括

以上のような各種メール、各種アンケート及び各種インタビュー・ヒアリングからす れば、パーソナル・バンクにおいては、偽装を黙認した融資業務を行うことに多くの行 員が関与し、かつ、一部では行員自らが偽装に積極的に関与していたものと認められる。

なお、行員の関与としては、①偽装の黙認、②偽装の指示、③自ら偽装という複数の パターンが認められる。このうち一般的には、上記でいうと③が最も重大な行為である が、業者に対して「こういう金額の自己資金のエビデンスが必要」(上記②)という指示 をすることや、「このぐらいの金額がないと審査が通らない」と伝えておいて、その通り の資料が業者から出てくるのを黙認する(上記①)といった行為も、実質的な行為態様 としては大きく変わらないものと考えられる。

(2) 所属長レベルにおける関与 ア 直接的関与

まず、一部の偽装行為については、そもそも所属長が直接関与していたことが認めら

- 103 -

れ(No.7、14、22、29、30、37、61、62、63、64、65、68のケース)、これらの所属長が 偽装に関与していたことは証拠上明らかである。

イ 黙認

上記アのように直接的な関与までは認められなかった所属長であっても、偽装を知ら なかったとは考えられない。

まず、当委員会がインタビューの対象とした所属長経験者に、偽装を黙認していたか 否かについて確認したところ、これを認める所属長と認めない所属長に分かれた。

前者の例として、下記のような証言が挙げられる。

「スルガ銀行は相当以前から業者による偽装行為の被害に遭ってきており、シェアハウス ローンについても、(自らが全件について原本を確認していない以上)偽装が全くなかった といえば嘘になる」

「不正な案件が混ざっているという認識はあったが、どの案件が不正かは分からなかった」

「一般的に偽装がなされ得る、という認識は正直あった」

「所属長だけ偽装を知らないということはあり得ない」

「今思えばグレーの案件を 1 つずつ確認すべきだったが、グレーのままで流れてしまって いた」

「偽装があるだろうなと思うような案件はあった」

上記のように、偽装の黙認の有無については所属長により証言が分かれたが、一方で、

当委員会がインタビューの対象とした所属長経験者に、全ての案件において自己資金の 関係資料の原本を自ら確認していたか確認したところ、(スルガ銀行においては、2014年 5 月29日以降、自己資金のエビデンスは所属長の責任において確認することとされてい たにもかかわらず)全員が確認をしていなかったと証言した。その理由として、多くの 所属長が、案件の数が多すぎて、所属長が自ら原本を確認するのは物理的に不可能であ ったという事情や、自分は収益不動産ローンに明るくないためキャリアの長い部下に任 せていたという事情を挙げている。

しかし、いずれの所属長も、原本確認を自ら行わないことの危険性を認識していた。

例えば、所属長が集まるセンター長会議においては、スルガ銀行が「偽造など散々チャ ネルに騙された経験がある」「(2008 年より前の)当時から実は所得が偽装されていた、

資産が実はなかったなどの騙された事案はあったが、問題なのはPAから一棟収益へ大型 ローンになったにもかかわらず同じノウハウでここまで来てしまったことにある」(2017 年12月5日のセンター長会議)といった情報共有がされている47

47 なお、当委員会は201881日付で、PA1についての集団訴訟の原告代理人から、PA1の融資におい

- 104 -

このように、かなり以前からスルガ銀行は業者側の持ち込むエビデンスに偽装がある という事案を経験しており、(少なくとも抽象的には)投資用不動産向けの融資案件にお いて偽装のリスクが付きまとうことが所属長クラスにおいては共有されていた48。 実際、フォレンジック調査においても下記のようなメールが発見されており、各種の

書類についての偽装が跡を絶たないことが、所属長を含めたパーソナル・バンク内で広 く認識されていたことが認められる。

No. 時期 支店 内容

107

2015.2.25 首都圏営業

(特推)

特推のリーダーがメンバーに対して、「今後、業者からの レントロール・物件概要書への偽装・訂正を一切禁止する」

「銀行が概要書・レントロールを作成するのももってのほ か」との指示をしており、偽装が蔓延していることを所属 長も認識

108 2015.4.27 二子玉川 所属長が審査部に持ち込み書類を偽装している疑いのあ

るチャネルを報告

109

2015.10.26 横浜東口 所属長が支店の各担当者に自己資金の証憑として「Web明

細書の場合は 3 ヶ月程度の動き確認」「Web 明細書で内容 に不自然さがある場合、原則不可とするが、本人が間違い ないという場合は確認書の余白にその旨を署名させれば よい」という指示を発出

110

2016.11.24 パ ー ソ ナ

ル・バンク 全体

渋谷支店の所属長から首都圏営業部の部長(執行役員)に 自己資金を偽って借入れをした者が返済困難に陥ってい る旨を通知

111

2017.4.14 新宿 コンプライアンス部門から首都圏営業部副部長及び新宿

の所属長に、新宿支店の取扱チャネルが売買契約の偽装を 認めた旨を報告

112

2017.5.25 パ ー ソ ナ

ル・バンク 全体

首都圏営業部の副部長がパーソナル・バンクの保険販売担 当者に「解約(注:セット販売された保険の解約のこと。) するような奴はどうせ自己資金ゼロだ」というメールを配 ても、2010年に融資が実行された事案及び2013年に融資が実行された事案で、資料(ネットバンキング の残高)に偽装があった旨の報告を受けている。当委員会が原資料を確認したわけではないので、当委員 会として当該事案についての偽装の事実を認定するものではないが、仮にこの報告が事実だとすれば、2010 年の頃から業者による偽装が行われていた事案が存在したことになる。

48 例えば、PA1でデート商法による不適切な勧誘があり、不動産売買契約及び金銭消費貸借契約の無効を 求める事案が発生したことを受けて、スルガ銀行では、2013101日に、投資不動産ローンについて 債務者から取得する「確認書」に、債務者が「本物件の売買契約の締結に際して、不動産業者等より法令 および公序良俗に反するような違法または不当な勧誘等(勧誘目的の不告知や威迫困惑による勧誘等を含 む)を受けていないこと、ならびに本物件の売買契約の締結が、私どもの自由で明確な不動産購入意思に 基づき行われること」という項目が追加された。