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(1) 交通費

スルガ銀行では、金銭消費貸借契約の手続を支店内で行わなければならないというル ールがない。また、各支店においてエリア制が取られていないため、支店からみて遠方 にいる債務者に対して貸付を行うことも禁止されていない。

そのため、特に遠方にいる債務者の場合には、スルガ銀行の行員が債務者の居住地の

57 さらには、偽装が発見されたとしても、債務者と業者のどちらが(あるいは両方が)偽装をしたのか不 明という事態が生じている。

58 当委員会が「スルガ銀行・スマートデイズ被害者同盟」から受領したアンケート結果においても、無担 保ローンの借入れを行った164人(自ら希望して借入れを行った者を除く。)のうち136人が、業者から無 担保ローンを借りる必要があるとの説明を受けたと回答している。

59 ①預金又は定期積金等の受入れを内容とする契約の締結の媒介、②資金の貸付けを内容とする契約の締 結の媒介はいずれも銀行代理業であり(銀行法21412号)、銀行代理業は内閣総理大臣の許可を 受けた者でなければ営むことができない(同法52条の361項)

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近くまで赴いて、ファミリーレストラン等で金銭消費貸借契約の手続を行う、「出張金消」

と呼ばれる運用が頻繁に行われていた60

この出張金消が行われる場合については、スルガ銀行では、事務手数料として一定の 手数料を債務者から徴収する運用とされていた(ただし、この手数料の徴収も徹底はさ れていなかった。)一方で、出張に際して発生する行員の交通費については行内でルール が設けられていなかった。

そのため、出張金消に当たっては、融資の案件をアレンジしているチャネル(業者)

が行員に対して交通費を支払う取扱いが定着していた。当委員会が行ったフォレンジッ ク調査においても、行員が業者に対して交通費を自らの個人口座に振り込むよう督促す るメールが発見されている。

この交通費の支払いについては、実際に行員が出捐した金額をそのまま支払うのであ れば、行員が経済的利益を受けるわけではない。もっとも、この交通費の支払いについ ては、行員とチャネルが直接やり取りをする運用となっていたため、例えば業者側が交 通費の名目で、交通費以上の金額を行員に支払っていたとしても、スルガ銀行側にはそ の事実を確認する術がないという問題がある。

実際、当委員会が行ったフォレンジック調査によって、行員同士のメールで、「1、2万 かと思ったら引くほど入っている」「○○(行員の名前)ががんばる訳だ」というやり取 りも発見されており、交通費の名目で業者から行員に対して不適切な支払が行われてい たことも否定できない。

(2) その他の金員 ア 飲食の饗応

当委員会が行った行員アンケートにおいて、業者から飲食店やクラブでの接待を受け たことがあると認める行員が 9 名存在する。当委員会によるアンケートとは別にスルガ 銀行が行ったアンケート(2013年4月以降にパーソナル・バンク内に在籍した正社員等 を対象としたアンケート)においても、業者から、リベート、キックバック、接待、金 品その他の便益の提供を受けたことがあるかとの問に対して、同じく 9 名が肯定してい る。

このほか、当委員会の調査と並行してスルガ銀行のコンプライアンス部が41名の行員 からヒアリングを行ったところ、21名が飲食の饗応を受けたことがあると回答している。

イ キックバック

60 出張金消については、本文で述べた金員のやり取りが生じるという問題のほか、その場で債務者からエ ビデンス(預金通帳等)を提示されても、行員の側で写しを取ることができないという問題も存在する。

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当委員会は、飲食の饗応に留まらず、行員が業者から何らかの金銭(キックバック)

を受けていたことがあるかについても調査を行った。

その結果、行員アンケートや上記のコンプライアンス部のヒアリングのいずれにおい ても、これを認める行員は存在しない一方61、行員アンケートでは、金銭を受領している 疑いがある行員(退職者を含む。)として14名の氏名が挙がっている。

また、当委員会が行ったフォレンジック調査においても、「キックバックの話が出ると まずい」といった行員間のやり取りや、一部の行員(新宿支店)が業者の担当者から、

当該担当者自身が会社(業者)から受け取るインセンティブ報酬を行員に分配するのと 見返りに、当該業者に不動産の物件を持ち込むことを働きかけるメッセージ62をLINE上 で受け取っているやり取りなど、キックバックの存在を窺わせる証拠が発見された。

しかし、当委員会として、それらの行員(とりわけ退職者)から預金通帳の提出等を 求める権限まではないこともあり、それらの者が実際に業者からの金銭を受領している ことの確証までは取得することができなかった。

ただし、行員アンケートにおいて、キックバックを受領した行員として名指しされて いる者は、上記の通り14名であり、しかもキックバックの受領に関する2件以上の回答 が寄せられた者(2名以上の行員から、キックバックを受領していると指摘された者)は 7名、3件以上の回答が寄せられた者は4名63に留まる。

このように、キックバックを受領した疑いがあるとされているのは特定の人物に限ら れており、仮にこれらの人物が実際に金銭を受領していたとしても、行員全体の人数か ら見ればごく僅かな割合である。

しかも、その中には、シェアハウスローンが最も盛んであった横浜東口支店に所属し ていた者はほぼ存在しない。実際、当委員会はスマートライフの関係者についてのフォ レンジック調査も行ったが、スマートライフの内部でスルガ銀行の行員に対するキック バックについて議論がされているメールは検出されなかった。

以上の通りであるから、スルガ銀行においては、一部の行員による業者からの飲食の 饗応が認められるほか、ごく一部の行員については金員の受領行為が行われた可能性が 否定はできないものの、少なくともそれが今般のシェアハウスローンや収益不動産ロー ンの問題を引き起こした主たる要因であると位置づけることはできないと考えられる。

61 ただし、コンプライアンス部のヒアリングを受けた41名のうち4名が、金銭を渡されたことはあるが返 却したと回答している。

62 その他、当該行員が業者に靴や時計を無心するメッセージも発見されている。

63 具体的には、4名の行員について、それぞれ14個、10個、6個及び3個のキックバックの受領に関する 他の行員からの回答が寄せられた。なお、現時点でこの4名は全員が退職している。

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第4編 発生した問題の原因 第1 審査体制の問題 1 はじめに

前編で述べた通り、スルガ銀行では広く多数の不正行為が存在した。それらの不正行 為は、シェアハウスローンを含む収益不動産ローンの信用リスク管理に直結するもので あった。本項では、審査体制の概要を整理した上で、審査部による信用リスク管理の実 効性に問題があったことを指摘したい。

2 組織体制の整備状況