(表−9)顕示比較優位指標の変化が顕著だった品目(タイ 1982−1987年) 1982年 1987年
2. 分析と評価
2.2 運営・維持管理にかかる評価 2.2.1 運営・維持管理体制
2.2.2 運営状況
(1) マプタプット工業港
マプタプット工業港の貨物取扱量およびバース占有率の推移は表
2.3
のとおりである。本事業の対象となった公共バース(多目的バース
1、流体貨物バース 2)の取扱量の合計は、
1997
年で4,154
千トンにも達している。これに加え、近年は民間専用のバースも工業港内に整備され、活発な利用が始まっている7。
表
2.3 年間貨物取扱量およびバース占有率
単位:千トン 年 1992 1993 1994 1995 1996 1997 19981) 多目的バース 103 254 553 1,116 1,501 1,840 1,555
(占有率: %)2) 15% 20% 60% 80% 80% 80% 70%
流体バース 28 104 190 731 1,232 2,314 1,900
(バース1占有率: %) 0% 2% 2% 6% 25% 35% 38%
(バース2占有率: %) 3% 10% 15% 35% 42% 45% 44%
RRC社バース - - - 199 4,367 5,094 3,120
STAR社バース - - - - 3,630 6,725 7,838
NFC社 肥料用バース - - - 260 406 出所:IEAT、TTT、TPT資料
注 :1) 1998年5月までの実績を12/5倍して推定。
2) 多目的バースの占有率については、資料の制約からTPTへのヒアリングベースの概数となって いる。
第
12
次円借款アプレイザル時の当初計画では、多目的バースにおける一般貨物取扱量 は、1989年までは年間320
千トン、1990年以降の需要の伸びにより中期的には年間1,960
6 タイ全国にある29ヶ所のIEAT所管の工業団地(IEATが直営で開発・運営する工業団地、およびIEAT と民間企業の共同開発・運営による工業団地)のうち、リースされているのは東部臨海地域のマプタプッ ト工業団地、レムチャバン工業団地、およびピチット県のピチット工業団地の計3団地のみであり、その 他は分譲されている。
7 開発にかかる費用分担につき、IEATは次のような指針をとっている(NSR consulting group(1998) “Final Report on Revision of Port Master Plan for Map Ta Phut Port Project”)。①公共埠頭、もしくはリースを念頭に おいた埋め立て地建設のための浚渫費用はIEATが負担する。②航路の水深を保つための浚渫については、
①の条件に見合う限り、12.5mまではIEATが費用負担する。それ以上の水深が必要となる場合は、個々 の港湾利用者が費用負担する。③IEATの行う浚渫が間に合わない緊急の必要が特定の港湾利用者に発生 するときは、IEATは浚渫工事は認めるが費用負担はしない。
千トンが想定されていた8。実績は
1992
年の運用開始以降順調に伸長しており、1997 年に はほぼ当初見込みに見合う量が取り扱われている。その結果、バース占有率は大きく上昇 し(バース占有率の適正水準は一般に40〜65%とされる)、沖合いでの待ち時間は長時間に
および荷主から苦情が寄せられている。IEAT によれば、こうした状況に対応するために、港東側に現在工事中の新しい埋め立て地に追加的な公共バースを建設予定とのことである が、まだ具体化はしていない。
石油化学関連の流体貨物について、第
12
次円借款アプレイザル時には、1989 年までは 年間147
千トン、1990年以降は年間187
千トンが想定されていた。その後のマプタプット 地区における石油化学産業の隆盛を受け、取り扱い貨物量は当初見込を大きく越えて拡大 し、1997年で年間2,314
千トンに達している。その結果、バース占有率は、1998年5
月時 点で2
つのバースについてそれぞれ38%、43%まで上昇した。
上記のとおり、円借款により整備された公共バース(多目的および流体貨物専用)では、
一般貨物は当初想定にほぼ匹敵、流体貨物は当初想定を大幅に上回る取扱量となっており、
マプタプット工業港は、同工業団地で発生する貨物取り扱い需要に十分対応し、同工業団 地における重化学工業の発展を物流面から支えてきたといえよう。
(2) マプタプット工業団地
マプタプット工業団地の入居企業数、雇用者数、リース面積の推移は表
2.4
のとおりで ある。現在、工業用地として利用できる5,030
ライ(約800ha)全てが契約済みとなっている。
なお、円借款の対象は、①第
1
期石油化学コンプレックス関連の企業、②NFC 社の肥料工 場、および③その他中小規模企業向けの各区画の合計2,380
ライの工業団地の整備であっ た。現在、マプタプット工業団地はこの円借款対象部分を超えて5,030
ライが整備され、計
48
企業が進出している。IEAT
は、企業の堅調な進出理由としてインフラ(特に港湾)が整備されていることを挙げ ており、特に1992
年に港湾関連のインフラが整ったあと、企業進出が増加したとしてい る。表
2.4 団地内の企業数、雇用者数、リース面積の推移
年 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 企業数(操業中) 14 17 24 27 31 34 46 48 雇用者数(除:建設業者) 3,248 3,731 4,435 5,172 6,725 8,891 12,814 13,464
工業用地 3,227 4,134 4,605 4,739 4,895 4,895 4,973 5,023
リ ー ス 面 積
(ライ) 住宅用地 178 178 178 178 231 243 243 270
出所:IEAT
マプタプット工業団地に隣接する都市区域(2,000 ライ
)のうち、円借款事業の対象となっ
ていた250
ライはすべてリースされた。ただし、その他の地区についてはまだ利用されて8 第12次円借款アプレイザル時の当初計画では、流体貨物専用バースが事業範囲に含まれていなかった ため、1989年までに発生する流体貨物の輸送需要147千トンについて、多目的バースもしくは肥料専用 バースで取り扱い、後に流体貨物専用バースを追加建設する予定であった。
いない。IEAT によれば、①国家住宅公社
(National Housing Authority:
以下「NHA」)による 住宅整備が遅延し工場の立地に間に合わなかったこと、②この間、住宅建設費が高騰した 結果、住宅の賃料が上昇したことなどにより、NHAによる公営住宅への入居が少なく、マ プタプット工業団地の隣接都市区域の住宅開発が進まなかった原因としている。同工業団 地で働く労働者は同都市区域ではなく、近隣の都市(バンチャン郡やラヨン市)から通勤し ているものが多い。IEAT は、将来的に、空いている住宅用地を中小規模企業用の工場用 地として再整備する計画を持っている。工業団地における諸施設の利用状況は表
2.5
のとおりである。都市区域用の下水処理施 設を除いて、すべての施設が適切に稼動している。第12
次円借款のアプレイザル当時の 需要予測は、①第1
期石油化学コンプレックス関連企業、②NFC 社の肥料工場、および③ 中小規模企業からの需要をもとにしている。前述のとおり、現在ではこれを越えて企業数 が増加しており、一部施設の設備能力は、IEAT により独自に拡張されている。表
2.5 マプタプット工業団地における諸施設の利用実績
年 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998
原水 6,055 3,072 9,266 11,074 18,084 29,726 38,366 43,800
水 供 給 量
(×1000m3) 上水 171 436 1,001 1,205 2,086 2,845 2,880 2,880
工業用 0 83 290 330 215 285 562 450 下 水 処 理 量
(×1000m3)
都市用 0 0 0 0 0 0 0 0
最大電力需要(M W) 133 136 244 357 375 430 402 383 固形廃棄物処理(ton) 18,294 20,556 22,840 25,099 27,282 29,355 31,028 32,850 出所:IEAT
注 :1998年は10月までの実績を12/10倍して推定。固形廃棄物処理はマプタプット市による処理を 含む。
原水の供給は、独自の浄水施設を持つ大規模工場へなされている。入居企業の増加を受 け原水供給量は年々大きく伸びており、1997年には年間
38,366
千m
3(平均 4,634 m
3/時)に 達している。円借款事業としては、送水能力4,000m
3/時の原水導水施設が整備された。既に、IEAT により、需要増加に対応するための設備能力拡張が行われており、入居企業 の原水需要に対応している。
浄水施設を持たない企業への上水供給も同様に増加しており、1997 年には年間
2,880
千m
3(平均 7,890 m
3/ 日)であった。円借款対象としては、5,100 m3/日の処理能力の浄水処 理施設が整備されたが、需要増加に対応して、IEAT により設備能力の拡張が既に行われ ており、入居企業の上水需要に対応している。サポーティング・インダストリー地区と呼ばれる中小規模企業区画の入居企業からの下 水処理量は漸増しており、1997年には
562
千m
3(平均 1,540 m
3/日)に達している。円借款
対象としては、曝気槽などの土木工事は4,000 m
3/日の下水処理に対応するための工事が なされ、ポンプなどの機材については当面必要な2,400 m
3/日の処理に対応するものが調 達された。下水処理量はこれらの下水処理施設により対応可能な範囲におさまっている。都市区域用の下水処理施設(処理能力
2,400 m
3/日、3,050 世帯を想定)は、現在使用されていない。IEAT によれば、都市区域の人口が小さいため9、採算に見合うだけの十分な下 水量がなく、運営委託を行うコントラクターがいないためである10。タイでは、バンコク でもバンコク首都圏庁(BMA)により最初の下水処理場が建設されたのは
1994
年であり11、 処理場での集中的な二次処理を伴う生活排水の処理は、まだ緒についたばかりである12。 地方都市では、維持管理主体である自治体の財政的制約や技術者不足などから下水処理場 が建設されても運営が軌道に乗っていない例も多く、マプタプットの現状は相対的に珍し いことではない。生活排水の処理があまり進んでいないタイにおいて、新たな都市区域で下水処理場建設 を当初から計画に含めたことは、意欲的に状況を改善しようというもので、積極的に評価 されよう13。しかしながら、マプタプットの都市区域は、新たな工業団地の開発に合わせ て造成されたニュータウンであり、その発展可能性は未知数であった。結果として、これ までのところ同都市区域には当初想定を下回る人口の流入しかなかったことから、同区域 用の下水処理施設が利用されていない現状はやむを得ない14。この経験から導かれる教訓 は、下水処理場の建設は、下水の発生(可能性)を慎重に見極められる時期に実施すべきで あるというものである。具体的に本事業の場合には、マプタプット工業団地の建設(円借款 対象)からは切り離して、都市区域の住宅開発が行われる段階で下水処理場建設の実施時期 を検討するのが望ましかったと思われる15。なお、今後の円借款による生活排水処理の支 援にあたっては、新都市部においては、下水処理場建設の実施時期を慎重に見極めるべく 留意する必要がある。また、既に開発が進み人口が密集している都市(確実に下水が発生し ている都市)への下水処理施設支援を優先することが望ましいと思われる。
固形廃棄物(普通ごみ)処理のために、容量
50,000m
3の衛生埋立地が円借款対象として建 設された。同埋立地は既に満杯となり閉鎖されている。そのため現在ではマプタプット工 業団地の普通ごみは、マプタプット市が回収、処理している。また、有害なものを含む産 業廃棄物については同工業団地に隣接して立地しているGENCO
社が回収、処理している。
9 現在、都市区画の人口は、3,102人(1世帯5人と仮定すると620世帯)であり、未処理となっている下水 の推定量は520m3/日である(IEAT資料)。
10 IEATでは浄水処理施設や下水処理施設については基本的に民間委託する方針であり、IEAT自身が維持
管理することはない。マプタプットの都市区画の下水処理施設を民間委託、受益者負担で運営した場合、
都市区画人口が小さいことから、一世帯当たりの下水料金が高額となってしまうとのことである。なお、
現在、タイで下水料金を徴収しているのはパタヤ市とパトン市の2自治体しかない(バンコクでも下水料 金徴収は行われていない)。
11 同下水処理場にNHAがバンコクで建設した住宅団地用下水処理場と合わせても、バンコクの下水普及
率は約3%程度である。
12 なお、タイでは、屎尿処理については浄化槽などの個別屎尿処理システムが普及している。
13 タイにおける本格的な下水処理場は、1986年にパタヤ市で建設されたのが最初であり、本事業が計画 された当時、都市区域用の下水処理場が含まれていたことは他の地方都市にも先んじた意欲的な計画であ ったといえる。
14 マプタプットの都市区域の下水処理施設を受益者への負担を抑えて運転した場合、政府からの補助が必 要となる。タイで下水料金徴収を行っているのが2自治体のみであることを考えると、全額政府補助で運 転しなければいけない可能性も高く、同都市区域の少ない人口を考慮すると、同施設を無理に運転するこ とは経済的ではないと思われる。
15 なお、同下水処理施設は、後にIEATによって処理能力が拡張されているが、上記のような理由で施設 が未利用である現状からは、拡張は適切な投資ではなかったと思われる。