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住民移転

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(2) 生活排水用の集中的な二次処理施設への支援においては、当該国の同セクターの全体 的な状況を把握したうえで、プライオリティに応じて実施していく(首都圏や既存地方

1.  事業概要と主要計画/実績比較 1.1 事業地

1.2  本事業の背景 1.2.1 深海港の必要性

2.2.4  住民移転

本事業における住民移転に関し、

PAT(レムチャバン港事務所)の総務担当者、未移転住

民が居住するレムチャバン村(Bang Laem Chabang)とレムチャバン港の移転者用に整備され た再定住地であるノンクラー村(Bang Nong Khra)の、両村評議会(Village Committee)の代表

(村民の選挙により選出)

10にインタビューを行った(1998 年

11

)。以下の記述は、主とし

て同インタビューに基づくものである。

(1) レムチャバン港の用地取得および住民移転

レムチャバン港の建設に当り、

PAT

6,341

ライ(約

10km

2

)の用地を新たに取得した。 1978

年のレムチャバン港建設のための用地収用法に基づき、レムチャバン港の建設が始まる

1980

年代末にかけて用地取得が行われた。

PAT

によれば、用地取得の結果生じた住民移転者数は表

2.9

のとおりである。1998年時 点で、移転対象住民

1,726

世帯の内、1,491世帯が移転を済ませている。これら移転済み世 帯の多くは、用地取得の進展に応じ、1980年代に移転したものである。移転済み世帯の内、

1,263

世帯は土地所有者で、1978 年の用地取得法制定時の土地価格に基づき、約

2

万〜8

万バーツ/ライ(約

12.5〜50

バーツ/m2

)の土地補償費を受け取って移転した。また、残り

228

世帯は公有地の占拠者で、移転のための補償費を受け取り、一部は政府が整備した 再定住地(ノンクラー村)に移転した。PAT によれば、同再定住地に移転した住民は、土地 所有者および公有地占拠者の両者を含む

180

世帯である。

2.9 レムチャバン港建設に係わる移転住民数(1998

年)

土地所有者: 1,263世帯 移転済み住民:

1,491世帯 公有地占拠者: 228世帯

土地所有者: 133世帯 移転対象住民:

1,726世帯

未移転住民:

235世帯 公有地占拠者: 102世帯

出所:PAT

未移転の住民は、レムチャバン港と、同港の管制用レーダーがあるレムチャバン岬の間 に位置する、レムチャバン村の住民である。レムチャバン村の面積は約

300

ライであり、

取得されたレムチャバン港用地の約

5%に相当する。 PAT

によれば、同村の未移転住民は

235

世帯である。これら住民が居住する地区には、現在港湾関連の施設はなく、レムチャバン 港の運営には支障を来していない11。 その結果、1998 年時点で、PAT は住民と移転交渉 を継続してはいるものの、住民を強制的に移転することは行っていない。

移転対象となった住民の内、レムチャバン村の未移転住民

235

世帯と再定住地であるノ ンクラー村に移転した住民

180

世帯を除く

1,311

世帯については、個別に移転をしており、

その後の状況は不明である。本評価では、レムチャバン村およびノンクラー村の村評議会 の代表にインタビューを行った。

      

10 ムバーン(Mu-Ban)と呼ばれる村(集落)は、タイの行政の最小単位であり、全国に65,944あり、日本で言 えば町内会・自治会に近い。各村では議会(council)もしくは評議会(committee)を置いている例も多く、7〜

11人の委員が、村民の選挙によって選ばれる(出所:Facts About DOLA 1994)。

11 レムチャバン港の建設用地である6,341ライは、フェーズ1のみならず、長期整備計画の対象となって いるフェーズ2および3を含む約10km2の土地である。

(2) レムチャバン村

レムチャバン村の漁獲は、魚、イカ、エビ、蟹、等で、一部簡単な加工(干物、等)の上、

シラチャ市ほか近郊の都市へ出荷している。過去数十年の間に、村の漁業組合を通じて近 代的な漁業設備(大型漁船、レーダー等)を導入したことにより、漁獲量は増加してきてお り、同村評議会の代表によれば、村民は自分達の生活は豊かだと認識している。彼らの漁 場は、レムチャバンの沖合いであるため、港の建設後も漁獲量は減少していない、とのこ とであった。

PAT

は、レムチャバン港を挟んだ村の反対側のバンラムーン地区の

PAT

所有地に、同 村からの移転者用の再定住地(約

20

ライ、75ロット)を整備した。また、同再定住地に隣接 した運河で、漁船を停泊させるための護岸工事が

PAT

により行われたが、レムチャバン村 から同再定住地に移転した村民はいない。村評議会代表によれば、村民が同再定住地への 移転を望まない理由は、村民がレムチャバン村での生活に満足していることに加え、バン ラムーン地区の再定住地はレムチャバン村よりも狭く、漁船の停泊地も村民が所有する漁 船を係留するには小さいため、移転した場合レムチャバン村の生活より悪くなる、と村民 が考えているため、とのことであった。

同村の村評議会の代表からは、PAT およびタイ政府が、事業の計画段階で、もっと住民 に対し十分な説明を行い、住民と協調すべきであった、との不満の声が聞かれた。現在、

レムチャバン村の村民は、PAT およびタイ政府に対し、村民が同村に住み続けることを許 容する様に求めている。

(3) ノンクラー村

レムチャバン港の建設に合わせ、PAT およびタイ政府(チョンブリ県シラチャ郡)は、港よ り約

7km

内陸に再定住地(約

70

ライ、262ロット)を整備した。同再定住地はノンクラー村 と呼ばれている。PAT およびタイ政府が整地をし、道路、配電網、給水施設

(井戸)を整備

した。ノンクラー村には

180

世帯が居住しており、レムチャバン港が開港した

1991

年頃 までに移転を完了している。

ノンクラー村の村評議会の代表によると、住民の多くは、再定住地に近接したサハ・グル ープ工業団地の入居企業で働いている。住民は移転前も被雇用者であったものが多く、移 転後近郊の工業団地に職を得たことから、移転前と比較して所得も上昇しており、住民は 移転地に満足している、とのことであった。彼らの話によると、レムチャバン村の村民は、

漁業が豊かであるために、もともとノンクラー村に移転した住民との間には所得格差があ ったとのことで、ノンクラー村に移転した住民と、レムチャバン村の村民では、移転によ る得失が異なり、利害を異にしていた模様である。そのためか、ノンクラー村の村評議会 代表からは、PATおよびタイ政府の対応に対する不満は聞かれなかった。

(4) PAT

のレムチャバン村への対応

1998

年時点での

PAT

のレムチャバン村村民に対する公式な方針は、移転交渉を継続する というものである。レムチャバン港の実質的な運営には支障を来していないものの、同村 はレムチャバン港の敷地内に位置しており、PAT では同地域を港湾関連施設として利用す る計画を持っている。ただし、この時点で、PAT は強制移転を執り行うことは考えていな い、とのことであった。

PAT

が、同村住民の移転が必要であるとしてきた主な理由は、①レムチャバン村の漁船と レムチャバン港へ入港する船舶との衝突事故の懸念、および②港湾敷地内の集落が将来港 湾労働者のスラムと化すことへの懸念、の

2

点である。レムチャバン港が開港してから

8

年が経過する

1998

年時点では、これらの懸念は両者とも現実化してはいない。衝突事故 については、当事者のレムチャバン村の漁民は安全上の問題を感じていない。また、

1998

年時点でのレムチャバン村の現状はスラムには程遠い状態である。

レムチャバン村の存在が港の運営に支障を来しておらず、かつ同村の村民が移転を望んで いない中で、公式には交渉を継続しているものの、実質的にレムチャバン村の存在が許容 されてきた状態は、現実的な選択であったと思われる。今後、レムチャバン村への対応に は、①公式には交渉継続、実質的には村の存在が許容される現状維持、②公式に村の存在 を許容、③何らかの形での移転への合意、と幾つかの選択肢が有り得る12。どの様な対応 を取るかは、PAT およびタイ政府の責任であるが、今後とも、レムチャバン村の村民に十 分に配慮した対応を継続することが望まれる。

(5) 評価

レムチャバン港の計画は

20

年以上前から始まっており、同港の計画に当り、PAT およ びタイ政府より、住民に対してどの程度、どの様に事前説明がなされたのか、詳細は不明 である。PAT によれば、住民への事前説明は行われた様だが、レムチャバン村の代表から は、事前の説明や協調が不十分であったとの不満の声が寄せられた。タイ政府側でも、

OESB

職員からは、同港の計画段階で、もっと住民との協調をしっかり行う余地があったのでは ないか、との反省の声があった。

本事業の経験から導かれる教訓は、他の同様な住民移転の過去の事例と同様に、事業の 初期段階から事業対象地域の住民と十分に協調することの重要性である。実施機関と、移 転を求められる住民との間では利害が異なっており、一般的に、両者のコミュニケーショ ンや利害調整には困難が伴うと予想される。レムチャバン村村民代表の話からは、移転交 渉に当っての

PAT

の対応への不信感が感じられ、実施機関と移転対象住民との間のコミュ ニケーションや利害調整を円滑にするための配慮が重要であることが窺えた。また、レム チャバン村村民と、ノンクラー村の移転住民の様に、住民間で移転による得失が異なる場 合、住民間の利害の相違にも留意することが重要であると思われる。

本事業の住民移転に関し、PAT とレムチャバン村村民との交渉が長期化するにおよび、

本行は一貫して、住民への配慮を欠かさないように、PAT およびタイ政府に対して要請し て来ており、この対応自体は妥当なものであった。本事業が開始された当時は、世界的に 見ても住民移転に対する配慮が現在より小さな時期であったものの、より早期から事業地 域の住民への配慮を十分に採ることができれば、より望ましかったと思われる。

近年、移転住民配慮の重要性への認識から、再定住地のインフラ整備や、地元

NGO

の 参加も含む移転住民の生活・生計向上施策の実施等を円借款の対象とする事業も形成され ている13。本行としては、住民移転が生じる事業一般において、今後も必要に応じ、住民 移転への支援を借款の対象とすることも含め、実施機関が移転対象住民と十分なコミュニ ケーションを採り、より充実した利害調整や住民移転計画の策定・実施に努める様に促し ていくことが必要である。

      

12 安全上の問題等の懸念は現在のところ発生していないものの、今後、状況変化の有無も考慮に入れて、

これら選択肢は検討される必要がある。

13 ベトナムの「国道5号線改良事業(2)(3)」、フィリピンの「バタンガス港開発事業(2)」など。

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