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タイ国有鉄道(SRT)の経営状況

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(2) 生活排水用の集中的な二次処理施設への支援においては、当該国の同セクターの全体 的な状況を把握したうえで、プライオリティに応じて実施していく(首都圏や既存地方

④  ラッカバン ICD(Inland Container Depot)

2.2.4  タイ国有鉄道(SRT)の経営状況

以上、見てきたとおり、東部臨海開発計画により建設された鉄道網は、全体的にみて東 部臨海地域の貨物輸送に重要な貢献をしている。同地域での貨物輸送の増加などにより、

SRT

の鉄道運賃収入は増加してきた。しかしながら、同鉄道網の運営主体である

SRT

は、

長年にわたり営業段階で赤字を計上しており、タイ政府からの補助によって経営を支えて いる。

2.10

に見るとおり、東部臨海地域の鉄道網が開通した

1990

年度以降、1997年の経済 危機前までは、SRT の鉄道運賃収入は増加してきた。しかし、人件費や減価償却費が収入 の伸びを越えて増加したことを受け、ほとんどの年で営業赤字が計上されている。1998 年 度には経済低迷による収入の減少や通貨下落による為替差損の影響を受けて、営業赤字、

経常赤字ともに拡大することが

SRT

により予測されている。また、SRT の貸借対照表によ

れば(表

2.11)、流動比率および当座比率

21が趨勢的に低下してきており、SRT の資金繰りの

悪化が窺える。

2.10 SRT

の損益計算書

単位:百万バーツ 1990年 1991年 1992年 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年

営業収入 4,505 5,477 5,842 6,166 7,525 7,337 7,897 8,466 7,102

旅客運賃 2,792 3,180 3,574 3,790 3,846 3,847 4,080 4,154 4,012

貨物運賃 1,230 1,325 1,312 1,365 1,421 1,526 1,626 1,713 1,579

ラッカバンICD その他不動産等

-483

-972

-956

-1,011

-2,258

-1,964

18 2,173

95 2,504

147 1,364

営業費用 4,863 5,790 6,392 6,910 7,289 8,112 8,713 9,163 8,951

うち人件費 N.A. 3,110 3,594 4,006 4,080 4,747 4,992 N.A. N.A.

減価償却費 447 503 536 632 756 858 1,041 1,168 1,227 営業利益 △358 △312 △550 △744 236 △775 △816 △697 △1,850 支払い利息 359 402 486 564 746 769 673 942 1,320 為替換算差額 △115 △62 △147 △95 △158 △186 △66 56 △370 経常利益 △832 △776 △1,183 △1,403 △668 △1,729 △1,556 △1,583 △3,540

出所:SRT資料

注 :年はタイ会計年度(例:1998=1997101日〜98930日)。1998年度はSRTによる予測。

なお、日本の基準に合わせて項目建てを変更している。

2.11 SRT

の貸借対照表

単位:百万バーツ 1990年 1991年 1992年 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年

流動資産 2,402 2,215 2,419 2,524 4,341 2,890 3,784 4,338 4,025

現金・預金 118 83 87 100 54 87 92 266 257

貯蔵品 1,421 1,526 1,584 1,717 1,749 1,737 2,247 2,149 1,854

固定資産 20,212 21,711 23,785 28,519 32,284 32,641 37,432 40,421 45,453 土地・建物・設備 15,204 16,631 18,473 22,956 27,453 31,352 35,512 37,734 42,542

流動負債 823 1,236 1,826 3,134 4,362 2,813 4,965 6,105 6,089

固定負債 13,436 14,144 16,300 18,692 21,211 15,691 16,720 21,253 22,992

資本 8,269 8,546 8,078 9,217 11,053 17,027 19,530 17,401 20,398

流動比率 291.8% 179.2% 132.5% 80.5% 99.5% 102.8% 76.2% 71.1% 66.1%

当座比率 119.2% 55.7% 45.7% 25.7% 59.4% 41.0% 31.0% 35.8% 35.7%

出所:SRT資料

注 :年はタイ会計年度(例:1998=1997101日〜98930日)。1998年度はSRTによる予測。

      

21 当座比率 =(流動資産 維持管理用備品や燃料等の貯蔵品)÷流動負債。

上記のとおり、SRT の収益性および資金繰りは芳しいものではなく、趨勢としては、赤 字額が拡大し資金繰りが悪化していると言える。円借款事業の効果の持続のためには運営 主体である

SRT

の効率的な経営が重要であること、また、タイ政府の財政負担を制限する ためにも、SRT の財務状況および経営の改善は必須である。

SRT

に限らず、鉄道(特に国鉄)は、世界的に見て、他の交通手段との競合による経営悪 化に直面し、上下分離、民営化、部分的な民間参入等の改革を行うなどの経営改善努力が 求められている。SRT の経営改善のため、具体的に如何なる方策が必要かについては、事 後評価における分析の範疇を越えるものであるため、ここでは触れない。しかしながら、

本事後評価の結果として、SRT においては、今後の持続的な鉄道運営確保のため、場合に よっては大幅な改革を含む、積極的な経営改善策を行う必要があることが指摘される。

なお、SRT の財務状況については、国際協力銀行(以下、「本行」

)においてこれまでも留

意されてきたことではあるが、SRT の財務状況が改善していないことからは、実施機関お よび運営・維持管理機関の財務・経営面に対し、より一層注意を喚起する必要があること が教訓として得られよう。また、タイのみならず、先進国も含む他の多くの国において、

道路や航空などの他の交通手段の発達に伴い、鉄道事業体が同様の課題に直面してきたこ とからは、一般的に、途上国の鉄道セクター支援に当たり、事業体の財務改善と経営効率 化も合わせたものとすることが、鉄道事業の効果の発現と持続の観点から、肝要であると いえよう。

2.3 事業効果 2.3.1 定量的効果

(1) レムチャバン港の取り扱い貨物の輸送

東部臨海開発計画により建設された鉄道事業は、レムチャバン港で取り扱われる貨物の陸 上輸送に大きな貢献をしている(表

2.12)。

2.12 東部臨海開発の鉄道事業によるレムチャバン港の取扱貨物の輸送

単位:千トン 1998 輸送区間のうち東部臨海開発計画による新規投資事業

コンテナ 2,664 シラチャ・レムチャバン鉄道、チャチェンサオ・サタヒップ鉄道、ラッ

カバンICD

砂糖 17 シラチャ・レムチャバン鉄道、チャチェンサオ・サタヒップ鉄道、クロ 19・ケンコイ鉄道

注 :年はタイ会計年度(例:1998=1997101日〜98930日)

レムチャバン港の取扱貨物はコンテナが中心だが、1998 年度の同港でのコンテナ取扱量は

12,693

千トンであり、全コンテナが陸上輸送されていると仮定すると、東部臨海地域の鉄

道は、その約

21%(1998

年度)を輸送していることになる。タイの貨物輸送全般における鉄 道の機関分担率が約

2%(1997

年:道路約

89%、海運約 9%)であることを考えると、レムチ

ャバン港で取扱われるコンテナの陸上輸送における鉄道のシェアは非常に高い。

また、東部臨海地域の鉄道網は、レムチャバン港から輸出される砂糖を、産地の東北タイ から同港へ搬送することへも貢献している。

以上より、東部臨海開発計画により新規投資された鉄道網は、レムチャバン港を起点・

終点とする物流のネットワークを支えることに大きく貢献していると言える。

(2) 東部臨海地域と他地域間のエネルギー輸送

東部臨海開発計画により建設された鉄道事業は、東部臨海地域と他地域との間のエネル ギーの長距離大量輸送にも大きく貢献している(表

2.13)。

2.13 東部臨海開発の鉄道事業によるエネルギー輸送

単位:千トン 1998 輸送区間のうち東部臨海開発計画による新規投資事業

LPG 484 レムチャチェンサオ・サタヒップ鉄道、クロン19・ケンコイ鉄道 原油 602 シラチャ・レムチャバン鉄道、チャチェンサオ・サタヒップ鉄道、クロ

19・ケンコイ鉄道

石油製品 421 サタヒップ・マプタプット鉄道、チャチェンサオ・サタヒップ鉄道、ク ロン19・ケンコイ鉄道

注 :年はタイ会計年度(例:1998=1997101日〜98930日)

東部臨海開発計画の鉄道により輸送される

LPG

は、全量タイ石油公社(PTT)により生産 されたものである。タイ全体の

LPG

生産量は約

180

万トンで、その約半分に当たる

936

千 トンを

PTT

が生産している。タイの

LPG

生産量の約

27%、PTT

の生産量の約

52%が、東

部臨海開発計画により建設された鉄道網で輸送されている。また、これは、PTT がマプタ プットで生産する

LPG

の内、北部および東北部に輸送されるものの全量であり、同鉄道網 は、東部臨海地域で生産された

LPG

の輸送に大きく貢献している。

東部臨海開発計画の鉄道網による原油・石油輸送は、全量シェルが荷主の輸送である。

これらの輸送が、原油・石油製品輸送全体に占める割合は大きくないが22

LPG

と合わせ、

東部臨海地域と他地域との間の、エネルギーの長距離大量輸送に、東部臨海開発計画によ る鉄道網が貢献しているといえる。

(3) 財務的内部収益率(FIRR)

東部臨海開発計画による鉄道事業の

FIRR

のアプレイザル時の値と再計算結果を、表

2.14

にまとめた。円借款対象の

3

事業については、アプレイザル時のものと比較可能とするた めに、アプレイザル時と前提を揃えて計算している。いずれの事業も、貨物輸送量のアプ レイザル時推計と実績の差異を反映し、シラチャ・レムチャバン鉄道はアプレイザル時を

上回る

FIRR、サタヒップ・マプタプット鉄道はアプレイザル時を大きく下回るマイナスの

FIRR、クロン 19

・ケンコイ鉄道もアプレイザル時を下回る

FIRR

となった23

      

22 東部臨海開発の鉄道による石油製品の輸送は、全量マプタプット工業団地に立地するRRC社によるも のだが、RRC社はタイの石油精製能力の約2割を占めており、RRC社の精製能力の内、約5〜6%が鉄道 輸送されている。

23 今後の貨物輸送については1998年度以降一定との仮定を置いているが、輸送量が増加すると仮定を変 えても、上記の結論には大きな変化は無い。それぞれの路線で収益が年率5%増加したと仮定(合わせて維 持管理費用も年率5%増加を仮定)した場合、シラチャ・レムチャバン鉄道のFIRR20.6%、サタヒップ・

2.14 東部臨海開発計画の鉄道事業の FIRR

アプレイザル時 実績

①シラチャ・レムチャバン鉄道 14.2% 18.2%

②サタヒップ・マプタプット鉄道 14.3% △11.5%

③クロン19・ケンコイ鉄道 8.0% △9.4%

④チャチェンサオ・サタヒップ鉄道 2.7%

⑤ラッカバンICD 4.7%

⑥東部臨海開発計画の鉄道事業全体 0.7%

注 :1) SRTでは、各路線毎の収支を公表していないことから、収入と維持管理費につき以下の方 法で推計した。輸送料金収入は、SRTによる各貨物毎のトン・km当り単価を利用して、

各路線延長および輸送量に応じて算出。維持管理費は、SRTによる(列車)台・km当り単 価を利用して、各路線延長および一日当り列車本数より算出。なお、各路線の輸送量は1998 年度以降は一定と仮定。また、FIRRは、1998年価格で計算している。

2) ③〜⑤は(③についてはアプレイザル時および実績両方とも)、当該路線のみの輸送料金収 入、建設費用、維持管理費用を計上している。①②については、アプレイザル時の前提 と合わせて計算している(本文参照)。アプレイザル時のプロジェクトライフは、①②は建 設開始後30年、③は運営開始後30年。実績のプロジェクトライフは運営開始後30年で 統一している。鉄道事業全体のプロジェクトライフは、最後に完成した路線の運営開始 30年。

なお、シラチャ・レムチャバン鉄道とサタヒップ・マプタプット鉄道の、アプレイザル 時における

FIRR

の算出では、両鉄道からの輸送料金収入に加えて、両鉄道の建設によっ て発生する貨物輸送のチャチェンサオ・サタヒップ鉄道上での輸送料金収入も加えている

(ただし、両鉄道の建設に関係ない貨物輸送は除かれている)。一方、費用については、チ

ャチェンサオ・サタヒップ鉄道の維持管理費用は計上するものの、同鉄道の建設費用は埋 没費用として扱い、シラチャ・レムチャバン鉄道とサタヒップ・マプタプット鉄道につい てのみ建設費用を計上している。

シラチャ・レムチャバン鉄道とサタヒップ・マプタプット鉄道は、チャチェンサオ・サ タヒップ鉄道の支線であり、チャチェンサオ・サタヒップ鉄道上を通る貨物のほとんどが、

両支線の建設によって発生したものであることを考えると、これら

3

路線を一体の鉄道網 としてとらえ、同鉄道網全体での貨物料金収入を、本事業の収益と考えるのは妥当である。

しかし、東部臨海開発計画による鉄道事業全体での収益性を見るためには、同計画により 新規に建設されたチャチェンサオ・サタヒップ鉄道についての建設費用も含めた鉄道網全 体での

FIRR

を見るのが望ましい。さらに、これら

3

路線を通る貨物は、クロン

19

・ケン コイ鉄道とラッカバン

ICD

の新規投資により発生したもの(砂糖、石油、ICD 完成後のコ ンテナ輸送)も含んでいることから、これら

5

事業を一体として

FIRR

を計算することが、

より望ましい。

これら

5

事業を合わせて計算した

FIRR

はプラスとなっており、5 事業全体では一定の 収益を確保しており、SRT が長年にわたり営業赤字を続けている事業体であることを考え ると、東部臨海鉄道網への投資は、SRT にとっては、効率的な投資であったといえよう。

しかしながら、期待された収益を下回る一部路線の影響により、FIRR としては

0.7%にと

        マプタプット鉄道は、△7.8%、クロン19・ケンコイ鉄道は、△5.5%である。

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