第 3 章 スイッチング電源回路の低リップル・高速応答 制御方式制御方式
3.9 SPICE シミュレーションによる動作確認
3.9.4 負荷電流変動検出回路
図3.25に提案する負荷変動検出回路の回路図を, 図3.26にそのSPICEシミュレーション結果を示す. 制御電圧 Vcontは可変インダクタのスイッチに接続され負荷電流変動の絶対値が大きいときは論理1を出力してスイッチをオ ンにする. 小さいときは論理0を出力してスイッチをオフにする. もう一つの出力Vrは出力容量Coutの負電極に接 続され,負荷電流が急激に増加したときはVrは正電圧を出力し,急激に減少したときは負電圧を出力する.
Vcont Vr
Vout
Rf Rs Vdd
Iout
Vg
Vr1
Rf1 Rs1
LP Filter
図3.25: 提案する負荷変動検出回路.
図3.26の結果から負荷変動を検出し,Vcont,Vrが原理通りの動作をしていることが確認出来る. 次にそれぞれの回 路について述べる.
Vcont[V]
Output Current:Iout[A]
Vr[V]
図 3.26: 負荷電流変動検出回路のSPICEシミュレーション.
(a) (b)
Vout
Rf Rs
Iout Switching
Regulator
Vo Ro Positive
Voltage
L3
L4
Vout
Rf Rs
Iout Switching
Regulator
Vo Ro Positive Voltage Vcont
L3
L4
D1
D2 D3
D4
I L3=Iout I L3=Iout
0
100mA 100mA
0
I2 I2
Vdd Vcont
Vdd
図 3.27: 可変インダクタ制御電圧Vcont生成回路.
可変インダクタ制御電圧生成回路
図3.27に可変インダクタ制御電圧Vcont生成回路の原理図を示す. 図3.27(a)は負荷変動が急激に増加した時, (b) は負荷変動が急激に減少した時の回路を流れる電流の様子をそれぞれ表している. この回路は(1)トランス, (2)ダイ オードブリッジ, (3)非反転増幅器で構成され,それぞれの役割は以下のようになる.
(1) L3:L4のトランスで,L3を流れる出力負荷電流の変動を検出する.
(2) L4で発生した電流の絶対値を取る.
(3)ダイオードブリッジによって,発生したV0での正電圧を非反転増幅器で増幅し,インダクタと並列に接続されて いるMOSスイッチのゲート電圧を制御する.
また相互インダクタンスM =k√
L3・L4より誘導起電力Voは以下のようになる.
Vo=MdIout
dt +RoI2−L4
dI2 dt . ここで、Ro, I2が非常に小さいとき,
Vo=MdIout
dt となる.増幅器の増幅率をG= 1 +RRf
s とすると,検出回路の出力Vcontは Vcont=G×Vo=(
1 +Rf
Rs
)(k√ L3・L4
dIout
dt )
となり,Rf, Rsを調整することによって,生成する可変インダクタ制御電圧Vcontを制御することが出来る. また,LPF は時定数T =RCにより,Vcontを“なだらか に変化させスイッチのオン・オフ時のインダクタの電流変化を円滑に 行わせる(図3.28).
Vout I
1Cp :Parasitic Capacitance
L
1L
2I
1I
2Vout
Cp :Parasitic Capacitance
L
1L
2I
1+ ⊿ I
I
2‑ ⊿ I
Vout
L
1L
2I
1+I
2Cp :Parasitic Capacitance
(a)
(b)
(c)
Vm
Vm Vm
I
1+I
2I
1+I
2図3.28: MOSスイッチを用いた可変インダクタの原理.
(C) (b)
Vm[V]
Vm[V]
Vm[V]
(a)
図3.29: 図3.28のシミュレーション結果.
MOSスイッチのソフト・ターンオフ
この提案回路方式の実現のポイントは可変インダクタ実現のためのスイッチの動作である.図3.28(a)に2つの直 列接続したインダクタとスイッチがONになっている状態を示す. 電流I1+I2がインダクタL1を,電流I1がインダ クタL2を,電流I2がスイッチを流れている. 図3.28(b)に示すように,もしスイッチが短いスイッチング時間でOFF になったとするとインダクタを流れる電流は急には変化出来ないので,電流I2が寄生容量Cpに流れ込み,このノー ド点Vmは極めて高くなり整定に時間がかかってしまう.
そこでここでは「ソフト・ターンオフ」を提案する(図3.28(c)). すなわちスイッチをオフするとき一定のスイッチン グ時間をとり徐々にオフさせていく.この遷移状態でスイッチは有限の抵抗値をもち,I2が寄生容量に流れ込み,その ノード電位を高くしてしまうのを防ぐことが出来る.この「ソフト・ターンオフ」はスイッチドライバの前段にロー パスフィルタを用いることで実現できる. 原理通りに動作することをSPICEシミュレーションで確認した.
シミュレーション結果を図3.29に示す. スイッチがONから急にOFFする時(図3.29(b)),ノード点Vmの電位は 急激に上昇してしまう. それに対して提案手法においては(図3.29(c)),ノード点Vmの電位は上昇していない.
Vr
Vout
Rf Rs
Iout V1‑1 V1
Vr1
Vr
Vout
Rf Rs V1‑1 Iout
Vr1
Rf2 Rs2 Ro V1‑ 2
L3
L4
Ro Vo V1‑ 2
L3
L4 D1
D2
D3 D4
IL3=Iout
IL3=Iout 0
100mA
100mA 0 Switching
Regulator
Switching Regulator
Rf2 Rs2
Vo Positive
Voltage
V1 Negative Voltage
(a)
(b)
図 3.30: 可変容量制御電圧Vr生成回路.
可変容量制御電圧生成回路
図3.30に可変容量制御電圧生成回路の原理図を示す. 図3.30(a)は負荷変動が急激に増加した時, (b)は負荷変動 が急激に減少した時の回路を流れる電流の様子をそれぞれ表している.
この回路は(1)トランス, (2)ダイオードブリッジ, (3)非反転増幅器, (4)マルチプレクサー部から構成され,それ ぞれの役割は次のようになる.
(1) L3:L4のトランスで,L3を流れる出力負荷電流の変動を検出する.
(2) L4で発生した電流に応じて,負荷電流が増加した時には正電圧を, 負荷電流が減少した時には負電圧をV1に発
生させる.
(3)ダイオードブリッジによって発生したV1での正電圧(または負電圧), V0での正電圧を非反転増幅器で電圧を 増幅する.(V1−1, V1−2)
(4)V1−2が1より大きい時,VrにはV1−1を出力させ,V1−2が1より小さい時,Vrには0を出力させる.
可変容量制御電圧Vrは,V1で発生した正電圧,または負電圧から,増幅器の増幅率をG2= 1 + RRf2
s2 とすると, Vr∼=V1−1=G2×V1=(
1 + Rf2
Rs2 )×V1
となる.VrはV1−2の電圧によってV1−1[V]とGND(=0[V])が切り替えられて出力される.