B.6.3 2 段バッファ構成 Fine DTC の設計
C.8 結果の考察
以下,入力電圧0.1[V],温度T=300[K],信号源内部インピーダンスとスイッチオン抵抗の合成抵抗30[Ω]の時, SNR を最大にする条件(式(C.10))の下で議論する.
C.8.1 具体的なパラメータ値
ある帯域fBW をもつS/H回路を設計する際にSNRを最大にするRC時定数τ1optとスイッチング時間窓τ2optの 関係は,図C.11に示すように
τ1opt[sec] = 1
3.33×fBW[Hz]
τ2opt[sec] = 1
2.12×fBW[Hz]
で与えられる. このときの容量Cの値は
C[F] = 1
100×fBW[Hz]
で与えられる(図C.12). 最大SNRは図C.13のようになり,これがこの構成のS/H回路のSNR理論限界値となる.
100 101 102 100
101 102 103
τ1(R*C),τ2[psec]
fBW[GHz]
帯域とτ1opt,τ2opt の関係
τ1opt τ2opt
図C.11: 帯域fBWとSNRを最大にするτ1opt,τ2opt.
10 0
101 10
101 2 100 101
C[pF]
fBW[GHz]
帯域とSNRを最大にするCの関係
図 C.12: 帯域fBW とSNRを最大にする容量Cの 大きさ.
100 101 102
50 55 60 65 70 75
SNR[dB]
fBW[GHz]
入力電圧0.1[V],T=300[K]のときの 係
ストローブサンプリング技術のSNR
帯域と最大SNRの関
図C.13: S/H回路の帯域と最大SNR.
0 50 100 150
0 5 10 15 20 25 30 35 40 τ1[ps]
τ2[ps]
10GHz 30GHz
50GHz 100GHz
図 C.14: 帯域fBW とSNRを最大にする容量Cの 大きさ.
表C.1に帯域と最適値の例を示す. これらはある帯域を持つS/H回路で最大SNRを取るように設計する場合のパ ラメータ値設計指標となる. 図C.14に帯域10GHz, 30GHz, 50GHz, 100GHzを実現するτ1, τ2 (実線で示す),お よび帯域一定下でSNRを最大にするτ1opt, τ2optを示す. 表C.2にトラックホールド回路でのτ1,インパルスサンプ リング回路でのτ2 およびSNRを最大にするときのτ1opt, τ2optの値を示す.
表C.1: 一定帯域で最大SNRを実現するパラメータ値.
設定帯域[GHz] SNR[dB] τ1opt[ps] τ2opt[ps] 最適C[pF]
1 71.8 300 450 10.0
5 64.8 62 94 2.08
10 61.8 31 47 1.04
50 54.8 6 9 0.21
100 51.8 3 5 0.10
表C.2: 設定帯域を実現するためのτ1, τ2. τ1∞はトラックホールド回路でのτ1を示し, τ2∞はインパルスサンプリ ング回路でのτ2を示す.
設定帯域[GHz] τ1∞[ps] τ2∞[ps] τ1opt[ps] τ2opt[ps]
1 160 443 300 450
5 32 89 62 94
10 16 44 31 47
30 14.8 5.3 10 16
50 3 8.9 6 9
100 1.6 4.4 3 5
C.8.2 エネルギーの観点からの τ
1opt, τ
2opt以下に示すように帯域一定下でSNRを最大にするτ1opt,τ2opt はホールド容量に保持されるエネルギーを最大に する.
SN R = 10 log [Vout2
Nrms2 ]
= 10 log [
Vout2
kBT C
]
= 10 log [1
2CVout2 ]
+ 10 log [2kBT] [dB].
1
2CVout2の部分は容量に蓄積されるエネルギー, 10 log[1
2kBT]
の部分は定数であるから, SNRを最大とすること と,容量保持エネルギーを最大にすることは等価である.
C.8.3 ストローブ・サンプリングの提案
図C.15に 数値計算で求めたτ2/τ1と正規化したSNRの関係を示す. 広帯域サンプリング・オシロスコープで用い られているインパルス・サンプリング(τ2/τ1<<1)のときはSNRが劣化していることがわかる. また広帯域化にと もない極短パルスを生成するのも技術的に難しいので少しでもその要求を緩和したい. また,前述のようにトラック・
ホールド回路はトラック時に信号源からホールド容量が見えてしまうため反射が問題となる. そこでτ1≈1.5τ2で広 帯域・高ダイナミックレンジS/H回路を実現することを提案する(ストローブ・サンプリング回路). ストローブ・
サンプリングはインパルス・サンプリングとトラック・ホールドの中間に位置し,両者の問題を改善した方式になる.
SNR
Log(τ2/τ1) 最適値
図C.15: S/H回路でのτ1,τ2の比と正規化したSNR.