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交流型動ひずみ測定での寄生容量の影響

Parasitic capacitance

4.5 交流型動ひずみ測定での寄生容量の影響

4.5.1 寄生容量の影響

近年のひずみ測定のアプリケーションではひずみゲージセンサをブリッジ回路から非常に離れた距離に配置しな ければならない場合が増えてきている(図4.3). この際ひずみゲージとブリッジ回路を接続するリード線の寄生容量 が交流型動ひずみ測定の精度に影響する. リード線の寄生容量は使用リード線の仕様,被覆材の種類等により異なり, 交流型ひずみ測定器においてはひずみゲージの抵抗値が一定であっても,使用したリード線の容量により初期不平衡 値が発生する. また,温度変化によりリード線の寄生容量が変化しそれがゼロドリフトとなって表れてくる.すなわち ひずみ測定器電源投入時に校正を行うだけではこの寄生容量の影響に対処できない.

4.5.2 寄生容量の影響の解析

A. 1ゲージ法の場合 (図4.5)

交流型動ひずみ測定での寄生容量の影響の対策を検討するために,最初に図4.5(a)の1ゲージ法の場合の寄生容量を もったブリッジ回路を図4.5(b)のようにモデル化する. その伝達関数H(jω)(=Vout(jω)/Vin(jω))を解析的に求め ると次のようになる.

H(jω) =  HRE(ω) +jHIM(ω). (4.4)

ここで

HRE(ω) = 1

2・x(2 +x)−ω2R2C2(1 +x)2

(2 +x)2+ω2R2C2(1 +x)2 (4.5) HIM(ω) = −ωRC(1 +x)2

(2 +x)2+ω2R2C2(1 +x)2 (4.6) R = R+ ∆R, x=∆R

R . (4.7)

R

1

R

2

図 4.8: ひずみゲージを測定物の片面に縦横に接着した場合.

R1

R2 , R3

図4.9: ひずみゲージを測定物の両面に接着した場合.

B. 2ゲージ法の場合 (図4.6, 4.7)

1ゲージの場合にはひずみが検出された時に,そのひずみが「引張」によるものか,「曲げ」によるものか,その両方 によるものかの判別は不可能である. しかし2つのひずみゲージを使用すると,検出されたひずみが「引張」による ものか,「曲げ」によるものなのかの判別が可能になる. 2ゲージ法にはホイートストンブリッジへの組み方により, いくつかの構成方法がある[4, 5]. 組み方としては,例えば図4.6のように,ホイートストンブリッジの隣合う辺の抵 抗をひずみゲージに置き換えた場合(この論文では隣辺2ゲージ法と呼ぶことにする)と図4.7のように,ホイートス トンブリッジの対辺の抵抗をひずみゲージに置き換えた場合(対辺2ゲージ法と呼ばれる)の2種類がある. また測 定物へのひずみゲージの接着の方法として, 1つのひずみゲージを測定物に接着し,もう1つのひずみゲージは測定物 のダミーに接着する場合がある.これは1アクティブ1ダミー法と呼ばれる. この方式では温度補償,ひずみゲージの ケーブル抵抗などの補正が可能となる. その他に図4.8のように測定物の片面にひずみゲージを接着した場合(この 論文では片面接着法と呼ぶことにする)や,図4.9のように測定物の両面にひずみゲージを接着した場合(この論文で は両面接着法と呼ぶことにする)がある. 2ゲージ法における2つの回路構成における寄生容量を考慮した出力電圧 式から求めた伝達関数は下記のようになる.

(i)隣辺2ゲージ法: 構成図を図4.6(a)に,寄生容量の等価回路モデルを図4.6(b)に示す. その伝達関数H(jω)を 次のように導出した.

H(jω) =  HRE(ω) +jHIM(ω). (4.8)

ここで

HRE(ω) = 1

2D(ω)・ (

(2 +x1+x2)(x1−x2) + ω2R2(1 +x1)2(1 +x2)2

×(C2+C1)(C2−C1) )

. (4.9)

HIM(ω) = ωR(1 +x1)(1 +x2)

D(ω) (4.10)

× {C2(1 +x2)−C1(1 +x1)}. (4.11)

D(ω) = (2 +x1+x2)2

+ ω2R2(1 +x1)2(1 +x2)2(C1+C2)2.

(4.12)

R1 = R+ ∆R1, x1=∆R1

R . (4.13)

R2 = R+ ∆R2, x2=∆R2

R . (4.14)

ひずみゲージのホイートストンブリッジへの組み方によりx1, x2は次のようになる.

隣辺1アクティブ1ダミー法の場合

x1=x, x2= 0. (4.15)

隣辺2アクティブ片面接着法の場合(図4.8)

x1=x, x2=νx. (4.16)

ここでν はポアッソン比(多くの場合 値が0.3程度の定数)である.

隣辺2アクティブ両面接着法の場合(図4.9)

x1=x, x2=−x. (4.17)

いずれの場合も未知変数はx, C1, C2 の3つである.

(ii)対辺2ゲージ法: 構成図を図4.7(a)に,寄生容量の等価回路モデルを図4.7(b)に示す. その伝達関数H(jω)を 次のように導出した.

H(jω) =  HRE(ω) +jHIM(ω). (4.18)

ここで

HRE(ω) = 1

D(ω)· (

(2 +x1)(2 +x3)(x1+x3+x1x3)

ω2R2{(1 +x1)2(2 +x3)C12 + (1 +x3)2(2 +x1)C32

+ ω2R2(1 +x1)2(1 +x3)2C12C32}) .

(4.19)

HIM(ω) = −ωR D(ω)·(

(1 +x1)2(2 +x3)2C1

+ (1 +x3)2(2 +x1)2C3

+ ω2R2(1 +x1)2(1 +x3)2

×C1C3(C1+C3) )

. (4.20)

D(ω) = {(2 +x3)2+ω2R2C32(1 +x3)2}

× {(2 +x1)2+ω2R2C12(1 +x1)2}. (4.21)

R1 = R+ ∆R1, x1=∆R1

R . (4.22)

R3 = R+ ∆R3, x3=∆R3

R . (4.23)

ひずみゲージのホイートストンブリッジへの組み方によりx1, x2は次のようになる.

対辺2アクティブ両面接着法の場合(図4.9)

x1=x, x3=x. (4.24)

この場合も未知変数はx, C1, C3 の3つである.

4.5.3 寄生容量の影響の考察

前節で1ゲージ法, 2ゲージ法システムにおいてリード線やケーブルの寄生容量を考慮し, 回路構成と接着方法に よる組み合わせでのそれぞれの伝達関数を導出した. これらの式はブリッジ出力電圧のひずみ依存性を表している が,1ゲージ法, 2ゲージ法とも伝達関数H(jω)の実数部,虚数部の両方とも容量成分の項を含んでいることがわか

る(図4.10). 従来の交流型動ひずみ測定ではアナログ回路による位相検波によりブリッジ出力電圧の実数部を測定し

てひずみを算出している. したがって導出した伝達関数は, 寄生容量によりその測定精度が影響を受けてしまうとい うことを解析的に示している.

Real Imaginary

Resistance parasitic capacitance

H(jω) Im{H(jω)}

Re{H(jω)}

図4.10: ブリッジ回路伝達関数H(jω)実数部への寄生容量の影響の説明.