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熱膨張アクチュエータにおける構造計算式の導出

第 2 章 MEMS 技術を用いたデバイスの設計

2.4 MEMS アクチュエータの設計

2.4.5 熱膨張アクチュエータにおける構造計算式の導出

熱膨張アクチュエータの設計において,熱による金属の温度上昇量と, 構造的なたわみ量の計算式の導出を行なっ た. また,物性パラメータ等は,表2.2の値を参考にした.

発熱量の計算式(オームの法則)

Q=I2Rt (2.1)

R=ρL

S (2.2)

ここで,t[s]:電流を流す時間,I[A]:電流,ρ[pΩ/µm]:抵抗率,S[µm2]:断面積,L[µm]:長さである.

この時,発熱量Q[J]は,(2.36),(2.2)式より

Q=I2Rt=I2ρL

St (2.3)

(2.3)式より,発熱量Qは断面積Sに反比例することが分かる. また,発熱による温度上昇量Tを求める. 金属の重さ

w[kg]は,密度P[kg/µm3]と体積V[µm3]で求まるから,以下のようになる.

w=P×V =P×S×L (2.4)

(2.3),(2.4)式より,発熱による温度上昇量T[K]は,比熱をCp[pJ/kgK]とおくと,

T = Q

Cpw = I2ρLSt

CpP SL = I2ρt

CpP S2 (2.5)

この温度上昇量Tと金属の線膨張係数により,金属の伸びが求まる.

この式を用いて,図2.1の構成での発熱量と温度上昇量特性を求めた. 以下のグラフより,熱を加える金属の厚さを 薄くしないと,発熱は得られないことが分かる.これは,金属の幅を一定にした場合のデータである. 計算式より,厚さ

×幅=断面積Sを1µm2 未満にすると,温度上昇量は飛躍的に高くなる.

図2.3: 発熱量の計算結果:図2.1の構成において,Au の厚さを変えた時の発熱量特性.Auの厚さを厚くす ると,発熱量はほとんど得られない.

図 2.4: 温度上昇量の計算結果:図2.1の構成におい て,Auの厚さを変えた時の温度上昇量特性.Auの厚 さを厚くすると,温度上昇は見られない.

図2.5: 温度上昇量の計算結果:図2.1の構成におい て, Auの厚さ,幅等の構成を固定し,電流を与える時 間の長さを変えた時の,温度上昇量特性.温度上昇量 は時間に比例する.

図 2.6: 温度上昇量の計算結果:図2.1の構成におい て, Auの厚さをパラメータとした場合,腕の幅を変 えた時の温度上昇量特性. 腕の幅を大きくすると,温 度上昇は得られない.

図2.7: 最大たわみ量の計算結果:図2.1の構成にお いて, 4種類の金属単体のたわみ量と,金属全体の場 合の,うでの長さを変化させた時のたわみ量特性

図 2.8: 最大たわみ量の計算結果:図2.1の構成にお いて, Auの厚さをパラメータとして,腕の長さを変 えた時の金属全体の最大たわみ量特性

構造の計算式

カンチレバー(片持ち梁)の構造から,金属のたわみが予想される. よって,たわみ量の計算式を導出した. 最大た わみ量δM AX[µm]は以下の式のように導出されている.

δM AX = W L4

8EI (2.6)

I= bh3

12 , W =w

L = SLP

L (2.7)

ここで, b[µm]は金属の幅, h[µm]は金属の厚さ, W[kg/µm]は等分布荷重, Eはヤング係数, Iは断面2次モーメ

ント5 である. 一番下の金属の厚みが厚いほどたわみ量が小さいことが確認出来た. (2.6),(2.7)式より,4種類の金属

(金,チタン,PSiO2, SiO2)の断面積SをSAu, ST i, SPSiO2, SSiO2,密度PをPAu, PT i, PPSiO2, PSiO2とおくと, 4 種類の金属を使った場合のたわみ量が計算出来る.

δM AX =W L4

8EI = {(SAu×PAu) + (ST i×PT i) + (SPSiO2×PPSiO2) + (SSiO2×PSiO2)} ×L4

8Ebh123 (2.8)

=3{(SAu×PAu) + (ST i×PT i) + (SPSiO2×PPSiO2) + (SSiO2×PSiO2)} ×L4 2Eh2SSiO2

(2.9)

(2.5),(2.9)式より,発熱量を多くするには厚みを小さくし,たわみ量を小さくするには厚みを大きくするというト

レードオフの関係にあることが計算式より確認出来た.

以上の計算式,計算結果をMEMSスイッチの設計へと応用した.

5断面二次モーメント:変形のしやすさのこと.二次は距離の2乗をかけるの意.