第 5 章 結論
A.3 ノイズとは
ノイズとは一般的には,もともとなくても良い有害な音という意味だが,環境電磁工学的には電磁環境を汚し,周辺 のさまざまな電気・電子機器の正常な動作を妨げる,有害な電気的あるいは電磁波的な信号という意味である. ここ ではノイズについて簡単に解説する[14]-[16].
A.3.1 ノイズの種類
ノイズ発生の原因である電流の変化は,様々な理由により発生する.大きく分けて自然現象で起こる自然ノイズと, 機器などから発生する人工ノイズがある.それらの種類を大まかに以下に記す.
自然ノイズ
1. 電気放電=火花ノイズ 2. 電流の断続=接触ノイズ
3. スパイク状電流=パルス性ノイズ 4. 不均一な電子流電子=散弾ノイズ 5. 温度によるもの=熱抵抗ノイズ
6. 自然界のノイズ=宇宙ノイズ,太陽ノイズ
人工ノイズ
1. コンピュータのクロックノイズ 2. スイッチング電源のノイズ 3. モータなどから発生するノイズ 4. スピードコントローラからのノイズ 5. サーモスタットからのノイズ 6. トランスなどからの誘導ノイズ
特に人工ノイズは電気・電子機器において,他に機器に悪戯をする問題や,自分自身の機器を障害する内部干渉(イン ストラシステム)の問題がある.
A.3.2 ノイズの性質
ノイズの周波数
ノイズは周波数が高いほど,発生しやすく,伝わりやすいという性質を持っている. ノイズの発生を分かり易くする ため,インダクタに流れるノイズ電流を例に説明する. インダクタをL,
電流をI,その角周波数をω,ノイズ発生する電圧をV とすると,
V =j・ω・I (A.1)
となる.したがって周波数が高いほど,大きなノイズ電圧が発生する.
ノイズの伝わり方
ノイズの伝わり方はキャパシタンスを伝わるノイズを例にする.
キャパシタンスをC,そのインピーダンスをZとすれば,
V = 1
(j・ω・C) (A.2)
となるから,インピーダンスが低ければ,信号は容易に通過する.
ノイズの除去
ノイズは高い周波数の方が多く乗る性質をもっているため,信号よりも高い周波数帯域に多く発生する.そのため, 信号の周波数帯域が低い場合には,フィルタなどによって,簡単に除去できる.
しかし,信号の帯域幅が高い場合,信号と同じ周波数にノイズも乗っているため,フィルタではノイズだけを取り除く ことができない. すなわち,周波数帯域が高くなるほどノイズ対策が必要となってくる.
A.4 EMC とは
EMCとは,電気・電子装置の障害の原因となる様々な電磁放射についてどの様に扱うのかを規定した物である.例 えば,スパークノイズなどは,広い帯域に渡り多くのスペクトラムを持つ電磁波であることが知られており,電気・電 子機器に障害や雑音をもたらすことがある.特に近年ではデジタル装置が非常に広い周波数分布を持ち,電気・電子装 置の障害の主原因と認知されるようになったと思われる.結果としてこの様な近年の現状に対し,EMCとは以下のよ うな要件を満たすことにある.
1. 他のシステムに障害を与えない
2. 他のシステムからのエミッションの影響を受けない 3. 自身のシステムに障害を与えない
上記の要件を満たす事は,複数の電子機器(電子システム)が同時に正しく動作することで,ここの電子機器が障害に 対して耐性を持っていることに相当する.この時この電子システムは電磁的に整合(Compatibility)と解釈され,E MC(Electromagnetic compatibility)という.
A.4.1 EMI とは
EMIとは電磁妨害によって引き起こされる電気・電子機器等のシステムの性能の低下のことで,ノイズ障害 (in-terference)を表している.そのため,妨害に対する規制のことを電磁障害:EMI(Electromagnetic Interference)と 呼ぶ.
A.4.2 EMS とは
EMSとは電気・電子機器等のシステムの性能を低下させる可能性があり,生物, 無生物に関係なく全てのもの に悪影響を与える可能性がある電磁現象のことで,ノイズの耐性の規制のことを電磁妨害:EMS(Electromagnetic Suscepatibility)と呼ぶ.
A.4.3 EMC の単位としてのデシベル
EMCとして評価される量に伝導エミッション【電圧(V),電流(A)】と放射エミッション【電界(V/m),磁界(A/m)】
があり,これらは電力(W)及び電力密度(W/m2)と共に規定されている.なお,EMCの評価には通常のdBではな く,dBµV,dBµV /m,というデシベル単位が使われる.以降で簡単に説明する.
開放電圧VSと内部抵抗RSからなる電圧源が負荷RLの増幅器に接続されている場合を考える.(増幅器の入力イン ピーダンスはRin)増幅器に伝送される電力は
Pin = Vin2 Rin
(A.3) となり,負荷へ伝送される電力は
Pout = Vout2 RL
(A.4) となる.ここで増幅器の電力利得は,
電力利得 = Pout
Pin
= Vout2 Vin2
Rin RL
. (A.5)
ここで増幅器のインピーダンスと負荷抵抗が等しい時(Rin = RL) 電力利得 = Pout
Pin
=
(Vout Vin
)2
Rin=RL
. (A.6)
一般的にデシベル表記は次のようになる.
電力利得(dB)= 10log10
(Pout Pin
)
. (A.7)
よって,式(A.6)と式(A.7)より
dB ≡ 10log10 (Pout
Pin
)
Rin =RL
(電力) (A.8)
dB ≡ 20log10
(Vout Vin
)
Rin=RL
(電圧) (A.9)
dB ≡ 20log10
(Iout
Iin
)
Rin =RL
(電流) (A.10)
これは,教科書などで示される一般的な公式であるが,Rin = RLという条件付きである点を注意しなければならな い.これは簡単には下図A.1のようにインピーダンスマッチングされた伝送路で左端の信号が右端でも同じように伝 わることに相当する.
図 A.1: Rin = RLの時の信号伝達概念図