I LCLK
2.7.3 可変(相互)インダクタの原理
2.6節で述べたように,先にスパイラルインダクタの設計を行なった. その設計したスパイラルインダクタを複数 個使用し,それらの相互インダクタタンスが可変可能なインダクタの設計を行なった.
提案する可変(相互)インダクタは,二つのコイルを使用し,コイルを上下,又は左右に動かすことでコイル間の距 離を変化させ,相互インダクタンス(インダクタを貫く磁束の数)を変えるというものである. その原理を図2.92-2.96 に示す.
図2.92: 相互インダクタンスの模式図: コイル1とコイル2を貫く磁束の数(=相互インダクタンス)を,コイルを
物理的に移動させることで変化させる.
相互インダクタンスMは,コイルの結合係数kとそれぞれのコイルの自己インダクタンスL1とL2で求まる.
M =k√
L1L2 (2.42)
また,相互インダクタンスMは,コイルとコイルの幾何学的配置,即ち形,大きさ,位置と,コイルの間にある物質の 透磁率のみで決まる. 我々は,コイルとコイルの幾何学的配置の位置に着目した. つまり,コイル間の距離をアクチュ エータを用いて動かすことで,位置を変化させ,相互インダクタンスを可変させるという考えである.
図2.93-2.96に,可変インダクタの模式図を示す. コイルを水平に動かすことにより,二つのコイル間の位相を変化 させ,相互インダクタンスを変化させる. ループ状にコイルを巻き,このような形状をしたコイルに電流が流れること により,図中に示すような方向に磁界が発生する.その時の磁束線の方向に注目した. 相互インダクタンスとは,コイ ルを貫く磁束線の本数である. すなわち,コイルを水平に動かすことで,貫く磁束線の本数を増減させ相互インダクタ ンス値を変化させるという考え方である. 図2.95は相互インダクタンスが最大となる時,図2.96は相互インダクタ ンスが最小となる時の二つのコイルの関係図を示したものである. 上のコイルと下のコイルでの下(上)向きの磁束 線が重なり合った時磁束線は互いに強調し合う,つまり二つのコイルを貫く磁束線が最も多くなる. この時相互イン ダクタンスは最大となる. 一方,図2.96のように上(下)向きの磁束線と下(上)向きの磁束線が重なり合った時磁 束線は互いに打ち消し合う,つまり二つのコイルを貫く磁束線は最も少なくなる. この時相互インダクタンス値は最 小となる.
図2.93: 模式図(a):スパイラルインダクタを2つ用 いる. スパイラルインダクタを水平に動かすことで 相互インダクタンスを可変させる
図 2.94: 模式図(b):それぞれのインダクタを上から
見た図
図2.95: 模式図(c):磁束の向きが等しくなる時,相互 インダクタンスは最大となる
図2.96: 模式図(d):磁束の向きが逆になる時,相互イ ンダクタンスは最小となる
相互インダクタンスと合成インダクタンス
次に,相互インダクタンスMと相互インダクタンスの関係について述べる. 二枚のスパイラルインダクタを中心, 巻き方向とも合うように重ね合わせる.この二枚のスパイラルインダクタは同巻き方向に電流が流れるように端子を 接続するか,逆巻き方向に電流が流れるように端子を導線で結合する. 二枚のスパイラルインダクタを結合したもの を一つの合成インダクタと考え,そのインダクタンスを合成インダクタンスLcomとおく. このとき,相互インダクタ ンスをMとし,スパイラルインダクタの自己インダクタンスをL1, L2(L1=L2=L)とおくと,合成インダクタンス Lcomは次のように与えられる[50].
M
L1 L2
v
i
Lcom
図 2.97: 相互インダクタンス.
(i)同巻き方向に電流を流したとき v = L1
di
dt+Mdi dt +L2
di
dt +Mdi
dt = 2(L+M)di
dt (2.43)
Lcom = 2(L+M) (2.44)
(ii)逆巻き方向に電流を流したとき v = L1
di
dt−Mdi dt +L2
di
dt −Mdi
dt = 2(L−M)di
dt (2.45)
Lcom = 2(L−M) (2.46)
これより,合成インダクタンスLcomは以下のように求まる.
Lcom = 2(L±M) (2.47)
この相互インダクタンスMを可変にさせることにより,合成インダクタンスを可変にさせることが出来る.
可変インダクタンスの可変率の向上化
IN IN
OUT
OUT
SW SW SW
SW
SW
SW L1
L2
L3
L1 L2 L3
図2.98: スイッチと可変インダクタ.
またインダクタンスを大きく可変にさせる場合には,図2.98のように合成インダクタンスの異なる可変インダクタ ンスをスイッチにより切り替えることで実現する. さらに可変インダクタを用いることによって,連続的に切り替え ることが出来る. このような構成にすることによって,可変率を大きく取ることができる.