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調査の概要

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 45-48)

第 2 章 自律的学習能力育成に関連する研究の動向と学部留学生の現状

2.2 学部留学生の現状:そのニーズと可能性

2.2.1 調査の概要

前節の検討で、大学学部教育の一部としての日本語科目が目指すべき目標が明らか になった。限られた時間で多様な背景を持つ学部留学生に必要な技能を獲得させるに は、彼らのニーズを把握しておく必要がある。そこで、日本の大学で現在学んでいる 学部留学生を対象に、大学生活の中で経験する困難と留学の成功条件についての彼ら の認識について理解することを目的とする質問紙調査を行った。

(2) 調査の手続き及び倫理的配慮

調査は、2016年の 5月から7月にかけて、九州地区の某国立総合大学A(以下、A 大とする)と別の国立工業大学 B(以下、B 大とする)において、両大学に在学する 留学生に調査の目的等を説明して協力を求め、同意を得て協力者とした。A 大では、

筆者が調査用紙を配布し終了後に回収した。B 大では、同大の二つのキャンパスで調 査を実施したが、一方のキャンパスでは筆者が、もうひとつのキャンパスではそこで 実施されている日本語科目の担当者が筆者の依頼に応じて、質問紙の配布および回収 を行った。

(3) 調査の内容および方法

調査の内容は、「質問1:大学の勉学に関して感じる困難」、「質問2:留学を成功さ せるために必要と考えること」の2点である。質問1については、多肢選択式、質問 2については自由回答式とした。質問1の項目は、Oxford(1990)のSILL(Strategy

Inventory for Language Learning)(資料5参照)、及び日本の大学に在学する学部留

学生を対象に学習ストラテジーの使用実態を調査した尹(2011)(資料6参照)を参考 にして作成した。学部留学生にとっての課題が存在すると考えられる分野として表 2

-10に挙げたA-Hの8項目を設定し、それぞれに5つの質問を設けた(表2-11)。

調査用紙では、同分野の質問が過度に連続しないよう分散させた。回答の形式は、リ ッカート法を用いて「あてはまる」「ややあてはまる」「ややあてはまらない」「あては まらない」の4 件を設け、最も該当する一つを選択するよう求めた。日本語版・英語

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版・韓国語版・中国語版の4カ国語版を準備し(資料9a-9d・資料10a-10d)、協力 者の自由選択に任せた。質問2は、「後輩の留学生に留学を成功させるために重要なこ とを助言してあげるとすれば、どのようなことを伝えますか」と尋ね、日本語・英語・

中国語・韓国語のいずれかで記述するよう求めた。

本調査の主な関心は低年次、特に、初年次の留学生を支援するための示唆を得るこ とであったが、協力者の約4分の1は2年と 3年に在学していた。彼らには、質問1 への回答に際しては、入学後の一年間に感じていた困難を想起するよう求め、調査時 においても克服されていない問題があれば、それについてはなるべく自由回答欄に記 述するよう依頼した。

表2-10 調査の項目(問題の所在)

A. 聞くこと B. 読むこと C. 書くこと D. 話すこと E. 試験 F. 対人関係 G. 勉強方法 H. 情意面の管理

表2-11 各項目の質問 A. 聞くこと

1. 専門用語や日本人には常識的な固有名詞などが分からなくて講義を聞きとるのが大変だ った

9. 講義で個々の話は分かるが全体として先生が何を言いたいのかよく分からなくて困った 17. 講義で資料やハンドアウトがないとき先生の話を聞いて理解するのが大変だった 25. 先生によって音声や話し方がちがうので講義を聞きとるのが難しかった

33. 専門内容に関する基本的知識が不足していて講義を聞いて理解するのが難しかった B. 読むこと

2. 教科書や資料に出てくる漢字が読めなくて大変だった

10. 専門用語やカタカナ語などの知らない言葉が多くて教科書や資料を理解するが難しかっ た

18. 教科書や資料を読んで言葉の意味は分かっても全体として何を意味しているのかを把握 するのが難しかった

26. 教科書や資料を読んで要点をとらえるのが難しかった

34. 課題として出された参考図書などを短期間で読みこなすのが難しかった C. 書くこと

3. 日本語の文を組み立てて文章にしていくのが難しかった 11. レポートで使われる表現や書き言葉がよくわからなくて困った 19. レポートを書くとき、全体的な構成を組み立てるのが大変だった 27. 自分の考えを論理的に書くことが難しかった

35. レポートの内容を決めるために、専門的な資料を調べるのが大変だった D. 話すこと

4. 口頭発表の発表原稿を考えるのが大変だった

12. 先生や日本人学生と話すとき、適切な日本語を使えているか心配だった

38 (4) 調査協力者

本調査への協力者は、二つの国立大学に在学する学部留学生38名である。その在籍 学年、母語、所属学部、日本語レベル32 は、それぞれ、表 2-12、表 2-13、表 2-

14、表2-15に示した通りである。

表2-12 協力者の在籍学年

学 年 A大 B大 合計(人)

4 年 0 4 4

3 年 0 6 6

2 年 0 5 5

1 年 21 2 23

合計(人) 21 17 38

32 JLPTのレベル(1.1.2 参照)に準じて、N1、N2で示した。

20. 授業や課題演習などで、討論に入って自分の考えを述べるのが難しかった 28. 授業や課題演習などで、まわりの人からの質問にうまく答えるのが難しかった 36. 自分からまわりの人に質問したり意見を述べたりするのが難しかった

E. 試験

5. 試験のための勉強方法が自分のやり方でいいのか心配だった 13. 試験の前に、友人と情報交換が十分にできなくて心配だった

21. 試験で、答えが分かるのに日本語でうまく答えられなかったのが残念だった 29. 試験に失敗して単位を落としたらどうしようと不安だった

37. 試験で、書くのに時間がかかり時間内に解答できない科目があって残念だった F. 対人関係

6. 先生や日本人学生に分からないことをたずねるとき自分の日本語が伝わるか心配だった 14. 先生や日本人学生に話しかけるとき聞いてもらえるか心配だった

22. 勉強のことを相談したり一緒に勉強したりできる人を見つけるのが難しかった

30. 話し合いなどで自分の意見を言うとき周りの日本人学生に聞いてもらえるか心配だった 38. 日本人学生と雑談をするとき相手や場面に合う日本語を使うのが難しかった

G. 勉強方法

7. 効果的な勉強方法を見つけるのが大変だった 15. 予習・復習に時間がかかって大変だった

23. 期限を守って課題を提出するなど、計画的に課題を処理するのが難しかった 31. 重要度や優先順位を考えて、勉強の時間配分や方法を考えるのが難しかった 39. 大学の情報システムや図書館活用など、 情報収集の方法に慣れるのが大変だった

H. 情意面の管理

8. 何か失敗したりいやなことがあったりしたら、気持ちを入れかえて勉強するのが難しか った

16. 大学の勉強についていけないような気持になり不安だった

24. 自分が熱中できる勉強を見つけられなくてなんとなく心が重かった 32. 勉強面の目標を持てなくて意欲が高まらなかった

40. 大学での勉強が入学する前に想像していたものと違ったのでがっかりした

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表2-13 協力者の母語

母 語 A大 B大 合計(人) 中国語 10 8 18 韓国語 8 2 10 マレーシア語 2 4 6 インドネシア語 0 1 1 タイ語 0 1 1 ンデベレ語 1 0 1 ベトナム語 0 1 1 合計(人) 21 17 38

表2-14 協力者の所属学部

表2-15 協力者の日本語能力(所属機関別)

N1 N2 その他 合計(人)

A大学 7 10 4 21

B大学 8 8 1 17

合計(人) 15 18 5 38

以上、表2-12から表2-15が示す通り、協力者はアジア・アフリカ諸国の出身者 で、いわゆる「理系」の諸分野を専攻する者が大多数を占め、非漢字圏出身者が少数 交じっている。これは、本研究がその教育方法の内容を開発しようとしている日本語 科目の状況と概ね重なる。

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