第 2 章 自律的学習能力育成に関連する研究の動向と学部留学生の現状
2.2 学部留学生の現状:そのニーズと可能性
2.2.2 結果及び考察
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表2-13 協力者の母語
母 語 A大 B大 合計(人) 中国語 10 8 18 韓国語 8 2 10 マレーシア語 2 4 6 インドネシア語 0 1 1 タイ語 0 1 1 ンデベレ語 1 0 1 ベトナム語 0 1 1 合計(人) 21 17 38
表2-14 協力者の所属学部
表2-15 協力者の日本語能力(所属機関別)
N1 N2 その他 合計(人)
A大学 7 10 4 21
B大学 8 8 1 17
合計(人) 15 18 5 38
以上、表2-12から表2-15が示す通り、協力者はアジア・アフリカ諸国の出身者 で、いわゆる「理系」の諸分野を専攻する者が大多数を占め、非漢字圏出身者が少数 交じっている。これは、本研究がその教育方法の内容を開発しようとしている日本語 科目の状況と概ね重なる。
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者全員(38名)の平均点を出し、標準偏差の値を求めた。
表2-16 勉学に関わる困難についての調査結果
協力者(n) 平均点(M) 標準偏差(SD)
38 2.41 0.57
表2-17は、A-Hの8つの「調査の項目」(表2―10)のそれぞれに設けた5つの 質問項目ごとに、1点-4点を選択した人数を示し、併せて、協力者全員の平均点を示 したものである。困難の有無について、「あてはまる」と「ややあてはまる」の選択者 を「ある」、「ややあてはまらない」と「あてはまらない」の選択者を「ない」として合 計し、その人数が5割を超える項目には網掛けを施した。
表2-17 学部留学生が大学での勉学で感じる困難の傾向
質問項目 選択数(人) 平均
1 2 3 4 (点)
A 聞 く こ と
1. 専門用語や日本人には常識的な固有名詞などが分からな
くて講義を聞きとるのが大変だった 4 11 16 7 2.68 9. 講義で個々の話は分かるが全体として先生が何を言いた
いのかよく分からなくて困った 11 10 16 1 2.18 17. 講義で資料やハンドアウトがないとき先生の話を聞いて
理解するのが大変だった 5 13 9 11 2.68 25. 先生によって音声や話し方がちがうので講義を聞きとる
のが難しかった 5 12 13 8 2.63 33. 専門内容に関する基本的知識が不足していて講義を聞い
て理解するのが難しかった 10 15 8 5 2.21 2.48
B 読 む こ と
2. 教科書や資料に出てくる漢字が読めなくて大変だった 14 11 11 2 2.03 10. 専門用語やカタカナ語などの知らない言葉が多くて教科
書や資料を理解するが難しかった 6 14 15 3 2.39 18. 教科書や資料を読んで言葉の意味は分かっても全体とし
て何を意味しているのかを把握するのが難しかった 9 12 14 3 2.29 26. 教科書や資料を読んで要点をとらえるのが難しかった 5 17 14 2 2.34 34. 課題として出された参考図書などを短期間で読みこなす
のが難しかった 5 10 13 10 2.74 2.36
C 書 く
3. 日本語の文を組み立てて文章にしていくのが難しかった 7 16 10 5 2.34 11. レポートで使われる表現や書き言葉がよくわからなくて
困った 8 12 12 6 2.42
19. レポートを書くとき、全体的な構成を組み立てるのが大
変だった 2 13 15 8 2.76
41 こ
と 27. 自分の考えを論理的に書くことが難しかった 4 18 8 8 2.53 35. レポートの内容を決めるために、専門的な資料を調べる
のが大変だった 2 14 16 6 2.68 2.55
D 話 す こ と
4. 口頭発表の発表原稿を考えるのが大変だった 3 14 13 8 2.68 12. 先生や日本人学生と話すとき、適切な日本語を使えてい
るか心配だった 3 13 10 12 2.82 20. 授業や課題演習などで、討論に入って自分の考えを述べ
るのが難しかった 6 14 10 8 2.53 28. 授業や課題演習などで、まわりの人からの質問にうまく
答えるのが難しかった 4 18 13 3 2.39 36. 自分からまわりの人に質問したり意見を述べたりするの
が難しかった 9 13 11 5 2.32 2.55
E 試 験
5. 試験のための勉強方法が自分のやり方でいいのか心配だ
った 8 6 16 8 2.63
13. 試験の前に、友人と情報交換が十分にできなくて心配だ
った 8 14 9 7 2.39
21. 試験で、答が分かるのに日本語でうまく答えられなかっ
たのが残念だった 6 13 12 7 2.53 29. 試験に失敗して単位を落としたらどうしようと不安だっ
た 2 9 10 17 3.11
37. 試験で、書くのに時間がかかり時間内に解答できない科
目があって残念だった 9 13 9 7 2.37 2.61
F 対 人 関 係
6. 先生や日本人学生に分からないことをたずねるとき自分
の日本語が伝わるか心配だった 5 11 11 11 2.74 14. 先生や日本人学生に話しかけるとき聞いてもらえるか心
配だった 13 14 5 6 2.11 22. 勉強のことを相談したり一緒に勉強したりできる人を見
つけるのが難しかった 7 17 9 5 2.32 30. 話し合いなどで自分の意見を言うとき周りの日本人学生
に聞いてもらえるか心配だった 11 16 5 6 2.16 38. 日本人学生と雑談をするとき相手や場面に合う日本語を
使うのが難しかった 6 12 10 10 2.63 2.39
G 勉 強 方 法
7. 効果的な勉強方法を見つけるのが大変だった 5 18 12 3 2.34 15. 予習・復習に時間がかかって大変だった 8 11 12 7 2.47 23. 期限を守って課題を提出するなど、計画的に課題を処理
するのが難しかった 13 13 9 3 2.05 31. 重要度や優先順位を考えて、勉強の時間配分や方法を考
えるのが難しかった 9 18 7 4 2.16 39. 大学の情報システムや図書館活用など、 情報収集の方
法に慣れるのが大変だった 10 13 14 1 2.16 2.24 8. 何か失敗したりいやなことがあったりしたら気持ちを入
れかえて勉強するのが難しかった 10 13 11 4 2.24
42 H
情 意 面 の 管 理
16. 大学の勉強についていけないような気持になり不安だっ
た 6 12 11 9 2.61
24. 自分が熱中できる勉強を見つけられなくてなんとなく心
が重かった 13 15 7 3 2.00 32. 勉強面の目標を持てなくて意欲が高まらなかった 17 10 6 5 1.97 40. 大学での勉強が入学する前に想像していたものと違った
のでがっかりした 14 19 3 2 1.82 2.13
表2-16が示す通り、全員の平均点と標準偏差から、協力者間の困難さの認識に大 きな偏りはない。また、表2-17に表れているように、分野ごとの平均点を見ると、
特定の学習スキルに関連したA-D、学習を総合的に見た EとG、人間関係や情意に 関連するFと Hの8 分野の平均点はすべて2 点台で、突出して困難と感じられてい る分野はなかった。
しかし、網掛けを施した項目の中で、質問ごとの回答、また、同じ分野の項目への 回答を詳細に検討すると、いくつかの特徴が捉えられる。まず、勉強の成功について の不安が大きいことが窺える。「試験に失敗して単位を落としてしまうのではないかと いう不安(質問番号29、以下同様)」について「ある」とした回答(「ややあてはまる」
と「あてはまる」の合計)の数は27で、70%を超えている。「試験対策の勉強方法に ついての心配(5)」が「ある」とした回答は24で60%を超え、「修学に失敗する不安
(16)」も「ある」が20で過半数である。一方で、「目標喪失(32)」や「大学への失 望感(40)」を「ある」とした回答は、それぞれ11と5で28.9%と13.2%と少ない。
学部留学生たちは、勉学という目標についてはゆるぎない信念を持っており、それだ けに、失敗への不安を強く感じていることが分かる。
また、日本語使用の適切性についての不安が強い。「口頭発表の原稿作成(4)」の困 難については、「ある」とした回答が21(55.3%)、「日本語による意思疎通の成否(6)」、
「日本語の適切性(12)」に関して困難を報告した回答が22(57.9%)あった。いわゆ る「日常会話」ではなく、学習や研究の活動での日本語使用や教員などに対する礼儀 正しさについて新たな課題を認識していると考えられ、学部留学生たちの意識の高さ が感じられる。
しかし、困難についての認識は、原因の解明に必ずしも繋がっていない可能性が示 唆される。たとえば、講義理解の困難に関して、「専門用語や常識的用語などの知識不
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足(1)」が「ある」とした回答が23(60.5%)あったが、「専門についての基本的知識 の不足(33)」については、逆に、25(65.8%)が「ない」とした。用語の理解の困難 は基礎知識の増強によって改善されると思われ、この両者が関連づけられていないと ころに問題が潜んでいる可能性がある。同様に、「課題図書等の効率的な読解(34)」
には困難が「ある」という回答が 21(55.3%)であるが、この困難に直接関連すると 考えられる、「要点の把握(26)」や「文章全体の把握(18)」については、その困難を
「ある」とした回答はそれぞれ 16(42.1%)と 17(44.7%)でいずれも半数以下である。
すなわち、「時間がかかる」という困難を認識していても、「要点を効率的に把握して いない」、「全体構造を意識していない」といった可能性には思い至っていないように 思われる。さらに、書く技能に関しても、「レポートの構成(19)」について困難を認 識した回答が 23(60.5%)ある一方、「文章の組み立て(3)」や「論理的に書くこと
(27)」の困難については、「ない」とした回答が22(57.9%)であった。勉強方法に関 しても、「予習復習に時間がかかる(15)」という困難を感じている回答は 19(50%)
あるが、「効果的な勉強方法の探索(7)」については23(60.5%)が困難を認識してい ない。このように、困難を認識していても、その原因や関連する要因についての認識 が低い可能性が窺われる。
2番目の質問「留学を成功させるために重要なこと」への回答は、意味の類似した記 述をまとめ、【日本語力の強化】、【人間関係の構築と維持】、【自律的な学習】、【忍耐】、
【規則正しい生活態度】、【前向きな態度】、【自信・自己理解】、【基礎的知識・技能】、
【異文化受容】、【援助の探索】、【情報収集】という11のカテゴリー(【 】で示す)を 得た。言及した人数から回答者全体に占める割合を求めて、協力者の記述例とともに、
表2-18に示した。記述例は、原則として、原文の表現を尊重して個々の回答を示し た。但し、回答者の意図が誤解されるおそれが低いものに限り、「日本語の勉強」や「漢 字」のようにまとめ、言及者数としてカッコ内に重複人数を記した。
表2-18 学部留学生が考える留学成功の要件
言及者数 カテゴリー 記述例 ( )内は重複言及者の数
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(52.6%) 日本語力の強化
日本語の勉強(毎日/しっかり/たくさん/常に)(11)。日本語 の聴解をしっかり練習してください。レポートが気楽に書け るように日本語で文書を書くのを慣れるように努力してい ください。作文能力を育てること。語彙力。漢字(3)(実力 をつける・韓国の漢字をそのまま使わずに日本の漢字の表現 をできる限り多く使うこと・忘れないこと)。どこの誰に対