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ストラテジー研究の発展と学部留学生支援への示唆

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第 2 章 自律的学習能力育成に関連する研究の動向と学部留学生の現状

2.1 自律的学習能力の理解と育成に関する先行研究

2.1.3 ストラテジー研究の発展と学部留学生支援への示唆

「ストラテジー」の知識とこれを行使して課題に取り組むことがメタ認知を活性化 させ「自律性」を向上させるのであれば、適切なストラテジーの知識を学習活動の中 で提示し、それを使用することが必要になる課題を提供すれば、「メタ認知的知識」と

「メタ認知的行動」が循環しながら向上していく過程の開始に繋ぐことができると期 待される。そこで本節では、言語学習研究の中でストラテジーがどのように認識され 研究されてきたかを概観し、学部留学生支援への示唆を得たい。

言語学習におけるストラテジーに関する研究は、とりわけ80年代から90年代にか けて数多くの定義や分類がなされている(Rubin, 1975; Tarone, 1983; Sutter, 1989;

O’Malley & Chamot, 1990; Oxford, 1990; Cohen, 1990)。

Rubin(1975)は、“good language learners” (優れた言語学習者)に共通する特徴 や学習ストラテジーを抽出し、学習ストラテジーへの関心を喚起した。表2-3に示さ れるように、優れた言語学習者は、「自ら進んで、的確に推測する」、「コミュニケーシ ョンへの意欲が強く、実際のコミュニケーションから学ぶ」、誤りやあいまいさなどで

「やる気がそがれない」、「くり返し練習する」、「コミュニケーションへの集中だけで なく、言語の形式にも注意を払う」、「自分自身や他者の発話をモニターする」、「意味 にも注意を払う」などの特徴を持つ。Rubin は、これらを「学習者が知識を得るため に使うテクニックや工夫」として紹介し、言語学習者のストラテジー使用の選択に与 える要因にも触れている。

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表2-3 優れた言語学習者がよく活用する学習ストラテジー

(Rubin, 1975, pp.44-48)

学習ストラテジーの概念を精緻化し、言語学習の分野にストラテジーの意義を広く 知らせることに貢献したのは、オックスフォードによる一連の研究である(Oxford

1989, 1990; オックスフォード, 1994)。オックスフォード(1994)は、教育心理学の

視点から、米国国防省外国語学校(Defense of Language Institute: DLI)で学ぶ兵士 達たちを観察し、言語学習ストラテジーの特徴を表2-4のように提示した。

表2-4 言語学習ストラテジーの特徴 言語学習ストラテジー

1.主要な目標であるコミュニケーション能力を高める 2.学習者をさらに自律させる

3.教師の役割を広げる 4.問題志向である

5.学習者がとる具体的な行動である。

6.単なる認知だけでなく、学習者の持っている多くの側面にかかわる 7.直接的、かつ間接的に学習を助ける

8. 必ずしも常に観察できるものばかりではない 9. しばしば意識的活動である

10. 教えることができる 11.柔軟性がある

12.様々な要因の影響を受ける

(オックスフォード, 1994, p.10 )

上のそれぞれの特徴は、次のように解説されている。

1. 言語学習ストラテジーは、すべてコミュニケーション能力を高めるために用いられ、具 体的な言語活動の中で促進されるものであり、学習者が実際のコミュニケーションに 積極的に参加するときに役立つ。メタ認知ストラテジー(認知を越えている)は、習得 過程で自己の認識力を調整し、自らの進歩を計り、学習計画を立て、正しく評価するの を助ける。情意ストラテジーは、学習者が言語学習に積極的に参加するとき、必要な自 1. The good language learner is a willing and accurate guesser.

2. The good language learner has a strong drive to communicate, or to learn from a communication.

3. The good language learner is often not inhibited.

4. In addition to focusing on communication, the good language learner is prepared to attend to form.

5. The good language learner practices.

6. The good language learner monitors his own and the speech of others.

7. The good language learner attends to meaning.

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信と忍耐を伸ばす。社会的ストラテジーは、学習者同士のインターアクションをさらに 高め、相手に対する理解を伸ばしてくれるもので、コミュニケーション能力の習得に不 可欠である。認知ストラテジー、記憶ストラテジーは、新しい情報を理解し、想起する のに非常に役立ち、学習中のことばを使うほど伸びていく。補償ストラテジーは、学習 者が知識のギャップを克服し、実際のコミュニケーションを続ける際の助けとなる。

2. 言語学習ストラテジーは、学習者の総合的な自律学習を推進する。学習者が自らの学習 に対してより強い責任を持たない限り、新しいストラテジーを教えてもわずかな成果 しか得られない。

3. 伝統的な教師とは別の教師たちは、自分たちを促進者、援助者、ガイド、コンサルタン ト、アドバイザーなどと考えている。新しい教育活動とは、生徒の学習ストラテジーを 明らかにし、学習ストラテジーの訓練を行い、学習者の自律を助けることである。

4. 言語学習ストラテジーは、道具である。解決する問題があり、完成される仕事があり、

出会う対象があり、達成する目標があるから、使用され、その結果、効果的な学習が可 能になる。

5. 言語学習ストラテジーは、学習を高めるための学習者の具体的な行動、あるいは態度で ある。学習スタイル、動機づけ、態度といった学習者が持っている、より一般的な性格 や特性と同一視されてはならない。

6. 言語学習ストラテジーは、外国語の知的処理や操作を扱うといった認知機能に限定され ておらず、計画を立てる、評価する、自分の学習を配置するといったメタ認知機能や情 意機能、社会的機能などを含む。言語学習は、情意的な人間相互間の過程であると同時 に、認知的、メタ認知的活動である。

7. 外国語学習とその使用に直接関与する直接ストラテジーと、間接的ではあるが学習に強 力に関与する間接ストラテジーがあり、直接ストラテジーと間接ストラテジーは相互 に作用し合っている。

8. 言語学習ストラテジーは、必ずしも目に見えるものではない。大切な記憶ストラテジー である知的連鎖を作る操作などはその典型である。ストラテジーの多くは教師の観察 できない教室外の、実際の生活で使われている。

9. 言語学習ストラテジーの使用は、学習をコントロールする学習者による意識的な努力を 反映しているが、ある程度練習すると自動的になる。適切なストラテジーであろうとな かろうとすでに本能的に無意識のうちに使用されている。ストラテジーの評価と訓練 は、使用するストラテジーの意識化と有効性を正しく評価するのに必要である。

10. 学習ストラテジーは、教えることができ、訓練によって変更が可能になる。ストラテ ジー訓練の効果を上げるには、特定のストラテジーがなぜどんな場合に大切か、どう使 うか、新しい状況へどう適用するかを学習者が知るとよい。

11. 言語学習ストラテジーは、常に予測する順序で、あるいは正確なパターンで見いださ れるとは限らないため、柔軟性を必要とする。学習者がストラテジーを選択し、結びつ け、順序立てる方法には個人差が見られる。

12. ストラテジーを選択する際には、意識の度合い、学習の段階、タスクの必要性、教師 の期待、年齢、性別、国籍/民族、学習スタイル、個性、動機づけのレベル、言語学習 の目的などの要素が決定に関与する。より意識的に取り組んでいる上級の学習者や動 機づけの強い学習者の方がストラテジーの使い方が上手で、適切なストラテジーを使 う範囲が広い。一般的な学習スタイル、タスクの必要性、教え方やテスト方法にあらわ れる教師の期待などもストラテジーの選択に影響する。

(オックスフォード, 1994, pp.9-15を筆者がまとめた)

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オックスフォード(前掲)は、言語学習の本質を情意的な人間相互間の過程である と同時に、認知的、メタ認知的活動と捉え、ストラテジーは、言語学習に直接的、間接 的に関与し、相互に作用し合っているとして、「直接ストラテジー」と「間接ストラテ ジー」という二分類に基づいた体系化を行った(資料1-資料4参照)。前者に「認知 ストラテジー」、「記憶ストラテジー」、「補償ストラテジー」を、後者に「メタ認知スト ラテジー」、「情意ストラテジー」、「社会的ストラテジー」を位置づけた。すなわち、言 語学習ストラテジーが、言語処理や操作に関わる認知機能だけでなく、学習全体に関 わるメタ認知機能や情意機能、社会的機能を持つことが明示されている。

O’ Malley & Chamot(1990)は、学習ストラテジーとは「宣言的知識と手続き的知 識」(Anderson, 1983)のうちの後者であるとし、「メタ認知ストラテジー」と「認知 ストラテジー」と「社会的・情意ストラテジー」という 3つのグループに分類してい

る(表2-5)。

表2-5 学習ストラテジーの予備的分類

(O’Malley & Chamot, 1990, p.46を部分的に抜粋して筆者が翻訳)

O’ Malley & Chamot (上掲)は、彼らが行ったストラテジー研究が教育現場での

実際の指導に応用しにくいという指摘に対応すべく、ストラテジーの具体的な指導法 を 考 案 し て 実 証 的 な 研 究 を 進 めた 。そ れ は 、CALLA:The Cognitive Academic Language Learning Approach(Chamot & O’ Malley, 1994)とMetacognitive Model

(Chamot & O’ Malley , 1999)という指導法で、JACET 学習ストラテジー研究会

(2005)が詳しく解説している。その概要を表2-6、表2-7に示した。

包括的ストラテジー分類 代表的なストラテジー

メタ認知ストラテジー 注意を向ける、 プランニング、モニタリング、自己評価 する

認知ストラテジー リハーサル、 組織化する、 推測する、要約する、 ルー ルを当てはめる、イメージする

社会的・情意ストラテジー 協力する、 質問して情報を引き出す、 自分に言い聞か せる

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