第 3 章 開発した日本語コースとその実施結果
3.2 実施結果
3.2.4 第Ⅳ期(2017 年度後期)の実践の概要
第Ⅳ期の受講生は、1年生(1名)と3 年生(1名:3年次編入学)の学部留学生、
交換留学生(2名)、研究生(5名)、大学院生(1名)で、非漢字圏出身1名と漢字 圏出身9名、計10名が受講した。
(2) シラバスの設計及び調整
第Ⅳ期は、初年次もしくは初年次相当の受講者や N1 合格者であっても日本語の文 章構成に問題を感じているという受講者に対応するため、読解活動の発展としてスト ラテジーの意識的利用と書く活動を組み入れた課題を課外に課すこと、レポートの推 敲のプロセスをクラスで共有することなどに留意し、レポート作成に伴う負担の軽減 を図った。また、第Ⅳ期は、「日本事情」のクオーター科目化に伴い、1クオーターに つき8週の授業を行うようになり、第3クオーターと第4クオーターで合計16週行っ た。詳細は、表3-22の通りである。
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表3-22 第Ⅳ期(2017年度後期)の学習活動 週 主な活動内容(第3クオーター)
1 オリエンテーション ・授業の進め方の概要、学習ストラテジーとリフレクション・
ノートについての説明を聞き、学習目標・自己評価表を書く。
2 ジャンルの特徴の 理解
・文章のジャンルを類別して文章の書かれ方の違いに着目し、
ジャンルごとの特徴について話し合う。(資料32)
3 題名の役割の理解 ・課題文の内容を確認し合い、「キーワードを見つける」スト ラテジーを使って、課題文につける題名について話し合う。
4 文章構造の把握(1)
・「予測する」「文章の構造を考える(論点表示文に見つける)」
ストラテジーを使って課題文を読み、内容について話し合 う。※課題プリント(資料33)
5 文章構造の把握(2)
・「予測する」「予測や推測を確かめる(結論表示文を見つけ る)」ストラテジーを使って課題文を読み、内容について話 し合う。※課題プリント(資料34)
6 文章構造の把握(3) 要約の方法の理解
・「結論表示文を見つける」「文章構造をとらえる」ストラテ ジーを使って課題文を読み直し、文章の構造を確認する。
・「中心文を見つける」ストラテジーを使い、要約課題を確認 する。
※課外:自分のストラテジー使用について調査する。(資料35)
7 筆者の立場の把握 ・「譲歩・逆接の表現に注目する」ストラテジーを使って課題 文を読み、内容について話し合う。
8 コースのまとめ ・まとめの読解活動を行う(内容の解読・使ったLSの報告)。
・期末アンケートに答える。
週 主な活動内容(第4クオーター)
1 オリエンテーション 次時準備(読解)
・授業の進め方の概要、学習ストラテジーとリフレクション・
ノートについての説明を聞き、学習目標・自己評価表を書く。
・「隠れたカリキュラム」を読む。
2 課 題 解 決 学 習
Ⅰ
資 料 の 内 容 把 握・課題の意識 化と答えの予測
(課題設定)
・課題解決学習Ⅰ(隠れたカリキュラム)の計画を確認する。
・「隠れたカリキュラム」を読み、内容を理解する。
・読み取った内容について話し合い、課題を想定する。
3 課題の答えの追 究(課題解決)
・「隠れたカリキュラム」の文章構造を確認する。(資料36)
・自分の課題を決め、インタビュー計画を立てる。
4 自己の考えの提 示(まとめ)
・インタビュー結果を報告し合い、自分の考えを整理する。
・自分の考えの述べ方を検討し、レポートの構成を決める。
5 課 題 解 決 学 習
Ⅱ
資 料 の 内 容 把 握・課題の意識 化・課題の答え の予測
(課題設定)
・課題解決学習Ⅱ(子どもの育て方:ほめるか、叱るか)の活 動予定を確認する。
・「問題点・矛盾点を見つける」「比較する」ストラテジーを 使ってグラフ資料の内容を読み取る。
・読み取った内容について話し合い、課題を想定する。
・インタビューの計画を立てる。
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課題の答えの追 究・二次資料の 内容把握
(課題解決)
・インタビューの結果を報告して意見交換し、課題を決める。
・二次資料「ほめられると子どもは伸びない」を読み、内容を 解読し、課題に対する自分の考えを整理する。(全員の課題 は、第1節と第4節。第2節、第3節は自由選択とした)。
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課題の答えの追 究・引用表現の 理解(課題解決)
・二次資料「ほめられると子どもは伸びない」を解読し、自分 の主張の根拠として利用したい箇所を資料から選ぶ。
・引用の表現や方法を確かめ、引用の練習をする。
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自己の考えの提 示・レポートの 構成、表現の検 討(まとめ)
・クラスの仲間が書いたレポートを教材として構造を見直す。
・レポートを皆で推敲して、レポートに必要な接続表現や書き 言葉について確認し、自分の考えの述べ方を検討して構成を 決める。(資料37)(資料38)(資料39)(資料40)
<教材作成の参考とした素材>
日本語教育教材
・佐々木仁子・松本紀子(2010)『日本語総まとめN2読解』アスク出版
・鎌田美千子・仁科浩美(2014)『アカデミック・ライティングのためのパラフレーズ演 習』スリーエーネットワーク
・大島弥生・池田玲子・大場理恵子・加納なおみ・高橋淑郎・岩田夏穂(2005)『ピアで 学ぶ大学生の日本語表現―プロセス重視のレポート作成―』ひつじ書房
・一橋大学留学生センター(2005)『留学生のためのストラテジーを使って学ぶ文章の読 み方』スリーエーネットワーク
一般書・インターネット記事
・苅谷剛彦(2009)「隠れたカリキュラム」岩間輝生・太田瑞穂・坂口浩一・関口隆一(編)
『高校生のための現代思想ベーシック ちくま評論入門』筑摩書房, 38-49
・Po Bronson and Ashley Merryman. (2009) NurtureShock New Thinking About
Children. 小松淳子訳(2011)「ほめられる子どもは伸びない」『間違いだらけの子育
て―子育ての常識を変える10の最新ルール』インターシフト, 18-38
・「子育てとお手伝いに関する小学生母子の意識調査-毎日褒められている子どもは「友 達が多い」!?」(株)ライオン. www.lion.co.jp/ja/company/press/2014/.../2014063.pdf
(3) 第Ⅳ期の活動例と学習者の反応
第Ⅳ期に行った活動の中で、まず、第3 クオーターの第 4 週から第 6週で課した課 題を取り上げる。次に、レポートの推敲に必要な構成と表現に関する知識の獲得を目 指した第4 クオーターの第 8 週を取り上げ、この経験が次のレポートにどのように影 響を及ぼしたかをそれぞれの学習者の成果物で見る。
第3クオーターの第4週から第6週では、「論点表示文を見つける」、「予測する・
予測を確かめる」というストラテジーを使ったり、「二項対立文の読解」を行ったり して、授業で意識的利用を試みたストラテジーを日本語クラス以外でも利用するよう に促し、課題文のテーマについて短い意見文を書く課題(資料33)(資料34)を課し て、意見文の構成にも注意を向けるようフィードバックした。終了時アンケートで、
コースでよかったこととして、「いろいろな文章を読んで、<自分の考えと文章の要約 を書く>という宿題がいっぱいあるので、だんだん長い文章が書ける」、「N1の試験 を受けるので、読解にとても役に立つ」などの回答が見られた。
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第4クオーターの第8週の授業で 表3-23 学習者12の課題解決学習Ⅰのレポート は、本人の承諾を得て、クラスのメ
ンバー(以下、学習者12とする)
の課題解決学習Ⅰのまとめレポート
(表3-23:資料38)を教材として
使用した。 はじめに、レポートのよ い点を見つけ合い、さらにいいレポ ートにするために必要なことを話し 合った。その中で明らかになった問 題点を解決するために必要なストラ テジーについて考える時間を設けた。
「文章構造を考える」、「論点表示 文/結論表示文を繋ぐ」、「接続詞 を使い分ける」、「書き言葉を使う」
などのストラテジーを想定し、学習
者が気がつかない場合は、教員から 表3-24 第8週使用ワークシート 提示した。
まず、レポートの序論、本論、結 論の構成に注目して、一貫性が確保 されているかを話し合い、推敲の観 点を確認した。その後、構成の検討 のために教員が作成したワークシー
ト(資料39)を使って、クラスで話し
合いを進めながらレポートの構成に ついて推敲した。このシートは、AJ としての日本語能力がまだ不十分な 学部留学生同士の推敲活動は難しい
と考え、部分的に教員が修正を加え たモデルを示して作成している。序
論では、課題(論点表示文)への注
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意を促した。本論では、日本人へのインタビュー結果と考察の混同が見られたため、
各国の人へのインタビュー結果を接続表現で整理し、結論に繋ぐ方法を話し合った。
同時に、結論が論点表示文の答えになっているかを検討した。
次に、レポートで必要となる書き言葉に注目し、学習者12の原稿をもとに、教員が 作成したワークシート(表3-24:資料40)を使って、推敲活動を行った。表内のゴ シック体太字は、教員が訂正して提示したものである。下線部分 は、 学習者同士 で訂正する活動に組み入れ、クラス全体で確認した。授業の最後に、授業で使用した ものと同型式のレポートのアウトライン作成メモシート(資料 37)を全員に配布し、
レポート作成に利用するよう助言した。
授業を終えて、学習者12自身は、「やはり、『書き言葉』と『である体』のところ は注意しなければならない」と内省していた。他の学習者からは、「たくさんいい『レ ポート向け言葉』を学んで、4年生のときに役に立てる。これから、レポートのカイゼ ンを進めようと思う」、「学習者12さんが書いたレポートと先生が修正したバージョ ンがとても役に立ちます。それらの資料を参考にしながら自分のレポートを書きたい」
などの内省が見られた。また、「中国語と英語の形式面は全然違いますが、内容の構成 は大体同じです。今度レポートを書く時、言葉の使い方はもっと注目したほうがいい です」と、自分が使う言語と対照して内省する学習者も見られた。
この活動の経験が 2回目のまとめのレポートに影響を及ぼしたかをそれぞれの学習 者の成果物で見てみる。表3-25から表3-28は、2回目の課題解決学習のレポート である。
表3-25 課題解決学習のまとめレポート例8
「褒める教育」
―インタビュー調査に基づいて― 学習者12(交換留学生)
1.はじめに
子供の教育について、人々はそれぞれ違った考えを持っている、そして、こういう話に すると、必ずと言ってもいいほど出てくるのが「褒める教育」と「叱る教育」。子供は褒 められると、やる気が出す、上手く褒めてあげれば伸びていきます。でも、単に褒めるだ けだと、子どもはわがままになるかもしれない。一方、子どもを𠮟るとは、教育目的を達 成することができるけど、叱ってばかりいる教育では、子どもの自主性がなくなる。
一言で言えば、「褒めること」と「叱ること」両者ともメリットとデメリットがある。
周りの人たちは、褒める教育をどう思うのだろうか、筆者が知りたいだ。そのために、今 回のインタビュー調査をした。本レポートの目的は、褒める教育に関する意識とインタビ ューの結果を報告したい。