第 4 章 メタ認知の活性化を目指す活動の効果検証
4.1 コース実施中の学習者の認識と行動へのメタ認知活性化活動の影響
4.1.2 結果及び考察
(1) 学習者の内省文から得られたカテゴリーとその具体例
4期間の内省文から抽出した「ストラテジー」と「自己の学習状況」について触れた 部分を分類した結果、「学習ストラテジーについて」5つ、「自分の学習について」4つ のカテゴリーが得られた。それぞれのカテゴリーとその定義を表4-2に示した。
表4-2 内省文から得られたカテゴリーとその定義
Ⅰ 学習ストラテジーについて
カテゴリー 定 義
①学習ス トラテジ ーの
知識 授業で提示した学習ストラテジーがどんな方略か知ること
②学習ス トラテジ ー使
用の困難 授業で提示した学習ストラテジーを使う難しさを認識すること
③学習ス トラテジ ーの
有用性 授業で提示した学習ストラテジーの有用性を認識すること
④学習ス トラテジ ーの 機能の理解の精緻化
授業で提示した学習ストラテジーの具体的な機能についての理 解を深めること
⑤学習ス トラテジ ーの 使用の認識の拡大
授業で提示した学習ストラテジーを他の状況で使用した経験を ふり返り、使用可能性の認識を広げること
Ⅱ 自分の学習について
⑥現状認識 不完全な点も含めて自分の学習の状況をとらえること
⑦現状認識への評価 自分の不完全な点も含めて自分の進捗状況を素直にとらえ、必要 な方法を考えること
⑧目標設定 自分の目標を設定して学習に主体的に取り組むこと
⑨自信や進歩の実感 自分の能力の向上した証を得て、自信や成長を実感したこと
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上の 9 つのカテゴリーに含まれる具体例の一部を以下に示した。内省文の冒頭の番 号は授業実施年度と週を、A~Pの記号は学習者を表す(例:「1402A」は2014年度第 2週目の学習者Aの内省文)。但し、2017年度はクオーター科目化に伴い、第3クオー ターと第 4 クオーターで授業が実施されたため表示方法が一部異なる(例:「1732M」
は2017年度第3クオーター第2週目の学習者Mの内省文、「1742N」は2017年度第 4クオーター第2週目の学習者Nの内省文)。分類に該当すると思われる箇所に下線を 施した。各カテゴリー(【 】)の具体例として本文中に学習者の内省文の記述を引用す る場合は、「 」を付け、内省文の冒頭の番号と記号を付して示した。
Ⅰ 学習ストラテジーについて
①【学習ストラテジーの知識】
このカテゴリーには、学習者が学習ストラテジーについての知識を獲得したことを 示す記述を含めた。具体例を以下に示した。
1408Bある文章を要約する時、大事なポイントを書いて、短く文章を書くことができる。そ
して、要約するとき、そのまま、文をコピーしないで自分のことばで書いた方がいい。
1502F今日はいろいろな文章をざっと読んでグループに分けました。キーワードとか文章の
特徴から見るだけで文章の種類が分かると学びました。
1504F 人によって題名を作る考え方が違うと気づきました。そして、タイトルは内容の一部
であることについても、文章と同じ単語に限らないと分かります。
1603K 今回の文章全体で何が問題になっているかを着目して、文章の構造を考える上で話題
を分かるようになる。
1610K 今日のストラテジーは、構成を考えて論理の一貫性を考えることである。課題の結果
を解釈して考察でまとめるということが重視しなければならないと分かった。
具体例から、学習者が、要約や読解に必要なストラテジーについての宣言的知識を 獲得したことが観察された。「要約」の手順についての知識、「キーワード」や「タイト ル」、「序論・本論・結論」という文章の構造や「問題提起文」や「接続的表現」などに ついての知識、「論理の一貫性」というストラテジーについての知識などである。
②【学習ストラテジー使用の困難】
このカテゴリーには、ストラテジーの知識を得ても、実際に自分が使うのはまだ難 しいと認識したことを示す記述を含めた。
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1407E主題文だけ読めば全体的に文章の意味が理解できると分かった。だが、「手で数を表す」
文章を読んだとき、本論の第2と第3段落の主題文を読むだけでは意味が分からない。
なぜなら、ことば自体がむずかしいからだ。
1609L インタビューをやる前に課題を決めて、ブレイクダウンすることも大事。でも、ブレ
イクダウンすることは難しいであるが、予測してから、少しずつブレイクダウンする ことができると気がつける。
1610J レポートを論理的に書くストラテジーを使えば、一貫性がある文章を書けると思いま
す。でも、結果と自分の考察について、ちょっと難しいので、今まで考えていなかった ことです。次のレポートで使ってみたいです。
1736N予測するということを小説や文章に使ったことがないです。今日は2つの文章にク
ラスメートと一緒に使ったんですが、まだ、なれていないです。
1737O私にとって、このような方法(筆者注:要約するストラテジー)はあまり使えませ
ん。ちょっと複雑なので、この方法はすべてを理解することができません。
これらの記述には、困難を認識しつつも、それによって意気阻喪するのではなく、
困難の理由や解決の方法を考え、使ってみようという意欲を示したことが表れている。
「ちょっとむずかしい」(1610J)、「まだ、なれていない」(1736N)、「私にとって(中 略)あまり使えません」(1737O)などの困難に対して、「ことば自体がむずかしいか らだ」(1407E)、「今まで考えたことがない」(1610J)、「ちょっと複雑なので」(1737O)
など自分なりに理由を分析したり、「少しずつブレイクダウンすることができる」
(1609L)、「次のレポートで使ってみたい」(1610J)など、練習を想定したり使用す ることに関心を示したりしたことが窺われた。
③【学習ストラテジーの有用性の認識】
このカテゴリーには、授業で提示した学習ストラテジーの有用性を認識したことを 示す記述を含めた。
1407C今週の文章ストラテジーは主題文をさがしてから文章を分かるようになる。それとも
(筆者注:あるいは)、接続詞もさがせば文章の流れももっと分かる。私はこのスト ラテジーあまり使っていないが、何か使えば読書の効率がよくなると思う。
1412Dやっぱり人の意見を聞いたことでテーマが絞れたので、人と相談するのが一番いいリ
ソースだと思う。このように、人と相談するという勉強のしかたはいいと思う。
1603L読解のストラテジーのことから、キーワードを見つけやすい。文章の構造を分けて筆
者が言いたいことが分かりやすくなる。問題点やその解決する文を見つけやすいと考 えられる。
1607Lみんなから発表した結果から、人々にとって違う考えだった。信じている人と信じて
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いない人の理由もはっきり分かるようになった。周りの人の意見を聞いてみたらその 人の考えが分かって、人間的に良いと思う。
1615I今回の授業でレポートのストラテジーがよく理解できました。特に、レポートの構成
の部分を考えるとき、図で書きながら考えるとレポートがよく書けると感じました。
1736M今日のクラスは「予測する」「予測や推測を確かめる」のストラテジーを学びまし
た。このストラテジーは実は本当に役に立てると思ます。なぜならば、文章を理解ス ピードが速い。
1737M今日のクラスは要約するというストラテジーを学びました。これが、一般に使われる
わざと思って、勉強だけでなく仕事にも使うときもあると思います。
1743N文章の構造をはっきり分かったら、作者の意図、文章への理解もしやすくなるだけで
なく、自分が評論文を書くときにも役立ちます。
上の具体例から、ストラテジーの手続き的知識が有用性の認識に繋がり、有用性の 認識のレベル、ストラテジーの種類、他の技能での想定などにおいて、有用性が多様 に認識されたことが観察された。ストラテジーの利用により、「よく書ける」(1615I)、
「分かりやすくなる」(1603L)だけでなく、「効率がよくなる」(1407C)、「スピード が速い」(1736M)という効率性への注目、「人と相談するという勉強のしかたはいい」
(1412D)、「周りの人の意見を聞いてみたらその人の考えが分かって、人間的に良い」
など社会的ストラテジーのよさへの気づき、「自分が評論文を書くときにも役立ちます」
(1743N)、「勉強だけでなく仕事にも使うときもある」(1737M)などの他の技能や場 面での使用の想定など、多様な点から有効と感じたことが推察される。
④【学習ストラテジーの機能の理解の精緻化】
このカテゴリーには、授業で提示した学習ストラテジーの機能についての理解を深 めていったことを示す記述を含めた。
1410D テキストが長くてたて書きだったので自分にとっては読みにくかった。そこで、読解
プロセスを制御するための読解ストラテジーをよく使った。例えば、1-1-3の1-1読む 速度を調節するとか、1-1-9の指を使って読んでいるところをなぞるというストラテジ ー。
1410E 手話はやっぱり面白い。文章を読むストラテジーとして、まずタイトルを読んだとた
ん、自問自答をしてみた。そして、文章を読む時に、主題文と例題文を区別しながら、
線を引く。最後に、主題文から箇条書きしたり、要約したりした。
1604K 今日のストラテジーは、予測や推測を確かめる方法で、結論表示文を見つけると問題
を解決できると思う。タイトルによって、予測してきた内容が違っていたが、これから