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解答

ドキュメント内 生物資源の基礎数学教材 (ページ 136-142)

答684 略。ヒント: 行列H の固有値と固有ベクトルを 求めればよい(やり方がわからない人は数学リメディア ル教材を復習せよ)。固有ベクトルは,例えば代表的に

[1 1 ]

, [ 1

−1 ]

(27.67) のように求まる。これらはいずれもノルムが√

2である ので,これらを√

2で割ればノルムが1になる。

答 685 EA < EB だから, 前問より, EA = E0−ϵ, EB =E0+ϵである。式(27.37)において,E=EAと E =EBをそれぞれ考えると,与式を得る(これは状態 ベクトルを数ベクトルに同一視していたものを, もとも との表記に書きなおしただけである)。

答686 略。ヒント: 式(27.48)と式(27.49) の内積を とって,それが0になることを言えばよい。

答687略。ヒント: 線型同次微分方程式の定義に戻って 考えれば簡単。

答688 式(27.55)を式(27.54)に代入し, 両辺をϕχで 割ると,

− ℏ2 2mϕ

(∂2ϕ

∂x2 +∂2ϕ

∂y2 +∂2ϕ

∂z2

)+V(x, y, z) = iℏ χ

∂χ

∂t となる。この左辺は(x, y, z)のみに,右辺はtのみに依 存する式なので, それらが等しくなるには, それらが同 じ定数Eに等しい状況に限る。従って,

− ℏ2 2mϕ

(∂2ϕ

∂x2 +∂2ϕ

∂y2 +∂2ϕ

∂z2

)+V(x, y, z) =E iℏ

χ

∂χ

∂t =E

この第1式の両辺にϕをかけ, 第2式の両辺にχをか ければ, 与式を得る。なお, χは1変数関数なので,tに よる偏微分は通常の微分として扱って構わない。

答689略(常微分方程式の普通の変数分離法で解けばよ い)

答690略(代入して式が成立することを示せばよい)。

一問一答

• 今までで一番ぼんやりとした章でした・・・。です が, 分子軌道法のところで, 結合性軌道と反結合性 軌道が現れるということを, 数学的に表すことがで きたので,感動しました。

... 行列の固有値・固有ベクトルを求める, ということ に尽きるのです。2つの原子が近づいてできる電子軌道

(の状態ベクトル)を, 各原子が孤立している場合の電 子軌道(の状態ベクトル)の線型結合で表す。それがハ ミルトニアン行列の固有ベクトルになるようにしてやれ ば, 定常状態が得られる。それが結合性軌道と反結合性 軌道なのです。

129

第 28

線型代数 6: 行列式

行列式は,正方行列の成分に関する,ある種の多項式である。

これは,数ベクトルが張る図形(平行四辺形や平行六面体)の 大きさ(面積や体積)を表したり,空間の「向き」を定義付けた り,数ベクトルの線型独立性を評価することなどに威力を発揮 する,非常に強力で基本的な概念である。後の章で学ぶ,多変 数の積分(ヤコビアン)や,量子力学でも重要な役割を演じる。

28.1 2 次の行列式と面積

我々が日常的な意味で言うところの2次元平面や3次 元空間をユークリッド空間という。いま, 2次元ユーク リッド空間(平面)上の任意の2つの幾何ベクトルa,b を考える。まず, 平面に何らかの正規直交基底{e1,e2} を選び出し,その線型結合によってa,bを表す:

a=a1e1+a2e2 (28.1)

b=b1e1+b2e2 (28.2)

a1, a2, b1, b2はそれぞれ適当な実数である。これらの右 辺に現れた係数をそれぞれ列ベクトルに書き換えて,

a= [a1

a2

]

(28.3) b=

[b1

b2

]

(28.4) と表す*1。式 (28.3) は数ベクトルだ が, 同時に, 式

(28.1) のような幾何ベクトルでもある, と解釈するの

だ(幾何ベクトルと数ベクトルの同一視)。このように, 正規直交基底を用いて幾何ベクトルを列ベクトル(R2 の要素)で表すことを,正規直交座標とか,xy座標とか, デカルト座標という。このとき, 当然ながら

e1= 1e1+ 0e2 (28.5)

e2= 0e1+ 1e2 (28.6)

*1行ベクトルではなく列ベクトルで書いたことには,特段の理由 はない。いずれわかるが,そのほうが見やすい・書きやすいか らである。

なので, e1=

[1 0 ]

, e2= [0

1 ]

(28.7) である。なんか当たり前のことをもったいぶってやって いるように見えるかもしれないが, 幾何ベクトルを座標 であらわすには, 論理的にはこのような手続きが必要な のである。高校数学では幾何ベクトルをすぐに座標で書 いていたが, あれはここで述べている手続きを省略して いるのだ。

さて,a,bが張る平行四辺形の面積を,S(a,b)としよ う*2。すると,数学リメディアル教材で習ったように,

S(a,b) =a1b2−a2b1 (28.8) となるはずだが(これに絶対値がつかなきゃおかしいの だが,今はあえて絶対値を外して考える),なぜそうなる のだろうか? 数学リメディアル教材では, 座標平面上の 平行四辺形について解析幾何学的*3な観点から式(28.8) を導いた。ここでは, S(a,b)が満たすべき代数的な性 質を調べ, そこから式(28.8)を導いてみよう。

まず,片方の辺が長さ0ならば平行四辺形はできない

(面積ゼロになる)から,任意の幾何ベクトルaについて S(a,0) =S(0,a) = 0 (28.9) である。また,同じベクトルが2辺となったら平行四辺 形はつぶれてしまう(面積ゼロになる)から,

S(a,a) = 0 (28.10)

である。さて,図28.1のように幾何学的に考えれば, 任 意の正の実数pについて,

S(pa,b) =pS(a,b) (28.11)

S(a, pb) =pS(a,b) (28.12)

*2すぐ後で,この定義は微妙に修正される。

*3図形や立体を座標平面や座標空間の点や辺,面の集まりとみな して,それぞれを方程式で表して互いの位置関係や大きさを調 べる数学を,解析幾何学という。

となることがわかる(片方の辺が何倍かになれば, 面積 も何倍かになる)。

図28.1 平行四辺形の片方の辺がp倍になれば面積も p倍になる。

また,図28.2のように幾何学的に考えれば,平面の幾 何ベクトルcについて,

S(a+c,b) =S(a,b) +S(c,b) (28.13) となることがわかる。式(28.13)においてcを−aと置

図28.2 1辺が2つのベクトルの和で作られる平行四

辺形の面積(左)は, 1辺が各ベクトルである2つの平 行四辺形(右)の面積の和と等しい。

き換えれば, S(

a+ (−a),b)

=S(a,b) +S(−a,b) (28.14) であり,一方, 式(28.9)によって,次式が成り立つ:

S(

a+ (−a),b)

=S(0,b) = 0 (28.15) 式(28.14),式(28.15)より,S(a,b) +S(−a,b) = 0と なる。従って,

S(−a,b) =−S(a,b) (28.16) である... ちょっと待て! 式(28.16)によると,S(−a,b) とS(a,b)は符号が違う。ということは,「両方が零」で ない限りは, どちらかが負の値をとることになる。これ は変だ。S(−a,b)もS(a,b)も, それぞれ, 2つのベク トルが張る平行四辺形の面積であると定義した以上, そ の値は必ず0以上であるはずで,負になることはありえ ない! という疑問が諸君の心に生じるだろう。

それはそうなのだが, ここではこのまま押し通してし まう。つまり,S(a,b)に負の値の存在を許容するのだ。

つまり,S(a,b)はただの面積ではなく,「符号つきの面 積」であり, その絶対値は面積を表すものの, その符号 は場合に応じて正になったり負になったりすることもあ る,と約束するのだ。すると,式(28.16)のような式の成 立が許容される。このように, 数学では, 「都合が悪く なったら定義を修正・拡大する」ということがしばしば 行われる。人為的な定義が数学の自然な構造とうまく噛 み合わなければ,定義がまずいのだと考えるのだ。

● 問691 (28.13)と同様に考えれば,

S(a,b+c) =S(a,b) +S(a,c) (28.17) が成り立つ。そのことから,次式を示せ:

S(a,−b) =−S(a,b) (28.18)

式(28.16),式(28.18)より,式(28.11),式(28.12)は, 任意の実数pについて(0< pに限定しなくても)成り 立つ。式(28.11),式(28.12), 式(28.13), 式(28.17)か ら,S(a,b)は,aとbのそれぞれについて線型写像であ る。いわば「二重線型写像」と言えよう。

一方,幾何学的に考えれば,|S(a,b)|=|S(b,a)|であ る。従って,

S(a,b) =±S(b,a) (28.19) である。この右辺の符号は,正負のどちらだろうか? そ れを知るために,以下の式を考えよう:

S(a,a) +S(b,a) +S(a,b) +S(b,b) (28.20) これは,式(28.13),式(28.17)を適宜用いると,

={S(a,a) +S(b,a)}+{S(a,b) +S(b,b)}

=S(a+b,a) +S(a+b,b)

=S(a+b,a+b) (28.21)

となる。式(28.10)より, 式(28.21)は0である。従っ て,式(28.20)は0である:

S(a,a) +S(b,a) +S(a,b) +S(b,b) = 0 (28.22) ところが, 式(28.10)より,S(a,a) = S(b,b) = 0だか ら,式(28.22)はS(b,a) +S(a,b) = 0となる。従って,

S(b,a) =−S(a,b) (28.23)

28.1 2次の行列式と面積 131 である。つまり, 2つのベクトルを入れ替えると,符号が

変わるのだ。

● 問692 (28.10)(28.11)(28.12)(28.13)(28.17)(28.23) は, S(a,b) の重要な性質である。これらを使って式 (28.8)を導こう。なお,{e1,e2}は正規直交基底であり, a,bは式(28.1),式(28.2)で定義する。

(1) 次式を示せ:

S(e1,e1) =S(e2,e2) = 0 (28.24) (2) 次式を示せ:

S(a,b) =a1S(e1,b) +a2S(e2,b) (3) 次式を示せ:

S(a,b) =a1b2S(e1,e2) +a2b1S(e2,e1) (4) 次式を示せ:

S(a,b) = (a1b2−a2b1)S(e1,e2) (28.25) (5) e1とe2が張る平行四辺形は,一辺の長さが1の正 方形だから,面積は1である。そこでS(e1,e2) = 1 と定めよう。すると,

S(a,b) =a1b2−a2b1 (28.26) となることを示せ。

(6) S(a,b)は,a,bをそれぞれ列ベクトルとして並べて できる2次正方行列の行列式に等しいことを示せ。

(7) S(a,b)は,a,bをそれぞれ行ベクトルとして並べて できる2次正方行列の行列式に等しいことを示せ。

S(a,b),すなわち, 2次正方行列の行列式は,平面図形 の面積を求めるときに非常に有用な道具である。直線で 構成された多角形なら, どんなものでも, 適当に分割す れば3角形の集合に帰着される*4ので, 個々の3角形の 面積を

S(a,b)

2 (28.27)

で求めて合計すれば, その多角形の面積が求まる(a, b は3角形を構成する2本の辺に沿ったベクトルである)。

そう聞くと諸君は,「なら別にS(a,b)でなくても,高

*4曲線で構成された図形も,頂点の間隔を十分に小さくとれば, 線で構成される多角形で近似でき, 3角形の集合に帰着される。

校で習った, 1 2

√|a|2|b|2−(a•b)2 (28.28) という式を使ってもいいじゃないか?」と思うだろう。

実際,多くの学生は,式(28.27)よりも,受験勉強で慣れ 親しんだ式(28.28)を使いたがる。ところが,式(28.27) の方が,圧倒的に便利なのだ。なぜか? まず,式(28.27) の方が計算が楽である。

a= (a1, a2), b= (b1, b2)

とすれば, 式(28.27),式(28.28)はそれぞれ, a1b2−a2b1

2 (28.29)

√(a21+a22)(b21+b22)−(a1b1+a2b2)2

2 (28.30)

となる。明らかに前者の方がシンプルで, 計算量は少 ない。

しかし, 行列式を使う方法(式(28.27)や式(28.29)) には,もっと本質的な長所がある。それは「符号がある」

ということだ。以下の例に示すように, 符号のおかげで, 複雑な図形の面積の計算が自動的になるのだ。

例28.1 28.3のような平面図形ABCDEFGの面積 を求めてみよう。各頂点の座標は以下の通りである: A: (4,1)

B: (1,5) C: (−3,0) D: (1,2) E: (0,−1) F: (−4,−2) G: (2,−4)

このような7角形を3角形に分割するにはいろんな やりかたがある。例えば,線分BD,線分AD,線分AE, 線分EGでこの図形を3角形に分割し,各三角形の面積 を式(28.29)または式(28.30)で求めれば,

△DAB = 4.5

△DBC = 6

△DAE = 5

△EAG = 8

△EGF = 7

となり,これを合計すれば, 30.5となる。 ■ ところが, こういう方法が通用するのは, 図形がシン

-4 -3 -2 -1 1 2 3 4

-4 -3 -2 -1 1 2 3 4

A B

C

D

F E

G

O x

y

図28.3 平面図形の面積を求める。

プルで, 分割が簡単にできるときだけである。頂点が数 100個にもなるような複雑な多角形を相手にする場合 は, どのように分割すればよいか, 戸惑うだろう。シン プルな図形であっても, その数が大量になると計算機に 自動的に処理させたくなる。そういうときには, 人の目 で見て分割するという作業はできるだけ避けたい。

そういう願いを叶えてくれる方法を,次の例で示す:

例28.2 まず, AからGまで順に並んでいる頂点に対 して, 隣接する2頂点と原点Oでできる3角形を考え, その「符号付き面積」を式(28.29)で計算する:

△OAB = 4·5−1·1

2 =19

2

△OBC = 1·0−5·(−3)

2 =15

2

△OCD = −3·2−0·1

2 =−6

2

△ODE = 1·(−1)−2·0

2 =−1

2

△OEF = 0·(−2)−(−1)·(−4)

2 =−4

2

△OFG = −4·(−4)−(−2)·2

2 = 20

2

△OGA = 2·1−(−4)·4

2 = 18

2

マイナスの面積も現れてしまったが, 気にしないで(符 号はそのままにして)これらを合計してしまおう:

19 2 +15

2 −6 2 −1

2−4 2+20

2 +18

2 = 30.5 (28.31) 例28.1で求めた結果と同じ値が出てくるではないか! ■

例28.2の計算過程を振り返ってみると,「符号付き面 積」が負の値になったのは,△OCD,△ODE,△OEFで あった。これらの3角形は,原点Oから順に頂点をたど ると時計回りに回る。だから符号が負になるのだ。他の 3角形は,頂点が反時計回りの順に並んでいるので,「符 号付き面積」は正である。図形が入り組んでいるところ

(この場合はC, D, E, Fのあたり)は,この正の面積と 負の面積が, ちょうどうまく余分な部分を打ち消しあっ て, 対象とする図形の内側の部分だけをうまくカウント するのだ。

一般に, 2次元平面上のn個の点

Pk = (xk, yk) (28.32)

(ただし, k= 1,2,3,· · ·, n, n+ 1とし, Pn+1=P1とす る)で反時計回りに順に並んだ点で囲まれるn角形の面 積Sは,

S=

n

k=1

xkyk+1−xk+1yk

2 (28.33)

となる。あえて証明はしないが,例28.2を振り返ればわ かるだろう。これは, 測量や画像解析などで, 何かの面 積を測定する際の,基本原理である*5

● 問693 以下の頂点で順に囲まれた多角形の面積を 求めよ:

P1: (1,−2) P2: (3,1) P3: (−1,3) P4: (0,−1) P5: (−2,4) P6: (−1,−1) P7: (−2,−5) P1

28.2 3 次の行列式と体積

上の話を, 3次元に拡張してみよう。すなわち, 3次元 ユークリッド空間の任意の3つのベクトルa,b,cを考え る。3次元ユークリッド空間に正規直交基底{e1,e2,e3}

*5これを知らない人は,求めたい図形と相似の図形を紙に描いて 切り抜いて,その重さを測ることで面積を求めたりする。愚か なことである。

ドキュメント内 生物資源の基礎数学教材 (ページ 136-142)