答591略。
答592
(1) 線型独立のこと。
(2) 線型独立でないこと。
(3) 線型従属のこと。
答593 A君の論理では,「p1x1+p2x2+· · ·+pnxn=0」 と「p1 =p2 =· · · =pn = 0」は両立しないことにな る。しかしそもそもp1=p2=· · ·=pn = 0の場合は, p1x1+p2x2+· · ·+pnxn=0が成り立つから,これら は両立することがある。従ってA君の解答は誤りであ
る。
答594
(1) p1, p2 ∈ Rによって, p1e1+p2e2 = 0となると き,p1(1,0) +p2(0,1) = (p1, p2) = 0だから, p1= p2 = 0 となるしかない。従って{e1,e2}は線型 独立。
(2) {(1,1),(1,−1)}など。
(3) {(1,1),(−1,−1)}など。
答595略。
答596略。
答597
(1) a1, a2, b1, b2をいずれも実数とし,
f1(x) =a1cosx+b1sinx (22.57) f2(x) =a2cosx+b2sinx (22.58) とする。明らかにf1 ∈ X かつ f2 ∈ X である。
さて,
∀α∈R,
αf1(x) =αa1cosx+αb1sinx∈X (22.59) である。また,
f1(x) +f2(x)
= (a1+a2) cosx+ (b1+b2) sinx∈X(22.60) である。従ってX はRを体とする線型空間。 ■ (2) 定数p, q∈Rによって,恒等的に
psinx+qcosx= 0 (22.61) となるとする。この式に x = 0 を代入すると q = 0 となり, x = π/2 を代入するとp = 0 と なる。従って,p=q= 0 となるしかない。従って {sinx,cosx}は線型独立である。 ■ (3) {sinx,2 sinx}の線型結合psinx+q(2 sinx)にお いて, p=−2, q = 1とするとこれを恒等的に0に できる。従って{sinx,2 sinx}は線型従属。 ■ (4) 恒等的に
sin( x+π
3 )= 1
2sinx+
√3
2 cosx (22.62) となる。これは式(22.20)の中でa =√
3/2, b =
22.5 解答 69 1/2とした式になっている。従ってsin(x+π/3)∈
Xである。 ■
(5) p, q∈Rとして psinx+qsin(
x+π 3 )
=( p+q
2
)sinx+
√3q
2 cosx (22.63)
となる。これは{sinx,cosx}の線型結合だが,先に 示したように, {sinx,cosx}は線型独立なので, こ れを恒等的に0にするには,
p+q
2 = 0 かつ
√3q 2 = 0
となるしかない。すなわち, p=q= 0とするしか ない。従って,{sinx,sin(x+π/3)}は線型独立。■ (6) sinx+ sin(x+π) = sinx−sinx = 0。これは {sinx,sin(x+π)} の線型結合で, 恒等的に0にな るのに係数は0でない。従って{sinx,sin(x+π)}
は線型従属。 ■
(7) 恒等的に sin(
x+π 3
)= 1 2sinx+
√3 2 cosx が成り立つ。左辺引く右辺を考えると,
sin( x+π
3 )−1
2sinx−
√3
2 cosx= 0
こ れ は {sinx,sin(x + π/3),cosx} の 線 型 結 合 で, 恒等的に 0 なのに係数は0 でない。従って {sinx,sin(x+π/3),cosx}は線型従属。 ■
答598略(簡単!)。 答599略。
答600q1, q2, q3∈Rによって,
q1g1(x) +q2g2(x) +q3g3(x) = 0 (22.64) が恒等的に成り立つとする。すなわち,
q1(1 +x) +q2(1−x) +q3(x+x2) = 0 であるとする。式変形すると,
q3x2+ (q1−q2+q3)x+ (q1+q2) = 0 となる。これが恒等的に0になるには,
q3= 0, q1−q2+q3= 0, q1+q2= 0
となる。これを解くと, q1 =q2 =q3 = 0となるから, B′ は線型独立。また, 任意の2次関数f(x) = px2+ qx+rについて,
q3=p, q1−q2+q3=q, q1+q2=r となるように(q1, q2, q3)を定めることで,
f(x) =q1g1(x) +q2g2(x) +q3g3(x) (22.65) とできるから, P2の要素はB′ の線型結合で表される。
従って,B′はP2の基底。 ■ 答601
(1) まず{e1,e2}が線型独立であることは問594で示 した。次に,
∀x= (x1, x2)∈R2,
x= (x1, x2) = (x1,0) + (0, x2)
=x1(1,0) +x2(0,1) =x1e1+x2e2
従って, R2の任意の要素は{e1,e2}の線型結合で 書ける。従って{e1,e2}はR2の基底。 ■ (2) p1, p2∈Rによって,p1g1+p2g2= 0となるとき,
p1(1,1) +p2(1,−1) = (p1+p2, p1−p2) = 0 が成り立つ。従って, p1=p2= 0となるしかない。
従って{g1,g2}は線型独立。
次に,R2の任意の要素x= (x1, x2)について,適当 なp1, p2によって
(x1, x2) =p1(1,1) +p2(1,−1) (22.66) とできるだろうか? 式(22.66)の右辺は,
(p1+p2, p1−p2) となるので,
x1=p1+p2
x2=p1−p2
がともに成り立てば, 式(22.66)は成り立つ。その ためには,
p1=x1+x2
2 , p2= x1−x2
2 とすればよい。すなわち,
x=x1+x2
2 g1+x1−x2
2 g2 (22.67)
が成り立つ。従って, R2 の任意の要素は{g1,g2} の線型結合で書ける。従って{g1,g2}はR2の基
底。 ■
答602{(1,0,0,0),(0,1,0,0),(0,0,1,0),(0,0,0,1)} 答603
(1) Y の任意の要素Asin(x+B)について,
Asin(x+B) =A(sinxcosB+ cosxsinB)
=AcosBsinx+AsinBcosx となる。AcosB =a,AsinB=bとおけば,
Asin(x+B) =asinx+bcosx∈X (22.68) となる。従って,
Y ⊂X (22.69)
また,Xの任意の要素asinx+bcosxについて,三 角関数の合成によって,
asinx+bcosx=√
a2+b2sin(x+δ) とできる(三角関数の合成。δは, (a, b)を2次元平 面上にプロットしたときにx軸から点(a, b)までの 角)。√
a2+b2=A,δ=Bとおけば,
asinx+bcosx=Asin(x+B)∈Y (22.70) 従って,
X⊂Y (22.71)
式(22.69),式(22.71)より,Y =X ■ (2) {sinx,cosx}が線型独立であることは問597で示 した。また, 式 (22.68)より, Y の任意の要素が {sinx,cosx}の線型結合で表されることは明らか。
従って{sinx,cosx}はY の基底。Y =X なので, これはXの基底でもある。 ■ 答604
(1) 基底の要素数のこと。
(2) 例22.5より, この線型空間の基底として{x2, x,1} があり,その要素数は3。従って3次元。
答605線型空間の要素を,ある基底の線型結合であらわ したときの,係数を並べてできる数ベクトルのこと。
答606f(x) = 2x2+ 3x+ 1 = 2(x+ 1)2−(x+ 1)だか ら, (2,−1,0)。
答607
(1) 略(d/dxが線型写像である, ということを示し, そ
の上で,∀f(x)∈X, f′(x)∈X を示せばよい)。 (2)略(簡単)。
(3) X の基底として{v1(x) = sinx, v2(x) = cosx}を 使うと,Xの任意の要素
f(x) =asinx+bcosx は, 2次元の数ベクトル
[a b ]
(22.72) と同一視できる。f(x)を微分すると,
f′(x) =acosx−bsinx=−bsinx+acosx となるが,上記の基底を使うと,この関数は,
[−b a
]
(22.73) と同一視できる。式(22.72)を式(22.73)に写す線型変 換は,
[−b a
]
=
[0 −1
1 0
] [a b ]
(22.74) と書ける。右辺に現れた表現行列は, 式(22.54)に一致 している。
一問一答
• 新しいことを次々と覚えていっているけど, 3回く らい前の授業のことも次々と忘れていっている。
... 忘れることを恐れず,目の前の数学に,丁寧に取り組 んでください。いつか, 忘れかけていたバラバラの数学 が, ジグソーパズルのように組み合わさって, 1枚の大 きな絵のように見えるときが来ます。
• なんかよくわからないけど, 線型すごい。なんでも 数学で表せるんだと思った。
... 線型はほんとにすごいのです。
71
第 23 章
線型代数 5: 計量空間
23.1 内積
既に学んだように, 「スカラー倍」と「足し算」がで き, それについて閉じている集合ならば, どんな集合で も「線型空間」と呼べる。そして,線型空間の要素のこ とをベクトルと呼ぶ。ここから出発して, 線型独立や基 底,座標,線型写像などの概念を導入した。それらは, 高 校で学んだ幾何ベクトルや数ベクトルについても自然に 成り立つことだった。
ところが, ここで奇妙なことがある。高校で学んだ, いわゆる平面や空間*1の幾何ベクトルや,数ベクトルに は「内積」があったが,このテキストで第19章以降に学 んできた一般の線型空間には「内積」が出てきていない。
実は,内積は線型空間やベクトルの本質的な性質では ない。つまり「内積が無い線型空間」や「内積ができな いベクトル」があり得るのである。「内積」は, 線型空 間について,付加的に人為的に定義されるべきものであ る。以下に内積の公理*2を述べる:
内積の公理
✓ ✏
Rを体とする線型空間X について,写像
f :X×X→R (23.1)
が以下の1)〜5)の全てを満たすとき,写像fを「X の内積」とよぶ(以下,∀u,∀v,∀u1,∀u2∈X)。
1)f(u,u)≥0
2)f(u,u) = 0となるのはu=0のときに限る。
3)f(u,v) =f(v,u)
4)∀α∈R, f(αu,v) =αf(u,v) 5)f(u1+u2,v) =f(u1,v) +f(u2,v)
✒ ✑
1)〜5)を全て満たしさえすれば,どのようなf を内積
*1このように我々が素朴な意味で平面や空間とよぶものを,それ ぞれ「2次元ユークリッド空間」「3次元ユークリッド空間」と 呼ぶ。
*2公理とは定義と同じようなもの。感覚的には,定義よりも偉い。
としてもよい。それは問題や対象の構造に応じて, 人間 が都合の良いように導入(定義)するのである。
● 問608 内積の公理を, 5回書いて記憶せよ。
● 問609 f は線型空間Xの内積とする。α∈Rとす る。u,u1,u2,v,v1,v2∈Xとする。
(1) f(u,v)は,vを固定すると,uについて線型写像に なることを示せ。ヒント:上の公理の4)と5) (2) 次式を示せ。ヒント:上の公理の3)と4)
f(u, αv) =αf(u,v) (23.2)
(3) 次式を示せ。ヒント:上の公理の3)と5)
f(u,v1+v2) =f(u,v1) +f(u,v2) (23.3) (4) f(u,v)は,uを固定すると,vについて線型写像に
なることを示せ。
(5) 次式を示せ。ヒント: 上の公理の4)。0= 00。 f(u,0) =f(0,u) = 0 (23.4)
この問題からわかるように,内積は, 2つの引数のそれ ぞれに関して線型写像である。このように, 複数の引数 を持つ写像で, それぞれの引数に関して線型写像である ような写像のことを, 多重線型写像という。内積は多重 線型写像の一種である。
では,内積の例を考えよう。
例23.1 u,v∈R2とする。
u= (x1, y1), v= (x2, y2) (23.5) とおく。当然ながら, (u,v)はR2×R2の要素である*3。
*3これがわからない人は,まだ「直積」を理解できていない。
さて,ここではR2×R2からRへの写像fを, f(u,v) =x1x2+y1y2 (23.6) と定義してみよう。f は我々が高校以来なじんできた,
「数ベクトルの内積」である。でも,本当にこれを内積と 呼んでもよいのだろうか? 換言すれば, この写像は, 上 の内積の公理をみたすのだろうか?
まず公理の1)について。f(u,u) = x21+y12となる が, x1もy1も実数なので, これは明らかに0以上にな る。従って公理の1)は成り立つ。
● 問610 同様にして, 式(23.6)のf が内積の公理の 2)から5)も全て満たすことを示せ。
● 問611 R2×R2 からRへの様々な写像を考えてみ よう。u= (x1, y1), v= (x2, y2)とする。
(1) 次式の写像fは内積であることを示せ:
f(u,v) = 2x1x2+ 3y1y2 (23.7) (2) 次式の写像fは内積でないことを示せ:
f(u,v) =x1x2 (23.8)
ヒント: 公理の2)が成り立たない。その反例を示 せばよい。
(3) 次式の写像fは内積でないことを示せ:
f(u,v) =x21+y12+x22+y22 (23.9) ヒント: 公理の4)と5)が成り立たない。そのどち らかの反例を示せばよい。
● 問612 −1 ≤ x ≤ 1 の範囲で積分可能*4な関数 f(x)からなる線型空間Xを考える。f(x), g(x)∈Xに ついて,
1 2
∫ 1
−1
f(x)g(x)dx (23.10)
という演算を考える。この演算は内積である(内積の公 理を全て満たす)ことを示せ。
普通はR2の内積と言えば, 式(23.6)のことである。
*4(発展)厳密に言えば, 2乗可積分
実際, 例23.1と問610でみたように, 式(23.6)は内積 の公理を満たすから内積と呼んでよい。しかし, 数学的 には, それ以外にも式(23.7)のようにR2の内積といえ るものが存在するのだ。また, 関数の集合が作る線型空
間には, 式(23.10)のように積分で表されるような内積
が存在するのだ。要するに, 内積は諸君が思うよりも広 くて柔軟な概念なのだ。
f が内積であるとき,慣習的に,f(u,v)を
u•v (23.11)
(u,v) (23.12)
⟨u,v⟩ (23.13)
⟨u|v⟩ (23.14)
と書いたりする。式(23.11)は物理学や工学等の応用数 学で, 特に幾何ベクトルの内積や, 数ベクトル空間の内 積のときによく使われる。式(23.12),式(23.13)は,純 粋数学の分野や, 応用数学でも関数空間の内積によく使 われる。式(23.14)は量子力学で使われる。
● 問613 u= (1,2),v= (3,−4)とする。
(1) R2の内積を式(23.6)で定義すると,u•v=−5で あることを示せ。
(2) R2の内積を式(23.7)で定義すると, u•v =−18 であることを示せ。
● 問614 −1≤x≤1の範囲で積分可能な関数f(x) からなる線型空間X を考える。X の内積を式(23.10) で定義する。このとき
f(x) =x2∈X (23.15)
g(x) =x+ 1∈X (23.16)
について,内積⟨f(x), g(x)⟩は1/3になることを示せ。