答642 時刻t での波形は, 関数ψ = f(x)のグラフを x軸の負の方向にctだけ移動したものであり, それは
ψ=f(x+ct)となる。
答643
(1) 波は時間∆tの間にx軸方向にc∆tだけ移動する。
従って,時刻t+ ∆tのときの波形ψ(x, t+ ∆t)は, もとの波形ψ(x, t)をx軸方向にc∆tだけ平行移動 したもの,つまりψ(x−c∆t, t)に等しい。
(2) 略(線型近似)。
(3) 式(24.6)の左辺に式(24.7)を, 右辺に式(24.8)を 代入すると,
ψ(x, t) +∂ψ
∂t∆t≒ψ(x, t)−c∂ψ
∂x∆t (24.66)
となる。両辺からψ(x, t)を引けば,
∂ψ
∂t∆t≒−c∂ψ
∂x∆t (24.67)
となる。この両辺を∆tで割って,
∂ψ
∂t ≒−c∂ψ
∂x (24.68)
∆tが限りなく0に近い時を考えれば,この≒は= になり, 与式を得る。
(4) f(x) の導関数を f′(x) とする。合成関数の微分 より,
∂ψ
∂t = ∂
∂tf(x−ct) =−cf′(x−ct)
∂ψ
∂x = ∂
∂xf(x−ct) =f′(x−ct) 従って,
∂ψ
∂t =−cf′(x−ct) =−c∂ψ
∂x となる。
答644
(1) 時刻tのときの波形をψ(x, t)とする。時刻t+ ∆t のときの波形ψ(x, t+ ∆t)は, ψ(x, t)をx軸の負 の方向にc∆tだけ平行移動したものなので,
ψ(x, t+ ∆t) =ψ(x+c∆t, t) (24.69) となる。∆tが十分に0に近ければ, 上の式の左辺
24.5 解答 95 と右辺は,それぞれ以下のように近似される:
ψ(x, t+ ∆t)≒ψ(x, t) +∂ψ
∂t∆t ψ(x+c∆t, t)≒ψ(x, t) +c∂ψ
∂x∆t 従って,次式が成り立つ:
ψ(x, t) +∂ψ
∂t∆t=ψ(x, t) +c∂ψ
∂x∆t (24.70) これを整理すると,次式を得る:
∂ψ
∂t =c∂ψ
∂x (24.71)
(2) 略。
答645 (1) 略。
(2) f(x)の導関数と2階導関数をそれぞれf′(x),f′′(x) とする。
∂
∂xf(x−ct) =f′(x−ct) 従って,
∂2
∂x2f(x−ct) = ∂
∂x ( ∂
∂xf(x−ct))
= ∂
∂xf′(x−ct) =f′′(x−ct) (24.72) 同様に,
∂
∂tf(x−ct) =−cf′(x−ct) 従って,
∂2
∂t2f(x−ct) = ∂
∂t (∂
∂tf(x−ct))
= ∂
∂t
(−cf′(x−ct))
=c2f′′(x−ct) (24.73) 式(24.72)(24.73)より,
∂2
∂t2f(x−ct) =c2 ∂2
∂x2f(x−ct) (3) 略(前問と同様)。
答646以下,略解。
(1) 静止状態ではこの部分の長さは∆xである。線密度 がρなので, その質量はρ∆xとなる。上下に振動 していても質量は変わらない。
(2) 張 力 (fx, fy) の 大 き さ は S な の で, 式 (24.20)
が成り立つ。張力は糸に沿った方向に働くので, (f1x, f1y)は弦の接線と平行である。(図24.3右上 の直角三角形ABCを見ればわかるように)その傾 きはf1y/f1xである。一方, 時刻t,位置x+ ∆x/2 における弦の接線の傾きは,微分係数の定義から,
∂y
∂x
(x+∆x 2 , t)
(24.74) である。従って, 式(24.21)が成り立つ。
(3) 式(24.20)で, |f1y|<< |f1x|として|f1y|2を無視 すれば, f1x2 = S2 を得る。この部分に対して, 右 端では張力は右向きに働くので, f1x > 0。従っ て, f1x = S。これを, 式(24.21) 代入すれば, 式 (24.23)を得る。
(4) 略。式(24.23)をxについて線型近似する。
(5) 略。(2)(3)と同様に考えればよい。ただしf2xはx 軸と逆向きなので,負の値をとることに注意。
(6) 略。(4)と同様。
(7) 式(24.22)と式(24.25)を辺々足せば, 式(24.30) を得る。式(24.23)と式(24.26)を辺々足せば, 式 (24.31)を得る。
(8) この部分のy方向の運動方程式は,
∆m∂2y
∂t2 =Fy (24.75)
である。右辺に式(24.31)を代入すればよい。
(9) 式(24.32)に式(24.19)を代入し,両辺をρ∆xで割 ればよい。
(10) 式(24.33)と式(24.15)をくらべると,S/ρ=c2と なる。ここから与式を得る(cは速度でなく「速さ」
なので,負の値は考えないでよい)。
(11) 前小問より, cは√
Sに比例する。従って張力の大 きさSを2倍すると,cは√
2倍になる。
答647略。
答648略。
答649
(1) 物理現象が時間的・空間的に周期的に起きる場合,
「周期ひとつの中の,どのあたりにいるのか」を0か ら2πまでの値で表したものを「位相 (phase)」と いう。
(2) sin(x+π/2) = cosxより明らか*12。
*12数学リメディアル教材参照。
答650
(1) ある点において,単位時間あたりに波が振動する回 数を振動数νという。
(2) 振動1回につき,位相は2π進むから,角速度,すな わち単位時間あたりどのくらい(何ラジアン)位相 が進むかは,νの2π倍になる。つまり,
ω= 2πν
(3) ある時間t の間に, 波はνt回振動する。従って, 周期T, すなわち1回あたりの振動に要する時間 は, 「かかった時間」÷ 「振動回数」, すなわち t/(νt) = 1/νである。従って,
T= 1/ν
答651略。
答652略。
答653
(1) ψ=Asin(kx−ωt+δ)
=Asin{−(−kx+ωt−δ)}
=−Asin(−kx+ωt−δ)
=−Asin(ωt−kx−δ) (2) 略(自明)。
(3) kの絶対値を |k| とする。いま, k ̸= 0とすれば, 0<|k|である。0< kのときk=|k|だから与式は
ψ=Asin(ωt− |k|x+δ)
=−Asin(
|k|( x− ω
|k|t)
−δ)
となり, ω/|k|=cとおくとψ=f(x−ct)の形に なる。これはx軸の正の向きに進む波。k <0のと きk=−|k|だから与式は
ψ=Asin(ωt+|k|x+δ)
=Asin(
|k|( x+ ω
|k|t) +δ)
となり, ω/|k|=cとおくとψ=f(x+ct)の形に なる。これはx軸の負の向きに進む波。
(4) 略。(c=ω/kに注意せよ。)
(5) 式(24.63)において,δ=δ′+π/2とすれば, ψ=Asin(ωt−kx+δ′+π/2)
上の式について,問649(2)より ψ=Acos(ωt−kx+δ′)
(6) 式(24.60)において, 位相をωt−kxとδの和と見 てsinの加法定理を使えば,
ψ=Asin{(ωt−kx) +δ}
=A{sin(ωt−kx) cosδ+ cos(ωt−kx) sinδ} ここでAcosδ=b,Asinδ=aと置けば,
ψ=acos(ωt−kx) +bsin(ωt−kx)
(7) 周期と波長をそれぞれT, λ とする。ω = 2π/T, k= 2π/λより,
ψ=Asin(2π T t−2π
λ x+δ)
(8) 振動数と速度をそれぞれν, cとする。ω = 2πν, k=ω/c= 2πν/cより,
ψ=Asin(
2πνt−2πν c x+δ)
一問一答
• ψ = f(x−ct)について, ∂ψ/∂t= −cf′(x−ct),
∂ψ/∂x=f′(x−ct)で,なぜどちらもf′(x−ct)と なるのか分からなかったです。
... ではξ = x−ctと置きましょうか。ψ = f(x− ct) = f(ξ)です。df /dξ = f′(ξ)と書きます。ここで まずxを固定して(定数とみなして)ψをtで微分す れば(つまりtで偏微分するのと同じこと), 合成関数 の微分の公式から, dψ/dt = (df /dξ)(dξ/dt)となりま す。df /dξ = f′(ξ)でdξ/dt = −cだから, dψ/dt = f′(ξ)(−c) = −cf′(x−ct)となります。同様に考えれ ば, ∂ψ/∂x=f′(x−ct)となることもわかるでしょう。
それでもわからなければ,質問においで。
• T とkとωと...関係式がややこしい...
... とりあえず大事なのはkとωです。物理をさらに勉 強すると, ωはエネルギーと, kは運動量と対応するこ とがわかるでしょう。
• 公式や定理を庶民のシュー… もとい庶民の数学とバ カにしていました。キソが大事by桜木
... いちばん大切なのは定義ね。
97
第 25 章
線型偏微分方程式 2: 波動方程式の応用
25.1 津波
津波が海上を伝わる様子を考えよう。図25.1を見て 欲しい。
図25.1 津波の断面図。津波はx軸の正の方向に伝 わるとする。もとの水面と海底と面A, 面Bで囲ま れる部分を水塊Ωと呼ぶ。津波が来ると面AはA’
に移動し, 面BはB’に移動する。AB間の距離より A’B’間の距離が小さいと水塊Ωは幅が狭くなって上 に盛り上がるため,水面が上昇する。
海底の一点に原点をとり, 海底は平面であるとする。
津波は一方向に伝播するとし, 津波の伝わる方向に平行 にx軸をとる。
津波が来る前(静止状態)の水面の高さをh0と置き, 津波が来たときの水面の高さをH =h0+hと置く。h0
は定数だが, hはxと時刻tの関数(2変数関数)であ る。このh(x, t)を決定する方程式を探り当てるのが,こ こでの目標である*1。
静止状態で位置xにある水は, 津波がやってくると, 全体的にx軸の正負の方向に微妙に移動する。その移動
*1以下,h(x, t)の(x, t)という部分を,適宜,省略して書く。h はxとtの関数であるということを諸君に思い出して欲しい ときや,x,tに特別な値を代入したいときはh(x, t)と書く。h 以外の関数についても同様。
量をs(x, t)としよう*2。つまり,もともとxにあった水 は,時刻tのときに,x+s(x, t)に移動している。s >0 なら水はxの正の方向に移動し, s <0なら水はxの負 の方向に移動する。この移動量は水深によって異なるか もしれないが, ここでは近似的に考えて, 水深によらな いとする。
さて,静止状態で,x−∆x/2にある面Aと,x+ ∆x/2 にある面Bを考える。∆xは微小量とする。この2つ の面で挟まれた, 高さh0, 幅∆x,奥行きwの水塊をΩ と呼ぼう。津波がやってくると, 面Aや面Bは隣の水 塊に押されて,左右に移動する。そのとき,面Aは位置
x−∆x 2 +s(
x−∆x 2 , t)
(25.1) に移動し(そのときの面を面A’と呼ぼう),面Bは位置
x+∆x 2 +s(
x+∆x 2 , t)
(25.2) に移動する(そのときの面を面B’と呼ぼう)。従って, 水塊Ωの幅(つまり面B’と面A’の距離)は,
∆x+s( x+∆x
2 , t)
−s( x−∆x
2 , t)
(25.3) となる。これが, もとの幅∆xよりも小さいとき, すな わち,
s( x+∆x
2 , t)
< s( x−∆x
2 , t)
(25.4) のとき(つまり面Bの変位より面Aの変位の方が大き いとき)は,幅が狭くなる分,水は行き場を失い,上に盛 り上がり, その結果,水面はもとの高さh0よりも高くな るだろう。逆に,
s( x+∆x
2 , t)
> s( x−∆x
2 , t)
(25.5) ならば,水塊Ωの幅はもとの幅∆xより大きくなり, 水 面はh0より低くなるだろう。
*2s(x, t)も, (x, t)という部分を適宜省略する。
● 問654
(1) 水塊Ωの体積は, 面Aと面Bに挟まれているとき と,面A’と面B’に挟まれているときで変わらない ことから次式を導け:
h0w∆x= (h0+h)
w{
∆x+s( x+∆x
2 , t)
−s( x−∆x
2 , t)} (25.6) (2) 式(25.6)から次式を導け:
h0≒(h0+h)( 1 + ∂s
∂x
) (25.7)
(3) hもsも微小量である。従って, h∂s
∂x (25.8)
は微小量どうしの積なので, 近似的に無視できる。
そのことを使って, 式(25.7)から次式を導け:
∂s
∂x ≒−h h0
(25.9)
式(25.9)によって,水の移動と波の高さを関係づける
式が得られた。
次に, 水の移動の仕方を規定する式を作ろう。水でも 何でも, 質量のある物体が移動するとき, それを規定す るのはニュートンの運動方程式である。運動方程式を立 てるには, まず, その物体にかかる力を記述しなければ ならない。では,水塊Ωにかかる力を考えよう。水塊Ω には, 面Aを介して左の水塊から右向きの水圧を受け, 面Bを介して右の水塊から左向きの水圧を受ける。一 般論として, 水圧は水深(水面からの距離)に比例する ことが知られている。すなわち,水深yでの水圧はρgy であることが知られている(ρは水の密度,gは重力加速 度)。従って, 海底から高さH までの垂直面(奥行きw) にかかる力は, その面の各水深における圧力をぜんぶ足 したものだから,
∫ H 0
ρgyw dy= ρgwH2
2 (25.10)
である。従って,水塊Ωの左から(面Aを介して)かか る力は,
ρgw{ h0+h(
x−∆x2 , t)}2
2 (25.11)
であり,水塊Ωの右から(面Bを介して)かかる力は,
−ρgw{ h0+h(
x+∆x2 , t)}2
2 (25.12)
である(マイナス符号は左向きを意味する)。
● 問655
(1) 水塊Ωに,面Aと面Bを介してかかる,x軸方向の 合力F は,次式で表されることを示せ:
F≒−ρgw(
h0+h(x, t))∂h
∂x∆x (25.13) (2) 水塊Ωの質量をmとする。次式を示せ:
m=ρh0w∆x (25.14)
(3) 水塊Ωの, x方向の加速度aは次式であることを 示せ:
a=∂2s
∂t2 (25.15)
(4) 水塊Ωの, x軸方向の運動方程式, すなわちF = maから,次式を示せ:
∂2s
∂t2 =−gh0+h h0
∂h
∂x (25.16)
(5) |h|<< h0とみなし,次式を示せ:
∂2s
∂t2 ≒−g∂h
∂x (25.17)
式(25.17)によって, 水の移動の仕方を規定する式が
得られた。最後に,式(25.9)と式(25.17)を組み合わせ よう:
● 問656 式(25.17)の両辺をxで偏微分し,式(25.9) を使うことで次式を導け:
∂2h
∂t2 ≒gh0∂2h
∂x2 (25.18)
式(25.18)は式(24.15)と同じ形の方程式, つまり波 動方程式になっている。
● 問657 (1) 津波の速さcは,
c=√
gh0 (25.19)
25.2 音波 99