21.5 解答 59
だが,
F(f(x)) +F(g(x)) =F(x) +F(x) = 2x+ 2 となる。線型写像なら,この両者は一致するはず。
(2) 線型写像でない。反例:f(x) = 1, g(x) =x とす ると,
F(f(x) +g(x)) =F(1 +x) = (1 +x)2 F(f(x)) +F(g(x)) =F(1) +F(x) = 1 +x2 となる。線型写像なら,この両者は一致するはず。
(3) 線型写像。導関数の性質から, d2
dx2
(αf(x) +βg(x))
=α d2
dx2f(x) +β d2 dx2g(x)
(4) 線型写像でない。反例:f(x) = x, g(x) =x とす ると,
F(f(x) +g(x)) =F(2x) = 22= 4
F(f(x)) +F(g(x)) =F(x) +F(x) = 12+ 12= 2 線型写像なら,この両者は一致するはず。
答584
F(αf(x) +βg(x)) =
∫ 1 0
(αf(x) +βg(x)) dx
=α
∫ 1 0
f(x)dx+β
∫ 1 0
g(x)dx
=αF(f(x)) +βF(g(x)) 答585略。
答586略。
答587略。
答588
(1) 微分を含み,関数を関数に写す線型写像であるよう な演算子のこと。
(2) ある線型微分演算子Lと,ある(恒等的に0ではな い)関数g(x, y,· · ·)を用いて,
Lf(x, y,· · ·) =g(x, y,· · ·)
と書けるような, 関数f(x, y,· · ·)に関する微分方 程式。
(3) 線型同次微分方程式と線型非同次微分方程式の こと。
答589 f =f0+ϕとして式(21.61)の左辺に代入する
と,Lは線型写像なので,
Lf =L(f0+ϕ) =Lf0+Lϕ (21.78) となる。f0が式(21.61)の解であることから,
Lf0=g (21.79)
であり,また,ϕが式(21.62)の解であることから,
Lϕ= 0 (21.80)
である。従って,式(21.78)の最右辺は,
Lf0+Lϕ=g+ 0 =g (21.81)
となる。従って,式(21.78)は,
L(f0+ϕ) =g (21.82)
となる。すなわち,f0+ϕもこの線型非同次微分方程式
の解である。 ■
答590略。
一問一答
• 線型空間と線型写像のちがいをわかっていたつもり がまざっていてショックだった。
... ほらね...
• ”CはCを体とする線型空間である”とのことです が,仮に,x= 1−i, α= 1 +iである時は,
αx= (1−i)(1 +i) = 2
また,x= 1−i, y= 1 +iである時は,
x+y= (1−i) + (1 +i) = 2
となり,実数(Rの要素)となるため,線型空間の 定義を満たしていない気がします… 。
... 実数も複素数の一種。つまりR⊂Cなので, 上の例 でも,線型空間の定義を満たしています。
• 定義とかを使っていろいろ導くのは難しいです…
... がんばってください。
• コツコツやったら, すごい理解できた。とっても楽 しいです。頑張ります!
... うれしいなあ。
61
第 22 章
線型代数 4: 線型独立・基底・座標
22.1 線型独立
ベクトル*1(の集合)に関する重要な概念に, 「線型独 立」というものがある: 線型空間の部分集合
{x1,x2,· · ·,xn} (22.1) が,スカラー
p1, p2,· · · , pn ∈K (22.2) に対して,
p1x1+p2x2+· · ·+pnxn=0 (22.3) となるのは,
p1=p2=· · ·=pn= 0 (22.4) という場合に限るとき, {x1,x2,· · ·,xn}は互いに線型 独立である,という(定義)。この定義は必ず記憶せよ。
つまり, ベクトルの集合が, 「線型結合が0になるな らば,係数がぜんぶ0となるより他は無い」というよう な状況を,線型独立というのだ(係数がぜんぶ0なら式
(22.3)が成り立つのは当然である)。
● 問591 線型独立の定義を3回,書いて記憶せよ。
それでは, 線型独立は具体的にどういうことなのか, いくつかの例で考えてみよう。
例22.1 2つの幾何ベクトルx,yを考える。これらは いずれも0でないとする。
x,yが互いに平行でなければ,それらの線型結合 p1x+p2y (p1, p2は実数とする) (22.5) は,p1xとp2yの張る平行四辺形の対角線に相当する幾
*1ここで言う「ベクトル」は,幾何ベクトルや数ベクトルだけで なく,一般に「ある線型空間の要素」という意味である。
図 22.1 互 い に 平 行 で な い 2 つ の 幾 何 ベ ク ト ル (x と y) の線型結合 (p1x+p2y) は, 係数 (p1 と p2)がともに0でない限り,0にはならない。
何ベクトルになる(図22.1)。従って,p1=p2= 0でな い限り, p1x+p2y =0にはならない。従って, {x,y} は互いに線型独立である。
一方, x,y が互いに平行であれば, 適当な実数aが あって,
y=ax (22.6)
とできる(これが幾何ベクトルどうしの「平行」の定 義)。この式は,
ax−y=0 (22.7)
と変形できる。この式は, x, yの線型結合が0になっ ているにもかかわらず, 少なくともyの係数は0でない ので, 「係数がぜんぶ0」ではない。従って, この場合, {x,y}は互いに線型独立ではない。(例おわり)
線型独立を「一次独立」ともいう。
線型空間の部分集合が線型独立でないことを, 「線型 従属」という。線型従属を「一次従属」ともいう。それ は, 式(22.3)を満たすp1, p2,· · · , pnが, 式(22.4)以外 にも存在する,ということである。
● 問592 以下の言葉を説明せよ:
(1) 一次独立 (2) 線型従属 (3) 一次従属
● 問593 A君はテストで「線型従属の定義を述べよ」
図 22.2 同一平面には無い3 つの幾何ベクトルの 線型結合は, 平行六面体の対角線に相当する。係数 (p1, p2, p3)が全て0でない限り,それは0にはなら ない。
という問題に下記のように答えた。「ベクトルの集合 {x1,x2,· · ·,xn} が, スカラーp1, p2,· · ·, pn ∈ K に 対してp1x1+p2x2+· · ·+pnxn = 0 となるならば, p1=p2=· · ·=pn = 0とならないとき,この集合は線 型従属である」
この解答のおかしいところを指摘せよ。
例22.1で見たように, 2つの幾何ベクトルに限れば, 線型従属とはベクトルどうしが平行であるということと 同値である。しかし, 3つ以上の幾何ベクトルになると, そんなに事情は単純ではない。
例22.2 3つの幾何ベクトルx,y,zを考える。これら はいずれも0でないし,互いに平行でもないとする。
x,y,zが同一平面上になければ,それらの線型結合
p1x+p2y+p3z (22.8)
は (p1, p2, p3 は実数とする), p1x とp2y と p3zの張 る平行六面体の対角線に相当する幾何ベクトルになる (図22.2) *2。従って, p1 = p2 =p3 = 0でない限り, p1x+p2y+p3z=0にはならない。従って,{x,y,z} は互いに線型独立である。
一方, x,y,zが同一平面上にあれば, x,yを2辺の方 向とするような平行四辺形をその平面上に描くことがで き(図22.3),適当な実数a, bで,
z=ax+by (22.9)
とできるはずである(幾何ベクトルの分解)。この式を
*2平行六面体とは, 6つの平面で囲まれた立体で,向かい合う面ど うしは互いに平行なもの。そのひとつの頂点をOとし, Oか ら3つの幾何ベクトルp1x,p2y,p3zを出したときに,各幾 何ベクトルの先端にそれぞれ頂点を置く。
図22.3 3つの幾何ベクトルが同一平面にあれば, 1
つの幾何ベクトルは他の2つの線型結合で表される。
変形すると,
ax+by−z=0 (22.10)
となる。この式は,x,y,zの線型結合が0になっている にもかかわらず,「係数がぜんぶ0」ではない(少なくと もzの係数は−1である)。従って, この場合, {x,y,z} は互いに線型独立ではない。(例おわり)
これらの例でわかるだろうが,あえて直感的に言えば, 幾何ベクトルの集合が線型独立であるのは, 各幾何ベク トルが, バラバラの方向を向いている, という状況であ る。では, 幾何ベクトル以外のベクトルについてはどう だろうか? 以下の例で見てみよう:
例22.3 線型空間 R3 の 3 つの数ベクトルからなる 集合:
{x1=
1 2 3
, x2=
2 3 4
, x3=
3 4 5
} (22.11)
は, 線型独立だろうか? それを調べるには, まず, 式 (22.3) を仮定する。つまり, ある実数 p1, p2, p3 によ って,
p1x1+p2x2+p3x3=0 (22.12) となるとしよう。このとき,p1=p2=p3= 0となる以
外に式(22.12)が成り立つことが無ければ,線型独立で
ある。式(22.12)に式(22.11)を代入して整理すると,
1p1+ 2p2+ 3p3= 0 (22.13)
2p1+ 3p2+ 4p3= 0 (22.14)
3p1+ 4p2+ 5p3= 0 (22.15)
となる。この(p1, p2, p3)に関する連立方程式を解くと (各自,解いてみよ),解は無数にあって,ひとつに定まら ない*3。例えば, (p1, p2, p3) = (−1,2,−1)は式(22.13)
*3このように,連立一次方程式の解がひとつに定まらない状況を,
22.1 線型独立 63
〜式(22.15) を満たす。これは, 「p1 = p2 = p3 = 0 となる以外に式(22.12)が成り立つ」場合に該当する。
従って, 線型従属である。 ■
● 問594 線型空間R2について考える。
(1) e1 = (1,0), e2 = (0,1)とすると, R2の部分集合 {e1,e2}は線型独立であることを示せ。
(2) R2の部分集合で,線型独立になる例を,{e1,e2}以 外に挙げよ。
(3) R2の部分集合で,線型従属になる例を挙げよ。
ここでは証明しないが, Rn の数ベクトルについて(n は任意の自然数とする),以下のような性質がある:
• nより多くの数ベクトルは,互いに線型従属である。
たとえば, 2次元の数ベクトルが3本以上あれば,そ れらがどのような数ベクトルであっても, 線型従属 である。
• n本の数ベクトルが線型従属なら,それらを並べて できるn次正方行列の行列式*4は0になるし, その 逆も成り立つ*5。
● 問595 R3の3つの数ベクトルからなる集合: {
x1=
2 2 1
, x2=
1 3 4
, x3=
3 4 1
} (22.16)
が線型独立かどうかを, 理由も述べて判定せよ。ヒント: 例22.3と同様の手順を踏む。連立方程式が不定になる かどうかがポイント。
例22.4 式(19.8)で定義したように, 実数係数の2次 関数の集合をP2とする。すなわち,
P2={f(x) =px2+qx+r|p, q, r∈R} (22.17)
「不定」という。
*4諸君は2次と3次の行列式は既に知っている。4次以上の行列 式は第28章で学ぶ。
*5正方行列の固有ベクトルを求めるときに,よく似たような話 が出てきたのを覚えているだろうか? 数学リメディアル教材 P.131で, (A−λE)x=0がx=0以外の解を持つ条件は det(A−λE) = 0である,というやつだ。あれは,A−λEと いう行列を構成する列ベクトルどうしが線型従属になる,とい う条件だったのだ。
である。例19.7で見たように, P2 は線型空間である。
さて,P2の部分集合:
{f1(x) =x2, f2(x) =x, f3(x) = 1} (22.18) は互いに線型独立かどうか調べてみよう。まず, それら の線型結合:
p1f1(x) +p2f2(x) +p3f3(x) つまり,
p1x2+p2x+p3
が恒等的に0になるとき,つまり
p1x2+p2x+p3= 0 (22.19) が恒等的に成り立つときを考える。式(22.19)にx = 0,1,−1をそれぞれ代入すると,
p3= 0 p1+p2+p3= 0 p1−p2+p3= 0
となる。この連立方程式を解けば,p1=p2=p3= 0と なる。従って, {f1(x), f2(x), f3(x)}は互いに線型独立 である。
ちなみに,「恒等的に0」ではなく,あるxについての み0にするのであれば,p1=p2=p3= 0以外のケース もありえるが, それは関数の値がそのxを取るときたま たま0になるだけであって, 「恒等的に0」だとは言え
ない。 ■
● 問596 例22.4の線型空間P2について考える。P2
の以下の部分集合について, それぞれ線型独立か線型従 属かを判断し,理由を述べよ。
(1) {g1(x) = 1 +x, g2(x) = 1−x, g3(x) =x+x2} (2) {h1(x) = 1 +x, h2(x) = 1−x, h3(x) = 1}
● 問597 実数xに関するf(x) =acosx+bsinxと いう形の関数の集合X を考える(a, bは任意の実数)。 すなわち,
X={f(x) =acosx+bsinx| ∀a,∀b∈R}(22.20) である。
(1) XはRを体とする線型空間であることを示せ。
(2) {sinx,cosx} ⊂Xは,線型独立か? (3) {sinx,2 sinx} ⊂Xは,線型独立か? (4) sin(x+π/3)∈Xであることを示せ*6。 (5) {sinx,sin(x+π/3)} ⊂Xは,線型独立か? (6) {sinx,sin(x+π)} ⊂Xは,線型独立か?
(7) {sinx,sin(x+π/3),cosx} ⊂X は,線型独立か?
● 問598 ベクトルの集合: {x1,x2,· · · ,xn}が1つで も0を含むなら, これらは線型従属であることを証明 せよ。