第2章 事案の概要等
第4節 争点に関する当事者の主張
1 被告悠香の主張
総論
ア 開発危険の抗弁(法4条1号所定の事項が存在する旨の主張をいう。以
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下同じ。)における「科学又は技術に関する知見」とは,当該製造物の欠
陥の有無を判断するに当たり影響を受ける程度に確立された知識の全てを 意味するところ,確立された知識といえるためには,第1に,十分に検証 され,質的に確立していることが必要である。特に,人体を扱う医学の分 野では,対象となる患者の個体差や特異体質が影響している可能性を考慮 する必要があることから,既存の支配的見解と相容れない症例が数例報告
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されたからといって,製造業者が当該報告又はそこから導かれる知見を前 提として製造物を製造することはできず,いまだ十分に検証されていない 数例の症例報告の存在から知識が確立されたということはできない。第2 に,法の立法過程に照らすと,上記知見は,特定の者が有するものでは足 りず,世界最高水準の学者たちの間である程度のコンセンサスが得られる
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程度に量的に確立していることが必要である。
イ 法の立法過程や従前の裁判例に照らしても,開発危険の抗弁の適用場面 を法4条1号の文言以上に限定する理由はない。
ウ までによれば,本件石けん販売期間において,本件石けん の使用によって本件アレルギー症状を発症すると認識することはできなか
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った。
本件石けんの使用により,グルパール19Sについて経皮的,経粘膜的に 感作が生じることに関する知見
ア 本件石けん販売期間においては,500ダルトンルールが確立していた のに対し,抗原となり得る物質は分子量が5000以上の分子であり,ま
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た,本件アレルギーの原因となった物質は,グルパール19Sのうち分子 量が2万以上のものであるとされているから,皮膚のバリア機能が崩壊し ていない通常の人が,本件石けんを使用することで,グルパール19Sに より経皮的,経粘膜的に感作されるということは,世界最高水準の専門家 でも予想できないことであった。このことは,加水分解コムギが,日本及
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び諸外国において,安全性の高い物質として認知され,何ら規制されるこ
となく広範に使用されていたことからも裏付けられる。
イ 500ダルトンルールが確立していた状況において,一般的に経皮的又 は経粘膜的な感作が成立し得るとする見解が説得力を持つには,相当数の 症例を分析した上で,疫学的に,皮膚のバリア機能が崩壊していない通常 の人について,経皮的又は経粘膜的に感作が生じたと考えられることを示
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すことが必要であるが,原告らの指摘する各文献の内容は,このような条 件を満たすものではなく,本件石けん中のグルパール19Sによって経皮 的又は経粘膜的に感作が成立することを認識し得る科学又は技術に関する 知見とはいえない。
加水分解コムギに感作した者が,経口摂取した小麦との交叉反応によって,
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アレルギー症状を発症することに関する知見
ア 抗原となり得る物質の数は膨大であるのに対し,そのうち交叉反応を起 こす物質が判明しているものはごくわずかである。交叉反応は,実際に生 じなければ起こるかどうかが分からない反応であり,全く別の種と交叉反 応を起こすこともある一方で,近縁の種であっても交叉反応を起こさない
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こともある。加水分解コムギは,天然小麦中のたん白質の一つであるグル テンを酸処理及び熱処理することによって産生されるものであり,小麦由 来ではあるが,天然小麦とは全く異なる性質のものであるところ,加水分 解コムギにより感作された者が,経口摂取した天然小麦との交叉反応によ ってアレルギー症状を発症することは,従来全く知られておらず,専門家
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も,予想できないことであったと指摘している。抽象的に危惧される程度 の交叉反応について認識可能であったとして,開発危険の抗弁が否定され るのは不当である。
イ 原告らの提出する各文献の内容は,加水分解コムギにより感作された者 が,経口摂取した天然小麦と交叉反応を起こすことの認識可能性を基礎づ
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ける科学又は技術に関する知見とはいえない。
洗顔石けんが含有する加水分解コムギにより,石けんを使用した多数の者 に対し,重篤なアレルギー症状を発症させることに関する知見
ア に加え,そのようなアレルギー症状が多数の者に生じ,か つ,重篤が被害を生じさせることは,一層予想できないものであった。
イ 加水分解コムギと天然小麦は全く異なるものであるから,従来型小麦ア
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レルギーの症状に関する知見から,本件アレルギーの症状の重篤さを認識 することができたことにはならない。
2 被告フェニックスの主張