第2章 事案の概要等
第1節 認定事実
3 グルパール19Sの製造過程
て化粧品用途での試験を実施することの可否を問い合わせたが,被告片山 化学は,化粧品用途での試験はできない旨回答した。
エ 被告片山化学は,平成15年に,平成2年版技術資料を改訂したほか(以 下,この改訂後の技術資料(乙ハA6)を「平成15年版技術資料」とい う。),平成16年8月1日付けで「『グルパール19S(化粧品・食品
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用)』技術資料」(乙ロA27。以下「平成16年版技術資料」という。)
を発行した。
(乙ロA45,48,乙ハA5,137,139の1)
被告片山化学は,被告フェニックスに対してグルパール19Sを提供して いた当時,グルパール19Sを化粧品又は医薬部外品に配合して使用するこ
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との危険性を認識しておらず,被告フェニックスに対し,その使用について の具体的な危険性や禁止事項を告知したこともない。
(乙ハA139の1)
本件アレルギー被害の発生を受け,グルパール19Sを含有するものとし て自主回収の対象となった医薬部外品又は化粧品は,被告フェニックスを含
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む11社の製造販売業者に係る合計35種類の製品であり,このうちの2つ は,渋の泡石けんである。また,上記35種類の製品のうち,アレルギー被 害が報告されているものは,2種類(各1例)であるが,渋の泡石けんにつ いてはアレルギー被害の報告はされていない。
被告フェニックスが製造していたグルパール19Sを含有する製品(化粧
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品又は医薬部外品)は18種類であるところ,うち14種類(渋の泡石けん を含む。)のグルパール19Sの配合濃度は,0.3%から0.5%までの 間の濃度であった。
(乙ハA19,20,139の4・5)
水を原材料とし,仕込み,酸分解,等電点沈殿,脱塩処理,中和処理及び粉 末化の各過程により製造される。このうち,酸分解の方法は,小麦グルテン,
水及び食添用塩酸の混合物を,水素イオン指数(pH)が0.5から1.2 までの範囲とした上で,95℃から98℃までの範囲で40分間加熱すると いうものである。
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(乙ロA41の2,乙ハA127,128)
被告片山化学は,被告フェニックスに対してグルパール19Sを紹介した 平成9年4月以降,数次にわたりグルパール19Sの品質規格書を改訂した ものの,供給を停止した平成22年8月までの間,グルパール19Sについ て,品質又は構造に影響を及ぼすような原材料,製造方法等の変更を行った
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ことはなく,グルパール19Sの仕様は変更されていない。
(乙ロA41,乙ハA127から130まで,137)
4 技術資料等における記載
被告片山化学が平成元年頃発行した「グルパール技術資料」には,「グル パールの特徴」として,乳化力,スケール防止力,粒子分散力,小麦グルテ
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ンの分散(粒子分散の一種),水溶性及び安全性が掲げられており,そのう ち安全性の項目には,「グルパールは安全性が高く,食品として取り扱うこ とができます。」との記載が存在する。その上で,グルパールは,乳化力・
分散力・安全面に優れた特徴を有することから,特に,食品の乳化分散及び 品質改良,食品・食器の洗浄,ボイラー・一般冷却水系スケール防止,高吸
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収性蛋白質食品並びに高濃縮蛋白培地のような用途に向いているとされてい る。
(乙ロA28)
「月刊フードケミカル」平成2年2月号に,被告片山化学によるグルパー ルについての記事が掲載された。同記事においては,グルパールの安全性に
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ついて,食品として認められており,安全性について何ら問題はなく,また,
食品添加物や既存化学物質としても認められており,多方面に使用できると した上で,グルパールの用途として,食品用途のほかに,化粧品・シャンプ ー・リンスの改良や医薬品の製造品への応用も可能とされている。
(甲A17)
平成2年版技術資料(同年8月30日付け)には,以下の各記載が存在す
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る。なお,後記ウ記載の「類似の化合物」とは,グルアディンAGPを指す ものであり,同記載の「別紙申請中」とは,ショーワスベットスクラブクリ ームについて株式会社リアルが医薬部外品としての製造承認を申請している ことを指すものである。
ア 前文
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グルパール19Sは,乳化力,保湿性にすぐれた小麦蛋白分解物グルパ ール19を更に精製して得られた蛋白質素材で,化粧品の分野で安心して 使用できます。
イ 安全性データ
グルパール19Sは,食品衛生法で定めるところの「食品」から作られ
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たものです。化粧品に用いる場合,類似の化合物に使用前例があり,化粧 品用基剤としての利用が見込めます(現在別紙申請中)。
ウ 性能データ 乳化力
各種油(中略)に対する乳化力は次のようになります。
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a 流動パラフィン
表1 グルパール19Sの乳化力
添加濃度(%) 乳化の状態
0.3 ×
0.5 ×
1.0 ×
2.0 ×
3.0 ○
5.0 ○
○:均一 △:僅かに分離 ×:分離 b 中鎖トリグリセリド
表2 グルパール19Sの乳化力
添加濃度(%) 乳化の状態
0.3 △
0.5 △
1.0 ○
2.0 ○
3.0 ○
5.0 ○
c セチルイソオクタノエート
表3 グルパール19Sの乳化力(省略。表2と同様。)
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保湿性
グルパール19Sは保湿性にすぐれ,相対湿度の影響をあまり受けま せん。
吸湿性
グルパール19Sは吸湿性が低く,相対湿度の影響をほとんど受けま
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せん。
使用例
グルパール19Sをハンドクリームに配合してモニター試験を実施し ました。そのアンケート結果から,グルパール19Sを配合したハンド クリームは使用後にしっとりするという評価が得られています。
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(乙ロA24,乙ハA2,139の1)
平成3年版技術資料(同年6月1日付け)には,以下の各記載が存在する。
ア はじめに
グルパール19は,小麦タンパク質(グルテン)を酸,アルカリなどで 多段分解することによって得られた,平均分子量数万のポリペプタイドで
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す。乳化及び乳化安定力,保水力,個体粒子の分散力などを特徴としてお り,また,目的に応じた各種のグレードがあるため,数多くの食品や化粧 品に使用できます。
イ 基本性能
乳化力・乳化安定力
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a 基本性能
タンパク質は,それ自身乳化力を有していますが,その乳化力は弱 く,液中数パーセント存在してはじめてその効力を発揮します。
グルパール19シリーズは,表7に示すように,液中濃度0.3%
程度で充分な乳化力を発揮し,乳化の安定性も良好です。
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表7 乳化力
試 料 添加濃度(%) 乳化の状態 グルパール19 0.15 △
0.3 ○
b 耐塩性
表9 乳化物の耐塩性
試 料 NaCl濃度(%)
(添加濃度0.3%) 0 1 2 5 グルパール19 ○ ○ ○ ○ c 耐熱性
表10 乳化物の耐熱性
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試 料 添加濃度 熱処理条件
(%) ① ②
グルパール19 0.3 ○ △
0.5 ○ ○(僅かに褐変)
熱処理条件 ① 120℃,25分
② 120℃,25分→更に電子レンジ5分(1分後 に沸騰)
グルパール19で調製したエマルションは,熱に対し非常に安定で,
また加熱による褐変は他のタンパク系に比べ微少です。
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d 耐酸性
表11 乳化物の耐酸性
添加濃度 グルパール19/酵素処理レシチン
(%) 100/0 60/40 40/60 30/70 0/100 0.5 × ○ ○ ○ × 1.0 × ○ ○ ○ × e 耐冷凍性
表12 乳化物の耐冷凍性
凍結条件 エマルションの種類 解凍時の様子 -20℃で凍結し,そ
のまま 24 時間放置
O/W=20/80,中性エマルション(グルパール 0.5%) ○ 表 11 の酸性エマルション(グルパール/酵素処理レシチン=40/60) ○ -70℃で凍結後-20℃で 24 時間放置 O/W=20/80,中性エマルション(グルパール 0.5%) × f 各種油脂に対する効果
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表13 グルパール19Sの各種油脂に対する乳化力
添加濃度 油脂の種類
(%) 流動パラフィン 中鎖トリグリセリド セチルイソオクタノエート シリコンオイル
0.3 △ △ ○ △
0.5 △ ○ ○ △
1.0 △ ○ ○ ○
2.0 ○ ○ ○ ○
同様の安定性を得るために必要なグルパール19Sの濃度は,セチ ルイソオクタノエート<中鎖トリグリセリド<シリコンオイル<流動 パラフィンの順で高くなります。
g 乳化の特徴のまとめ
グルパール19シリーズを用いた場合の乳化の特徴としては,次の
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事が言えます。
⒜ 通常の食品用乳化剤と同程度の使用濃度で良い。
⒝ O/W乳化に適し,広範囲のO/W比率に対応できる。
⒞ 耐塩性,耐熱性が強い。
⒟ 耐酸性については,酵素処理レシチンと併用するのが良い。
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⒠ 各種油脂に対して有効ではあるが油の種類により,その安定性に 差が認められる。
保水力(保湿力)
a グルパール19シリーズの2番目の効果として,保水力があります。
b グルパール19Sは,ヒアルロン酸よりも吸湿性が低く,化粧品用
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保湿剤として有用と考えられます。
ウ 安全性
グルパール19シリーズは,食品衛生法で定めるところの「食品」であ り,また,食品添加物や既存化学物質としても登録されているため,幅広 い応用が可能です。
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化粧品に使用する場合は,別紙規格で申請する事になりますが,すでに 申請中であり,化粧品,医薬部外品としての利用も可能です。
エ おわりに
食品以外の用途として,化粧品,医薬部外品などへの応用も期待されて います。今後は,それらの応用データを拡充し,グルパール19シリーズ を更に使いやすいものとして提供していきたいと考えております。
(乙ロA25)
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業界誌「ジャパンフードサイエンス」平成5年6月号に掲載されたJによ る「高乳化性植物たん白『グルパール』の特性とその利用分野」と題する論 文においては,グルパール19について,乳化安定性,保水性及び安全性を 生かして,化粧品分野への用途開発が期待でき,吸湿性も低いことから,理 想的な保湿剤であるとされている。また,医薬部外品としての使用前例も取
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得しており,タンパク系の活性剤であるため,シャンプー,リンス類の基剤 としても応用できると考えられるとされている。
(甲A15,乙ロB9)
情報誌「食品と開発」30巻8号(平成7年8月)に掲載されたNによる
「蛋白分解物“グルパール”の乳化機能と品質改良効果」と題する記事にお
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いては,小麦たん白分解物の性能等についての説明がされているところ,用 途としては,食品のほかに,「化粧品,医薬部外品においてもこの小麦蛋白 分解物を利用する事が出来る。特に,昨年から小麦分解物が『化粧品種別許 可基準』のリストに掲載された事より,以前にも増して使用し易くなってい る。」との記載がある。
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(甲A24)
被告片山化学が平成7年11月に発行したグルパールシリーズパンフレッ トには,グルパール19Sの主な用途として,「化粧品用精製品(使用前例 有)」と記載されている。また,化粧品及び医薬部外品用途の具体例として は,「クリーム,ローション,シャンプー,リンス,その他」が掲げられて
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いる。上記の「使用前例有」とは,ショーワスベットスクラブクリームにお