第2章 事案の概要等
第1節 認定事実
2 グルパール19Sの開発及び販売等
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被告片山化学は,スケール(水あか)防止剤の原材料として小麦グルテン
に着目し,その溶解性を向上させる目的で,各種の加水分解の方法を検討し ていたところ,その条件や方法の組合せにより,それぞれ,乳化安定性,保 水性,小麦グルテンの分散力等の点で優れる多様な物質が得られることが判 明した。このことから,食品である小麦由来の小麦たん白加水分解物は,加 工食品の乳化分散及び品質改良剤としても利用することができるものと考え
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られた。
そこで,被告片山化学は,平成元年4月,特に乳化分散力(乳化粒子の凝 集を防ぎ,分散させる性能)の強さに着目して開発した小麦たん白加水分解 物に「グルパール」との名称を付し,同年6月,天然乳化剤としてグルパー ルシリーズを業界紙に掲載したほか,展示会にも出展した。その後,被告片
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山化学は,グルパールについて,食品用途での研究開発を進め,平成2年,
グルパール19と同等の乳化力及び乳化安定性を有し,塩分を少なく調製し た「グルパール19H」を開発し,食品用として商品化した。
(乙ハA31,137)
被告片山化学は,上記展示会でグルパールシリーズの存在を知った大洋香
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料株式会社の依頼に応じて,同社に対し,グルパールシリーズについて技術 説明を行った上,サンプルを提供したところ,同社の研究により,グルパー ル19の保湿性が高いことが判明した。そこで,被告片山化学は,平成2年,
グルパール19Hと同一の物質に「グルパール19S」との名称を付して,
化粧品原材料として商品化した。
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(乙ハA137)
株式会社リアルは,平成3年3月7日,グルパール19Sを配合した商品
(販売名「ショーワスベットスクラブクリーム」)について,医薬部外品と しての製造承認申請を行い,同年12月1日,同承認がされた。
(乙ハA40,137)
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被告片山化学は,平成10年11月,被告フェニックスに対し,グルパー
ル19Sの出荷を開始した。この出荷開始に至る経緯は,次のとおりである。
ア 被告片山化学は,平成9年4月頃,当時継続的に取引を行っていた篠永 化成株式会社(以下「篠永化成」という。)に対し,グルパールシリーズ のパンフレット(乙ハA39。以下「グルパールシリーズパンフレット」
という。)を交付した。
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被告フェニックスは,この頃,石けんにひび割れが生じる現象を抑制す る効能を有する添加成分を探していたところ,同月,当時取引関係にあっ た篠永化成から,グルパールシリーズを紹介された。これを受けて,被告 フェニックスは,グルパール19Sを石けん素材に配合した場合の効果等 を検討するため,篠永化成を通じて,被告片山化学に対してグルパール1
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9Sの技術資料の提出を求めた。
イ 被告片山化学の担当者(第一研究部副主席研究員)であったJ(以下「J」
という。)は,平成9年5月9日,篠永化成の担当者であったK(以下,
単に「K」という。)及びL(以下,単に「L」という。)とともに,被 告フェニックスを訪問し,同社の担当者であったM(以下「M」という。)
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らと面会した。この際,Jは,Mらに対し,平成2年8月30日付けで被 告片山化学が発行した「グルパール19S(化粧品用)技術資料」(乙ハ A2,乙ロA24。以下「平成2年版技術資料」という。)を交付し,グ ルパール19Sについての技術説明を行った。被告片山化学は,この時に,
被告フェニックスが,グルパール19Sの特長である保湿性及び低吸湿性
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が石けんのひび割れ防止に役立つ可能性があるとして,グルパール19S の石けんへの利用可能性を検討していることを知った。
上記面談の際,Mが,Jに対し,グルパール19Sを石けんに配合した 場合の有用性について差し当たり1%の添加濃度で試験を行うとして,5 0g程度の製品見本の提供を求めたため,被告片山化学は,同量のグルパ
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ール19Sを無償で提供した。
また,この頃,Mは,篠永化成を通じて,被告片山化学から,平成3年 6月1日付けで被告片山化学が発行した「グルパール19シリーズ技術資 料」(乙ロA25。以下「平成3年版技術資料」という。)も受領した。
ウ Jは,Lから,グルパール19Sに関するグルパールシリーズパンフレ ット中の「使用前例有」との記載及び平成2年版技術資料中の「現在別紙
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申請中」との記載の内容について問合せを受けたため,平成9年6月30 日,Lに対し,グルパール19Sが粧原基に収載されている加水分解コム ギ末に該当することを示す資料とともに,グルパール19Sの使用前例が
ァクシミリで送信した。
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Lは,Mに対し,同日付けの文書で,グルパール19Sが粧原基に収載 された加水分解コムギ末に該当すること及び使用前例がショーワスベット スクラブクリームであることを伝えた。
エ 被告片山化学の従業員(第一研究部副主任研究員)であったN(以下「N」
という。)は,平成9年7月16日,K及びLとともに,Mと面会し,被
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告フェニックスに対し,グルパール19Sの製品見本(1.5kg)及び グルパール19Sに関する出願特許リストを提供した。この際,Mは,グ ルパール19Sを配合した石けんを試作したところ,ひび割れ防止のほか に,泡の質を改良する効果があることが判明したとの説明をした。
被告フェニックスは,上記製品見本を用いて,グルパール19Sを配合
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した石けんについてモニター試験を実施した。
オ Nは,篠永化成から,被告フェニックスが特許の出願に関して被告片山 化学に相談することを要望していると聞いたため,平成9年11月11日,
K及びLとともに,被告フェニックスを訪問した。この際,被告フェニッ クスは,グルパール19Sの有する泡の改質効果に関して,被告フェニッ
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クス,被告片山化学及び篠永化成の3社の共同で特許権を取得することを
検討しており,その出願手続等について被告片山化学に相談をした。もっ とも,その後,この特許の出願がされることはなかった。
カ 被告片山化学のNらは,平成10年7月8日,被告フェニックスを訪問 し,Mに対し,被告片山化学が同月7日付けで被告フェニックスに宛てて 発行した「グルパール19Sのシャンプー・リンスへの利用について」と
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題する資料(乙ロA23,乙ハA3。以下「平成10年版資料」という。)
を交付した。
キ 被告片山化学は,平成10年10月9日,被告フェニックスに対し,同 日付けの本件データシートを交付した。
ク 被告片山化学は,平成10年11月,篠永化成経由で被告フェニックス
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に対し,グルパール19Sの出荷を開始した。
(乙ロA45,48,乙ハA5,40,41,124,137,139の1)
その後,被告片山化学から被告フェニックスに対するグルパール19Sの 出荷は,平成11年3月及び同年10月に行われた後,中断していたが,平 成13年8月に出荷が再開され,平成22年8月まで,継続的にグルパール
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19Sの供給が行われた。この間の状況は,以下のとおりである。
ア 被告フェニックスは,平成11年頃,篠永化成を通じて,被告片山化学 に対し,グルパール19Sをリンスインシャンプー及びボディーシャンプ ーに配合した場合の効果について問い合わせたところ,被告片山化学から は,同社には化粧品に関するノウハウがなく,試験方法がないため,上記
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問合せには答えられないとの回答があった。
イ Mは,平成13年頃,H及びIから,両名が企画していた石けんの製造 について助言を求められ,H及びIとの間で協議を開始した。その後,平 成16年3月に本件石けんの販売が開始された。
ウ Mは,平成14年7月,被告片山化学に対し,グルパール19Sにつき,
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ゲル状化粧品やシャンプーへの配合を検討するため,被告片山化学におい
て化粧品用途での試験を実施することの可否を問い合わせたが,被告片山 化学は,化粧品用途での試験はできない旨回答した。
エ 被告片山化学は,平成15年に,平成2年版技術資料を改訂したほか(以 下,この改訂後の技術資料(乙ハA6)を「平成15年版技術資料」とい う。),平成16年8月1日付けで「『グルパール19S(化粧品・食品
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用)』技術資料」(乙ロA27。以下「平成16年版技術資料」という。)
を発行した。
(乙ロA45,48,乙ハA5,137,139の1)
被告片山化学は,被告フェニックスに対してグルパール19Sを提供して いた当時,グルパール19Sを化粧品又は医薬部外品に配合して使用するこ
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との危険性を認識しておらず,被告フェニックスに対し,その使用について の具体的な危険性や禁止事項を告知したこともない。
(乙ハA139の1)
本件アレルギー被害の発生を受け,グルパール19Sを含有するものとし て自主回収の対象となった医薬部外品又は化粧品は,被告フェニックスを含
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む11社の製造販売業者に係る合計35種類の製品であり,このうちの2つ は,渋の泡石けんである。また,上記35種類の製品のうち,アレルギー被 害が報告されているものは,2種類(各1例)であるが,渋の泡石けんにつ いてはアレルギー被害の報告はされていない。
被告フェニックスが製造していたグルパール19Sを含有する製品(化粧
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品又は医薬部外品)は18種類であるところ,うち14種類(渋の泡石けん を含む。)のグルパール19Sの配合濃度は,0.3%から0.5%までの 間の濃度であった。
(乙ハA19,20,139の4・5)