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第2章 事案の概要等

第4節 争点に関する当事者の主張

2 被告フェニックスの主張

洗顔石けんが含有する加水分解コムギにより,石けんを使用した多数の者 に対し,重篤なアレルギー症状を発症させることに関する知見

ア に加え,そのようなアレルギー症状が多数の者に生じ,か つ,重篤が被害を生じさせることは,一層予想できないものであった。

イ 加水分解コムギと天然小麦は全く異なるものであるから,従来型小麦ア

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レルギーの症状に関する知見から,本件アレルギーの症状の重篤さを認識 することができたことにはならない。

2 被告フェニックスの主張

の脱アミド化)にその抗原性増強の契機があったことが解明されている。

被告フェニックスは,上記工程に全く関与しておらず,本件石けんの引渡 時において,グルパール19Sに起因して本件アレルギーが発症すること を予見することができなかった。

エ アレルギー被害の特殊性

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前記第4 のとおり,本件石けんの欠陥を特定するに当たり,本 件石けんと,アレルゲンを含有する他の製造物との間の有意な差異として,

本件アレルギー被害が,通常のアレルゲンによるアレルギーと比較して,

被害の程度において重篤であり,かつ,被害発生の蓋然性において発症率 が高いことの立証が必要となるから,これらが開発危険の抗弁における認

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識可能性の対象となるのであって,単発的なアレルギー被害の発生自体に ついて認識可能であったとしても,直ちに欠陥を認識可能であったことに はならない。

本件石けん引渡時における本件アレルギーに関連する知見 ア 本件石けん引渡時におけるアレルギーに関する知見

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食物アレルギーは,非毒性物質であるアレルゲンによる反応であると ころ,アレルゲン自体はごく普通のたん白質であって,その分子構造(エ ピトープや分子量)に共通した特徴はなく,ある物質がアレルゲンとし て機能するには,それ自体の構造や機能のほか,生体内への侵入経路,

暴露量,暴露の持続時間及びホスト側の遺伝的要因が密接に関わってい

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る。したがって,いかなる成分が,どのような機序で,特定の人に対し てアレルゲンとして機能するかということについての明確な知見は存在 しない。また,ある成分について感作が成立した場合,どのような範囲 で交叉反応が生じるかということも解明されていない。

アレルギーに関するこれらの知見を前提にすると,あらかじめアレル

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ゲンとなり得る成分を特定した上,これらを事前に製造物から排除する

という措置を執ることは,現時点においても不可能である。

アレルゲンとなり得る物質には,社会生活において,食品用途のほか,

工業的に加工され,多種多様な用途で用いられているものがあり,グル パール19Sが属する加水分解コムギ末も,被告悠香による本件石けん の自主回収開始後においてもなお,化粧品やシャンプーなどの原材料と

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して広く利用されているのであって,アレルゲンとなり得る成分につい て,全て危険な物質であるとして,利用を全て中止するという選択をす ることはできない。

イ 本件石けん引渡時における加水分解コムギ末に関する知見

本件アレルギーについては,症例確認後の調査研究により,従来型小

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麦アレルギーとは全く異なる型のエピトープを有する抗原が原因となっ ており,その独自の抗原性は,グルパール19Sの加水分解の仕方及び 製造工程により産生された高分子量の抗原性たん白質に由来するとの知 見が明らかになってきている。また,グルパール19Sは分子量が2万 から2万5000程度の分解産物を含むところ,本件石けんの引渡時に

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は,そのような高分子量のたん白質が,皮膚の角質を通過して皮膚内に おいて感作を引き起こすことはないと考えられており,経皮的,経粘膜 的な感作により,重篤な食物アレルギー症状を発症するという危険性を 指摘する知見は存在しなかった。

したがって,本件石けんの引渡時の知見において,高い蓋然性で,本

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件石けんに含まれるグルパール19Sがアレルゲンとして作用し,さら に,経口摂取した小麦製品により交叉反応を生じて,生命に危険を及ぼ す重篤なアレルギー症状を発症し,一生涯そのような状態が続くという 危険性を本件石けんが有すると認識することはできなかった。このこと は,加水分解コムギ末が,長年にわたって,外原規等に収載され,食品

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及び化粧品等の多様の製品に用いられてきており,現在も用いられてい

ることからも裏付けられる。

本件石けんの引渡しの当時,欧州では,化粧品中の加水分解コムギに よる接触性蕁麻疹の症例,その一部として,加水分解コムギの経口摂取 による食物アレルギー発症の報告はあったものの,単なる症例報告にと どまり,発症の機序及び原因について基礎研究として考察を加えたもの

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ではない上,交叉反応の発現の有無や範囲,症例数において本件アレル ギーと異なっており,本件アレルギーと同様の機序によるアレルギー症 状の発症を指摘するものではなかった。原告らの指摘する文献の内容に ついても同様である。

また,前 のとおり,本件アレルギーは,従来型小麦アレルギーと

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は別のアレルギーというべきであるから,従来型小麦アレルギーに関す る知見から,本件アレルギー症状を発症する危険性を認識することはで きなかった。

ウ グルパール19Sの抗原性についての検査方法に関する知見

製造物に含まれるアレルゲンが当該製造物の欠陥に当たるとの評価を基

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礎づけるアレルギー被害の重大性及び発生頻度の高さを認識することが可 能であったというためには,当該抗原に関する安全性試験を行い,その被 害の重大性及び被害発生の頻度を定量的に測定できたことが必要となると ころ,以下の各事情によれば,本件石けんの引渡時において,本件石けん が本件アレルギーを引き起こす危険性を有することについて,事前の安全

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性検査によって認識することは不可能であった。

グルパール19Sは,所定の安全性検査を経た上,現実の使用実績も あるものとして,安全性に対する信頼が確立していた外原規等に収載さ れた成分である加水分解コムギ末の規格基準に適合するものとされてい た。

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当時の世界最高水準であった経済協力開発機構(OECD)のガイド

ラインに準拠して粧工連が定めた安全性検査の基準は,皮膚上における 感作及びアレルギー症状発生の有無を確認するものであり,また,限ら れた人数を被験者として,長くても1か月程度の期間で行われるもので あるという点で限界があった上,仮に,検査によって一部の者に軽微な 皮膚障害が認められたとしても,それだけで直ちに安全性を欠くと判断

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されるものではなかった。欧州共同体(EC)や,欧米の業界団体が定 めていたガイドラインにおける安全性試験の方法も,同様の特徴を有す るものであった。

前記 のとおり,動物実験によってアレルギーに関する 安全性を検査することにも限界があった。

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