第2章 事案の概要等
第1節 認定事実
6 本件アレルギー患者の素因等に関する見解
日本皮膚科学会雑誌122巻4号(平成24年4月)に掲載された,E委 員及びF委員らのグループによる,口腔内アレルギー症候群(OAS)症状
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を有し,本件石けん使用後に小麦依存性運動誘発アナフィラキシーを発症し た症例1例の報告においては,「AD合併例が多いOASも経皮,経粘膜感 作された抗原蛋白と交差反応により発症し,AD素因を持つ患者では経皮感 作を契機としたclass2食物アレルギー成立を来しやすい危険性が考え られる。」との見解が示されている(ADとはアトピー性皮膚炎である。)。
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なお,OASは,食物摂取後の口腔咽頭粘膜症状を主症状とするIgE抗
体介在性食物アレルギーであり,果物や野菜が原因となる場合は,先行して 感作された花粉との交叉反応によって生じることが多く,「花粉-食物アレ ルギー症候群」といわれる。皮膚アレルギー患者の約70%は,代表的な花 粉5種(スギ,ハンノキ,カモガヤ,ブタクサ及びヨモギ)のうち少なくと も1種に感作されており,花粉感作例のうち約4%が植物性食品のOASを
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合併し,中でもハンノキ花粉とOASとの間に強い相関が認められるとされ ている。OASの症状としては,原因食物摂取後約1時間以内に,口腔咽頭 粘膜症状(口唇・舌・口腔粘膜・咽頭の掻痒,刺激感及び閉塞感の自覚並び に口唇や口腔粘膜の腫脹,水疱等)が出現し,時に,引き続き,鼻症状(鼻 孔掻痒,鼻汁等),眼症状(流涙,眼球粘膜の充血・腫脹),耳症状,皮膚
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症状(眼瞼や顔面の浮腫,全身性蕁麻疹),消化器症状(腹痛,嘔吐等),
呼吸器症状(呼吸苦,ぜん息発作等)を伴い,さらにアナフィラキシー・シ ョックに至ることもあるとされている。
(乙ロB4,24)
平成24年5月28日付けの特別委員会の中間報告では,以下の内容を含
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む報告がされている。
ア 本件アレルギーを発症した人としなかった人の違い
本件アレルギーの症例の約50%にアレルギー疾患の既往歴があった。
アレルギー疾患の中では花粉症が80%(症例全体では40%)を占め,
その他のアレルギー疾患の既往歴があった症例は全体の10%であった。
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この頻度と同年齢の一般の人の有病率との間に明らかな差は認められない。
50%の人にはアレルギー疾患の既往はなく,健常人にも感作が成立する。
どのような人に感作しやすいかは,現在,研究が進められている。
イ 重篤化している人とそうでない人の違い
症状の重篤化については,素因の関与があると考えられているが,詳細
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はいまだ明らかにできておらず,現在,研究が進められている。
(甲B23の7,乙イB1の1,乙ハA17)
アレルギー62巻9・10号(平成25年10月)に掲載された,B委員 らのグループによる本件アレルギー症状における予後因子の検討結果の報告 は,小麦・グルテン特異的IgE抗体値の低下又は臨床的な改善がみられな い症例は,ハウスダスト,スギ等の特異的IgE抗体値がクラス3以上であ
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るものがほとんどであり,他方,抗体値が速やかに改善した症例は,アトピ ー素因が全くない症例が多いが,職業的に小麦に暴露される環境にある症例 は,アトピー素因がなく,抗体値も陰性で,2年以上小麦製品の摂取を制限 していても,症状が改善しなかったとした上で,予後因子として,強いアト ピー素因の有無,職業環境などが考えられたと結論付けている。
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(乙ロB23)
臨床免疫・アレルギー科60巻4号(平成25年10月)に掲載されたB 委員らによる論文では,要旨,次のとおりの見解が示されている。
ア 本件アレルギーは,従来型小麦アレルギーと異なり,アレルギー疾患の 既往が全くない患者にも発症しているが,アトピー疾患の既往がある患者
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も少なくない。
イ 本件石けんの使用を中止しても,小麦やグルテンの特異的IgE抗体値 の低下の程度には個人差があり,本論文で報告した2症例のうち,一方に ついては,日常的に小麦に接し,吸引する環境にあるため,上記抗体値は 陰性になっても,臨床症状の改善が非常に緩やかであることが考えられ,
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もう一方については,元来アトピー素因の強い患者において,既存のアレ ルギー疾患の活動性が亢進されると,小麦アレルギーの活動性も連動して 亢進されてしまう可能性が考えられた。
(乙ロB25)
平成25年11月28日開催の特別委員会においては,本件アレルギーの
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予後・治療・対策として,治りにくい症例は,アトピー素因のある患者が多
いとの報告がされている。
(甲B23の12,乙イ総C3,乙ハA125)
の論文(平成26年6月)においては,本件アレルギーの確 定診断例41例のうち,1例を除いて食物アレルギーの既往はなく,アレル ギー素因を全く有しない症例もみられ(6例はアトピー素因がなく,3例は
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アトピー素因がない可能性が高いと判断された。),従来型小麦アレルギー と大きく異なる点とされている。また,今回の検査で初めて自身のアトピー 素因を知った患者も少なくなく,それまでアレルギー症状で日常生活に支障 を来していた患者の方が少なかったとされている。
(甲総C16)
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特別委員会の疫学調査における,平成26年10月20日時点での本件ア レルギーの症例のうち,アレルギー疾患の既往歴があった例の割合について
のとおりである。
また,特別委員会では,遺伝的素因の関与に関して,以下のとおりの各報 告がされている。
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ア 平成25年5月10日開催の特別委員会
本件石けんを使用して重篤な抗原アレルギー反応を呈した症例について 遺伝的素因の確立を目的として遺伝的解析を行う。ゲノム解析には患者数 が必要である。発生状況から遺伝的素因関与が考えられ,コントロールは 理化学研究所で収集されている一般集団を使用する。
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イ 平成25年8月31日開催の特別委員会
ゲノム解析の意義については,今回の症例群は,本件石けんを使用した 人のうちごくわずか(0.1%以下)の人が発症していることから,疾患 発症に与える影響が強い。アレルギーに関連する新規の遺伝子の同定が期 待され,治療や予防につながる可能性がある。
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(甲B23の9から11まで,乙イB5,11,乙イ総C4)
7 本件アレルギー被害発生後の状況等