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慰謝料に係る請求についての考え方

第2章 事案の概要等

第6節 争点5(原告らの損害〔総論〕)について

1 慰謝料に係る請求についての考え方

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本件において原告らは,被告らに対し,原告らが将来にわたり小麦製品を 安心して食べることができなくなったことに伴う精神的苦痛を核心とする本 件アレルギーにり患したことにより生じた精神的苦痛に対する慰謝料を基本 として,これに治療関係費に係る損害等を含めた各1000万円の「包括的 慰謝料」並びに各自の逸失利益及び弁護士費用の合計額の一部として,各1

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500万円の支払を求めている。このうち包括的慰謝料は,財産的損害であ

る治療関係費に係る損害等についてその算定の基礎となる個々の事実を主張 立証することなく,それを慰謝料に含めて請求するものであり,その趣旨は,

上記の各損害については,本件訴訟の口頭弁論終結時までに生じた損害に関 する限り,今後,被告らに対し,別途,賠償請求する意思がないことを明ら かにした上で,これらの財産的損害の発生があり得ることを慰謝料額算定の

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際に斟酌すべき諸般の事情の一つとして位置付けるものであると解される。

そして,このように解される限りで,原告らの包括的慰謝料の支払を求める 請求は許されるものであり,裁判所としては,このような請求の本旨を没却 しない程度において概括的に本件アレルギー症状の発症による被害の程度を 捉えた上,各原告らにつき,その程度ごとに共通して生じる被害のみを対象

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としてこれに相応する慰謝料の額を定めることができるものというべきであ る。

本件における原告らの慰謝料請求の本旨に鑑みると,上記のような慰謝料 の算定の対象となる被害の程度を検討するに当たっては,以下のとおり,発 症した本件アレルギー症状の程度(重症度)を考慮するのが相当である。

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すなわち,原告らは,別紙6各原告の損害のとおり,いずれも,本件アレ ルギー症状を発症しており,前記第1 で挙げた症状のうち のいずれかの症状を発症したことが認められるところ,その症状の内容並び にそれによる社会生活及び日常生活への支障の内容(前記第3

に加え,本件アレルギー被害発生後の状況(前記第1節第4の7)によれば,

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本件石けんの使用者である一般の消費者は,早くても被告悠香が本件石けん の自主回収を開始した平成23年5月まで,上記アレルギー症状の原因(感 作抗原)を容易に知ることのできない状況にあったということができ,この ような本件アレルギー症状の発症後の原告らが置かれた状況をも考慮すると,

上記の症状を発症したこと自体,一定程度の肉体的及び精神的苦痛を伴うも

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のであったといえ,各原告らに相応の金額の損害が生じたものと評価するの

が相当である。そして,上記の症状のうち,ショック症状を伴うものである アナフィラキシー・ショック又はこれに準ずる症状については,生命に対す る危険を伴うという点で,他の症状よりも重篤なものということができる。

他方,その他の症状については,それぞれ異なる点で健康上又は生活上の支 障が生じるものではあるものの,慰謝料額算定の観点から,症状の程度を類

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型的に区別して金銭的に評価するのは困難であることから,それらの症状に 伴う精神的苦痛については,一律の慰謝料額をもって評価するのが相当であ る。したがって,原告らが発症した本件アレルギー症状の程度(重症度)に ついては,アナフィラキシー・ショック又はこれに準ずる症状を発症したか 否かにより,それに対応する慰謝料額に差異を設けるのが相当というべきで

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ある。

以上に対し,被告らは,原告ら各人について,損害と評価できるような小 麦製品を摂取することができない状態(治療の必要性がある状態)がいつか らいつまでの期間,どの程度存在するのかが客観的に立証されない限り,原 告らについて損害の発生は認められないと主張する。

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しかし,精神的苦痛が生じたことを損害として評価し,慰謝料を認め得る 場合は,被告らの主張する上記のような場合に限られるものではない。そし て,既に説示したとおり,本件アレルギー症状を発症したこと自体,一定の 精神的苦痛を伴うものであり,これを損害とみることができるのであって,

その損害の程度に相応するものとして,被告らの主張するような事情が立証

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された場合に認められることになる慰謝料額と比較して低額の評価にとどま る限度において,その損害に対応する慰謝料を認めることは許されるという べきである。

他方で, で検討したとおり,本件アレルギーは,

従来型小麦アレルギーと比較して,早期にその症状が改善し,又は治癒・寛

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解に至る傾向があるということができる。このことからすると,原告らにつ

いても,本件アレルギー症状が既に治癒・寛解に至っている者が相当数存在 することがうかがわれ,そうでない者についても,今後,症状が改善し,治 癒・寛解の状態に至る可能性があるといえるから,その損害について,前記

本件アレルギーが全体として上記のような傾向にあることは十分に考慮すべ

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き事情と解するのが相当である。