第2章 事案の概要等
第5節 争点4(開発危険の抗弁の成否)について
2 経皮感作による食物アレルギーのり患について
前記第1節第5の4 によれば,平成15年の時点で,ピーナッツオイル 中のピーナッツたん白質によって経皮的に感作が成立し得るとの知見が存在
しており,また, たん白質抗原によるア
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レルギーに関して,ゴム手袋等のラテックス製品によって感作が成立し,そ の後,バナナ等を摂取することで,交叉反応を起こしてアナフィラキシー症 状を発症するラテックスアレルギーや,化粧品中のコチニール色素により感 作が生じ,その後,同じ色素を含む食物を摂取することで,即時型アレルギ ーの症状を発症するコチニールアレルギーの症例が報告されていたのである
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から,本件石けん販売期間よりも前に,ゴム手袋等のラテックス製品や,コ チニール色素を含む化粧品を使用することにより,すなわち,経皮感作によ り,即時型アレルギーにり患し得るとの知見が存在したといえる。
また, 化粧品(ヘアコン
ディショナー又は身体若しくは顔面用クリーム)中の加水分解たん白(コラ
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ーゲン又は小麦たん白質)をアレルゲンとしてⅠ型(即時型)アレルギーの
症状を発症した症例が複数報告されており(平成16年及び平成18年にも 加水分解小麦たん白質をアレルゲンとする同様の症例を報告する論文が公表
,その中には,経皮的に感作が成立した可能性 が高い,又は化粧品の使用中に加水分解小麦たん白によって感作された可能 性が高いと指摘するものが存在するところ,上記の化粧品は,いずれも,人
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の皮膚に使用する用途のものであるから,これらの症例報告が指摘する感作 は,経皮的又は経粘膜的な感作であると考えられる。これらの症例報告に加 え,本件アレルギーに関連して発表された論文において,欧州では,平成7 年頃から,化粧品やヘアケア製品中のたん白加水分解物に対するアレルギー の報告
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本件石けん販売期間よりも前の時点で,化粧品の使用をすることによって,
その成分中のたん白加水分解物による経皮的又は経粘膜的な感作が成立し,
即時型アレルギーにり患し得るとの知見が存在したといえる。
さらに,同 ,
①顔面の皮膚は薄く,そのバリア機能は,他の部位の皮膚の病変部と同程度
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であり,皮膚炎で損傷したバリア機能の回復にも10日以上要するとの知見 及びアレルゲンは,皮膚バリア機能を通過しうる条件を持つ物質と共存する ことによって,大量に表皮内に侵入するところ,化粧品等に添加された界面 活性剤は,アレルゲンの経皮侵入を容易にするとの知見がそれぞれ存在して いた。なお,食物のたん白質のアレルゲン性については,食物アレルゲンの
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分子量は1万から7万の範囲のものが多く,低分子化するとアレルゲン性が 失われることが知られているが,果物に含まれるものを除いて,酸に対して 耐性を示すものが多いとの知見も存在した 。
以上の各知見は,分子量1万以上のたん白質はアレルゲンとなり得ること 及び加水分解小麦たん白をアレルゲンとして経皮的又は経粘膜的に感作が成
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立し得ることを示すものといえる。
これに対し,被告らは,本件石けん販売期間よりも前の時点で,正常な皮 膚においては分子量が500を超える物質について,正常な粘膜においては 分子量が1200をそれぞれ超える物質について,それぞれ透過吸収性が急 速に低下するとの知見(500ダルトンルール)が存在していたため(前記
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に照らすと,本件石けんの引渡し当時,経皮的,経粘膜的に感作が成立し,
食物アレルギーにり患することは認識することができなかったと主張する。
しかし,500ダルトンルールは,あくまで正常な皮膚及び粘膜に関する 知見であって,その前提となる皮膚バリア機能が減退している場合には妥当 しないものと考えられる
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の部位と比べて皮膚のバリア機能が弱いとの知見が存在したところ,前記第 1節 よれば,本件アレルギーは,本件石けんの使用によって顔 面の皮膚バリア機能が低下したためにグルパール19Sによる感作が成立し,
発現したものといえるから,本件アレルギー症状の発症は,500ダルトン
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期間よりも前の時点で,経皮感作による即時型アレルギーの症例に関する知 見が存在し,さらに,石けん中の界面活性剤により皮膚バリア機能が毀損さ れ得るとの知見も存在したのであるから,本件石けん及びグルパール19S の引渡しの時点において,500ダルトンルールに係る知見の存在によって,
本件石けん中のグルパール19Sにより,経皮的又は経粘膜的な感作が成立
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し得ることを認識することができなかったとはいえない。
また,W意見書には,石けん中のたん白成分は通常直ちに洗い流されるこ とが想定されることから,本件石けん又はグルパール19Sについて欠陥の 認識可能性を判断するに当たり,前記第1節第5の5の各症例報告に係る知 見は参考にならない旨の記載も存在するところ,確かに,上記各症例報告に
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おいてアレルギーの原因とされているクリーム類やヘアコンディショナーと
洗顔石けんとは,上記の点で異なるものといえる。
しかし,上記各症例報告に係る知見は,化粧品中の加水分解たん白質で経 皮的に感作が成立したことを示すものといえる一方で,それらの症例報告に は,皮膚に触れる時間が短い場合には感作が成立しないといった考察は記載 されていない。また,本件石けんは,界面活性剤を含有する洗顔石けんであ
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り,顔の洗浄のために日常的に反復して使用されることが想定されるもので あるという点で,上記各症例報告における化粧品類とは別個の,配合成分に よる感作が成立しやすい条件を作り出す性質を有しているといえるから,単 に,直ちに洗い流すことが想定されているかどうかということによって上記 の化粧品類と比較することはできない。そして,本件石けんが上記の性質を
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有していることは,その販売開始当初から明らかであった。そうすると,本 件石けん中のたん白質成分が通常直ちに洗い流されることが想定されていた ということによっても,本件石けん及びグルパール19Sの引渡し時点にお いて,本件石けん中のグルパール19Sにより,経皮的又は経粘膜的な感作 が成立し得ることを認識することができなかったということはできない。
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3 経口摂取した小麦製品との交叉反応によるアレルギー症状の発症について