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第2章 自然エネルギー政策と市場

2.5 産業および雇用

85 UNEP, Global Trends in Renewable Energy Investment 2013 http://fs-unep-centre.org/publications/global-trends-renewable-energy-investment-2013 86 BNEF プレスリリース (2014 年 1 月 15 日 ) http://about.bnef.com/press-releases/clean-energy-investment-falls-for-second-year/

87 “Green Jobs,”UNEP, ILO, etc,.(2008) 88 BMU AGEE-Stat

  http://www.bmu.de/en/service/publications/downloads/details/artikel/development-of-renewable-energy-sources-in-germany-in-2011-graphics-and-tables-1/

89 小野善康ほか「エネルギー転換の雇用効果」2012 http://www.iser.osaka-u.ac.jp/library/dp/2012/DP0846.pdf

82

の拠点として独立行政法人、新エネルギー・産業技術開 発機構(NEDO)等がある。NEDOでは、太陽光発電、

バイオマスエネルギー、風力発電の各分野においてコス ト低減や性能向上を図るための研究開発、併せてこれ らの導入を支える系統連系、超電導技術にも取組んで いる90。2010年には、「再生可能エネルギー技術白書」

発行したが、2013年にはその改訂版を発行している91。 2012年からは日本国内において本格的な洋上風力発電

(着床式)の実証試験にも取組んでいる92

 2.5.2 太陽光発電

(1)産業

 太陽電池セルの世界の生産量は、2005年の190万か ら2012年には3595万kWと約19倍に急成長した。2005 年には日本が世界シェアの55%を占めていたが、2007年 以降、中国/台湾のメーカーが急激に世界シェアを拡大 し、2007年には第1位となり、2012年には中国が世界の 太陽電池セル生産量の64%のシェアを占めるに至った

(図2.31)。日本は2005年の生産量82.4万kWから2012 年には194.1万kWと生産量は2倍以上に増加したが、世 界シェアでは55%から5%に大幅に低下した。

 世界の太陽電池市場(モジュール販売ベース)は2011 年4兆286億円、2012年2兆6256億円、2013年(見込み)

3兆889億円としている93。2012年は、年間出荷量が3500 万kWと2011年比6.2%増だったが、欧州の市場の減退 やモジュール価格の低下の影響と見られる。2013年につ いては、欧州の割合がさらに縮小するのに対して、中国 等の新興国や、米国や日本等の市場が好調で、出荷量 も4200万kW程度(2012年比19%増)と見込まれてい る。日本国内の太陽光発電システムの市場については、

実際の導入量ベースで2011年が6800億円、2012年が 9000億円に対して、2013年には2兆4700億円の市場規 模になると見込まれている。これは、2012年7月からの FIT制度の効果により業務用や発電事業用の太陽光発 電の市場が急成長したことが大きな要因となっている。

(2)雇用

 2009年3月に公表された、経済産業省等で構成される

「ソーラーシステム産業戦略研究会」報告書によれば 2007年の市場規模は1兆円、雇用規模は1.2万人と言わ れている。これは、太陽電池パネルの製造、販売、工事 に分けて調査したものである。さらに、2020年における 最大ケースとして、世界シェアを3分の1として市場規模 10兆円、雇用規模11万人と推定している。また、太陽光 発電協会が2006年に公表した「太陽光発電産業自立 に向けたビジョン」では、2030年の国内における雇用効 果として、累積導入量を8400万kWと想定した場合、直 接雇用で5.5万人、間接雇用効果を含めた場合で33万人 と予測していた。

 2010年5月に経産省が発表した「産業構造ビジョン」

では2020年までに、環境エネルギー産業全体で30.6兆 円市場となり、66.1万人の雇用に成長させるとしている。

太陽光の導入量と雇用の関係のデータは世界的に乏し いが、ドイツは、2004年から2011年までのデータを調 査、公表している。仮に累積導入量と雇用が比例関係 にあるとすると、ドイツの2012年では、累積導入量は 3200万kW、雇用は10万人に対しJPEAによる2020年日 本での累積導入量は2800万kWであるので、太陽光発 電関連産業での雇用は約9万人程度と試算される。

 また一般に自然エネルギーは化石エネルギーよりも間 連産業に対する雇用創出量(電力生産量単位当たり)が 大きいと指摘されている(表2.19)。これは自然エネル ギーの多くが、小規模・分散型で裾野が広いことによる が、その中でも特に太陽光発電は、機器の製造、設置、

保守管理等の各段階で、太陽電池メーカー、建材メー カー、ゼネコン、工務店等、様々な事業主体が関わってお り、雇用創出量が最も大きいと考えられている。

90 独立行政法人、新エネルギー・産業技術開発機構、エネルギー・環境分野事業 http://www.nedo.go.jp/activities/portal/gaiyou/pro_08.html 91 NEDO 再生可能エネルギー技術白書 http://www.nedo.go.jp/library/ne_hakusyo_index.html

92 NEDO 洋上風力発電 http://www.nedo.go.jp/fuusha/

93 富士経済「太陽電池の世界市場を調査」2013 年 10 月 https://www.fuji-keizai.co.jp/market/13072.html

94 「グリーンジョブとエネルギー経済」(Ditlev Engel/Daniel M.Kammen) より環境省作成)http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h22/

エネルギー種別 雇用創出量 * 太陽光

太陽熱 地熱  バイオマス 風力 原子力 石炭 天然ガス

0.91 0.27 0.25 0.22 0.17 0.15 0.11 0.11 表 2.19:エネルギー種別の雇用創出量 94

(出所:環境省資料)

2005年地域別生産量 2012年地域別生産量

日本 55%

150万kW 3595万kW

ヨーロッパ 32%

その他3%

アメリカ 10% 

中国 日本 64%

5%

その他アジア 16%

ヨーロッパ 11%

その他1%

アメリカ 3%

図 2.31:世界の地域別の太陽電池セルの生産量

(出所:PV News, Greentech Media 等から ISEP 作成) * エネルギー GWh 当たりの Job-Year

(年間何人が雇用されたか)

83

 2.5.3 風力発電

 風力発電の産業は、太陽光発電と異なり自動車産業 に近い「1〜2万点の部品による組み立て産業」であり、

風車の機械系・電気系・素材系の部品産業、メンテナ ンス(年2回の定期点検)に加えて、送電線や系統運用 設備の新増設工事、土木・建設工事等を含めると産 業・雇用効果が大きい事業であると言える。

 以下に世界の風力発電産業の主な動向を示す。世界 風力会議(GWEC)発行の「Global Wind Energy Outlook 2012」95 では、世界の風力発電産業の2011年 実績値と2015年、2020年、2030年における推定値を 公表している。表2.20に、“Moderate Scenario”の場 合の主なデータを示す。

 アメリカのDepartment of Energy(DOE)発行の

「20%Wind Energy by 2030」計画では、風車の製 造・建設・運用で15万人の直接雇用を、関連部門産業・

メンテナンス等で30万人の雇用が図れると公表してい る。

 日本における風力発電産業の統計値は、2010年(平 成22年)より、財団法人機械振興協会が公表している が、2010年以降は国内の新設風力発電設備容量が低 減していることおよびアンケート調査に対する回答会 社数が少なかったことに注意を要する。大型風車本体 に関する主なデータを表2.21に示す。

 一方、国内における風力発電建設コストはkWあたり 約30万円であり、風車本体費用はその約60%であるの で、電気設備や土木工事等を含めた風力発電産業全

体の全売上高や雇用人数は、上記 の約1.5倍と推定される。

 風力発電設備は、約20年で設備 更新をおこなうので、日本風力発電 協会(JWPA)が策定した導入目標

「2050年までに需要電力量の20%

以上供給」の場合、2030年以降は 継続して約360万kWを生産すること になるので、市場拡大に伴う量産効 果により建設コストは低下するもの の、現時点では洋上風力の建設コス トは陸上よりは高いことおよびメン テナンスコストを加味すると、国内向 けのみで約9000億円/年の市場規 模、約3万人の雇用に相当する。

 一方、世界市場は年率約20%の上 昇が見込まれており、国内の風力関 連産業における市場規模は、風車

95 GWEC “ Global Wind Energy Outlook 2012“ http://www.gwec.net/publications/global-wind-energy-outlook/global-wind-energy-outlook-2012/

項目 年間生産風車 風車価格 市場 風車産業雇用 為替レート

万 kW/ 年 千円 /kW 兆円 / 年 万人 / 年 円 /€

4,059 137.5 5.6 64.7 110

7,406 129.0 9.8 121.4 110

9,574 123.4 12.3 168.3 110 単位 2011 年 2020 年 2030 年 表 2.20:世界の風力発電産業の実績 (2011 年 ) と 2020 年、2030 年の推定 値 (GWEC“Global Wind Energy Outlook 2012”より作成 )

国内新設風車 全売上高 内数:海外出荷額 内数:部品類 内数:国内調達額 大型風車雇用 風車部品雇用

万 kW/ 年 億円 / 年 億円 / 年 億円 / 年 億円 / 年 人 / 年 人 / 年

25.6 1,563 1,266 987 542 903 3,097

8.2 799 597 543 247 650 2,244

項目 単位 2010 年 2011 年

表 2.21: 日本の風力発電産業の統計値 ( 財団法人機械振興協会データより作成 )

図 2.32:風力発電装置と主な日本メーカー(JWPA 作成)

図 2.33:風力発電装置と主な日本メーカーの所在地  (JWPA 作成)

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本体および大型軸受け等の機械系部品や電気系部品 に加えて、風車ブレードへの適用が検討されているカー ボン繊維等の海外輸出を積極的に推進することによ り、2020〜2025年には、最低でも約2兆円/年、約5万人 の雇用を実現することが可能と言える。

 風力発電装置と主な日本メーカーの機器対応を図2.32 に、所在地を図2.33に示す。

 2.5.4 バイオマスエネルギー

 バイオマスは「動植物に由来する有機物であってエネ ルギー源として利用できるもの(原油、石油ガス、可燃 性天然ガス、石炭、ならびにこれらから製造される製品 を除く)と規定される96」。したがって、具体的なバイオ マス資源は多種多様なものが含まれることになるが、産 業という側面で捉えると、一次産業系資源(木質系・農 畜産系)と廃棄物系資源に大きく分類できる。

 この二つの燃料系の違いによって、産業形態は大きく 異なる。廃棄物系資源および木質系の一部は、すでに 製紙産業、セメント産業プラント、石炭混焼発電、製材 工場での製材廃棄物利用等で産業化されており、一定 の条件の下で、主に化石資源(重油、灯油)等の節減と それに伴う(化石燃料)省エネルギーに貢献している。

また、「自然エネルギーの優等生」的な評価を受けてい る事例もある。ただ、石油系燃料の価格によりその需 要は大きく変動するのが通常であり、また、従来型の地 域循環を阻害する側面もあり、慎重な運用が求められ ている。さらに、特定の事業体による相対取引が通常 のため、一部の廃棄物処理事業者、木材流通業者、運 搬業者等における事業維持および雇用維持にとどまっ ている。

 またその他の木質系の大半、農水産畜系、食品廃棄 物に関しては、産業としては発展途上である。その大き な要因は、バイオマス資源が太陽エネルギー・風力エネ ルギー等の他の再生可資源と異なる性格を持つことが 考えられる。

 農林水産業等の一次産業系資源は、地域広範囲に 分散して存在し、かつその形態が多様であるために、

一つの大きな産業として発展しづらい。また、元資源を 加工・処理・輸送する必要があり、太陽・風・地熱等に 比べて、エネルギー資源としては手間がかかり、資源コ ストという面では不利になる。ただ、多くの地域にまん べんなく資源は存在することから、工夫次第では、小規 模ながらも地域の活性化雇用の創出に貢献できる。

 廃棄物系資源では、一次産業系資源のような問題は 少ないが、廃棄物処理施設や従来型のプラント、製材 工場等にエネルギー発生設備を併設することが一般的

であり、独立したエネルギー産業としては成立しにく い。また、逆有償と称する廃棄物処理料金を得てバイオ マスエネルギー事業の収支を改善することが理想であ るが、バイオマスエネルギープラントの設置が優先する ケースが多い。そのために、エネルギープラントの安定 稼働のために多くの資源を必要としている事情を廃棄 物の排出者に把握されると、処理料金の値下げ、中に は逆に提供料を要求されると共に、廃掃法との関係が 複雑となることがある。

 以上のような背景からも、単独のエネルギー産業とし てではなく、地域の一次産業(農業・林業・畜産業等)

や観光、公共施設といった地域に大抵存在するエネル ギー活用を相互に連携させ、地域産業として発展させる ことが必要と考えられる。今後は地域分散型エネル ギーとして、地域の経済や特質を踏まえての地域融合 産業の模索が必要になる。したがって、雇用についても エネルギー単独産業としてではなく、地域の一次産業 の活性化と地域エネルギー利用産業の拡大による、地 域の総合的な雇用を生み出せる可能性を持ちあわせて いる。こうした側面からのバイオマス資源の評価、総合 雇用の創出(単独産業だけではなく、百業的な地域資 源活用産業として)、維持の側面を中心に施策を展開す ると共に、地域資源利活用を総合的にコーディネートで きる人材の育成が必要とされる。さらに、地域の小規模 エネルギー業(電気工事業、LPG関連業、熱利用施設 施工業)、土木建設業、運輸業等、機械、金属加工業等 との連携による、新たな産業連関の創出も必要となって くるであろう。

(1)バイオマス発電

 バイオマス発電の中でも、廃棄物の処理施設に併設 されている発電設備が多い。第3章で示すようにバイオ マス発電設備のうち設備容量の9割近くがこの廃棄物に よるものである(石炭混焼は除く)。廃棄物としては一 般廃棄物と産業廃棄物に大きく分かれる。前者は、所謂 ごみ処理場に付随した発電設備が主体であり、これは 地方自治体がごみ処理の一環として実施しているが、今 後3R活動が進展し(本来の理想ではあるが)、国民経 済の低成長時代に移行するならば資源としての廃棄物 量も大きくは増加しないと推測される。またしばらくは 地方行政が事業主体となる可能性が高いと思われる。

 一方の産業廃棄物を資源とするエネルギーでは、製 紙会社やセメント会社において自社使用の熱・電力エ ネルギーのために設置されていた化石燃料系原料エネ ルギー施設を、黒液(製紙会社)、RPF(Refuse Paper

& Plastic Fuel)、建築廃材等の廃棄物資源設備に置 き換えたり、混焼する形態が多くを占める。これは規模

96 改正「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法施行令」平成 14 年 1 月