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第2章 自然エネルギー政策と市場

2.4 国内の自然エネルギー市場

2.4.5 小水力発電

(1)導入状況

 3.11後の2011年には小水力発電への関心の高まり、

そして、地域から小水力発電への規制緩和を国に求め る等の動きがあった。2012年は関心から行動へと移 り、各地で調査・研究・建設等、数多くの動きがあっ た。小水力発電は、太陽光発電と異なり導入までのタイ ムスパンが長い。太陽光であれば、日光が遮られない 大きな面積が確保できれば導入へと進められるが、小 水力発電所はまず調査から始まる。河川・用水路等の 有無、年間の水量、地形、水利権等、調査項目は複数あ る。しかし、FIT前から建設を予定または計画していた 発電所が稼働を開始したこともあり、2013年にはいくつ かの小水力発電所が稼働している。しかし、太陽光等 に比べればまだ調査、計画段階のものが多い。

 FIT制度開始から1年半となる2013年12月末現在で、

FIT制度で設備認定された小水力発電の数は、200kW

認定設備数

水力(200kW 未満) 53 3,292 kW 26 基

(1,158kW)

水力(200kW 以上

1,000kW 未満) 24 14,086 kW 7 基

(3,522kW)

水力(1,000kW 以上

30,000kW 未満) 25 226,706 kW 0 基

(0kW)

認定出力(合計) 運転開始 表 2.11:FIT 認定設備数・認定出力(2013 年 12 月末)

(出所:資源エネルギー庁データより ISEP 作成)

73 J.W. Lund et al.、 Proc. World Geothermal Congress 2010、 WGC-0007、 2010 あめますだけ 5. 阿女鱒岳地域

(出光興産、国際石油開発帝石、

三井石油開発)

14. 磐梯地域ばんだい

(出光興産、他9社)

たてやまさんろく 16. 立山山麓地域

(大山観光開発)

ひいじだけほくぶ 19. 平治岳北部地域

(九州電力)

 いしまつのうえん(おぐに)

20. 石松農園(小国地域)

(石松農園)

18. 野矢地域のや

(タカフジ)

おひらだに 17. 小平谷地域

(浦安電設、水分のさと)

うなづきおんせん 15. 宇奈月温泉地域

(ジオエナジー、大高建設)

きじやま・したのたい 13. 木地山・下の岱地域

(東北水力地熱)

とうやこおんせん 6. 洞爺湖温泉地域

(洞爺湖温泉利用協同組合)

いわきさんだけ 8. 岩木山嶽地域

(弘前市)

あしょろちょう 2. 足寄町地域

(エスエスコンサル)

7. 下風呂地域しもふろ

(オリックス)

はっこうだほくせい 9. 八甲田北西地域

(川崎重工業、東日本旅客鉄道、大林組)

まつおはちまんたい 10. 松尾八幡平地域

(岩手地熱、日本重化学工業)

12. 小安地域おやす

(出光興産、国際石油開発帝石、

三井石油開発)

1. 武佐岳地域むさだけ

(石油資源開発、三菱マテ リアル、三菱ガス化学)

11. 網張地域あみはり

(地熱エンジニアリング、雫石町)

4. 豊羽地域とよは

(JX日鉱日石金属、豊羽鉱山)

3. 上川地域かみかわ  (丸紅)

凡例

○ 助成対象者区分 地熱資源開発事業者 地元の地熱関係法人等 太枠は25年度新規採択

図 2.28:平成 25 年度「地熱資源開発調査事業費助成金」対象地点(出所:JOGMEC)

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未満が53施設、出力が3292kWであり、200kW以上 10 0 0 kW未満が 2 4か所、出力合計1万4 0 8 6kW、

1000kW以上3万kW未満は25か所、22万6706kWである

(表2.11)。

(2)事業開発状況

 FIT制度が開始されて1年以上を経て、稼働数が徐々 ではあるが増えてきている。2012年から2013年に運転 を開始したいくつかの発電所にふれつつ、全国各地開 発状況を概観する。

 電力会社では、北海道電力が、揚水ポンプの更新時 に、揚水と発電の両機能を持つ設備に更新し、朱鞠内 発電所(1120kW;2013年3月運転開始)を開発してい る。また、運転開始87年以上経過し運転停止していた 滝の上発電所(112kW)の改修に取りかかり、出力 250kWに増加させ、2015年度運転開始予定である。

 東北電力は、飯野発電所(230kW;2014年2月運転開 始予定)の建設を5月から開始している。

 北陸電力は、1928年に運転を開始した九谷発電所

(1900kW)を改修し、2000kWへと出力増加させた。

北陸電力は、これ以外も2009年度から既存の中小規模 水力発電の出力増加を図っている。また、現時点では、

北又ダム発電所(130kW;2014年運転開始予定)と片貝 別又発電所(4400kW;2016年運転開始予定)を開発中 である。

 東京電力は、既存の農業用水路を利用し開発された 大町新堰発電所(1,000kW;2012年5月運転開始)、ま た、揚水用ダムの迂回水 路を使用した虎王発電 所

(270kW;2012年12月運転開始)を開発している。東京 電力の子会社である東京発電は、昭和29年に地元の旅 館が自家消費として建設され、その後廃止されていた発 電所を再開発し、須雲川発電所(190kW;2013年8月7日 運転開始)を建設している。

 中部電力は岐阜県が所有する岐阜県郡上市にある阿 多岐ダムに阿多岐水力発電所(190kW;2015年6月運転 開始予定)と岐阜県高山市にある丹生川ダムに丹生川 水力発電所(350kW;2016年6月運転開始予定)、そし て、矢作第二ダムの維持流量を利用する新串原水力発 電所(220kW;2015年運転開始予定)の建設計画を出し ている。

 関西電力は、新黒薙第二発電所(1900kW;2012年12 月8日)を開発し、富山県黒部市にある出し平ダムに、河 川維 持 流 量を利用した「出し平 発 電 所(仮 称)」

(510kW)を建設する計画で2014年12月の営業運転開 始する予定である。

 中国電力は、既存の高暮ダムから放流される維持法 流を利用した高野発電所(140kW)を開発し、2013年4

月から運転を開始している。

 九州電力も、既存の上椎葉(かみしいば)ダムからの 河川維 持 流 量を使 用した上椎 葉 維 持 法流発 電 所

(330kW;2013年3月運転開始)と一ツ瀬ダムの維持流 量を利用した一ツ瀬維持流量発電所(330kW;2013年 10月25日)を開発している。

 地方自治体、特に各県毎の新設、開発計画や調査結 果を以下に示す。

 北海道の美幌町が、日並浄水場に小水力発電施設を 整備する計画を進めている。

 青森県では、五所川原市南部土地改良区が管理する 長橋溜池に長橋溜池小水力発電所(10kW)が建設さ れた他、天間土地改良区が管理する早川幹線用水路に は早川第1号発電所(5.7kW)が設置された。

 岩手県企業局が河川維持放流を利用した胆沢第四 発電所(170kW)を建設し、2012年12月より運転を開始 している。

 宮城県企業局は、県の復興計画に沿って、水道施設 への小水力発電導入事業を募集している。この事業で は、有償貸付により送水管を流れる水のエネルギーを 提供するものである。また、仙台市水道局も、上追沢沈 砂池の用地・水・施設の有償貸付し、小水力発電設備

(199kW;2015年10月運転開始予定)の導入を計画して いる。

 山形県は、上水として使用する水をダムから取水す る際に生じる落差を利用した平田浄水 場発電設備

(55kW)を2013年6月から運用を開始している。山形 市東部、南部に水道水を供給する山形市松原浄水場 に、市が2013年度に小水力発電設備を整備2014年度 の運転開始を目指している。山形県企業局は村山広域 水道西川浄水場と量水所との落差を利用した鶴岡量 水所小水力発電設備(34kW)を建設中であり、2014年 度の完成を目指している。また、神室ダムの河川維持放 流を利用した神室発電所(420kW)も建設中であり 2015年度の完成を目指している。加えて、量水所にて 生じている落差を使用した発電所を二つの建設準備を 進めている。

 福島県の猪苗代町の土地改良区が管理する土田下堰 用水路を活用した小水力発電設備(990kW)の建設が 始まっている。また福島県は、いわき市の四時ダムに ESCO事業として小水力発電設備(480kW)の導入を検 討している。

 長野県上田市では、市内の染屋浄水場の導水管を利 用した小水力発電の導入を計画している。長野県内で は、国土交通省天竜川上流河川事務所(駒ケ根市)が、

管理する砂防ダム(約170基)でおこなっていた可能性 調査の結果を公表している。最大出力が300kW以上9

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基、200kW以上300kW未満8基等の結果を得た。この 資料を公開することで、地元市町村での事業化検討の 基礎資料とするのが目的である。

 栃木県では県所有の寺山ダムにESCO事業による小 水力発電設備(190kW;2013年9月11日)が導入されてい る。また、同県所有の三河沢ダム、塩原ダム及び松田川 ダムにおけるダムESCO事業も計画されている。

 埼玉北部土地改良区連合が既存の農業用水路を利 用して開発した神流川沿岸発電所(199kW)は、2012 年9月より運転を開始している。

 富山県が開発した山田新田用水発電所(520kW)

は、南砺市を流れる矢部川から取水する農業用水を利 用して、2013年5月から運転を開始した。2013年9月に運 転を開始した庄発電所(190kW)も農業用水路を利用 しており、富山県企業局が管理をおこなっている。ま た、富山県は、水利権取得を必要としない下水処理水 を利用した小矢部川流域下水道二上浄化センター小水 力発電施設(10kW)の運転を2013年2月に開始してい る。富山県は、小水力発電所を計画的に整備する方針 で、2016年度までに合計30か所以上に増やす計画であ る。その計画の中で同県は、適地114か所から採算性や 水利権等を検討し、早期着手可能な箇所を選定し公表 し、基本設計、実施設計とおこなっていく予定である。

 石川県は、同県管理の平沢川砂防堰堤を活用した小 水力発電事業(198kW;2015年2月運転開始予定)を計 画している。この事業では、堰堤を事業者に無償で貸 し出す形になっている。

 東京都の水道局は江戸川区にある葛西給水所で 2013年10月1日から小水力発電設備(340kW;2013年10 月1日運転開始)を建設した。

 静岡県内では、農水省が事業主体になり島田市で

「伊太発電所」(893kW)が建設され、2013年7月から 運転を開始している。また、静岡県は伊東市の奥野ダム に維持流量を利用した小水力発電を建設中である。ま た、同県は大井川右岸土地改良区と連携し、大井川用 水の掛川市伊達方と菊川市西方の2か所に小水力発電 所を2015年7月から稼働を予定している。同県は、農業 用水でおこなう小水力発電の『農業水利施設を活用し た小水力発電に関するガイドライン』を発行する等して いる。

 愛知県は、新城市四谷の棚田「千枚田」に引かれて いる湧き水を使った小水力発電を12〜14年度に整備す る計画を立てているが、2012年8月に「四谷千枚田」に 県内第1号の農業用水を利用した小水力発電施設を設 置した。また同県新庄市市内で実態調査を進め明治後 期から昭和初期の小水力発電跡地が31か所あると発表 し、鳥獣被害対策や防犯灯等の電源としての使用を地

元住民も交えて検討中である。

 奈良県生駒市が建設した山崎浄水場称す力発電施 設(55kW)は、2013年3月から運転を開始している。

 兵庫県企業庁は、県内2か所のダム(呑吐ダムと大川 瀬ダム)で小水力発電建設計画と立て2015年度内に運 転を始める計画だ。

 山口県企業局は、萩市の「相原発電所」(82kW)と 宇部市の「宇部丸山発電所」(134kW)の2か所につい て建設を予定している。東北地方整備局は宮城県川崎 町釜房ダムに、小水力発電施設(約150kW)を新設し、

2015年度に稼働予定であり、発電した電力でダム管理 に使う電力をまかなう予定だ。中国地方にはJA系の小 水力発電所が53か所あるが、その過半数の29か所で設 備の更新が検討されている。

 鹿児島県伊佐市と日本工営株式会社が協働で開発し た新曽木発電所(490kW)は、2013年5月より運転を開 始した。この発電所は、名所曽木の滝と旧曽木発電所遺 構を活かした学習型の観光施設としても開発された。

 南紀用水土地改良区が管理運営する島ノ瀬ダム小水 力発電所(140kW)は、2012年9月より稼働している。

 民間では帝国ホテルが、蓄熱式空調システムの循環 水を利用した小水力発電設備を導入している(3kW)。

東京発電は、神奈川県箱根町が保有し、1984年に老朽 化によって廃止された小水力「須雲川発電所」(再開発 後:190kW)を再開発し、2013年8月に運転を開始した。

 以上のように、小水力発電関連では、2012年の調査 中心から事業計画、建設段階へと移行しており、2014 年から2015年にかけて稼働する発電所が増加すると考 えられる。

(3)制度・規制の課題

 小水力発電に関わる2011年から2013年にかけておこ なわれた発電水利権許可の合理化について以下に示 す。

 国土交通省は2011年からこの合理化に向けて次のよ うな施策をおこなってきた。一つ目が、小水力発電の河 川環境への影響度に関わる合理化である。河川法によ り、水力発電の建設は事前の環境影響調査が求められ ている。しかし、水力発電の規模、設置箇所の違いを考 慮した規準は設けられていなかった。小水力も大水力と 同等の環境調査が求められていた。この簡素化に向け て国交省は2010年に引き続き2011年でも、小水力発電 が河川環境に与える影響度の調査・研究をおこなった。

また、小水力発電のうちで、減水区間が生じず魚類の遡 上環境に影響を与えないと判断されるものは、環境調査 等が不要であること、そして、その旨を周知徹底された。

なお、この環境調査が不要であることは、「他の水利使