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第2章 自然エネルギー政策と市場

2.7 自然エネルギー普及への取組み

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が主流であったが、2004年頃からバイオマス発電が増 え始め、2006年からは太陽光発電や地熱発電等の認 定も始まっている。2012年度末までのグリーン電力の 設備認定は設備容量で51万9286kWになっているが、

2011年度末から1割程度(5万kW)減少しており、2012 年7月からスタートしたFIT制度の影響で廃止される設 備が出始めている。グリーン電力証書制度の開始当初 は風力発電とバイオマス発電の設備容量が1位、2位と なっているが、2009年度からは太陽光発電の設備認定 が急速に増えていたが、FIT制度の開始に伴い、2012 年度の1年間では風力発電とバイオマス発電を中心に8 万10kW(8件)の設備認定取消があり、新たな設備認 定 2万 76 51kW(4 3件)があったが、結果的に5 万 2359kW減少した。また、2012年度のグリーン電力の認 証量は3億1311万kWhとなり、前年度に比べ約5%の減 少となっている。証書発行量についても2億3609万kWh と前年度比20%減少している(図2.34)。

 グリーン電力証書の発行量は2011年度まで増え続け ており、2012年度の発行量は2億3609万kWhと前年度 比20%の減少となっている(図2.34)。グリーン電力証 書の利用形態も当初は、大企業が社内の事業活動自体 で使用する電力をグリーン電力化する大規模なケース が多かったが、次第にイベント等での利用や製品製造 工程への利用が中小企業にも広がり小口での使用事例 が増えた。製品の販売と組み合わせた個人向けグリー ン電力証書の利用等、多彩な利用形態が増えてきてい る。またグリーン電力証書の利用目的とそのPR内容 も、当初は純粋に自然エネルギーの普及支援が主で あったが、いわゆるカーボンオフセットの概念が広まる につれ、グリーン電力証書もカーボンオフセットの一つ として捉えられることが増えている。また、2012年度か

らは地球温暖化対策推進法における 報告制度の中で、このグリーン電力証 書を使うことができることになった。

そのためのCO2価値の認証制度「グ リーンエネルギーCO2削減相当量認 証制度」が新たに創設され、認証が 始まっている110

 2012年7月から施行されたFIT制度 では、住宅等における小規模な太陽 光発電を除き、自然エネルギーによる 発電の全 量買取が基本となってい る。新制度では原則「全量買取」とな るため、自然エネルギーによる環境価 値も電力そのものと共に電力会社に 売却・移転すると一般的には考えられ ている。ただし、固定価格買取制度 によって移転するのはあくまで再生可能エネルギーとし ての価値であって、CO2の環境価値については移転し ないという考え方もある。新制度はあくまで新規発電 所に適用されるものであり、既存の発電所への遡及は ない。よってすでにグリーン電力証書制度の認定を受 けた発電設備からは、今後もグリーン電力証書が創出 されることになる。

 2.7.2 グリーン熱証書への取組み

 日本国内の自然エネルギーの普及のための民間レベ ルの仕組みとして発展を遂げてきたグリーン電力証書 制度だが、2008年度から新たな動きが出始めた。その 一つとして、グリーン熱証書制度の創設の動きが挙げら れる。太陽熱やバイオマス・雪氷熱等の自然エネルギー 由来の熱の持つ環境価値を証書化するグリーン熱証書 制度は世界的に見ても実施例は少なく、日本でも制度化 の検討が開始したのは5年ほど前である。2008年に改 組・再発足したグリーンエネルギー認証センターは、当 初からグリーン熱証書の制度化を視野に入れて検討を おこなってきている。

 2009年度からは、太陽熱を対象としたグリーン熱の 認証基準が整備され、設備認定が始まった。東京都は 住宅用の太陽熱利用機器の普及への補助制度として、

グリーン熱証書の活用を前提としたグリーン熱の認証 申請業務をスタートさせている。2010年7月にはエナ ジーグリーン(株)がセントラル方式の太陽熱利用シス テムの設備認定を取得し、2010年10月には最初のグ リーン熱量の認証がおこなわれ、日本初のグリーン熱 証書が発行された。

 バイオマスや雪氷熱等、国内で普及が期待される他

グリーン電力認証量/証書発行量[億kWh]

3.5

証書発行量 太陽光 風力 小水力 地熱 バイオマス 認証量 3.0

2.5 2.0 1.5 1.0 0.5

0 2001 2002 2003 2004 2005 2006 年度

2007 2008 2009 2010 2011 2012

図 2.34: グリーン電力認証量および証書発行量の推移 ( グリーンエネルギー認証センター資料より ISEP 作成 )

110 「グリーンエネルギー CO2削減相当量認証制度」http://www.enecho.meti.go.jp/energy/newenergy/green_energy_co2.htm

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のグリーン熱については、2011年3月までにバイオマス 熱と雪氷熱が制度化されている。バイオマス熱について は、木質バイオマスによる温水利用、そしてコージェネ レーション(熱電併給)の場合の木質バイオマスの蒸気 利用に対してグリーン熱の認証基準の検討が進み、

2010年度中には認証基準が確立している。同時に雪氷 熱に対する認証基準の検討もおこなわれており、冬に 積雪した雪を貯蔵して夏の冷房にその冷熱を冷水とし て利用する方式の認証基準がすでに制定されている。

その後、2011年度末までにグリーン熱の設備認定につ いては累計27件ほどおこなわれている(太陽熱15件 2452㎡、雪氷エネルギー5件3521t、バイオマス熱7件10 万8061kW)。

 2012年度には、新たに認定されたグリーン熱の設備 はなかったが、グリーン熱の熱量認証については木質 バイオマスを中心に大幅に増加しており、2011年度の43 万MJから2012年度に1億4412万MJと約300倍となっ た。しかしこれは大規模な木質バイオマス(蒸気供給)

がほとんど9割以上を占めており、太陽熱は約243万 MJ、雪氷熱が約50万MJに過ぎない。また、全体のエネ ルギー量としても電力量の20分の1程度にとどまってい る(CO2削減量換算)。

 3.11の影響により、企業や個人の関心が震災の復興 に向かったこともあり、グリーン熱証書への関心は現状 ではあまり高くはない。また東京都の排出量取引制度 での再エネクレジットとして、太陽熱由来のグリーン熱 証書を利用することが可能になっているが、バイオマス は現状では「再エネクレジット」と呼ばれるCO2削減価 値等の対象となっていない。しかしながら、固定価格買 取制度において電力のみが対象になっているため、自 然エネルギーの熱利用の普及においては、熱の環境価 値を取引できるグリーン熱証書制度が注目されている。

なお、企業等が地球温暖化対策推進法の報告書制度 の中で用いることができるCO2価値の認証制度として

「グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度」が新 たに創設されているが、グリーン熱証書に対する認証 方法も検討されている。

 2.7.3 排出量取引制度

 温室効果ガス(以下、GHGと呼ぶ)の削減を目的とし た制度の一つに排出量取引制度がある。GHGの削減手 段として一般的に、化石燃料使用の削減や自然エネル ギーの利用拡大がなされることから、自然エネルギー の普及を促す重要な施策の一つとして捉えられてい る。

 排出量取引制度には様々なタイプが存在するが、そ

の骨格としてはまず制度対象者にGHGの排出総量の抑 制および削減を義務づける。これが総量削減義務すな わちキャップとなる。この制度ではGHGの排出量(削減 量)を確実に担保するメリットがある。これだけでは規 制的手法となるが、この制度のユニークな点としては、

制度対象者間で削減義務量(排出枠)を取引(トレー ド)できる。このことにより、この制度はキャップ&ト レードと呼ばれることがある。日本語で「排出量取引制 度」と呼ぶ際には、この最初の「キャップ(総量削減義 務)」が略されてしまうので、誤解を招く理由の一つと なっている。

 この制度では、制度対象者全体でキャップを掛けて おり、限界削減費用が高い事業者は限界削減費用が安 い事業者から排出枠を購入することにより、制度対象 者全体として、つまり社会全体として安価に効率よく、

速やかに大きくGHGを削減することができる。この経済 効率性、柔軟性が二つ目のメリットである。

 制度対象者内での取引が費用対効果を上げる手段 であることと並び、制度対象外の者と取引をすることを 許容することも一般的である。制度非対象者(例えば中 小企業)によって安価に削減がなされれば国全体とし ては一層費用効果的にGHG削減が実現できるためであ る。この制度非対象者による削減量を「制度外部クレ ジット(オフセットクレジット)」と呼ぶ。外部クレジット を使用するということは、その分は制度内部での排出 量は削減しない(増加する)ということを意味するため、

外部クレジットには本来厳格な追加性が求められる。

 日本では国レベルの義務的排出量取引制度が存在 しない期間が長く続いた反 動か、自主的(ボランタ リー)な制度が複数存在する。2005年には環境省によ る「自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)」が開 始され、2008年に「排出量取引の国内統合市場の試行 的実施」に伴い経産省による「国内クレジット制度(国 内排出削減量認証制度)」が開始された。さらに2008 年に環境省による「オフセット・クレジット(J-VER)制 度」も開始された。

 この制度乱立状態解消のため、京都議定書第1約束 期間終了のタイミングに合わせ、旧制度は廃止統合さ れ、2013年度から経済産業省・環境省・農林水産省が 運用する「J-クレジット制度」が開始された。例えば、化 石燃料から再エネの一つであるバイオマスボイラーに 転換するとそのCO2削減量がクレジット化され、経済的 に取引可能となる。

 国は京都議定書の第2約束期間では削減義務を持た ないことを宣言しているため、国際的な排出量取引に いくつかの制限がなされた。例えば、CDM由来のクレ ジットCERを他国登録簿から国内登録簿に移転するこ