第3章 自然エネルギーのトレンド

3.2 自然エネルギー熱

108

あった。企業の新製品の投入が遅れたこと等も重なり、

補助金の使用件数は増えずに制度は4年で終了した。そ して2009年度からは太陽熱利用の住宅用リース事業へ の補助制度を導入したが、事業仕分けにより2011年度 の予算には組み込まれなかった。エコポイント制度や再 生可能エネルギー熱利用加速化支援対策事業での政策 支援はあるものの太陽熱市場の大幅な活性化にはい たっていない。

 2007年から東京都の太陽エネルギー利用拡大政策や その他地方自治体の動きが具体的になるに従って、太 陽熱メーカーも新しい商品開発を進め、2008年以降新 しい商品が開発、投入されるようになってきた。多くの新 製品にエネルギーモニターが組み込まれるようになり、

ヒートポンプ式電気温水器やガス給湯器と組み合わせ た太陽熱商品の開発も進んでいる。東京ガスが集合住 宅向け太陽熱システムの開発を進めると共に、太陽熱の 推進を進めるフォーラムの結成をおこない、新たなプ レーヤーとして参入している。2008年には導入量が増加 したが、2008年後半からの金融危機の影響もあり2009 年度の導入量は再び減少した。2010年度は国の住宅用 リース事業への補助制度を導入等の影響もありソーラー システム設置件数は微増した。2011年度は3.11が起こ り、被災地支援での太陽熱温水器需要もあって微増と なったが、大幅な増加には結びつかなかった。

 3.2.3 地熱直接利用および地中熱

(1)地熱直接利用(温泉浴用利用と温泉直接熱利用)

 温泉浴用利用のエネルギー的な貢献についてはこれ までに、ほとんど評価されていない。ここでは温泉浴用

利用による節約熱エネルギーを、

「温泉を浴用利用することによって 節約される、浴槽水を日本の平均気 温15℃から、日本人の浴用嗜好温度 42℃まで熱することに要する熱エネ ルギー」と定義する。環境省の調査 による2012年3月末現在で約3万か 所の温泉について、温泉を浴用に利 用することによる節約熱エネルギー を約25PJと推計されている17。それ 以外に、農業用温室等の浴用以外の 目 的 で 使 わ れ て い る 温 泉 熱 が 1.2PJ、地中熱利用が0.3PJあると推 計されている。参考に温泉直接熱利 用と地中熱利用については、新エネ ルギー財団(N EF)が3年毎にアン ケートにより調査したデータを公表 していたが、2006年までのデータを表3.7に示す18。  我が国には、高温のために廃棄されている温泉が相 当ある。これらの温泉に前述した温泉発電(50kWカ リーナサイクル発電システム)の利用を想定すると、

1591個の温泉が適用対象となり、72.3万kWの資源量が 見積られる。温泉余剰熱を利用した温泉発電システム は、2010年より新潟県松之山地域において環境省予算 で地熱技術開発等による実証試験がおこなわれると共 に、代替フロンを利用した発電システムが神戸製鋼、

IHI等により開発され、大分県、長崎県等において実証 試験が進んでいる。

(2)地中熱利用

 1980年頃から導入の始まったヒートポンプを用いた 地中熱利用は、しばらくの間、年間数件の実績で推移し ていたが、2000年頃より増加傾向をたどっており、最近 4年間では毎年100件〜200件程度の施設に地中熱ヒー トポンプシステムが設置されている(図3.19)。地中熱 ヒートポンプシステムには、地中熱交換器に水/不凍液 を循環させて熱交換をするクローズドループと、汲み上 げた地下水と熱交換するオープンループとの二つのシス

16000

12000

8000

4000

0 2000

1500

1000

500

0

年度

ソーラーシステム導入量 太陽熱温水器導入量 ストック量

1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012

導入量[MWth] ストック量[MWth]

図 3.18:太陽熱温水器・ソーラーシステム単年度導入量およびストック量

(ISEP 調べ)

年 度 2000 年度 温泉浴用利用

温泉直接熱利用 地中熱利用

2003 年度 2006 年度

36.5 4.9 0.05 5.1

0.02 4.5

表 3.7:地熱関連熱利用データ(PJ / 年)

単位 :PJ/ 年(出典 : 新エネルギー財団)

17 「永続地帯 2013 年版報告書」永続地帯研究会 http://www.sustainable-zone.org/

18 財団法人新エネルギー財団地熱本部、日本の地熱直接利用の現状、29p、 2006

109

テムがあるが、図3.19に示されているように近年はク ローズドループの増加傾向が顕著である。

 地中熱ヒートポンプは北海道から普及が始まったが、

環境省がヒートアイランド対策として、夏季の冷房時に 大気中への排熱のない地中熱ヒートポンプシステムに 注目し、クールシティ推進事業、環境技術実証事業で 取上げる中で、東京等の大都市圏でのシステム導入も 増加してきている。これから予想される大規模な地中熱 利用を前にして、2012年に環境省は「地中熱利用にあ たってのガイドライン」を公表している19

 2013年は前年に引き続き経済産業省による再生可能 エネルギー熱利用加速化の助成制度により、地中熱利 用が着実に伸びてきている。また、経済産業省は新た に、再生可能エネルギー熱利用高度複合システム実証 事業を開始し、この中で地中熱と他の再生可能エネル ギーとの組み合わせによる効率的なエネルギー利用の 提案が出されている。環境省は、先進的地中熱利用 ヒートポンプ導入促進事業を開始し、モニタリング等の 計測の充実を図っている。さらに国土交通省は、公共建 築工事標準仕様書(機械設備工事編)に地中熱交換井 設備の項目を追加すると共に、2013年10月には「官庁 施設における地中熱利用システム導入ガイドライン

(案)」を公表した。

 3.2.4 バイオマス熱利用

 バイオマスの熱利用は大きく分類して以下のような燃 料・エネルギー変換方法がある(表3.8)。

(1)木質バイオマス熱利用

 木質バイオマスの熱利用としては、

製紙工場や製材工場等に併設される 大型のバイオマスボイラーや施設に設 置される木質チップやペレットによるボ イラー、そして家庭等に設置される薪 や木質ペレットによるストーブの熱利用 等、様々な種類がある。この中で化石 燃料を代替する固形のバイオ燃料とし て注目されている木質ペレットは、1980 年代にオイル・ショックの影響で一時 生産が増加した時期があったが、1990 年代に入ると石油価格が下がりペレッ トの生産も大きく減 少した。その後 2000年代になって、環境問題や地域資 源の見直し等で再びペレット生産が増 加してきており、2011年度には年間生 産量が8万トンにまで増加している20。ただし、欧州のペ レット工場と比べて1か所あたりの規模が小さく、全国 55か所のペレット工場の平均的な規模は年間生産量が 1000トン程度となっている。木質ペレットの生産を効率 化し、普及につながる価格に下げるには、木質ペレット の原料の調達方法や生産方法に課題が多い。調達面 では、間伐材の破砕や乾燥からおこなう必要があり、

製材工場等にペレット製造工場を併設することによる 改善が期待される。

(財)日本住宅・木材技術センターにより2005年から木 質ペレット利用推進対策事業として、木質ペレットの規 格化・普及推進のための調査がおこなわれてきた21。 2011年3月には、日本木質ペレット協会による「木質ペ レット品質規格」が制定された22。近年の原油価格高騰 により木質ペレット価格が灯油と競争できる価格になっ てきたことが、国内ペレット生産規模の増加の背景と なっていると考えられる。

 高性能な木質バイオマスボイラーは、オイル・ショック 後の1970年代から欧州諸国を中心に開発されてきた。

19 環境省 地中熱利用にあたってのガイドライン、http://www.env.go.jp/water/jiban/gl-gh201203/index.html 20 林野庁「特用林産基礎資料」

21 (財)日本住宅・木材技術センター 木質ペレット情報 http://www.howtec.or.jp/pellet/index.html 22 日本木質ペレット協会「木質ペレット品質規格」2011、http://www.mokushin.com/jpa/news/news_04.pdf

図 3.19:地中熱ヒートポンプシステムの設置件数(環境省 2012)

木質

食品・農畜産 下水汚泥 一般廃棄物 産業廃棄物

ペレット チップ ガス化 メタン発酵 メタン発酵 燃焼、ガス化 燃焼、ガス化

ボイラー・ストーブ ボイラー ボイラー、CHP ボイラー ボイラー ボイラー、CHP ボイラー、CHP

種別 方式 利用技術

表 3.8:バイオマス熱利用の分類

110

その結果現在の欧州では、90%以上の燃焼効率が可能 で、煤塵も少なく、自動運転が可能な近代的なボイラー が普及し、再生可能エネルギー熱の供給に大きな役割 を果たしている。

 日本では、2000年代に入り、自治体の温浴施設や公 共施設を中心に導入が始まり、現在は民間での利用事 例も出始めている。表3.9に示すとおり、2011年末現在、

日本に導入されている高性能な木質バイオマスボイラー は、チップボイラーが115基、ペレットボイラーが539基 となっている23

 利用形態としては、チップボイラーでは300kW程度の 中型サイズの温水ボイラーが温浴施設や福祉施設等の 暖房や給湯、加温に、1500kWを超える蒸気ボイラーが 製材工場等のプロセス蒸気として利用されている。ペ レットボイラーでは、同じく300kW程度の温水ボイラー が暖房、給湯、加温に使われている他、90kW程度の小 型温風ボイラーが農業用ハウスに導入されている。

 木質バイオマスは固形燃料であり、(燃料であるにも かかわらず)水分を含むという特殊な性質を持ってい る。そのため、バイオマスを安定的に燃焼させるため、

木質ボイラーは化石燃料ボイラーと比べて、大型かつ 複雑な機構を持ち、高価にならざるを得ない。

 他方、豊富な森林資源を持つ欧州や日本のような国 では、適切な供給体制を整えれば、木質バイオマスは、

化石燃料に比べて安価に調達可能である。したがっ て、化石燃料に比べて割高なイニシャルコストを、燃料 費を中心とした毎年のランニングコストの削減量を積み 上げて、償却することができる。

 ところが、日本の導入事例を概観すると、ボイラーと

対応する形状や水分のチップが供給されずトラブルが 起こり、運転が停止しがちになり、償却が可能になる十 分な稼働時間が確保できていないケースが多い。この 背景には、ボイラーの出力サイズと運転方法の問題もあ る。過大な出力のボイラーが導入され、熱負荷の変動が 大きく、かつ低い出力での運転が続くと、不完全燃焼を 起こし、タールが発生する等してトラブルが起こりがち になるためである。

 これらの技術面のトラブルは、導入計画時の無理解 が原因となっている場合がほとんどであり、失敗事例を 含むノウハウの整理と、専門家による適切なサポートが 必要である。

(2)食品・農畜産および下水汚泥バイオマス熱利用  この分野の主なものは、畜産糞尿廃のガス化・メタン 発酵によるもので、大規模な農場の多い北海道での事 例がほとんどである。また、コージェネレーションによる 熱と発電利用でエネルギー利用効率を高くしている施 設が多くなっている。

(1)概況

 バイオマス資源(エネルギー利用)は、廃棄物、未利 用資源、エネルギー作物に大別され、固体、液体、気体 の形で利用されている。また、発生源別に、木質系、畜 産系、食品系、農業・草本系、その他(製紙、下水汚泥 等、一般廃棄物)に分類される24

 その中でバイオ燃料(輸送用燃料)は、液体 燃料としてバイオディーゼル(以下BDF)とバ イオエタノールが主流となり、国産は廃棄物

(食品)系が大半を占めるが、供給量の大半を 占める輸入はエネルギー作物(農業)系であ る。

(2)供給量および生産量

 2011年度のバイオ燃料供給量はバイオETBE

(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル:バイ オエタノールを含む混合液体燃料)として輸入 されるバイオエタノールが大半を占め、僅かな バイオディーゼルを加え約44万kLとなっている

(表3.10)。これに対して、輸送用自動車燃料 のうちの旅客用自動車燃料需要5000万kL余り に対しても、バイオ燃料比率は1%にも満たな い。いわゆる「エネルギー供給構造高度化法」

による石油精製事業者のバイオエタノール利用

In document 自然エネルギー白書 214 目次 目次まえがきコミュニティパワー元年 2 第 1 章 国内外の自然エネルギーの動向 1.1 はじめに 世界の自然エネルギー 世界の自然エネルギー トレンド 海外のFIT 制度の動向 世界の自然エネルギー熱政策 (Page 109-112)