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第3章 自然エネルギーのトレンド

3.1.6 バイオマス発電

 バイオマス発電は、各種のエネルギー源がある。本白 書においては、以下のエネルギー源に分類し、それぞれ の発電規模統計にまとめる。

①一般廃棄物(ゴミ)発電

②産業廃棄物発電

③木質バイオマス発電

④食品・畜産等バイオマス発電

⑤化石燃料混焼発電

 なお、ここではバイオマス燃料の熱量比60%程度以 上の場合をバイオマス発電と定義する。この定義では⑤ 化石燃料混焼発電は60%未満であるため、統計データ から除く(一部の設備はその燃料熱量比が不明の設備 も存在したが、主燃料が石炭であるためバイオマス燃料 熱量比は60%未満と判断した)。ただし、化石燃料混焼 発電の現状の動向については後述する。

 データは資源エネルギー庁・R P S法対象認定施設

40 35 30 25 20 15 10 5 0

19681966 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012

発電電力量[億kWh]

年度

図 3.14:国内の地熱発電の年間発電量の推移(ISEP 作成)

104

(2013年3月末時点)5を中心に、資源 エネルギー庁 新エネニッポン事例 集6、グリーン電力発電設備7、社団法 人地域資源循環技術センター・バイオ 利用技術情報提供システム8および農 林水産省・バイオマス利活施設デー タ9より、総計423施設を集計した。さ らに、2012年7月からスタートしたFIT 制度で設備認定され、2013年3月末ま でに運転を開始した設備についても 集計に加えた。

 図3.15に示すように2012年度末での バイオマス発電の設備容量の累積導 入量は331.2万kWだった(化石燃料混 焼発電を除く)。また2012年度に新規 導入された発電出力は約3.5万kW(一 般廃棄物発電2.9万kW、木質バイオマ ス0.6万kW)であり、約1%の伸び率で あった。全体の傾向としては前年度と 大きな変化はなく、1990年比では約7 倍に増加しており、全体としては徐々 に増加傾向にある。燃料別内訳は、

2012年度末時点の設備容量で一般廃 棄物発電が55.6%、産業廃棄物発電 が34.9%と、いわゆる「ごみ発電」で全 体の90%以上を占めており、累積導入 量の伸びはこのごみ発電によるところ が大きい(図3.16)。

 FIT制度では、発電方式や使用する 燃料の種類に応じて調達価格が設定 されており、メタン発酵によるバイオガ ス発電や間伐材等の未利用材を使っ た木質バイオマス発電が比較的高い調

達価格に設定されている。ただし、電熱併給

(コージェネレーション)への優遇等は制度上考 慮されておらず、これまであまり活用されてこな かった未利用木材(間伐材等)を大量に利用す る比較的大規模(出力5000kW以上)なバイオマ ス発電が全国で計画されている。2013年12月末 の時点では、このFIT制度においては以下の表 3.6のような設備認定および運転開始の状況であ る。このうち、2012年度に運転開始したバイオマ ス発電設備が 3 . 6万kWに対して、2 013 年度

(2013年12月末)には8.9万kWが運転を開始し ている。さらに、既存のR PS設備についても、

106.6万kWが、FIT制度の設備として認定された と推定される。

5 資源エネルギー庁・RPS 法対象認定施設(2010 公表版) http://www.rps.go.jp/RPS/new-contents/top/joholink-dl.html 6 資源エネルギー庁 新エネニッポン事例集 http://www.enecho.meti.go.jp/energy/newenergy/newene_pamph.htm 7 グリーンエネルギー認証センター・グリーン電力発電電力量認証一覧

8 社団法人地域資源循環技術センター・バイオ利用技術情報提供システム

9 農林水産省・バイオマス利活施設データ http://www.jora.jp/txt/katsudo/k_biomas/facilities/index.html

2013 年 12 月末

発酵 般木質・農作物残 建設廃材 般廃棄物・︵木質外︶

未利用木質

設備認定 [kW]

運転開始 [kW]

設備認定 [ 件 ] 運転開始 [ 件 ]

7,578 1,818 39 15

150,380 12,900 12 3

349,615 29,765 13 2

43,870 0 3 0

165,050 74,950 25 14

716,493 119,433 92 34

70

60

50

40

30

20

10

0

350

300

250

200

150

100

50

0

新規導入量(単年度) [万kW] 設備容量(累計) [万kW]

バイオマス発電導入量推移

年度 単年度導入量 累積導入量

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

表 3.6:FIT 制度の対象となるバイオマス発電設備の設備容量 [kW]

(2013 年 12 月末時点) (出所 : 資源エネルギー庁)

図 3.15:日本国内でのバイオマス発電の導入状況と累積導入量(ISEP 調べ)

バイオマス発電出力比率(2013年3月末時点)

一般廃棄物発電 1%

35% 56%

8%

食品・畜産等 バイオマス発電 木質発電 産業廃棄物発電

図 3.16:日本国内でのバイオマス発電の比率内訳

(設備容量ベース) ※石炭火力への混焼を除く(ISEP 調べ)

105

 一般廃棄物発電は各自治体のごみ処理場での発電 設備であり、これは1990年代初期から徐々に増加して きている。新設されるごみ処理場では発電設備が併設 されるのが一般的になっている。産業廃棄物発電は、

製紙会社による自家発電が主な設備であるが、1990年 代は製紙工程で出る黒液を燃料とした発電が多かった が、2000年代に入ると、木屑・建築廃材・古タイヤ・

RPF等の地域からの産業廃棄物を燃料としたものに主 流が移ってきている。一施設の発電量が数10万kWと バイオマス発電の中では大きな発電設備である。

 一方、割合は少ないもの地域再生可能エネルギーとし て期待されている木質バイオマス発電や食品・畜産等 バイオマス発電は1990年代はほとんどなかったが、

2004年以降導入が始まり急激な伸びを見せている。

2000年代に入ってからの増加は、RPS法施行による政 策的後押しがその大きな要因と推測されるが、化石燃

料の価格高騰等による燃料代替や、環境対策としての CO2削減への取組みも要因となっていると考えられる。

木質バイオマス発電の新規導入が2008年以降頭打ちと なったのは、経済性のある国内の建築廃材にほぼ余剰 がなくなってきたためと考えられる。そのような状況中 で、2012年7月にスタートしたFIT制度では、バイオマス 発電について燃料別の調達価格が設定されており、特 に日本の森林面積の半分を占める人工林で伐採される 間伐材等の未利用木材や製材工場等で発生する一般 木材からの端材を燃料として利用した場合に、比較的 高い調達価格となっている。そのため、これまでは搬出 コスト等の関係であまり利用されてこなかった間伐材等 を燃料として大量に利用する木質バイオマス発電の導 入計画が全国各地で40か所以上で検討されている。

2012年7月には出力5000kWクラスの木質バイオマス発 電設備がFIT制度の下での認定設備第1号として運転

70

60

50

40

30

20

10

0

140

120

100

80

60

40

20

0

産業廃棄物発電

年度

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 単年度導入量

累積導入量

新規導入量(単年度) [万kW] 設備容量(累計) [万kW]

2.5

2.0

1.5

1.0

0.5

0.0

10

8

6

4

2

0

食品・畜産等バイオマス発電

年度

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 単年度導入量

累積導入量

新規導入量(単年度) [万kW] 設備容量(累計) [万kW]

70

60

50

40

30

20

10

0

200 180 160

120

80

40 140

100

60

20 0

新規導入量(単年度) [万kW] 設備容量(累計) [万kW]

一般廃棄物発電

年度

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 単年度導入量

累積導入量

10

8

6

4

2

0

50

40

30

20

10

0

木質バイオマス発電

年度

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 単年度導入量

累積導入量

新規導入量(単年度) [万kW] 設備容量(累計) [万kW]

図 3.17:国内のバイオマス発電のカテゴリー別導入推移(出所:ISEP 調べ)

106

を開始しており、2013年12月末までに約50万kWが設備 決定されている。

 食品・畜産バイオマスによるバイオガス発電もバイオ マス政策の推進等により、2003年〜2004年から急速に 伸びた。ただし、日本ではメタン発酵後に出る液肥(高 濃度処理水)を農地に還元することが課題となってお り、水処理をおこなっているケースが多い。水処理に莫 大なエネルギー(および費用)がかかり、バイオガス発 電施設のエネルギー収益を悪化させる要因になってい る。FIT制度の中では、このようなメタン発酵によるバ イオガス発電に対して事業性を確保するために高い調 達価格を設定しており、これまでよりも規模の大きい数 100kWクラスの発電設備の事業化の検討が始まってい る。FIT制度では、2013年12月末までに7500kW(39施 設)が設備決定され、1800kW(15施設)が運転を開始 している。

 ここでは石炭混焼によるバイオマス発電については、

これまではRPS法の基で電力会社等がおこなってきて おり、全国で約30の設備がRPS認定されており、その全 設備容量は1500万kW程度に達する。ただし、実際の 木質バイオマスの混焼の比率はカロリーベースで数%程 度であり、専焼の設備と単純な比較はできない。混焼に よる木質バイオマス発電は一般的に専焼の設備に比べ て建設コストが低いことから、燃料の種別や事業形態 により今後、FIT制度の対象設備となるケースも増える と想定され、地域によっては他の木質バイオマスを利用 する熱設備や発電設備との燃料の競合が懸念される。

 図3.17には、1990年度から2012年度までの石炭混焼 を除くカテゴリー別のバイオマス発電の設備容量(発電 出力)の推移を示す。