第4章 自然エネルギー 100%への中長期シナリオ

4.3 国内の中長期エネルギーシナリオ

9 中央環境審議会地球環境部会「2013 年以降の対策・施策に関する検討小委員会」http://www.env.go.jp/council/06earth/yoshi06-13.html 10 環境省「エネルギー供給 WG」資料、http://www.env.go.jp/council/06earth/y0613-11/mat01.pdf

11 経産省「エネルギー基本計画について」 http://www.enecho.meti.go.jp/topics/kihonkeikaku/new_index.htm

116

度を下げることがエネルギー安全保障上 も、気候変動対策上もとても重要である。

それにもかかわらず、原子力発電を「重要 なベースロード電源」とし、「優れた安定供 給性と効率性」「運転コストが低廉で変動 も少なく」という福島原発事故を踏まえず 3.11前に戻ったかのような位置づけとして いることは重大な誤謬である。新しい「エ ネルギー基本計画」は、もはや巨大なリス クを抱え経済性をも失った原子力発電に まったく依存せず、化石燃料への依存度を 速やかに低減させる本格的なエネルギー 効率化・省エネルギー政策と中長期的な目 標を伴う再生可能エネルギー政策を主軸と すべきであることは明白である。今こそ、原

子力発電にまったく依存しない「エネルギー基本計画」

を策定し、持続可能なエネルギーのビジョンとシナリオ を策定すべきときである。

 4.3.2 NGOの中長期エネルギーシナリオ

 このような政府の「エネルギー基本計画」の見直しに 対し、環境エネルギー政策研究所(ISEP)、気候ネット ワーク、WWFジャパン、グリーンピースジャパン等、国 内の複数の環境NGOは、3.11以降、脱原発を前提とし た新しい中長期シナリオを策定し、新たな提言として発 表している。

 まず2011年3月には、環境エネルギー政策研究所

(ISEP)が「3.11後のエネルギー戦略ペーパー」No.1

「『無計画停電』から『戦略的エネルギーシフト』へ」

の中で、日本の中長期的なエネルギーシフトのシナリオ を発表している12。基本的なビジョンとして、地域分散 型の自然エネルギーを中心とするエネルギー政策に転 換することを提言し、短期的には震災復興経済の柱と なるだけでなく、中長期的には自然エネルギーを2020 年に電力の20%増の30%、2050年には100%を目指し、

電力安定供給・エネルギー自給・温暖化対策の柱とする 大胆かつ戦略的なエネルギーシフトを目指すことがで きるとしている。

 気候ネットワークは、2011年4月に「“3つの25”は達 成可能だ」として2020年までに「25%節電」「温室効果 ガス25%削減」「再生可能エネルギー電力25%」は同 時に達成可能というシナリオを発表した13

 2011年2月にW W Fインターナショナルが発表した

「2050年までに世界レベルで100%自然エネルギー」を 達成することができる可能性を受け、WWFジャパンは、

日本国内においても検討をおこない、2011年11月に「脱

炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案 100%自然 エネルギー」14 を発表した。このシナリオは、2011年7月 にWWFジャパンが発表した省エネルギーシナリオにお ける2050年までのエネルギー需要の半減が前提となっ ている。残りのエネルギー需要を、国内にある自然エネ ルギーで100%まかなうことが可能かどうかを、電力だ けではなく、熱・燃料を含めて検討し、技術的には可能 であることを示している(図4.1)。さらに、2013年3月に は、自然エネルギー100%の社会に移行する費用を算定 し、毎年の投資額が日本のGDPの1.6%程度で収まるこ とを示した15。これは国内投資となるため、化石燃料の 輸入に使う費用にと異なり、内需や雇用の拡大につなが る。それに加えて、2013年9月には、自然エネルギーによ る発電設備を大量導入することを可能とする電力系統シ ステムについて検討し、その費用を算定している16。  グリーンピースジャパンは、これまで発表されている 世界レベルのエネルギーシナリオ「E n e r g y [ R ] evolution」に対して、日本国内における中長期エネル ギーシナリオを検討し、2011年9月に発表した。この「自 然エネルギー革命シナリオ-2012年、すべての原発停止 で日本がよみがえる」17は、2012年春までに、日本国内 のすべての原子力発電所の稼働停止を想定し、原発に も化石燃料にも頼らない、未来へのエネルギー政策の 道筋(シナリオ)を具体的なデータに基づいて検討して いる。

 4.3.3 太陽光発電の中長期シナリオ

 太陽光発電協会(JPEA)は2010年6月に“JPEA PV OUTLOOK 2030”を公表し、「日本ブランド10兆 円産業を目指す」として、2020年における世界での単年 度生産規模6000万kWに対し、日本の生産量1490万kW

12 ISEP「3.11 後のエネルギー戦略ペーパー No.1」2011 年 3 月 http://www.isep.or.jp/library/402

13 気候ネットワーク「“3 つの 25”は達成可能だ」2011 年 4 月、http://www.kikonet.org/iken/kokunai/archive/iken20110419.pdf

14 WWF ジャパン「脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案 100% 自然エネルギー」2011 年 11 月、http://www.wwf.or.jp/activities/2011/11/1027418.html 15 WWF ジャパン「脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案・費用算定編」 http://www.wwf.or.jp/activities/2013/04/1128208.html

16 WWF ジャパン「脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案・電力系統編」http://www.wwf.or.jp/activities/2013/09/1158617.html

17 グリーンピースジャパン「自然エネルギー革命シナリオ -2012 年、すべての原発停止で日本がよみがえる」2011 年 9 月、http://www.greenpeace.org/japan/enelevo/

単位:石油換算・百万トン

WWFジャパン・エネルギーシナリオにおける各エネルギー源の推移

02008 2020 2030 2040 2050

50 100 150 200 250 300 350 400

車上太陽光 自然エネルギー

太陽熱 バイオマス 風力 太陽光 地熱 水力 原子力 ガス 石油 石炭

図 4.1:日本の100%自然エネルギーシナリオ

(WWFジャパン,2011年)

117

(シェア25%)、2030年では世界2億kW、日本6640万 kW(シェア33%)、内国内出荷量1000万kWの生産目標 を掲げた。その後、2011年3月11日の東日本大震災、

2012年7月1日のFIT制度の施行等、大きな環境変化が あり、JPEAは2012年8月に“JPEA PV OUTLOOK 2030”の改訂をおこない、「10兆円産業 より豊かな 2030年の実現へ」と題し、2030年の「日本ブランド」の 出荷目標6640万kWは変更せず、10兆円産業を実現す るためのシナリオを描いている18

 さらに、2014年2月には、「FITが開く太陽光発電、普 及の新しい扉」と題して改訂をおこなった19。FIT制度 をいかにその後の世界につないでいくか、FIT制度のソ フトランディング後の世界を「ポストFIT」として、2030 年の太陽光産業の姿を描いている。具体的には、2030 年に向けての太陽光産業の姿を「FIT制度下」(2022 年頃まで)と「ポストFIT」(2022年以降)との二つの期 に大きく分け、その過渡期にいかにソフトランディングと テイクオフをスムーズにつなげるか

を提示している。2030年までの国 内導入量見通しについては、2020 年までに4900万kW、2030年までに 1億200万kWと若干の上方修正をし ている。

 4.3.4 風力発電の中長期     シナリオ

(1)長期導入目標値

 日本風力発電協会(JWPA)は、

2007年度に長期導入目標を策定し た後に、賦存量とポテンシャル算定 の精緻化等に伴い、主にビジョンに 関する電力管内別導入目標とロード マップを更新・公表してきたが、

2013年には、電力システム改革、地 域内送電線新増設、洋上風力実証 事業等、最近の動向から電力系統 の広域運用を前提に算定したV4.1 を公表している。第5章に示す最新 のポテンシャル調査結果を踏まえて 中期導入目標値の見直を実施して いるが、2050年の長期目標値は充 分に達成可能と考えている。

☆ 中期導入目標値(2020年):1090万kW以上

☆ 中期導入目標値(2030年):3620万kW以上

☆ 中期導入目標値(2040年):6590万kW以上

☆ 長期導入目標値(2050年):7500万kW以上

(2050年需要電力量の20%以上を供給)

 新しいエネルギー基本計画の見直しの中で、2012年 に各省庁が算定したシナリオ別の中長期導入目標値 は、この日本風力発電協会(JWPA)が策定した目標値 を上回っているケースもあった。意欲的な導入目標値を 策定することが望まれるが、この各省庁のシナリオ別導 入目標値を表4.1に示す。

(2)各電力会社管内別の長期導入目標値

 第5章で示す風力の導入ポテンシャルのほとんどすべ てが北海道、東北、九州に集中していることから、各電 力会社管内のポテンシャルと設備容量を基に、以下の制

国家 戦略室

2020 年度

陸上 洋上 陸上 洋上 陸上 洋上

2030 年度 2050 年度

再エネ 35%

再エネ 30%

再エネ 25%

選択肢1 選択肢 2 選択肢 3 高位 中位 低位 ビジョン 経産省

環境省

JWPA

11.7   9.1   5.5 12.0  8.0   5.7 11.0 10.7  7.5 10.2

0.5 0.4 0.03 0.6 0.4 0.3 0.5 0.4 0.03 0.7

39.5 29.0 14.7 51.4 30.0 12.9 23.7 21.7 16.2 26.6

8.0 5.9 2.9 8.6 5.0 2.1 8.8 7.1 5.1 9.6

35.0 27.0 18.0 38.0

35.0 23.0 12.0 37.0

容量[万kW]

2050年風力導入目標と電力会社発電設備容量(2010年)

北海道 東北 東京 北陸 中部 関西 中国 四国 九州 沖縄 50Hz 60Hz*

60Hzは、沖縄を除く

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000

浮体式風力

発電設備容量1/4 発電設備容量2/4 発電設備容量4/4 陸上風力 着床式風力

図 4.2:地域別の風力発電の長期導入目標値(JWPA 提案)

18 “JPEA PV OUTLOOK 2030”改訂版 (2012 年 8 月 ) http://www.jpea.gr.jp/pdf/t120925.pdf 19 “JPEA PV OUTLOOK 2030”改訂版 (2014 年 2 月 ) http://www.jpea.gr.jp/pdf/t140224.pdf

表 4.1:風力発電の中長期導入目標値(2012 年策定) 単位:GW =百万 kW

(出所:JWPA作成)

118

約条件を加えて、7500万kWを達成するた めの各電力会社別導入目標値を算定し た。算定結果を、図4.2に示す。

<制約条件>

50Hz系および60Hz系の電力会社(沖縄 を除く)が所有する発電設備の合計容量 の1/2以下。ただし沖縄は1/4以下。

堅実なポテンシャルとして、陸上風力ポテ ンシャル(6.0m/s以上を対象)の1/2以 下。

堅実なポテンシャルとして、着床式洋上 風力ポテンシャル(離島を除く、7.0m/s 以上を対象)の1/3以下。ただし陸上の ポテンシャルが充分な沖縄はゼロ。

堅実なポテンシャルとして、浮体式洋上 風力ポテンシャル(離島を除く、7.5m/s 以上)の1/4以下。ただし陸上のポテン シャルが充分な沖縄と北海道はゼロ。

(3)中長期ロードマップ

 風力発電長期導入目標(7500万kW)を達成するた

めのロードマップを、表4.2および図4.3に、また20年毎 の更新を含めた、単年度生産量を図4.4に示す。

 4.3.5 地熱エネルギーの中長期シナリオ

 日本地熱学会では、日本国内での地熱エ ネルギー供給の長期シナリオを検討した。こ の長期シナリオは2050年自然エネルギービ ジョンに反映するために、2008年に作成され たものである。長期シナリオには、「ベースシ ナリオ」「ベストシナリオ」「ドリームシナリ オ」があり、各シナリオで予測される地熱エ ネルギーにより供給される電力量や熱量を 2005年、2020年そして2050年の3段階に分 けて表4.3に示す。詳しくは「自然エネルギー 白書2012」第4章を参照。

風力導入実績と導入目標値

[万 kW] 発電

電力量

[億 kWh]

年度 合計 陸上 着床 浮体

2010 2020 2030 2040 2050

248 1,090 3,620 6,590 7,500

245 1,020 2,660 3,800 3,800

3 60 580 1,500 1,900

0 10 380 1,290 1,800

42 230 810 1,620 1,880

表 4.2:日本の風力発電ロードマップ(JWPA 提案)

累積導入量[万kW]

風力発電導入ロードマップ(ビジョン)

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000

2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018 2020 2022 2024 2026 2028 2030 2032 2034 2036 2038 2040 2042 2044 2046 2048 2050

浮体式風力

陸上風力 実績 着床式風力

図 4.3:日本の風力発電ロードマップ(JWPA 提案)

単年度生産量(建設量)[万kW]:更新を含む

年度

単年度生産量[万kW]

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 浮体式風力

陸上風力 合計

着床式風力

図 4.4:日本の風力発電ロードマップ:単年度生産量(JWPA 提案)

ベース シナリオ

現状(2005) 2020 2050

ベスト シナリオ

ドリーム シナリオ

電力量(億 kWh)

 地熱発電  温泉発電 熱量(PJ)

 直接熱利用  温泉利用代替  地中熱 電力量(億 kWh)

 地熱発電  温泉発電 熱量(PJ)

 直接熱利用  温泉利用代替  地中熱 電力量(億 kWh)

 地熱発電  温泉発電 熱量(PJ)

 直接熱利用  温泉利用代替  地中熱

32.7 32.7 0.0 41.5 4.9 36.5 0.0 32.7 32.7 0.0 41.5 4.9 36.5 0.0 32.7 32.7 0.0 41.5 4.9 36.5 0.0

48.1 37.6 10.5 62.6 8.8 45.2 8.6 77.9 63.9 14.0 70.7 9.9 46.1 14.7 190.3 171.0 19.3 104.1 18.3 47.8 37.9

156.6 91.0 65.6 120.9 16.4 62.6 41.8 253.3 171.0 82.3 162.4 21.9 65.2 75.2 826.1 720.0 106.1 311.6 39.3 73.5 198.8

表 4.3:シナリオ別の地熱エネルギーの導入予測

(日本地熱学会 提案)

In document 自然エネルギー白書 214 目次 目次まえがきコミュニティパワー元年 2 第 1 章 国内外の自然エネルギーの動向 1.1 はじめに 世界の自然エネルギー 世界の自然エネルギー トレンド 海外のFIT 制度の動向 世界の自然エネルギー熱政策 (Page 117-121)