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第3章 自然エネルギーのトレンド

3.1.1 はじめに

(1)全体トレンド

 日本国内における自然エネルギーの導入状況につい て、電力分野のトレンドの推移を示す。図3.1に示すよう に2012年度末の自然エネルギー(大規模な水力発電は 除く)による発電設備の累積設備容量の推計は1700万 kWに達している。この中で2012年度末には太陽光発 電と風力発電とを合わせた設備容量が1000万kW近く と全設備容量の6割以上となり、地熱発電、小水力発電

(最大出力1万kW以下)とバイオマス発電(廃棄物発 電を含む)とを合わせた設備容量を大幅に上回ってい る。

 図3.1および表3.1に示すように太陽光発電は2012年 度末までに累積の設備容量が700万kW以上に増加し た。2004年以降、補助金の打切り等、普及政策の停滞 により導入量の伸びが鈍化していたが、2009年度に新 たな余剰電力の買取制度が、2012年度には本格的な 全量の固定価格買取制度(FIT制度)が始まり、2012 年度の年間導入量は200万kW近くに達している(前年 度は約140万kW)。

 風力発電は、2012年度末で設備容量264万kWとなっ ているが、年間の導入量は約9万kWと低迷している。

風力発電は、2006年度頃までは30%以上の増加率で 増加してきたが、2007年度頃からは系統への接続や立 地条件等、様々な制約のため年間導入量が低迷する状 況が続いており、FIT制度の開始後も環境アセスメント の強化や電力系統の制約等で本格的な導入にはなお 時間がかかる状況となっている。 

 地熱発電は2000年以降の新規設備導 入がない状況が続いているが、一部の設 備で設備の増強がおこなわれる程度で、

2012年度末までの設備容量は54万kW にとどまっている。FIT制度の開始に伴 い、全国で多くの資源調査や開発計画が スタートしており、自然公園内での規制 緩和や温泉事業者との合意形成等の課 題解決が進められている。

 小水力発電(出力1万kW以下)につい ては、1990年度以降の新規導入設備が 少ない状況が続いており、22年間で約19 万kWの増加にとどまるが、近年、出力 1000kW以下の設備の導入が増えてい る。FIT制度により、3万kW未満の規模 の中小水力発電設備が対象となり、全国 各地で調査や事業の検討がス タートしている。

 バイオマス発電については、こ れまで一般廃棄物や産業廃棄 物を中心とした廃棄物発電の普 及により設備容量が増えてきた が、近年、国内の豊富な森林資 源を活用する木質バイオマス発 電の設備が増え始めている。特 にFIT制度で高い買取価格の対 象となる間伐材等の「未利用木

 第 3 章 自然エネルギーのトレンド

 3.1 自然エネルギー電力

1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

自然エネルギーの累積設備容量[万kW] 0

年度

バイオマス 小水力 地熱 風力 太陽光

図 3.1:日本国内の自然エネルギー発電設備の累積設備容量(ISEP 調査)

太陽光 風力 地熱 小水力 バイオマス 合計

197.5 86.0 0.0 0.5 3.5 210.1

37.3%

3.4%

0.0%

0.1%

1.1%

14.1%

726.3 264.2 54.0 325.6 331.2 1701.4

76.4 48.4 26.1 174.0 121.9 446.7

17.1%

10.8%

5.8%

39.0%

27.3%

100%

0.69%

0.44%

0.24%

1.58%

1.11%

4.06%

種別 年間設備

導入量 [ 万 kW]

増加率 [%]

累積 設備容量

[ 万 kW]

推計 発電量 [ 億 kWh]

発電量 比率

[%]

発電量 全体比率

[%]

表 3.1:2012 年度の日本国内の自然エネルギーによる発電設備容量 と発電量の推計値(ISEP 調査)

95

材」については、これまでその多くがコスト面で利用が 困難だったが、利用のためのサプライチェーンの構築と 共に、全国各地で比較的大型のバイオマス発電の計画 がスタートしている。

 2012年7月にスタートしたFIT制度により、2012年度 の発電設備の導入量は太陽光を中心に大幅に増えた。

図3.1では2012年度末までの状況を中心に示している が、すでに2013年3月末の時点で設備認定された設備の 容量は2100万kWを超えている(そのうち2002万kWが 太陽光)。そのうち運転を開始した設備は2013年3月末 時点で177万kWとなり、設備認定のうち約8%にとど まった。その結果、2012年4月以降、運転を開始した発 電設備は208万kWにとどまり、そのうち95%が太陽光 発電であった。

 1990年度から2012年度までの累積の設備容量から 発電種別毎に設備利用率を仮定し、各年度の年間発電

量を推計した結果を図3.2および表3.1に示す。地熱発 電、小水力発電およびバイオマス発電は増加率は4%以 下にとどまっているが、年間発電量は自然エネルギーに よる全発電量の7割以上を占めている。増加率の大きい 太陽光発電と風力発電については、2012年度に自然エ ネルギーの中で合わせて約28%の発電量を占めるよう になったと推定されるが、日本国内の全発電量に占め る割合は、合わせて1%程度にとどまっている。太陽光 発電の導入量の増加率は37%に達し、風力発電および バイオマス発電の増加率は約3%となっている。それに 対し、小水力発電の増加率は1%以下と小さい。さらに、

地熱発電の発電量は毎年の発電量の実績が公開され ているが、近年、地熱発電の発電量は減少傾向にある

(前年度比3%減)。

 一方、日本国内の全発電量(2012年度の推計値は約 1兆1014億kWh、自家発電を含む)に対しては、自然エ ネルギーによる発電の割合は 約4.1%にとどまっており、2000 年の2.5%程度から約1.6%程度 増加したにすぎない。この発電 量の推計の前提条件は、表3.2 のとおりである。国内の発電量 全体には、一般電気事業者、そ の他発電事業者および自家用 発電を含む1

(2)太陽光発電

 2009年11月から開始された 余剰電力に対するF IT制度や 2009年度から再開された住宅 用太陽光発電への補助金制度 等の効果もあり、国内の太陽光 発電設備の累積導入量は2012年度末 までに726万kW(ISEP推計)に達し た。2012年度には、7月からスタートし たFIT制度により、日本国内の太陽光 発電市場は一気に拡大し、設備認定は 2012年度末までに2000万kWを超え た。これは前年度までに導入された設 備の4倍近くに達する。このうち発電を 開始した設備は、167万kWであり、

2012年度には198万kWの新規導入量と なった。一方、国内メーカーによる太陽 電池セル・モジュールの2012年度の総 出荷量は437万kWで、これは前年比 63%の大幅な伸びだった。そのうち、国 内向けは381万kWで、これは前年比の

種別 太陽光

発電量の推計方法

2012 年度は FIT 運転開始設備容量、2011 年度までは JPEA 国内向け出荷量 から累積の設備容量を推計し、設備利用率(12%)から推計

風力 2012 年度は「電気事業便覧」の実績値。2003 〜 2011 年度は RPS での供給 量。2002 以前は設備容量から、設備利用率(20%)による推計

地熱 2012 年度は「電気事業便覧」、2011 年度までは火力原子力発電技術協会「地 熱発電の現状と動向」の実績値

バイオマス RPS 対象設備よりバイオマス比率がおよそ 60% 以上のものの設備容量から設 備利用率 70%、バイオマス比率 60% で推計

小水力 (社)電力土木技術協会が公表している「水力発電所データベース」より最大出 力 1 万 kW 以下の水路式でかつ流れ込み式あるいは調整池方式の発電所およ び RPS 対象設備から設備利用率(61%)を利用して推計

表 3.2:国内自然エネルギーの発電量の推計方法(ISEP 作成)

500

400

300

200

100

0

5%

4%

3%

2%

1%

自然エネルギーの年間発電電力量[億kWh] 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 0%

年度

バイオマス 小水力 地熱 風力 太陽光 自然エネルギー 比率

図 3.2:日本国内の自然エネルギーによる発電量の推計(ISEP 調査)

1 電気事業連合会統計委員会編「電気事業便覧」平成 25 年版の 2012 年度データより推計

96

約2.7倍であった。また、2012年度は非住宅用の市場が 急拡大しており、2011年度の20万kWに対して約10倍の 194万kWに達している。一方、これまで日本の太陽光発 電の市場をリードしてきた住宅用は前年度の121万kW に対して、187万kWと1,5倍となり堅調な伸びを示してい る。一方、海外向けの出荷量は56万kWと前年比で約 66%も減っているため、2012年度はすっかり国内市場に シフトしていることがわかる。この急拡大する国内市場 に対して、国内の生産だけでは追いつかず、海外生産 品の導入が進んでいる。2012年度は144万kWが海外 生産品として国内に出荷されており、国内出荷量の約 38%に達している。

 FIT制度では、10kW未満については従来の余剰電 力の買取制度が継承されることになり、屋根貸しモデ ルによる全 量買取が可能となっている。一方、出力 10kW以上については、基準となるコストデータで規模 別の違いが見られなかったことから一律で40円/kWh

(税別)という調達価格が設定され、特に1000kWを超 える大規模なメガソーラーの計画が全国で一気に加速 した。2013年3月末の設備認定の実績では、設備認定を 受けた全設備容量2109万kWのうち、2002万kWが太 陽光発電となっており、そのうち、10kW以上1000kW未 満が458万kWに対して、1000kW以上が644万kWに達 している。

(3)風力発電

 日本国内の風力発電は1980年から開始されたが、本 格的な導入は1000kW機が登場した1999年以降で、設 備容量の合計が数万kWを超える大型のウィンドファー ムもこの頃から建設が始まった。

 2012年度末までの累積の設備導入量は、設備容量 264.2万kW、基数1913基だが、結局、国の導入目標値 であった「2010年度までに300万kW」が実現するのは、

2015年度以降となる状況と言える。なお、2013年12月 末の累積導入量は266.1万kWだが、2013年度末で270 万kWで1940基と推計されている(日本風力発電協会 JWPA調べ)。

 地域別では風況の良い北海道、東北、九州での導入 量が多いが、2012年まで、電力会社毎の連系可能量の 制約によりこれらの地域では募集容量が制限され、希 望者に対する抽選や入札がおこなわれていた。また、立 地への各種制約や2008年の建築基準法の改正、および 世界的な風力発電設備への需要の増加等により、発電 事業への負担が増大しており、単年度導入量が低迷し てきている。このように2012年度の導入量が8.6万kWと 低迷した背景には2012年から開始されたFIT制度を睨 んでの制度開始前の様子見だけではなく、2012年から

施行された環境アセスメントや補助金制度の見直しの 影響等も出ている。FIT制度では、20kW以上の事業用 の風力発電に対して比較的高い調達価格が設定され、

適地において新たな導入計画が増えている。しかし、

2012年10月から一定規模以上の風力発電が国の環境影 響評価(法アセス)の対象となり、新規の風力発電の計 画から運転開始までには4〜7年近くかかる状況となって おり、手続き方法の見直し等がおこなわれている。

 一方、2012年度には、NEDOにより着床式洋上風力 の実証試験が千葉県銚子沖と福岡県北九州沖で始まっ た。さらに、長崎県五島沖では浮体式の洋上風力発電 の実証試験が2012年10月から始まっており、福島県沖で も大規模な実証事業が2012年11月から始まっている。

(4)小水力発電

 日本国内の水力発電設備は、その大半が1990年以前 に導入されたものである。2012年度末の出力1万kW以 下の小水力発電の設備容量は325.6万kW(1276基)で あり、これは、国内全ての水力発電の設備容量の約7%

にあたる(出力1000kW未満の発電設備は、約17万 kW)。一方、1990年以降に導入された1万kW以下の小 水力発電の設備は約200基で、19.7万kWとなっている。

特に2004年度以降に導入された発電設備の件数は、

RPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関 する 特 別 措 置 法 )の 対 象となって いた 設 備 容 量

(1000kW未満)が大きな割合を占めており、導入件数 が増加していた。FIT制度では、出力3万kW未満の中 小水力発電設備が対象となっており、3段階(200kW未 満、200kW以上1000kW未満、1000kW以上3万kW未 満)の規模別に調達価格が設定されているが、2012年 度末までの設備認定は7.1万kW、運転開始は2000kW にとどまる。

(5)地熱発電

 1966年に国内初の地熱発電所が運転を開始してか ら、1999年までに国内の地熱発電所の設備容量は53万 kWに達したが、その後、これまで導入された地熱発電 所の設備容量は54万kW程度にとどまっている。一方、

年間の発電量は2003年をピークに減少しており、2011 年度の発電量は前年比1.4%の増加となっているものの 長期的な減少傾向にある。1970年代のオイルショック後 に地熱開発の機運が高まり、民間主導で地熱発電設備 が導入された。その後、1990年からは国の主導する各 種補助金による政策で発電設備の導入が進んだが、

1999年の八丈島への導入を最後に設備の導入が進ま ず、「失われた10年」と呼ばれるような状況となってい る。大部分の地熱発電は、運用上、新エネルギーとして