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第3章 自然エネルギーのトレンド

3.3 自然エネルギーによる燃料分野

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その結果現在の欧州では、90%以上の燃焼効率が可能 で、煤塵も少なく、自動運転が可能な近代的なボイラー が普及し、再生可能エネルギー熱の供給に大きな役割 を果たしている。

 日本では、2000年代に入り、自治体の温浴施設や公 共施設を中心に導入が始まり、現在は民間での利用事 例も出始めている。表3.9に示すとおり、2011年末現在、

日本に導入されている高性能な木質バイオマスボイラー は、チップボイラーが115基、ペレットボイラーが539基 となっている23

 利用形態としては、チップボイラーでは300kW程度の 中型サイズの温水ボイラーが温浴施設や福祉施設等の 暖房や給湯、加温に、1500kWを超える蒸気ボイラーが 製材工場等のプロセス蒸気として利用されている。ペ レットボイラーでは、同じく300kW程度の温水ボイラー が暖房、給湯、加温に使われている他、90kW程度の小 型温風ボイラーが農業用ハウスに導入されている。

 木質バイオマスは固形燃料であり、(燃料であるにも かかわらず)水分を含むという特殊な性質を持ってい る。そのため、バイオマスを安定的に燃焼させるため、

木質ボイラーは化石燃料ボイラーと比べて、大型かつ 複雑な機構を持ち、高価にならざるを得ない。

 他方、豊富な森林資源を持つ欧州や日本のような国 では、適切な供給体制を整えれば、木質バイオマスは、

化石燃料に比べて安価に調達可能である。したがっ て、化石燃料に比べて割高なイニシャルコストを、燃料 費を中心とした毎年のランニングコストの削減量を積み 上げて、償却することができる。

 ところが、日本の導入事例を概観すると、ボイラーと

対応する形状や水分のチップが供給されずトラブルが 起こり、運転が停止しがちになり、償却が可能になる十 分な稼働時間が確保できていないケースが多い。この 背景には、ボイラーの出力サイズと運転方法の問題もあ る。過大な出力のボイラーが導入され、熱負荷の変動が 大きく、かつ低い出力での運転が続くと、不完全燃焼を 起こし、タールが発生する等してトラブルが起こりがち になるためである。

 これらの技術面のトラブルは、導入計画時の無理解 が原因となっている場合がほとんどであり、失敗事例を 含むノウハウの整理と、専門家による適切なサポートが 必要である。

(2)食品・農畜産および下水汚泥バイオマス熱利用  この分野の主なものは、畜産糞尿廃のガス化・メタン 発酵によるもので、大規模な農場の多い北海道での事 例がほとんどである。また、コージェネレーションによる 熱と発電利用でエネルギー利用効率を高くしている施 設が多くなっている。

(1)概況

 バイオマス資源(エネルギー利用)は、廃棄物、未利 用資源、エネルギー作物に大別され、固体、液体、気体 の形で利用されている。また、発生源別に、木質系、畜 産系、食品系、農業・草本系、その他(製紙、下水汚泥 等、一般廃棄物)に分類される24

 その中でバイオ燃料(輸送用燃料)は、液体 燃料としてバイオディーゼル(以下BDF)とバ イオエタノールが主流となり、国産は廃棄物

(食品)系が大半を占めるが、供給量の大半を 占める輸入はエネルギー作物(農業)系であ る。

(2)供給量および生産量

 2011年度のバイオ燃料供給量はバイオETBE

(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル:バイ オエタノールを含む混合液体燃料)として輸入 されるバイオエタノールが大半を占め、僅かな バイオディーゼルを加え約44万kLとなっている

(表3.10)。これに対して、輸送用自動車燃料 のうちの旅客用自動車燃料需要5000万kL余り に対しても、バイオ燃料比率は1%にも満たな い。いわゆる「エネルギー供給構造高度化法」

による石油精製事業者のバイオエタノール利用

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目標量21万kL(2011年度原油換算)は達 成しているとされている25。しかし、かつて の「京都議定書目標達成計画」の2010年 輸送用バイオ燃料導入目標50万kL(原油 換算)の2分の1程度であり、またそのほと んどが輸入によってまかなわれている。

 なお、バイオ燃料の国内生産量の経年 変化を図3.20に示す26。2008年度から2011 年度の4年間でバイオエタノールの国内生 産量は大幅に増加したが、2011年度は前 年度からほぼ横ばいだった。BDFは2010 年度に1.5倍程度の伸びを示したが、2011 年度には半分以下に減少した。2011年度 の国内供給量に占める国内生産量の割合 は、10%以下にとどまっている。

(3)製造施設の現状

 NEDOの「バイオマスエネルギー導入ガイ ドブック(第3版)」によると我が国のBDFと バイオエタノール製造施設の現状(2009年度 調査時点)は以下のとおりである。なお、

NEDOにより2013年度に導入事例に関する データの更新が予定されている27

①BDF、バイオエタノール製造施設数と定格 出力

 表3.11に示すようにBDF、バイオエタノール 製造施設数は265施設で、食品系が大半を占 め、木質、農業系がわずかにあるが、畜産系 はない。食品系のBDF生産施設が236施設、

89%を占める。

 年間定格出力データのある全国23施設の 合計定格出力は3万7774kL/年(2003年〜

2009年に稼働開始)である。200か所以上の定格出力 データのない施設を加えると生産能力は相当程度ある と想定される。1か所あたり平均定格出力では、BDFよ りもバイオエタノールで大きくなっており、特に食品系で は3か所の平均で約1万kL/年となっている。

②年度別BDF、バイオエタノール製造施設数の推移  図3.21に示すように265施設のうち運転開始年のわか る221のBDF、バイオエタノール製造施設は1990年代後 半に運転開始し、2000年代中盤以降概ね20施設/年以 上の施設が運転開始し増加を続けている。

③都道府県別BDF、バイオエタノール生産施設数  都道府県別のBDF、バイオエタノール製造施設数の1 2009 年度  2010 年度 2011 年度

供給量 [kL/ 年 ] 備考

バイオエタノール 供給量 バイオディーゼル

(BDF)生産量 バイオ燃料 小計

バイオ燃料比率 ガソリン消費量 軽油消費量 LPG

(液化石油ガス)

化石燃料 小計

13.6 万 1.3 万 14.9 万 0.19%

5087 万 329 万 216 万 5631 万

43.6 万 0.9 万 44.4 万 0.61%

4,506 万 337 万 194 万 5038 万

大半は ETBE の輸入

カロリーベース 41.1 万

2.0 万 43.1 万 0.60%

4475 万 357 万 208 万 5040 万

表 3.10:日本国内のバイオ燃料供給量と旅客用自動車燃料(2009 年度、2010 年度、2011 年度)(出所:農林水産省ほかデータ)

年度

国産バイオ燃料の生産量[千kL/年] バイオエタノール輸入量[千kL/年]

0 100 200 300 400 500

0 5 10 15 20 25

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 BDF(国内生産)

バイオエタノール

(国内生産)

バイオエタノール

(輸入)

25 「エネルギー供給構造高度化法 施行規則(平成 21 年経産省令 43 号)及び 2013 年 12 月 18 日資源エネルギー庁資源燃料政策部ヒヤリング 26 農林水産省「ポケット農林水産統計」平成 22 年版、平成 23 年版、平成 24 年版、全国バイオディーゼル燃料推進協議会データ(平成 23 年度)

27 NEDO 新エネルギー部バイオマスグループ「仕様書 バイオマスエネルギー導入ガイドブックの改訂に関する検討」2013 年 7 月 19 日 年度

バイオ燃料 製造施設数 単年度導入数 バイオ燃料 製造設備数 累積導入数

1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 0 50 100 150 200 250

0 5 10 15 20 25 30 35

バイオエタノール累計 バイオエタノール単年 BDF単年

BDF累計

図 3.21:BDF、バイオエタノール製造施設数の推移 出所:農水省データより作成

図 3.20:バイオ燃料の国内供給量および国内生産量

(単位 : 千 kL)出所 : 農林水産省データより

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位、2位は、北海道29、秋田県16と東日本にあるが、3位 以下は、島根県13、兵庫県・愛媛県・佐賀県(各11)、

大 分 県・鹿 児 島 県(各10)等 、西日本 に位 置 する

(NEDO[バイオマスエネルギー導入ガイドブック(第3 版)])。

(4)最近の動向

 平成21年9月に施行された「バイオマス活用推進基本 法」に基づき平成22年に「バイオマス活用推進基本計 画」が閣議決定され、平成24年9月には7府省(内閣府、

総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土 交通省、環境省)からなるバイオマス活用推進会議にて

「バイオマス事業化戦略」を決定した。同戦略の「主要 なバイオマス利用技術の現状とロードマップ」では、現 時点で事業化推進に重点的に活用する実用化技術の 一つとして「液体燃料化」を掲げている28

 平成24年4月には農林水産省「農山漁村6次産業化 対策事業」の中で「バイオ燃料生産拠点確立推進事 業」、「ソフトセルロース利活用技術確立事業」、「耕作 放棄地利用型バイオディーゼル燃料実証事業」を実施 することとしている29。また、平成25年2月には前記7府 省が連携した農林水産省「地域バイオマス産業化推進 事業」の中で「液体燃料化(バイオエタノール、バイオ ディーゼル燃料製造)」を含めた「バイオマス産業都市 構想」を推進している30

①BDF(バイオディーゼル)

 全国バイオディーゼル燃料利用推 進協議会により「バイオディーゼル燃 料取組実態調査」が平成19年度から 毎年おこなわれ、その概要が公表さ れている。最新の平成24年度の調査 結果によれば、2011年度の事業所あ たり平均年間製造量は148kL程度の 小さな規模となっている(回答のあっ た5 8 事 業者の 合計で 年間製 造 量 8593kL)。原料としては全事業者と も廃食用油を利用、製品はトラック、

ごみ収集車等の車両への利用が多く なっている31

 社団法人地域環境資源センター

(JARUS)では、バイオマス利活用 施設整備の促進を主な目的に、「バイ オマス利活用技術情報データベース Ver.2.1」を作成、公表している。現在 このデータベースに登録されている

「バイオディーゼル燃料製造施設」

は62施設で設置場所、事業主体、運 用開始年、原料種、製造方法、製造量、用途等の主要 情報が整理されている32

②バイオエタノール

  一 般 社 団 法 人 新 エ ネル ギ ー 導 入 促 進 協 議 会

(NEPC)は平成24年度より、「再生可能エネルギー熱 利用加速化支援対策事業(地域再生可能エネルギー熱 導入促進事業)」を開始した。平成25年度には「バイオ マス燃料製造」として2件が補助対象となっているがい ずれもメタンガス製造である33

 環境省地球環境局地球温暖化対策課は「バイオ燃 料導入加速化事業」の本格普及事業段階(平成23〜25 年度)として、沖縄のサトウキビ等由来のバイオエタノー ルを活用したE3ガソリン(3%バイオエタノール直接混 合ガソリン)を沖縄県内に普及させることとし、平成25 年度に事業終了を予定している34

28 社団法人地域環境資源センター(JARUS)(平成 25 年 2 月)「バイオエタノール通信 no.8」

29 農林水産省(平成 24 年 4 月 20 日 :23 食産第 4049 号)「農山漁村 6 次産業化対策事業実施要綱」

30 農林水産省(平成 25 年 2 月 26 日 :24 食産第 5349 号、7 府省連携)「地域バイオマス産業化推進事業実施要領」

31 全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会「バイオディーゼル燃料取組実態等調査結果の概要(H23 年度実績)」H24 年度調査結果

32 社団法人地域環境資源センター(JARUS) 「バイオマス利活用技術情報データベース Ver.2.1」に登録されている「バイオディーゼル燃料製造施設」

33 一般社団法人新エネルギー導入促進協議会(NEPC)「再生可能エネルギー熱利用加速化支援対策事業(地域再生可能エネルギー熱導入促進事業)平成 25 年度 34 環境省地球環境局地球温暖化対策課「平成 25 年行政レビューシート(環境省)バイオ燃料導入加速化事業 本格普及事業(平成 23 年度 ~25 年度)」

区分

食品系 バイオ マス

BDF バイオ エタノール 小計

バイオ エタノール

BDF バイオ エタノール 小計

236 15 251

3

3 8 11 265

14 3 17

2

1 3 4 23

444 10,002 2,130

763

6 8 8 1,642 6,214

30,005 36,218

1,525

6 25 31 37,774 89

6 95

1

1 3 4 100

木質系

バイオ マス

農業・

草本系 バイオ マス

合計

全施設数 定格出力データのある 23 施設

(2003 年〜 2009 年に運転開始)

比率 箇所数

施設

合計定格

出力 1ヶ所当たり

平均定格出力

箇所

箇所 kL/ 年 kL/ 年 /1ヶ所 表 3.11:BDF およびバイオエタノール製造施設定格出力

(出所:農林水産省ほかデータ)