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第2章 自然エネルギー政策と市場

2.4 国内の自然エネルギー市場

2.4.2 太陽光発電

(1)規模別の市場動向

 太陽光発電事業の市場動向は、その発電出力によ り、以下のパターンに分類することができる。

・10kW未満(主に住宅用)

・10kW以上〜1000kW未満(屋根置きを含む中規模)

・1000kW以上(いわゆるメガソーラー)

 それぞれの規模別に太陽光発電事業の動向を以下 に示す。

出力10kW未満(主に住宅用)

 10kW未満の太陽光発電設備としては戸建住宅の屋 根に設置する例が大半で、1件あたりの出力は3kW〜

4kWが最も多い。初期の国内における太陽光発電は

 2.4 国内の自然エネルギー市場

62

10kW未満の住宅用が大半を占め、太陽光発電の余剰 電力に対する固定価格買取制度が始まった2009年度の 時点でも国内への太陽電池総出荷量62.3万kWの内 54.4万kWと87%がこの10kW未満の住宅用であった

(図2.23)。その後、住宅用の太陽電池出荷量は着実 に増加し、2012年度には186.9万kWと2008年度の出荷 量19.6万kWの10倍近くに達した。2012年7月から施行さ れたFIT制度により、より大規模な業務用や発電事業 用の発電設備の導入が急拡大し、2012年度の国内向け 総出荷量380.1万kWの内住宅用は186.9万kWと、市場 シェアは前年度の86%から49%に低下した63

 初期には既設住宅の屋根に設置する例が多かった が、近年には太陽光発電設備メーカーと住宅メーカーと の連携が強まり、新設住宅に設置する例が増加してい る。新設住宅に設置する設備コストが既設住宅より低 減できること、従来の太陽光パネルを屋根の上に取り付 けるのではなく、屋根材の形状の太陽光発電設備が開 発されたこと等により、新設住宅に設置するメリットが 増加している。

出力10kW以上〜1000kW未満

 この規模の設備は、ビル、工場の屋根、学校・幼稚園 等の教育施設の屋根、集合住宅の屋根、その他大型建 築物の屋根を利用する他、規模が大きくなるに従って地 上に設置する例も増加してくる。この規模の太陽光発 電事業はFIT制度の開始から急増し、2012年7月から 2013年12月末の間に336万kWが運転開始し、同期間の 住宅用202万kWを上回り、太陽光全体の運転開始の約 半分を占めている。

 この規模の業務用の太陽光発電設備は、系統連系し ていても自家消費比率が高くFIT制度が始まる前は企

業がCSR的見地から設置されていたケー スが多かった。自然エネルギー導入の意 識が高まり、なおかつ経済的なメリットも 得られることからFIT制度スタート以降は 様々な業種の企業や団体等が太陽光発電 事業に参入し、急増したと考えられる。設 置場所は、従来の建物の屋根だけではな く、遊休地や規制緩和が進んだ工業団地 等の地面への設置も増えている。また、屋 根や土地を太陽光発電向けに積極的に貸 し出す地方自治体等の事例も増えてい る。

 建築物への設置では、屋根だけではな く、シャープが「シースルー太陽電池モ ジュール」を開発し、高層ビルでは非常に 狭い屋上に加え、窓や壁面をも利用する 動き等もある。さらに、50kW未満については低圧での 連系が可能なことや電子申請による設備認定が可能な ことから、個人や農家等、小規模な事業者の参入が増 えている。その中で、農地の転用に関する厳しい規制・

制度に対して農地転用を最低限にとどめるソーラーシェ アリングと呼ばれる事業形態の事例が少しずつ増えて いる。

出力1000kW以上(メガソーラー)

 1000kW(1MW)以上の設備はその容量から「メガ ソーラー」と言われている。国内で最初のメガソーラー は茨城県つくば市の産業総合技術研究つくばセンター に2004年4月に運転開始した実証設備である。また、新 エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)も2007 年に北海道稚内市、2008年〜2009年に山梨県北杜市 でメガソーラーを運転開始した。これらはいずれもその 後の大規模太陽光開発のための評価、研究的要素を 持ったメガソーラーであった。2008年9月には電気事業 連合会から、電力会社10社が2020年度までに30か所 で約14万kWのメガソーラーを建設すると発表された。

 このような基礎段階を経て本格的に民間企業等がメ ガソーラー建設に参入したのはやはりFIT制度がスター トした2012年7月1日以降であった。同年7月1日にはソフ トバンクのグループ会社が群馬県と京都府でメガソー ラーを運転開始した他、数か所のメガソーラーも稼動し ている。その後も多くの民間企業等がメガソーラービジ ネスに参入し、2013年12月末現在では、制度におけるメ ガソーラーで運転開始している設備は、太陽光全体の 685万kWの内147万kWにとどまっている。設備認定の 設備容量は1534万kWに達し、太陽光全体の2838万 kWの半分以上を占めている。

63 太陽光発電協会「統計」 http://www.jpea.gr.jp/document/figure/index.html 0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

発電事業用

住宅比率

年度

住宅用 非住宅用

0 50 100 150 200 250 300 350 400

太陽電池出荷量 [万kW/年]

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

図 2.23:日本国内への太陽電池出荷量

(出典:太陽光発電協会の統計データより ISEP 作成)

63

 このメガソーラーは用地の準備、設備の施工等に時間 を要するため、運転開始が遅くなる場合が多いが、2013 年度以降、国内での太陽光発電事業が急速に進んでい る。図2.24には、日本国内で2006年度から2013年度ま で、新規に導入されたメガソーラーの設備容量および件 数について、毎年度のトレンドを示す。報道記事やイン ターネットで公開されている情報からメガソーラーの竣 工時期等を収集して整理したところ、資源エネルギー庁 が公表しているFIT制度の下で運転開始をしたメガソー ラー(1000kW以上の太陽光)をほぼ網羅することがで きた。2013年度については2013年12月頃までの情報を 網羅している。FIT制度が開始した2012年度から急速 な導入が始まり、2012年度は36万kWで220件の新規導 入だったが、2013年度には12月頃までにすでに93万 kW、439件に達している。図2.25には、FIT制度下での

メガソーラーの月別の累積導入量と 新規導入量を示すが、2013年度から 1か月に10万kWを超える高水準での 導入が進んでいる。

(2)太陽光発電事業者の動向  メガソーラーによる大規模な太陽 光発電事業では、2012年7月1日の FIT制度の前後で、導入の目的、参 入事業者が大きく変化している。

FIT制度の実施以前では、メガソー ラーの実証実験、太陽光発電設備 メーカーによる技術的問題の解明、

企業の地球環境対策のCSR、一般 電気事業者による環境対策 のアピール等の目的で設置さ れたケースが大半であった。

しかし、FIT制度開始以降に は、太陽光発電を新たなビジ ネスととらえ、それまで電力 に関係ない企業も多数参入 してきた。そのような企業の 性格、参入形態を分類し、太 陽光発電事業の事例を以下 に示す。

太陽光発電セルメーカー  2006年までは世界第一位 の太陽光セルメーカーであっ たシャープは、2006年には亀 山工場で当時日本最大規模 の5.2MWの発電設備を稼 動させた。2012年10月には芙蓉総合リースと共同で太 陽光発電事業をおこなう合同会社、クリスタル・クリア・

ソーラーを設立し太陽光発電事業をおこなっている。

 京セラもシャープに次ぐ日本の太陽光セルメーカーで あるが、他社との共同事業としてメガソーラーを建設し ている。2013年11月には、2013年現在日本最大規模で ある70MWの鹿児島七ツ島メガソーラー発電所をIHIと 共同で運転開始した。

一般電気事業者 

 一般電気事業者は、2008年に30か所で約14万kWの メガソーラーを建設すると発表していたが、2013年末 現在、22か所で8.5万kWが稼動している。固定価格買 取制度の実施により、シーテック、シーエナジー(中部電 力)、キューデンエコソル(九州電力)等、グループ会社

メガソーラー新規導入設備容量[万kW] 新規導入件数

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

設備容量

件数

年度

メガソーラー新規導入量[万kW] メガソーラー累積導入量[万kW]

25

20

15

10

5

0

160

新規導入量 累積導入量 140

120

80 60 100

40 20 0

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10 11 12

2013年

図 2.25:2013 年以降のメガソーラーの導入状況

(資源エネルギー庁データより ISEP 作成)

図 2.24:メガソーラーの新規導入トレンド(ISEP 調べ)

※ MW=1000kW

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を設立し、より積極的に太陽光を始めとする再生可能 エネルギー開発に取組んでいる。

その他エネルギー関連会社

 ガス会社も、ガスアンドパワー(大阪ガス)、エネシー ド(西部ガス)等のグループ会社により、太陽光発電を 始めとする再生可能エネルギー発電事業に取組んでい る。

 石油関連会社として、昭和シェルは1970年代から太 陽電池の研究開発を開始し、2006年に昭和シェルソー ラーを設立し太陽電池の製造販売を開始した。2010年 10月には社名をソーラーフロンティアに変更し、製造販 売に加え、太陽光発電事業も開始した。JX日鉱日石エ ネルギーは、石油製品の精製、販売が主体の会社で あったが、太陽電池の製造、販売に進出し、メガソー ラーの発電事業もおこなっている。

通信事業会社

 通信会社のソフトバンクも太陽光発電事業に進出し、

2013年末には8か所、2万kWのメガソーラーを稼動させ ており、発電事業はSBエナジーがおこなっている。ま た、三井物産との共同事業として、米子市に42.9MW、苫 小牧市に111MWの超大規模メガソーラーを建設中であ る。

 NTTグループも太陽光発電に積極的に進出し、NTT ファシリティーズを事業会社として、2013年12月末現在 16か所4万kWのメガソーラーを運転中である。同社はエ ネルギー技術と建築技術を併せ持ち、エネルギー事業 のコンサルティング、監視、保守等をおこなっている。

太陽光発電専門の建設・保守会社

 ウエストホールディングスは、太陽光発電事業の他、

企画、設計施工、メンテナンスから、架台の開発販売等 もおこなっている。メガソーラー発電事業は25か所で 3.86万kWの規模である。

 芝浦グループホールディングスは、太陽光発電事業、

太陽光発電マンション等をおこなっている。九州各地に 9か所、4.1万kWのメガソーラーを稼動させている。

 日本アジアグループは、太陽光発電事業をおこなうと 共に、太陽光開発の企画、資金調達、建設、運営管理 までおこなう。7か所1万kWのメガソーラーを保有して いる。

 ユーラスエナジーホールディングスは、風力発電、太 陽光発電をグローバルにおこなっている。2013年現在 稼動、建設中では日本で最大規模115MWのメガソー ラーを青森県六ヶ所村に建設している。

総合商社

 大手の総合商社も太陽光発電事業に進出している。

商社単独で太陽光発電事業をおこなうケースは少な く、他社と共同出資会社を設立し、大規模な発電所を 建設するプロジェクトが動いている。三井物産はソフト バンクと共 同で、苫小 牧 市に1 1 1 M W、米 子市に 42.9MW、三井化学、東芝等と愛知県田原市に50MW のプロジェクトを進めている。三菱商事も、シーテックと 共同で愛知県田原市に77MWの太陽光発電所を建設 している。

ゼネコン

 大林組は、大手の建設会社(ゼネコン)であるが、

2012年7月に大林クリーンエナジー社を設立し、2013年末 には13か所2.7万kWのメガソーラーを稼動させている。

外資系企業

 海外の企業も日本での活動をおこなっており、太陽 光発電設備の世界的メーカーのカナディアンソーラー、

韓国のハンファQセルズ等は、日本において太陽光発電 設備の販売の他に、メガソーラーを建設し、太陽光発 電事業もおこなっている。

(3)関連サービス

 太陽光発電に関連するサービスでは、太陽光発電パ ネルの製造・販売や発電事業のみでなく以下の事例の ような様々なビジネスを生み出されており、雇用の拡大 も期待されている。

コンサルティング、設計、施工

 これらの業務は、太陽光発電設備メーカー、発電事 業者がおこなっているケースもあるが、その他の企業が この分野に乗り出す事例も多い。

 住宅用はハウスメーカーが複数の太陽光発電設備 メーカーと連携し、住宅発注者が好みの太陽光発電設 備メーカーを選択できると共に、設計施工から各種申 請業務まで一括しておこなっている。

周辺機器等 

 太陽光発電システムは、太陽光モジュールの他、架 台、パワーコンディショナー等の設備が必要となる。こ れらは太陽光発電設備メーカーが一括して製造してい る他に、多数の架台、パワーコンディショナーメーカーも 存在する。

金融サービス

 太陽光発電設備は多大な資金を必要とする。しか