• 検索結果がありません。

自然エネルギー白書 214 目次 目次まえがきコミュニティパワー元年 2 第 1 章 国内外の自然エネルギーの動向 1.1 はじめに 世界の自然エネルギー 世界の自然エネルギー トレンド 海外のFIT 制度の動向 世界の自然エネルギー熱政策

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "自然エネルギー白書 214 目次 目次まえがきコミュニティパワー元年 2 第 1 章 国内外の自然エネルギーの動向 1.1 はじめに 世界の自然エネルギー 世界の自然エネルギー トレンド 海外のFIT 制度の動向 世界の自然エネルギー熱政策"

Copied!
140
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

自然エネルギー白書 2014

認 定 N P O 法 人   環 境 エネルギ ー 政 策 研 究 所   h t t p : / / w w w . i s e p . o r . j p /

(2)

目次 まえがき コミュニティパワー元 年 ………2 第1章 国内外の自然エネルギーの動向 1.1 はじめに ………4 1.2 世界の自然エネルギー………5 1.2.1 世界の自然エネルギー・トレンド ………5 1.2.2 海外のFIT制度の動向………10 1.2.3 世界の自然エネルギー熱政策 ………12 1.2.4 世界の自治体の自然エネルギー政策 …………12 1.3 日本の自然エネルギー政策と市場………13 1.3.1 エネルギー基本計画の見直し ………13 1.3.2 電力システム改革と規制・制度改革………13 1.3.3 固定価格買取制度 ………14 1.3.4 コミュニティパワー………15 1.4 日本の自然エネルギー・トレンド………16 1.5 長期シナリオ〜 自然エネルギー 100%を目指して ………18 1.6 地域の自然エネルギー導入実績とポテンシャル…19 1.7 自然エネルギー政策への提言 ………20 第2章 自然エネルギー政策と市場 2.1 エネルギー政策のゆくえ………21 2.1.1 はじめに………21 2.1.2 「エネルギー基本計画」を巡って ………21 2.1.3 電力システム改革………27 2.1.4 規制・制度改革………31 2.1.5 気候変動政策 ………32 2.1.6 自然エネルギー熱政策………34 2.1.7 自治体の自然エネルギー政策 ………35 2.2 固定価格買取制度(FIT制度)………38 2.2.1 はじめに………38 2.2.2 FIT制度の実績と課題………39 2.2.3 今後の方向性〜改善提案 ………47 2.2.4 RPS制度の総括………50 2.3 コミュニティパワー ………51 2.3.1 コミュニティパワーの意義 ………51 2.3.2 国内のコミュニティパワーの動向 ………52 2.3.3 コミュニティパワーの事例 ………53 2.3.4 コミュニティパワー・ラボ………56 2.3.5 自然エネルギーと社会的受容性 ………57 2.3.6 コミュニティパワー国際会議 ………60 2.4 国内の自然エネルギー市場 ………61 2.4.1 はじめに………61 2.4.2 太陽光発電 ………61 2.4.3 風力発電 ………65 2.4.4 地熱エネルギー………66 2.4.5 小水力発電 ………70 2.4.6 バイオマス ………75 2.4.7 太陽熱 ………77 2.4.8 一般電気事業者 ………78 2.4.9 新電力の取組み………79 2.4.10 協同組合の取組み………80 2.5 産業および雇用………81 2.5.1 はじめに………81 2.5.2 太陽光発電 ………82 2.5.3 風力発電 ………83 2.5.4 バイオマスエネルギー………84 2.5.5 地熱エネルギー………85 2.5.6 小水力 ………86 2.5.7 太陽熱 ………86 2.6 自然エネルギーと金融 ………87 2.6.1 国内外の状況 ………87 2.6.2 市民出資 ………88 2.7 自然エネルギー普及への取組み ………90 2.7.1 グリーン電力証書の普及状況 ………90 2.7.2 グリーン熱証書への取組み ………91 2.7.3 排出量取引制度 ………92 第3章 自然エネルギーのトレンド 3.1 自然エネルギー電力………94 3.1.1 はじめに………94 3.1.2 太陽光発電………97 3.1.3 風力発電………99 3.1.4 小水力発電 ………100 3.1.5 地熱発電 ………102 3.1.6 バイオマス発電 ………103 3.1.7 海洋エネルギー ………106 3.2 自然エネルギー熱 ………107 3.2.1 はじめに………107 3.2.2 太陽熱………107 3.2.3 地熱直接利用および地中熱 ………108 3.2.4 バイオマス熱利用………109 3.3 自然エネルギーによる燃料分野 ………110 第4章 自然エネルギー 100%への中長期シナリオ 4.1 世界の中長期エネルギーシナリオ ………113 4.2 100%自然エネルギー世界キャンペーン ………114 4.3 国内の中長期エネルギーシナリオ ………115 4.3.1 エネルギー基本計画の見直し………115 4.3.2 NGOの中長期エネルギーシナリオ ………116 4.3.3 太陽光発電の中長期シナリオ………116 4.3.4 風力発電の中長期シナリオ………117 4.3.5 地熱エネルギーの中長期シナリオ ………118 第5章 地域別導入状況とポテンシャル 5.1 国内の自然エネルギー 100%地域 ………119 5.2 地域別の導入ポテンシャル………123 5.2.1 はじめに………123 5.2.2 太陽光発電………125 5.2.3 風力発電………126 5.2.4 小水力発電………128 5.2.5 地熱発電と熱利用 ………129 第6章 提言とまとめ 6.1 自然エネルギー政策への提言………131 6.2 おわりに………134 謝 辞 ………136 コラム 「自然エネルギー統 計の現 状と課 題 」 ………17 「“100%自然エネルギー地域”が拓く 持続可能な地域づくりとデモクラシー」 ……122

自然エネルギー白書 2014 目次

※「自然エネルギー白書2014」の関連情報は、以下の特集ページに掲載予定。    http://www.isep.or.jp/jsr2014

(3)

図A:日本全国のコミュニティパワーへの取組み………3 図1.1:日本の電源構成(発電量)の推移………4 図1.2:持続可能なエネルギーシフトのイメージ図………5 図1.3:世界の自然エネルギー市場のトレンド………5 図1.4:世界の風力発電の導入量のトレンド ………6 図1.5:世界の太陽光発電の導入量のトレンド ………6 図1.6:世界の最終エネルギー需要に占める 自然エネルギーの割合………6 図1.7:自然エネルギー設備容量とバイオ燃料生産の 年間平均成長率………7 図1.8:世界の電力供給における自然エネルギーの推計割合………7 図1.9:世界のバイオマス・エネルギーの利用状況 ………8 図1.10:世界の太陽光発電の国別累積導入量 ………9 図1.11:世界の太陽熱温水器の導入量 ………9 図1.12:世界各国の風力発電の導入量………10 図1.13:ドイツの再生可能エネルギー導入状況 ………10 図1.14:ドイツのEEG法の賦課金の内訳の推計………11 図1.15:国内における固定価格買取制度の設備認定設備容量 …………14 図1.16:日本国内の自然エネルギーによる発電量の推計 ………17 図1.17:日本の100%自然エネルギーシナリオ ………18 図1.18:都道府県別の自然エネルギー電力供給割合ランキング …………18 図1.19:環境省の調査による自然エネルギーの 地域別導入ポテンシャル………18 図2.1:「エネルギー基本計画」への政策提言………21 図2.2:持続可能なエネルギーシフトのイメージ図 ………26 図2.3:現状の優先給電の順位 ………28 図2.4:自然エネルギーによる電気の 固定価格買取制度の仕組み………39 図2.5:国内における固定価格買取制度の設備認定設備容量………40 図2.6:固定価格買取制度による発電設備の運転開始トレンド ………40 図2.7:太陽光発電設備(10kW以上) のシステム価格の推移 …………42 図2.8:規模別の太陽光発電の設備認定および運転開始………43 図2.9:都道府県別の太陽光発電設備の認定状況 ………43 図2.10:地域別の太陽光発電設備の認定状況………44 図2.11:都道府県別の太陽光発電設備の運転開始状況………44 図2.12:地域別の太陽光発電設備の運転開始状況………44 図2.13:地域別の太陽光発電設備の運転開始率………45 図2.14:風力発電の設備認定の状況………45 図2.15:中小水力の設備認定の状況………46 図2.16:バイオマス発電の設備認定の状況 ………46 図2.17:バイオマス発電設備の認定状況(平均の設備容量)………47 図2.18:RPS制度での設備認定(累計の設備容量)の推移………50 図2.19:RPS法における新エネルギー等電気供給量の推移 ………51 図2.20:環境省「地域主導型再生可能エネルギー 事業化検討業務」採択地域 ………53 図2.21:持続可能な社会と自然エネルギーコンセンサス………59 図2.22:コミュニティパワー国際会議2014 in 福島の参加者………60 図2.23:日本国内への太陽電池出荷量………62 図2.24:メガソーラーの新規導入トレンド………63 図2.25:2013年以降のメガソーラーの導入状況………63 図2.26:1990年から2013年までの単年度導入実績と関連施策………66 図2.27:地熱関係の経産省予算の推移………67 図2.28:平成25年度「地熱資源開発調査 事業費助成金」 対象地点………70 図2.29:九州内の木質バイオマス発電所計画 ………77 図2.30:ドイツのエネルギー協同組合の設置数の推移 ………80 図2.31:世界の地域別の太陽電池セルの生産量………82 図2.32:風力発電装置と主な日本メーカー………83 図2.33:風力発電装置と主な日本メーカーの所在地 ………83 図2.34:グリーン電力認証量および証書発行量の推移………91 図3.1:日本国内の自然エネルギー発電設備の累積設備容量 ………94 図3.2:日本国内の自然エネルギーによる発電量の推計………95 図3.3:太陽電池セル・モジュールの出荷量 ………97 図3.4:用途別の太陽電池セル・モジュールの出荷量推移 ………98 図3.5:四半期毎の非住宅用太陽光の出荷量と 運転開始した累積設備容量の比較 ………98 図3.6:四半期毎の国内向け 太陽電池セル・モジュールの出荷状況………99 図3.7:2000年度から2013年度までの単年度と累積導入 ………99 図3.8:地方別の風力発電の年間発電量………100 図3.9:国内の小水力発電設備の設備容量の推移………101 図3.10:国内の小水力発電の基数の推移 ………101 図3.11:国内の小水力発電所の単年度の新設基数の推移 ………101 図3.12:小水力発電所の単年度当たり新設導入容量の推移………102 図3.13:国内の地熱発電の累積導入出力と単年度導入量………102 図3.14:国内の地熱発電の年間発電量の推移 ………103 図3.15:日本国内でのバイオマス発電の導入状況と累積導入量…………104 図3.16:日本国内でのバイオマス発電の比率内訳 ………104 図3.17:国内のバイオマス発電のカテゴリー別導入推移………105 図3.18:太陽熱温水器・ソーラーシステム単年度導入量 およびストック量 ………108 図3.19:地中熱ヒートポンプシステムの設置件数 ………109 図3.20:バイオ燃料の国内供給量および国内生産量 ………111 図3.21:BDF、バイオエタノール製造施設数の推移 ………111 図4.1:日本の100%自然エネルギーシナリオ ………116 図4.2:地域別の風力発電の長期導入目標値………117 図4.3:日本の風力発電ロードマップ ………118 図4.4:日本の風力発電ロードマップ:単年度生産量 ………118 図5.1:都道府県別の自然エネルギーの電力の供給割合………119 図5.2:都道府県別の自然エネルギー(電力および熱) の供給割合………121 図5.3:環境省の調査による自然エネルギーの 地域別導入ポテンシャル………124 図5.4:日本国内の太陽光発電の導入ポテンシャル………125 図5.5:風力の賦存量、ポテンシャルとシナリオ別導入可能量………127 図5.6:風車出力とローター径および 10D×3D配置時のk㎡当り出力 ………127 図5.7:各電力会社管内別の陸上風力ポテンシャル………127 図5.8:各電力会社管内別の着床式洋上風力ポテンシャル………128 図5.9:各電力会社管内別の浮体式洋上風力ポテンシャル………128 表1.1:2012年度の日本国内の自然エネルギーによる 発電設備容量と発電量の推計値………16 表2.1:電力システム改革の各段階の実施時期と法案提出時期 …………27 表2.2:「規制改革実施計画」エネルギー関連事項 ………31 表2.3:3.11後に施行された自然エネルギー関連の主な条例 ………36 表2.4:FIT制度の賦課金と買取費用 ………39 表2.5:FIT制度の買取価格の変更点 ………41 表2.6:RPS認定設備に対するFIT制度への移行状況 ………51 表2.7:市民風車実績………52 表2.8:持続可能な社会と自然エネルギー研究会の開催テーマ………58 表2.9:日本の地熱発電の現況………69 表2.10:助成対象調査と助成率………69 表2.11:FIT認定設備数・認定出力………70 表2.12:小水力発電に関する水利利用の関連手続き ………73 表2.13:小水力発電における電気主任技術者選任の要件 ………74 表2.14:小水力発電に関わるダム水路主任技術者選任の要件 …………74 表2.15:ダム主任技術者制度の例外の現状及び見直し ………74 表2.16:電気事業法施行規則の改正後のまとめ ………75 表2.17:木質バイオマス発電所計画 ………76 表2.18:一般電気事業者の風力発電の系統連系可能量………79 表2.19:エネルギー種別の雇用創出量 ………82 表2.20:世界の風力発電産業の実績(2011年)と 2020年、2030年の推定値………83 表2.21:日本の風力発電産業の統計値………83 表2.22:地熱発電の市場規模 ………86 表2.23:太陽熱利用機器の製造・機器メーカー一覧………87 表2.24:匿名組合市民出資事業………89 表3.1:2012年度の日本国内の自然エネルギーによる発電設備容量と 発電量の推計値 ………94 表3.2:国内自然エネルギーの発電量の推計方法………95 表3.3:累積導入量と累積台数 ………99 表3.4:日本の水力発電の発電設備の件数と容量および発電量 …………100 表3.5:FIT制度の対象となる中小水力発電設備の設備容量………102 表3.6:FIT制度の対象となるバイオマス発電設備の設備容量 …………104 表3.7:地熱関連熱利用データ ………108 表3.8:バイオマス熱利用の分類………109 表3.9:国内における木質ボイラーの導入状況………110 表3.10:日本国内のバイオ燃料供給量と旅客用自動車燃料………111 表3.11:BDFおよびバイオエタノール製造施設定格出力………112 表4.1:風力発電の中長期導入目標値 ………117 表4.2:日本の風力発電ロードマップ ………118 表4.3:シナリオ別の地熱エネルギーの導入予測 ………118 表5.1:都道府県別の自然エネルギー供給の割合………120 表5.2:環境省の調査による自然エネルギーの地域別導入ポテンシャル … 124 表5.3:日本国内の太陽光発電の導入ポテンシャル………126

図表

(4)

2

 3.11福島原発事故後の日本にとっても、また気候 変動対策が進まない世界全体にとっても、唯一とも 言える「不幸中の幸い」は、今や自然エネルギー が、世界の様々な国で、農耕革命・産業革命・情報 通信(IT)革命に続く「人類史第4の革命」と呼ば れる急激な普及拡大を実現しつつあることだ。  自然エネルギー市場は年を追って拡大し、今や風 力発電と太陽光発電だけで原子力発電を上回り(発 電設備容量ベース)、2015年には、風力発電だけで 原子力を上回る勢いだ。世界全体で25兆円を越える 規模のグリーン市場(環境に良い市場)に成長し、 10年後には100兆円を越える勢いだ。  エネルギー供給でも、揺るぎない本流になった。 脱原発・自然エネルギーへのエネルギーシフト「エ ネルギーヴェンデ」を掲げるドイツは、2000年から の10年で自然エネルギーを10ポイント(6%→17%) 増やしたが、2010年からの10年では20ポイント (17%→35%)増やす目標へと、時と共に上方修正 している。  たんに自然エネルギー供給のシェアが高くなって きているだけでなく、エネルギー協同組合や地域の エネルギー会社の立ち上げが続々と起こり、大規模 集中型から小規模分散ネットワーク型へと構造転換 が生じつつある。  こうした「人類史第4の革命」と喩えられる自然エ ネルギーの拡大の流れが、いよいよ日本でも目に見 えるようになってきた。2012年7月に固定価格買取制 度が導入されてから、わずか1年3か月で、前年比6倍 となる原発6基分の585万キロワットもの太陽光発電 が完成し、今年度はそれ以上のペースで世界最大規 模の拡大が見込まれている。  これまで住宅用の太陽光発電が中心だったが、今 後はより大型のいわゆるメガソーラーが急激に拡大 することが見込まれている。ただし、これらのほと んどが都市圏の大手企業による外発型の開発のた め、地域にとってはメリットが乏しいことが問題 だ。地域社会とエネルギーとの関係は、これでは植 民地のようなものだ。  そうした中で、地域社会が主体的に関わり、エネ ルギーの地域所有や地域社会の参加、そして便益を 地域社会に還元する「コミュニティパワー」(ご当 地電力)が次々に立ち上がりつつある。地域社会が エネルギーを創ることを自ら担い、どこにどのよう に創るかを自ら決め、そしてその自然エネルギー事 業から得られる社会的もしくは経済的なメリットを 地域社会が自ら得るという三つの原則が大切で、こ れを「コミュニティパワーの三原則」と呼ぶ。  日本では、北海道グリーンファンドや長野県飯田 市のおひさま進歩エネルギーが先行例となり、3.11 後に、「小田原電力」(ほうとくエネルギー株式会 社)やしずおか未来エネルギー株式会社、調布電 力、多摩電力等がすでに立ち上がり、福島でも自然 エネルギー100%自給を目指す会津電力が立ち上がっ た。  たとえば、小田原のほうとくエネルギー株式会社 は、3.11直後に計画停電や観光客の激減、そして海 の汚染への恐れ等を経験して、エネルギーの自立を 目指す動きが、小田原市民にとどまらず、行政や地 域経済界を越えて広がっていった大きな流れから誕 生した。  会津電力は、東京電力に「植民地化」されている 地域の豊富な水力資源を取り戻せば、それだけで福 島県が昨年定めた2040年自然エネルギー100%を達成 できるという壮大な構想の下に、市民や地域経済界 の人達が熱く集っている。まずは「会津自然エネル ギー機構」という非営利のプラットホームを立ち上 げたのちに、それを母体にして会津電力株式会社が 立ち上がった。  また、生活クラブ生協や日本生活協同組合連合 会、パルシステム等の消費生活協同組合でも、「エ ネルギーの共同購入」に焦点を置いた「エネルギー 協同組合」を創る動きがある。こうした発電側と消 費側の両面で、コミュニティパワーが広がってゆく ことで、これまで閉鎖的で独占的だった日本のエネ ルギー市場、そしてエネルギー体制を大きく変えて ゆくことが期待される。  今や、大小合わせれば全国で50を越える「ご当地 エネルギー」が立ち上がり、また立ち上がろうとし ている。こうした地域社会による自発的・自立的な 参加と行動が、「第4の革命」と呼ばれる自然エネル

コミュニティパワー元年

認定 NPO 法人 環境エネルギー政策研究所 所長 飯田哲也

(5)

3

ギーの加速度的な拡大の原動力となっていることを 考えれば、日本でも地域からボトムアップのエネル ギー革命の流れが加速するであろう。  日本ではとりわけ顕著だった「中央独占・大規模 集中型」の従来型のエネルギー産業や電力産業は、 遅かれ早かれ、こうした「地域自立・小規模分散 ネットワーク革命」をとおして、これからのエネル ギー社会構造を根底から変えていくのではないか。  その時に振り返ると、2014年は日本における「コ ミュニティパワー元年」として歴史に刻まれるに違 いない。 先行地域:北海道、飯田市、富山、飛騨高山、備前 ISEP直接支援: 秋田大潟村、気仙沼、会津、南相馬、世田谷、京丹後、宝塚、山口、新潟 環境省「地域主導型」事業化検討モデル地域: 北海道、最上、福島、埼玉、調布、多摩、小田原、長野、静岡、美作、徳島、 高知、小浜、南阿蘇、小国、富良野、鰺ヶ沢、野田村、気仙、いすみ、中之条、 長野原、世羅、球磨村ほか 環境省・農水省「地域調和型」事業化検討モデル地域: 多気、静岡、塩尻、奈良、和歌山、石垣 図A. 日本全国のコミュニティパワーへの取組み

(6)

4

 自然エネルギーは、太陽から降り注ぐ膨大なエネ ルギーや地球が本来持っている地熱エネルギーを利 用して、遠い将来にわたって人類が活用できる持続 可能な更新性のあるエネルギーで、再生可能エネル ギー(Renewable Energy)とも呼ばれている。太陽 エネルギーは、太陽光として地表に降り注ぐだけで なく、地表を温めて風をおこし、蒸発した水は雨と なって川を流れ水力となり、森林や農作物等、植物 (バイオマス)を成長させる。地熱は、日本のよう に火山が多い国では、温泉として古くから活用さ れ、高温の蒸気としても活用することができる。  産業革命以降、人類がエネルギー資源として依存し てきた石油・石炭・天然ガス等の化石燃料は、将来は利 用ができなくなる枯渇性のエネルギー資源であり、すで に供給のピークを過ぎたものも出始めており、その価格 は将来にわたって高騰することが想定される。さらに利 用時に温室効果ガスを排出して地球温暖化の原因と なっており、気候変動による異常気象が世界各国です でに頻発している。化石燃料の代替エネルギーとして 導入が進んで来た原子力発電についても、核燃料使用 後に生まれる処分が困難な放射性廃棄物の問題や原 発事故発生時の危険性が非常に大きいことが明らかに なっている。  これに対して自然エネルギーは、化石燃料や原子力 に代わる持続可能な未来のエネルギーとして注目され、 産業革命、農業革命そしてIT革命に続く「第4の革命」 として、世界中でその利用が急成長している。特にエネ ルギー自給率が5%程度と非常に低いレベルにある日本 にとっては、近い将来の高騰や海外からの調達リスク が懸念される化石燃料やすでに深刻な事故を起こして いる原子力発電に代わって、持続可能な国産のエネル ギー資源として位置づけることが可能である。さらに、 温室効果ガスの排出量が非常に少なく、国や地域のエ ネルギー安全保障につながる等、新たな産業・雇用の 創出や地域経済の活性化の切り札としても本格的な導 入が期待されている。自然エネルギーの利用形態として は各種の発電(太陽光発電、風力発電、地熱発電、水 力発電、バイオマス発電等)や熱の利用(太陽熱、地 熱、バイオマス)、燃料としての利用(バイオ燃料等)が 含まれる。  日本では、これまでも自然エネルギーの普及拡大が ことあるごとに叫ばれながら、大規模なダム式の水力 発電を含めても、いまだに自然エネルギーは日本全体 の発電量の10%程度を占めるに過ぎない(図1.1)。しか しながら、2011年3月11日に発生した東日本大震災およ び東京電力福島第一原子力発電所の深刻な原子力事 故以降、地震によるリスク等日本のおかれた状況を考え ると、安 全 への 信頼が失われ、 事故リスクの巨 大な原子力発電 には依存できな い。さらに、短期 的に依存せざる を得ない石炭や 天然ガス等の化 石燃料について も近い将来には 価格の高騰等で 入手が困難にな り、当然の帰結 として将来のエ ネルギー源の主 力は、自然 エネ ルギー以外の選

 第 1 章 国内外の自然エネルギーの動向

 1.1 はじめに

0% 年度 [億 kW h] 20% 40% 60% 80% 100% 120% 140% 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 19 90 19 91 19 92 19 93 19 94 19 95 19 96 19 97 19 98 19 99 20 00 20 01 20 02 20 03 20 04 20 05 20 06 20 07 20 08 20 09 20 10 20 11 20 12 自然エネ(大規模水力以外) 大規模水力 化石燃料比率 原子力比率 自然エネルギー比率 火力(化石燃料) 原子力 図 1.1:日本の電源構成(発電量)の推移 (「EDMC」「電気事業便覧」等のデータより ISEP 作成)

(7)

5

択肢はない。自然エネルギーの導入は、太陽光発電事 業等、うまく条件が整えば比較的短期間で実施に結び つけることができるため、震災復興策としても、またエ ネルギー供給リスクや温暖化対策としても、非常に有効 である。また、小規模分散型技術の特徴として、「普及 すればするほど性能が上がり、安くなる」という効果が ある。つまり、過去の10年よりもこれからの10年の方 が、はるかに普及のペースを加速することができ、同時 に導入費用も安くなる。日本国内の各地域では今後、地 域分散型の自然エネルギーを中心とするエネルギー政 策に転換し、短期的に震災復興経済の柱とするだけで なく、電力安定供給・エネルギー自給・温暖化対策の柱 とする大胆かつ戦略的なエネルギーシフトにより長期的 な視点で、図1.2で示すようなエネルギーシフトのイメー ジで持続可能な自然エネルギー100%の社会を目指す 必要がある。  なお、本白書の中で「自然エネルギー」と「再生可能 エネルギー」は、ほぼ同じ意味で用いられているが、そ の範囲については、対象となる制度や報告書等の定義 により若干異なることがある。  

1.2.1 世界の自然エネルギー・トレンド

 風力発電や太陽光発電等の自然エネルギーが、今、 世界中で急成長している。世界の自然エネルギーへの 投資額は2012年に、2440億ドル(約20兆円)に達して おり、2004年の400億ドルからの7年間で約6倍以上に なった(図1.3)。ただし、2011年には市場規模は2791億 ドルだったため、太陽光発電の市場等が調整局面に入 り約12%減少した。その中で、日本国内の市場が占める 割合は世界の市場の約7%に成長して、中国・米国・ドイ ツに次ぐ世界で4番目の市場規模となった。な お、2013年の速報値では日本の投資額は前年 から5割増加し、世界市場の約14%に成長して、 世界で3番目の市場となった1  2013年の風力発電の発電設備の新規導入量 は2012年に比べて3500万kWに減少したが、年 間の成長率10%程度を維持しながら累積導入 量は約3億1800万kWに達した(図1.4)。一方、 太陽光発電は2013年の新規導入量が前年より 増加し310 0万kWとなり、累積導入量は1億 3000万kWに達している(図1.5)。太陽光発電 の成長率は2006年から2012年の平均で50%を 超えている。風 力発電の成長が 著しかった 2009年以前に比べると、2010年以降は太陽光発電の導 入がより積極的に進められていることがわかる。  この自然エネルギーに関する国際会議が、「アブダビ 自然エネルギー国際会議」ADIREC2013として2013年 1月にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開催され た2。先進国だけではなく、中国やインド等、新興国や発 展途上国での自然エネルギーの動向にも注目が集まっ ており、UAEのマスダール・シティー等、中東でも様々な 取組みが始まっている。この国際会議においてREN21 (21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク)と ISEPの共同プロジェクトとして編纂された「世界自然エ ネルギー未来白書」が発表された3。次回の自然エネル ギー国際会議は、2015年10月に南アフリカのケープタウ ンで開催される予定である。  2011年4月に正式に設立された「国際自然エネルギー 機関」(IRENA) 4 はエネルギーの国際機関としては、

 1.2 世界の自然エネルギー

自然エネルギーとエネルギー効率化だけが持続性

効率化 図 1.2:持続可能なエネルギーシフトのイメージ図(出所:ISEP 作成) ※発電設備容量1GW=100万kW、1MW=1000kW 発電量1TWh=10億kWh

1 Bloomberg New Energy Finance, Jan. 2014

2 ISEP「アブダビ自然エネルギー国際会議 ADIREC2013」 http://www.isep.or.jp/library/4086

3 REN21/ISEP「世界自然エネルギー未来白書」 http://www.isep.or.jp/gfr 4 IRENA「国際自然エネルギー機関」 http://www.irena.org/ 0 50 100 150 200 250 300 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 [1 0億 ] 海洋 風力 太陽光 バイオ燃料 バイオマス 小水力 地熱 図 1.3:世界の自然エネルギー市場のトレンド (出典:UNEP, Global Trends in Renewable

(8)

6

IAEA(国際原子力機 関)、I E A(国際エネ ルギー機関)に続く第 三のエネルギーの国際 機関である。自然エネ ルギーに関する正式な 国際機関として140か 国以上が参加し、発展 途上国での自然エネル ギーの普及等、IEAや 国連等の国際機関と 連携した活動が注目さ れている。  世界的な自然エネル ギーに関する国別の現 状や各国の取 組みを 紹介した「自然エネル ギ ー 世 界 白 書 」が REN21 から毎年発行 されている。2013年6 月には「自然 エ ネル ギー世界白書2013」5 が発行された。その中 のデータから、最近の 世界の自然エネルギー の現状を以下に示す。 (1)世界の自然エネ ルギーの成長  自然エネルギーの世 界的需要は、2011年か ら2012年の間に増加 し続け、2011年(デー タが利用可能な最新 年)には、世界の最終 エネルギー消費の推計 19%を供給し、そのうち半分弱は 伝統的なバイオマスであった(図 1.6)。近代的な自然エネルギー源 から利用が可能な熱エネルギーは 最終エネルギーの総利用量のおよ そ4.1%を占めた。さらに、水力発電 が約3.7%を占め、風力発電、太陽 光発電、地熱発電、バイオマス発 電、そしてバイオ燃料からおよそ 1.9%が供給された。  2012年末における世界の自然エ

5 REN21「自然エネルギー世界白書 2013 日本語版」(ISEP 翻訳) http://www.isep.or.jp/library/5749

0 10 20 30 40 50 80 70 60 0 20 40 60 80 100 160 140 120 19 92 19 93 19 94 19 95 19 96 19 97 19 98 19 99 20 00 20 01 20 02 20 03 20 04 20 05 20 06 20 07 20 08 20 09 20 10 20 11 20 12 20 13 量[ G W 量[ G W 年間導入量 累計導入量 78.2% 2.8% 0.8% 1.1% 4.1% 3.7%

9.7%

9.3%

19%

バイオ燃料 近代的 自然エネルギー 伝統的 バイオマス 原子力 化石燃料 水力発電 風力/太陽光/ バイオマス/ 地熱発電 バイオマス/太陽熱/ 地熱による給湯と暖房 世界のエネルギー 図 1.5:世界の太陽光発電の導入量のトレンド(出所:EPIA データより ISEP 作成) 図 1.6:世界の最終エネルギー需要に占める自然エネルギーの割合(2011 年) 出典:「自然エネルギー世界白書 2013」(REN21) 0 10 20 30 40 50 60 0 50 100 150 200 250 350 300 19 80 19 81 19 82 19 83 19 84 19 85 19 86 19 87 19 88 19 89 19 90 19 91 19 92 19 93 19 94 19 95 19 96 19 97 19 98 19 99 20 00 20 01 20 02 20 03 20 04 20 05 20 06 20 07 20 08 20 09 20 10 20 11 20 13 20 12 量[ G W 量[ G W 年設置量 累積 図 1.4:世界の風力発電の導入量のトレンド(出所:GWEC データより ISEP 作成)

(9)

7

ネルギーの発電設備容量は1470GW(14億7000万kW) を超え2011年末から約8.5%上昇した(図1.7)。水力は 3%増加しておよそ990GW(9億9000万kW)になる。一 方、他の自然エネルギーは21.5%増加して480GW(4億 80 0 0万kW)を超えた。世界全体では、風力発電が 2012年に追加された自然エネルギーの発電設備容量の 約39%を占め、水力と太陽光発電が続き、それぞれ約 26%を占めた。  自然エネルギーは、2012年にはすべての発電種別に よる発電設備容量の正味の増加量の半分強を占めた。 2012年末までに、自然エネルギーは世界全体で稼動し ている発電容量の26%以上を占め、世界の電力量のお よそ21.7%を供給したが、そのうち16.5%は水力発電に よって供給された(図1.8)。ますます多くの国で産業、 業務および家庭部門の消費者が自然エネルギーによる 生産者にもなっている。  熱利用と冷房部門におけるエネ ルギー需要は増え続けており、そ の量が膨大でありながらも、ほと んど手つかずのままとなっている ことから、自然エネルギー普及の 大きな可能性を示している。すで に、近代的バイオマス、太陽熱、そ して地熱資源による熱エネルギー は自然エネルギー由来のエネル ギー利用のかなり多くの部分を占 めていて、国が支援政策を制定し 始めるに伴い徐々に発展してき た。熱エネルギーの動向としては 大規模システムでの利用があり、 熱電併給(コージェネレーション) の導入が増えており、地域熱供給 における自然エネルギーの熱利用 と冷熱の供給、そして産業用途のための近代的な自然 エネルギーの熱利用が増加している。  これまでの数年間は急成長していたが、バイオディー ゼル生産は2012年に引き続き拡大したものの、はるか に遅いペースであった。一方、エタノール燃料の生産は 2010年にピークに達して以来減少している。少ないなが らも増加しつつあるバイオガス燃料が輸送燃料として 使用されるようになってきており、わずかではあるが電 気による輸送システムと自然エネルギーを結び付ける 取組みが増加している。  ほとんどの種類の自然エネルギーが製造面でも世界 的な需要においても2012年には拡大し続けた。しか し、政策環境の不確実さと政策支援の減少によって多 くの既存の投資市場の動向が影響を受けており、欧 州、中国、インドで勢いに水を差している。  太陽光発電と陸上風力発電は規模の経済と技術の 進展により引き続き価格が低下したが、それには風力 タービンと太陽光モジュールの生産過剰の影響もあっ た。国際的な経済危機と国際貿易の継続的な緊張状 態が組み合わさったため、こうした変化はいくつかの自 然エネルギー産業にとって新たな課題を生み出し、機器 メーカーの業界再編につながった。しかしながら、それ らはまた新たな機会として、企業が新たな市場を開拓す ることを後押しした。その結果、自然エネルギーは、先 進国と同様に途上国でも、より多くの消費者にとって、 より手頃な価格になってきている。  自然エネルギーはアジア、ラテンアメリカ、中東、そし てアフリカで急速に普及しており、すべての技術に対し て新規投資がおこなわれた。特に、中東および北アフリ カ地域(MENA)や南アフリカでは、2012年に意欲的 0 10 20 30 40 50 60 70 61% 42% 19% 3.1% 2.6% 14% 0.4% -1.3% 43% 25% 3.3% 4.0% 15% 17% 11% 60% 集光型太陽熱発電 太陽光発電 風力発電 水力発電 地熱発電 太陽熱温水 (ガラス管式) バイオディーゼル生産 エタノール生産 成長率(%) 2012年 2007年末∼2012年末の 5年間平均

16.5%

78.3%

5.2%

注:2012年末時点で稼働中の自然エネルギー発電容量に基づく 化石燃料および 原子力 水力 水力を除いた 自然エネルギー 図 1.7:自然エネルギー設備容量とバイオ燃料生産の年間平均成長率 (出典:「自然エネルギー世界白書 2013」REN21) 図 1.8:世界の電力供給における自然エネルギーの推 計割合(2012 年) (出典:「自然エネルギー世界白書 2013」REN21)

(10)

8

な新しい目標値が発表され、政策枠組みの構築と共に 自然エネルギーの導入が進んだ。2012年には自然エネ ルギーの市場、製造、そして投資が、ますます途上国に シフトした。  2012年末における自然エネルギーの発電設備容量の 上位国は中国、米国、ブラジル、カナダ、ドイツであった が、水力発電を除いた発電設備容量の上位国は中国、 米国、ドイツであり、スペイン、イタリア、そしてインドが 続いている。地域別では、BRICS諸国は世界全体の自 然エネルギー発電設備容量の36%を占め、水力を除く 自然エネルギー発電設備容量のほぼ27%を占めた。 2012年末時点で水力を除く自然エネルギー発電設備容 量の多くをEU(欧州連合)が持ち、世界全体の自然エ ネルギー発電設備容量の約44%であった。より多くの国 と地域においてエネルギー供給における自然エネル ギーの割合は急速に上昇している。  変動しやすい風力発電や太陽光発電の供給割合が 高まるにつれて、多くの国(デンマーク、ドイツ、スペイン を含む)では、より高い供給割合にも対応するようエネ ルギーシステムを転換するための政策と制度を制定し始 めている。  自然エネルギー分野の雇用に対してこれらの発展の 影響は国や技術により異なっているが、世界全体では 自然エネルギー産業で働く人の数は増加し続けてい る。世界中で推計570万人が自然エネルギー分野にお いて直接または間接的に働いている。 (2)バイオマス・エネルギー  熱、電力、交通部門におけるバイオマスの利用は2〜 3%増加して約55EJとなった(図1.9)。熱利用は伝統的 バイオマスも含めてバイオマス利用の大半を占め、近代 的バイオマス熱利用の設備容量は約3GWth増加して推 計293GWthとなった。バイオマス発電設備容量は、一 部のBR IC S諸国で顕著に増加し、12%上昇してほぼ 83GWに達し、さらに約350TWhの発電を一年間にお こなった。近代的バイオマスの需要が増加し、特にバイ オ燃料と木質ペレットの国際貿易を推進している。世界 の木質ペレットの年間生産量および輸送量は2200万ト ンを超え、約820万トンのペレットが国際的に取引され た。液体バイオ燃料は、世界の道路輸送用燃料の約 3%を提供し、少量ながらも航空や海洋分野での使用 が増加している。エタノール燃料の世界生産量は、2011 年から体積ベースで約1.3%減少して831億リットルとな り、バイオディーゼル生産は微増で225億リットルに達 した。新たにエタノールやバイオディーゼル生産施設が 稼動を始めているが、多くのエタノール工場は設備能力 を下回る運転をおこなっている。 (3)地熱エネルギー  地熱資源は2012年に推計805PJ(223TWh)の自然 エネルギーを供給し、3分の2が直接熱利用、残りが電 力であった。地中熱ヒートポンプの使用は急速に増えて おり、2012年には推計50GWthの容量に達している。少 なくとも78か国が直接熱利用のために地熱資源を活用し ており、世界の設備容量の3分の2は米国、中国、ス ウェーデン、ドイツ、日本に位置している。地熱発電容量 は2 012年の間に推計3 0 0M W増加し、世界全体で 11.7GWとなり、少なくとも72TWhの発電をおこなった。 (4)水力発電  推計30GWの発電設備容量の水力発電が2012年に 電力供給を開始し、世界の既存の水力発電の設備容量 は約3%増加して推計990GWとなった。水力発電は、 2012年に推計3700TWhの発電をおこなった。さらに、 中国は新規導入した発電設備容量の点で先導しており (15.5GW)、その他の新規導入の大部分はトルコ、ブ ラジル、ベトナム、ロシアであっ た。プロジェクトの規模が大きく なり、水力発電の設備容量が大き くなるにつれて、地域の企業と国 際的な企業がパートナーシップを 組む合弁ビジネスモデルがますま す増えるようになってきている。 (5)海洋エネルギー  商業用の海洋エネルギーの設 備容量(主に潮力発電設備)は 2012年末に約527M Wにとどま り、2012年にはほとんど追加され なかった。小規 模プロジェクト

55EJ

電気 バイオ燃料建築物 産業 近代的バイオマス 販売またはオンサイトで利用される熱 ロス エンドユーザーにおけるロス 調理・熱利用 伝統的バイオマス 世界の年間 バイオマス 一次需要 図 1.9:世界のバイオマス・エネルギーの利用状況 (出典:「自然エネルギー世界白書 2013」REN21) ※EJ=10の15乗J(ジュール)

(11)

9

は、米国およびポルトガルで展開された。政府と地方当 局は海洋エネルギーの研究開発を支援し続けており、 一方で大手電力企業はこの分野で存在感を増してお り、海洋エネルギーの研究開発は一歩ずつだが着実な 進展を見せている。 (6)太陽光発電  ヨーロッパの牽引と2012年後半のアジアにおける相 当量の追加によって、太陽光発電の世界全体の稼働中 の設備容量は100GWという画期的な規模に達した(図 1.10)。価格下落によって、太陽光発電は、アフリカや MENA地域からアジアやラテンアメリカにまで新たな 市場を拡大している。EPIAにより2013年の速報値で は、中国が年間10GW以上新規導入し、日本は6GW以 上を導入している。太陽光発電市場はアジアにシフトし ている。地域社会が所有する自家発電システムへの関 心は2012年に増加し、大規模な太陽光発電プロジェク トの数と規模も増加した。過剰な競争と価格および マージンの低下が業界再編に一層拍車をかけ、セルや モジュールのメーカーは苦 戦し、中国、欧州、米国の 数社のメーカーが廃業し た。世界の太陽光発電生 産における薄膜型のシェ アは 減 少し 、生 産 量は 15%が減少し、4.1GWの 生産量となった。 (7)太陽熱発電   世 界 の 太 陽 熱 発 電 (C S P)の設 備 容量は 6 0 % 以 上 増 加 して 約 2550M Wとなった。この 追加容量のほとんどは、 世界の設備容量の4分の 3以上が設置されている スペインで導入された。 米国では新規導入はな かったが、2012年末時点 で約1300M Wが建設中 で あ っ た 。他 に は 、 100MW以上の発電設備 容量を持つ設備は主に北 アフリカで稼働している。 太陽熱発電(C SP)業界 は、オーストラリア、チリ、 中国、インド、M E NA地 域、南アフリカに拡大している。太陽光発電と天然ガス 価格の下落、世界景気の後退、そしてスペインにおける 政策変更といったすべての要素によって太陽熱発電 (CSP)メーカーや事業開発者にとっては不安定な市場 となった。 (8)太陽熱利用・冷房  2012年末までに、世界の太陽熱利用設備容量はすべ ての集熱方式を合わせて推定282GWthに達し、ガラス 式の温水集熱器は推定255GWthに達した(図1.11)。 中国と欧州が(すべての方式の)世界市場の約90%と 総設備容量の大半を占めている。太陽熱暖房と冷房が 広く使われるようになっており、太陽熱による地域熱供 給、太陽熱による冷却、およびプロセス熱システムも同 様である。産業は、特に欧州で課題に直面し続けてお り、中国で続いている急速な合併にともない、主要な企 業の間で買収や合併が目立った。製造プロセスの自動 化は2012年に増加し、技術革新は接着剤から材料やそ の他の分野にまで及んだ。 32% 16% 7.2% 6.7% 7.4% 2.1% 2.4% 2.6% 4.0% 5.1% 6.6% 7.0%

~100 GW

その他 その他のEU諸国 チェコ共和国 オーストリア ベルギー フランス スペイン 日本 中国 ドイツ イタリア 米国 世界合計 = 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 250 200 150 100 50 0 79 195 223 68

255

171 148 124 59 51 44 91 105 注:データはガラス管式システムのみ GWth 図 1.10:世界の太陽光発電の国別累積導入量(2012 年末現在) 出典:「自然エネルギー世界白書 2013」REN21 図 1.11:世界の太陽熱温水器の導入量 (出典:「自然エネルギー世界白書 2013」REN21)

(12)

10

(9)風力発電  2012年は風力発電にとって新たな記録的な年とな り、少なくとも44か国が45GWの設備容量(他のどの 自然エネルギーよりも多い)を追加し、世界全体の容 量を19%増やし283GWとなった。米国は市場を牽引し ていたが、中国が総導入量では首位を保った。しか し 、G W E Cの 最 新 データでは、2 01 3 年に中国が 16GWを導入したが、米国は政策変更により1GWの導 入にとどまった。風力発電は価格下落に助けられ、新 たな市場を拡大している(図1.12)。ほぼ1.3GWの容量 が洋上で(主に北ヨーロッパで)新規導入され、13か国 で総計5.4GWに達した。風力発電産業は、加熱する タービンメーカー間の競争、いくつかの市場における低 コストのガスとの競争、そして緊縮財政による政策支援 の削減と連動した価格の押し下げ圧力にさらされてい る。  

1.2.2 海外のFIT

制度の動向

 自然エネルギーの電 力に関する固定価格買 取 制度(F I T 制度)は 2013年初頭の時点で世 界100近い国と地域で導 入されており、国際エネ ルギー機関(I EA)、国 際自然エネルギー機関 (IRENA)等の国際的 なエネルギー機関だけで はなく、国連の各機関や 世界銀行等でも固定買 取価格制の施策効果や実際 の自然エネルギーの導入実績 を高く評価している。その中 でも他国に先駆けてFIT制度 を導入して様々な実践をおこ なってきたドイツの状況を中 心に、海外のFIT制度の動向 を以下に紹介する。 (1)ドイツ  ドイツにおける再生可能エ ネルギーの固定価格買取制度 (EEG法)は2000年にスター トしてからすでに10年以上が 経過し、再生可能エネルギーの本格的な導入に対して 大きな成果を収めている。2000年に発電量に再生可能 エネルギーが占める割合が6%だったものが、2013年ま でには再生可能エネルギーによる発電量が4倍近く増 加し、割合が約23%に達した(図1.13)。  その一方で、この買取に必要な補償額から市場電力 価格分を差し引いて算定された「賦課金」(サーチャー ジ)が一般消費者の電力料金に上乗せされることか ら、近年、この賦課金が上昇傾向にあることだけが批 判的に取り上げられることが増えている。しかし、賦課 金はあくまで電気料金の一部にしか過ぎず、電力の卸 市場価格の低下や電力多消費産業の需要家への減免 対象の増加等、電力システム全体を考慮した評価が必 要である。ドイツにおいては、気候変動やエネルギー安 全保障等を重視するエネルギー政策から、再生可能エ ネルギーの高い導入目標(2020年までに電力の35%以 中国 米国 ドイツ スペイン インド 英国 イタリア フランス カナダ ポルトガル 80 70 60 50 40 30 20 10 0

+13

+13.1

+2.4

+1.1 +2.3

+1.9 +1.3 +0.8 +0.9 +0.1

GW 2012年導入 2011年既存 図 1.12:世界各国の風力発電の導入量 (出典:「自然エネルギー世界白書 2013」REN21) 0% 5% 10% 15% 20% 25% 0 50000 100000 150000 200000 2000 2002 2004 2006 2008 2009 2010 2011 2012 2013 地熱 RE比率 水力 風力 バイオマス 太陽光 [G W h] 図 1.13:ドイツの再生可能エネルギー導入状況 (ドイツ環境省 BMU の資料より ISEP 作成)

(13)

11

上)がすでに定められており、再生可能エネルギー導入 への国民の幅広い関心や参加も進んでいる。ドイツに おいては、再生可能エネルギー導入のための国民への 広く薄い公平な費用負担が持続可能な社会を実現する エネルギーシフト(Energiewende)に必要不可欠なも のとして定着していると言える。  2013年10月15日、ドイツの固定価格買取制度(EEG 法)の規定に基づき2014年1月からの賦課金の金額が ドイツ国内の送電網運用会社(TSO)4社から合同で公 表された。2014年1月からの賦課金は6.24セントユーロ/ kWhとなり、2013年の5.277セントユーロ/kWhから約 18%上昇する。この賦課金のうち2.4セントユーロ/kWh が純粋な再生可能エネルギーに対する負担部分であ り、太陽光発電の導入コストの急速な低下から実質的 に過去数年間ほとんど増加していない。一方で、電力の 卸市場価格の低下や、電力多消費産業の需要家への減 免対象による部分は、本来の再生可能エネルギーに対 する負担部分を超えるまでになっている。図1.14には 2 013 年9月にドイツの再 生可能エネルギー協 議 会 (BEE)が発表した賦課金の内訳の推計を示す。もは や賦課金だけでは、一般消費者への経済影響を評価 することはできず、電力料金全体で卸市場価格の低下 が反映された形で評価する必要があると考えられる。  ドイツでは1990年の電力供給法(EFL)の成立に よって国家レベルでは世界で初めて固定価格買取制度 を導入した。その後、2 0 0 0 年の自然 エネルギー法 (EEG)への大改正によって、自然エネルギーの種類 や条件毎にコストベースの買取価格を定めた他、上乗せ となるコスト負担を一般需要家が公平に分担する仕組 みも導入され、自然エネルギーの優先接続に関する規 定も盛り込まれた。その後、2004年の改正で買取価格 を見直し、太陽光発電等の導入量を一気に増やしてい る。  2008年にこの自然エネルギー法は全面改正(2009年 1月施行)され、2020年までに自然エネルギーの割合を 30%にする等が明記された他、太陽光発電を中心に買 取価格の逓減率が引き上げられた。さらに2010年から の想定を超えた急速な太陽光発電の導入拡大等もあ り、2010年および2011年4月の部分改正でも太陽光の 買取価格の逓減率が引き上げられている。  日本の福島第一原発の事故の影響もあり、ドイツで 2022年までの脱原発を決定したことを受け、2011年7月 に改正がおこなわれた(2012年1月施行)。この中では、 電力に占める自然エネルギーの割合の目標を2020年ま でに35%以上、2030年までに50%以上、2040年までに 65%以上、2050年までに80%以上と定められた。従来か ら認められていたFIT制度以外の電力市場での直接販 売も、明確に定められた。買取価格についても様々な改 訂がおこなわれており、バイオマスについては熱電併給 が必須条件となり、地熱については買取価格が引き上げ られた。風力発電の買取価格も、陸上風力は逓減率が 1%から1.5%に引き上げられたが、洋上風力は買取価格 が引き上げられている。太陽光については、年間導入量 が300万kW程度となるように、前年の設備容量の増加 量に応じて逓減率が引き上げられる仕組みが本格的に 導入された6  しかし、2011年末の駆け込み導入量が予想を上回 り、2011年の年間導入量が700万kWを再び超えたこと から、太陽光に関する改正案が提出されたが、激しい 議論の末に2012年6月頃に成立した。この2012年の改 正案では、2020年までは太陽光発電の年間導入目標を 250〜350万kWとし、累積の導入量が5200万kWとなる 時点で太陽光に対する買取制度を終了するとしている (2012年末の累積導入量は推定3200万kW)。  ドイツは、CO2削減だけではなく、雇用や新しい産業 振興、そしてエネルギー安全保障の観点からも自然エ ネルギーの導入が社会的に有意義であることから、固 定価格買取制度を進めるべきだとしている。また、ドイ ツは、2050年という長期的な展望を視野に入れ始めて おり、2010年に策定した「エネルギー基本計画」7 にお いて電力供給に占める自然エネルギーの割合を2020年 には35%、2030年に50%、2050年には80%とする目標 をすでに掲げており、EEG法の中にも明記されている。 2013年11月に成立した総選挙後の連立政権の合意に おいても、この自然エネルギー導入目標のレベルは堅持 2.17 2.39 2.54 0.58 1.1 1.47 0.81 0.92 1.26 0.63 0.86 0.03 0.12 0.16 0.11 0.13 0 1 2 3 4 5 6 7 2012 2013 2014 純粋発電コスト 前年補正分 卸電力価格低下 流動性準備 産業免除制度 市場プレミアム E E G [セ ¢/ kW h] 図 1.14: ドイツの EEG 法の賦課金の内訳の推計 (出典:BEE 資料より ISEP 作成 , 2013 年 9 月) 6 国立国会図書館、外国の立法 252「ドイツの 2012 年再生可能エネルギー法」 2012 年 6 月

7 ドイツ環境省 "Transforming our energy system"

(14)

12

されている。さらに、ドイツ環境局(UBA)やドイツ環境 諮問委員会(SRU)からは、長期的な自然エネルギー 100%シナリオもすでに発表されている。 (2)カナダ(オンタリオ州)  2003年から自然エネルギー促進のための施策が導入 されてきた。RPS制度を2004年に導入し、2006年から は固定価格買取制度の一種とも言える自然エネルギー 標準契約プログラム(Renewable Energy Standard Offer Program (RESOP))を導入した。

 2009年5月に本格的な固定価格買取制度を含むグ リーンエネルギー法が可決され、同年11月に施行され た。風力、太陽光、バイオマス、中小水力の自然エネル ギーが対象で、規模等の制約のない包括的な固定価格 買取制度となる。またオンタリオ州政府は2014年までに 石炭火力発電所を撤廃すると宣言している。同法は、 先住民やコミュニティ参加によるプロジェクトへの価格 優遇措置や地域内からの設備調達を要件として設定す る(ローカルコンテンツ要件)等、自然エネルギー導入に よって地域経済を活性化させる制度的な工夫がされて いる。  ローカルコンテンツ要求に関しては、日本(2010年9 月)とEU(2011年8月)がそれぞれ、GATT(関税及び 貿易に関する一般協定)のうち国民待遇義務等に反す るとしてWTO提訴し、2013年5月にWTOで最終的な 判断がなされ、カナダ連邦政府およびオンタリオ州に対 して是正が勧告なされた。この勧告に従い、州政府は 調達率を引き下げ、ローカルコンテンツは事実上撤廃さ れた。ただ、オンタリオ州の太陽光メーカーは今までの ような域内市場向けだけではなく、積極的な輸出戦略 にも打って出る方針である。 (3)韓国  2000年の電力事業法と2002年の自然エネルギー開 発利用普及促進法が固定価格買取制度の始まりであ る。韓国では発電差額支援制度(自然エネルギー供給 価格と電力市場で取引される既存電力の発電価格の差 を公共部門が支援する補助金制度)で一種の租税方式 がとられていた。しかし一部の大企業の影響力によって 進められ、国民の理解が得られなかったため、世界の潮 流とは逆に、2012年に固定価格買取制度からRPS制度 に移行され、自然エネルギーの導入が失速している。  

1.2.3 世界の自然エネルギー熱政策

 近代的バイオマス、太陽熱、地熱のエネルギーは世 界中で数千万もの建物に温水や暖房を供給している。 太陽熱温水器だけでも中国と欧州を中心に2億件以上 が利用されており、バイオマスと地熱エネルギーは産 業、家庭、農業分野にも熱を供給している。  各国の自然エネルギー熱利用と冷房に関する政策 は、エネルギーの割合や設備に関して規制を設けるもの が多かった。2013年はじめの時点で、20か国が自然エ ネルギー熱利用の目標値を定めており、少なくとも19の 国や州が自然エネルギー熱利用技術の使用を義務づ けていた。新築・改修時の太陽熱利用システムの設置 義務づけが国レベルでも地域レベルでも依然として増 加している。2000年のバルセロナでの採用を皮切りに 自治体レベルでの導入が相次ぎ、2006年にはスペイン 全土での制度化がおこなわれた。その後多くの自治体 や国で同様の制度が制定されており、イタリアでは2012 年にすべての新築または改築される建物は温水需要の 50%、暖房需要の20%を自然エネルギー熱か地域熱供 給でまかなうよう義務づけた。デンマークは熱利用に関 する新たな規制を設け、2013年時点で新築建築物での 石油や天然ガスボイラーの導入を禁止し、2016年まで に地域熱供給か天然ガスが利用可能な地域において は石油ボイラーを禁止し、すべての熱利用を自然エネル ギー源から調達するよう求めている。また太陽熱、地中 熱、バイオマス熱利用技術への助成金や免税制度も適 用されてきた。近年では建築物のエネルギー効率化と 組合せた制度も増えている。  

1.2.4 世界の自治体の自然エネルギー政策

 2012年は政策が後退した国も多いが、世界の自治体 による自然エネルギー促進の取組みはますます加速し ている。目標設定や太陽熱義務化を含む建築基準や 都市計画の策定、自治体独自のFITやR PS制度の設 定、公共インフラの活用、自然エネルギーによる地域冷 暖房の整備等、様々な事例があり、今後の日本での自 治体の取組みにも参考となる。  カーボンニュートラルを目指す自治体は増加してい る。デンマークのコペンハーゲンは2025年までのカーボ ンニュートラル首都の目標を2009年に設定し、フィンラ ンドのヘルシンキや米国ワシントン州は2050年までの カーボンニュートラルを目指している。デンマークのオー フスは2030年までのカーボンニュートラル目標のため、 麦わらを燃料とするコージェネレーションプラントの建 設を承認した。  高いCO2削減目標や自然エネルギー導入目標を持つ 自治体では、自治体による配電網や発電施設の所有お よび管理を進めているところも多い。こうした施設では

(15)

13

自治体や市民がエネルギー政策により多く参加でき、目 標設定や促進政策を進めることが容易となっている。 複数の自治体による電気事業体がコンソーシアムを組 織してプロジェクトを進める事例もあり、ドイツでは33 の公営電気事業体が北海で予定している400MWの洋 上風力発電への投資をおこなった。  自然エネルギー義務化は世界中でますます増えてい る。インドのスラトではすべての建物への太陽熱温水シ ステム設置の義務づけ、複数の自治体では病院やホテ ルを含む構想商業施設への太陽熱温水システムの設置 の義務づけをおこなった。ニューヨーク州は米国で初め てバイオマス熱利用を義務化し、石油暖房の少なくとも 2%をバイオディーゼルにするよう定めた。  自治体によるネットワークへの参加も引き続き盛んで ある。EU市長誓約(Covenant of Mayors)には2012 年に新たに1116の自治体が参加し8 、2013年12月時点 で5400以上の都市や町が署名をおこなっている9。参加 都市は、2020年までの20%以上のCO2削減と気候変動 緩和策、エネルギー効率化、自然エネルギー計画等を 表明している。  

1.3.1 エネルギー基本計画の見直し

 2011年3月の東京電力福島第一原発の深刻な原子力 事故以後の日本のエネルギー政策の見直しにおいて、 自然エネルギーの本格的な普及拡大は日本にとって重 要なテーマとなっている。2011年6月に設置された政府 の「エネルギー・環境会議」において検討がおこなわ れ、2012年9月に決定された「革新的エネルギー・環境 戦略」の大きな方向性として原発への依存度低減と共 に分散型エネルギーシステムへの転換があった。  自然エネルギーの導入目標やロードマップの重要性 も指摘されている。「エネルギー基本計画」の白紙から の見直しが経産省の総合資源エネルギー調査会基本 問題委員会で2011年10月から審議され、その中で2030 年までの再生可能エネルギーの導入目標等も議論され た10。さらに、環境省の中央環境審議会地球環境部会の 「2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会」の 下で中長期的なエネルギー供給のロードマップ等を具 体的に検討されてきた11。その結果、政府の「エネル ギー・環境会議」により、2012年6月に「エネルギー・環 境戦略に関する選択肢」が提示され、国民的議論を経 て2012年9月に「革新的エネルギー・環境戦略」が閣議 決定された12。この戦略の中には再生可能エネルギーの 本格的導入を含むグリーンエネルギー革命の実現が盛 り込まれると共に、2030年の再生可能エネルギーの導 入目標値として全発電量の30%とすることが示された。 しかしながら、2012年末の総選挙後の政権交代によ り、この戦略自体は大幅な見直しを余儀なくされてい る。エネルギー基本計画の検討については、総合資源 エネルギー調査会の総合部会で見直しが始まり、2013 年7月の組織改正により「基本政策分科会」において 2013年12月に「エネルギー基本計画に対する意見」と して見直しの方向性が出された。その中においても日本 経済の再生のためにも自然エネルギーの重要性はさら に高まっている13。しかし、その内容については、福島第 一原発の事故を踏まえた原子力政策の見直しが不十分 なことや、自然エネルギー政策や気候変動政策に対し て目標を定めた中長期的な方向性を示していないこと 等から、多くの市民やNGOから見直しを求める提言が 発表されている14。2014年1月までのパブコメでは約1万 9000件の意見が寄せられた。2014年2月に公表された 政府案は与党での協議を経て、閣議決定される。この 政府案では再生可能エネルギーの積極的な推進はうた われているが、中長期的な目標は設定されていない。  一方、自然エネルギーを取り巻く日本国内のエネル ギー政策は東日本大震災後に大きく変化し、これまでの 「失われた10年」を挽回し、自然エネルギーの本格的 な普及に必要な条件が整いつつある。2012年は「自然 エネルギー元年」と呼ばれ、2013年には早くもその成果 が表れつつあるが、多くの課題も見えてきている。詳し くは、第2章2.1「エネルギー政策のゆくえ」を参照。  

1.3.2 電力システム改革と規制・制度改革

 自然エネルギーの本格的な普及にも重要な役割を果 たす規制・制度改革として、電力自由化や発送電分離 等を含む電力システム改革に関しても2012年2月から約 1年間をかけて、総合資源エネルギー調査会総合部会の 「電力システム改革専門委員会」において具体的な検 討がおこなわれた。2012年7月に発表された基本方針 に基づき、2013年2月に具体的な工程表を含む報告書 が発表された15。その内容は、2013年4月に閣議決定さ れ16、電気事業法の改正法案として2013年の通常国会 に提出され、審議の遅れから廃案となったが、その後、 法案は2013年秋の臨時国会に再提出され、成立した。 さらに、2014年2月28日には、電気小売業への参入の全 8 自然エネルギー世界白書 2013 日本語版 http://www.isep.or.jp/library/1959 9 EU 市長誓約ウェブサイト http://www.covenantofmayors.eu/index_en.html 10 経産省「基本問題委員会について」 http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/ 11 環境省「低炭素社会づくりのためのエネルギーの低炭素化に向けた提言」https://www.challenge25.go.jp/roadmap/report.html 12 エネルギー・環境会議「革新的エネルギー・環境戦略」 http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/archive01.html 13 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonseisaku/index.htm 14 環境エネルギー政策研究所「エネルギー基本計画への政策提言」 http://www.isep.or.jp/library/5708 15 「電力システム改革専門委員会報告書」 http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denryoku_system_kaikaku/report_002.html 16 「電力システムに関する改革方針」 http://www.meti.go.jp/press/2013/04/20130402001/20130402001.html

 1.3 日本の自然エネルギー政策と市場

表 4.1:風力発電の中長期導入目標値(2012 年策定) 単位:GW =百万 kW

参照

関連したドキュメント

限られた空間の中に日本人の自然観を凝縮したこの庭では、池を回遊する園路の随所で自然 の造形美に出会

 ところで、 2016年の相模原市障害者殺傷事件をきっかけに、 政府

2)海を取り巻く国際社会の動向

歴史的にはニュージーランドの災害対応は自然災害から軍事目的のための Civil Defence 要素を含めたものに転換され、さらに自然災害対策に再度転換がなされるといった背景が

*一般社団法人新エネルギー導入促進協議会が公募した 2014 年度次世代エネルギー技術実証事

*一般社団法人新エネルギー導入促進協議会が公募した平成 26 年度次世代エネルギー技術実証

* 一般社団法人新エネルギー導入促進協議会が公募した平成 26

*一般社団法人新エネルギー導入促進協議会が公募した 2014 年度次世代エネルギー技術実証事