第 5 章 結果
II. 参加型アプローチを用いたことによる労働者個人、推進者個人、職場組織全体のアウトカム
3. 職場組織全体のアウトカムの分析
個人が認識する職場組織全体のアウトカムとして、80 職場 637 人のデータを対象に分析を行っ た。
1) 記述統計量
研究者が作成した 10 項目の記述統計量は、表 13 に示す通りである。各項目の有効回答率は 100%であった。平均値は 2.37[O10]~2.54[O2,O6]であった。平均値+標準偏差が最大得点以 上となる天井効果、平均値-標準偏差が最低得点以 下となる床効果を示す項目 はなかった (表 13)。
表 13. 職場組織全体のアウトカムに関する項目の記述統計量
2) IT(Item-Total 相関)
職場組織全体のアウトカム 10 項目において、欠損値のない 637 人のデータで IT 相関を確認し た。修正済項目合計相関の絶対値は、0.759~0.910 で、強い相関が確認された。
3) 探索的因子分析 (1) 因子数の決定
項目分析の段階では項目を削除せずに、探索的因子分析(最尤法、プロマックス回転)を行っ た。因子間に相関関係があることを仮定し、斜交回転であるプロマックス回転を行った。固有値の
項目 n 最小値 最大値 平均値 標準偏差 平均値
+SD 平均値
-SD O1 職場全体で安全や健康について話し合える雰囲気になった 637 1 4 2.49 0.73 3.23 1.76
O2 職場全体の雰囲気が良くなった 637 1 4 2.54 0.75 3.29 1.80
O3 職場全体のコミュニケーションが促進されるようになった 637 1 4 2.51 0.74 3.25 1.77 O4 労働者同士が相手の特徴をよく知ることで、互いの理解がより深まった 637 1 4 2.44 0.71 3.15 1.72 O5 労働者同士で話す機会が増え、いろいろな情報が共有されるようになった 637 1 4 2.50 0.74 3.23 1.76 O6 労働者同士で互いに協力しあう姿が見られるようになった 637 1 4 2.54 0.73 3.26 1.81 O7 職場全体に連帯感が生じ、労働者同士の信頼関係が強くなった 637 1 4 2.45 0.73 3.18 1.71
O8 職場全体のチームワークが良くなった 637 1 4 2.49 0.74 3.23 1.74
O9 職場全体に参加型職場環境改善の取り組みが定着するようになった 637 1 4 2.39 0.75 3.14 1.65 O10 職場全体に良好事例が広がり、水平展開されるようになった 637 1 4 2.37 0.71 3.08 1.65
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下限を1としたところ、【職場組織全体のアウトカム】では 1 因子しか抽出されなかったが、モデルに 従い 4 因子に指定し分析を行った。また、その前後の因子数においても因子分析を行い、因子負 荷量、クロンバックαの比較をし、因子の解釈をしながら最も良いと考えられる因子数を判断した結 果 3 因子が最も良いと判断した。
項目選定基準は、因子負荷量が 0.40 以上であること、複数の因子に 0.4 以上の負荷量を有し ないこととした。10 項目中、因子負荷量が 0.40 未満の項目や複数の因子に 0.4 以上の負荷量を 有するものはなかった。10 項目でプロマックス回転を行ったところ、表 14 に示す 3 因子構造となっ た。表中の O のアルファベットとその横に表示している数字(例、O1)は、職場組織全体のアウトカ ムの質問項目の番号を、その隣の( )内の数字は項目作成時に想定した下位概念を示している。
表 14. 職場組織全体のアウトカムの探索的因子分析(最尤法・プロマックス回転)
N=637
(2) 因子の命名
探索的因子分析によって抽出された因子は以下のように命名した。命名にあたっては、概念枠
因子の解釈
Ⅰ Ⅱ Ⅲ
O3 2 職場全体のコミュニケーションが促進されるようになった .855 -.018 .114
O2 1 職場全体の雰囲気が良くなった .844 .060 .042
O4 2 労働者同士が相手の特徴をよく知ることで、互いの理解がよ
り深まった .595 .091 .263
O1 1 職場全体で安全や健康について話し合える雰囲気になった .558 .272 .090
O5 2 労働者同士で話す機会が増え、いろいろな情報が共有され
るようになった .549 .124 .272
O9 4 職場全体に参加型職場環境改善の取り組みが定着するよう
になった .058 .869 -.047
O10 4 職場全体に良好事例が広がり、水平展開されるようになった .034 .727 .187 O7 3 職場全体に連帯感が生じ、労働者同士の信頼関係が強く
なった .074 .016 .899
O8 3 職場全体のチームワークが良くなった .247 .063 .673
O6 3 労働者同士で互いに協力しあう姿が見られるようになった .372 .103 .484
因子負荷量平方和 7.905 0.32 0.171 寄与率(%) 79.046 3.203 1.712 累積寄与率(%) 79.046 82.249 83.962
因子間相関 Ⅰ Ⅱ Ⅲ
Ⅰ 1.000 .793 .855
Ⅱ 1.000 .772
Ⅲ 1.000
職場全体の良い雰 囲気によるコミュニ ケーションと相互理
解の促進
職場全体としての取 り組みの浸透と拡
大
職場全体の一体感 と結束力の強化
項目 番号
項目 因子
仮説モデル における 構 成概念
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組みを参考にしつつも、観測変数が示している内容を重視した。
第Ⅰ因子は、5 項目から構成され、仮説モデルにおける構成概念【職場全体の雰囲気の肯定的 な変化】を示す O2「職場全体の雰囲気が良くなった」(因子負荷量 0.84)、O1「職場全体で安全や 健康について話し合える雰囲気になった」(因子負荷量 0.56)と【相互理解とコミュニケーションの 促進】を示す O3「職場全体のコミュニケーションが促進されるようになった」(因子負荷量 0.86)O4
「労働者同士が相手の特徴をよく知ることで、互いの理解がより深まった」(因子負荷量 0.60)、O5
「労働者同士で話す機会が増え、いろいろな情報が共有されるようになった」(因子負荷量 0.55)に 含まれている項目が混在していた。これらの項目は、職場全体での安全や健康について積極的に 話し合える良い雰囲気になったことでコミュニケーションが促され、互いのことを良く知ること、すな わち相互理解が進んだことを示すと解釈できることから、<職場全体の良い雰囲気によるコミュニケ ーションと相互理解の促進>と命名した。
第Ⅱ因子は、すべて仮説モデルにおける構成概念【職場全体としての取り組みの浸透と拡大】
に該当する項目であった。O9「職場全体に参加型職場環境改善の取り組みが定着するようになっ た」(因子負荷量 0.87)、O10「職場全体に良好事例が広がり、水平展開されるようになった」(因子 負荷量 0.73)であり、因子名は仮説モデルと同様、<職場全体としての取り組みの浸透と拡大>と 命名した。
第Ⅲ因子は、3 項目から構成され、すべて仮説モデルにおける構成概念【職場全体の一体感と 結束力の強化】に該当する項目であった。因子負荷量の高い順に、O7「職場全体に連帯感が生 じ、労働者同士の信頼関係が強くなった」(因子負荷量 0.90)、O8「職場全体のチームワークが良 くなった」(因子負荷量 0.67)、O6「労働者同士で互いに協力しあう姿が見られるようになった」(因 子負荷量 0.48)であり、因子名は仮説モデルと同様、<職場全体の一体感と結束力の強化>と命 名した。
4) 信頼性の検討
職場組織全体のアウトカムの 10 項目全体の Cronbach’s αは 0.973 と十分な値が得られた。
<職場全体の良い雰囲気によるコミュニケーションと相互理解の促進>(5 項目)は 0.957、<職場 全体としての取り組みの浸透と拡大>(2 項目)は 0.881、<職場全体の一体感と結束力の強化>
(3 項目)は 0.957 であり、十分な内的整合性を確認した。
5) 確認的因子分析
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職場組織全体のアウトカムの 3 つの因子について確認的因子分析を行った。
3 つの因子からそれぞれ該当する項目が影響を受け、すべての因子間に共分散を仮定したモ デルで分析を行ったところ、適合度指標は CFI=0.983、RMSEA=0.84、AIC=221.40 であった(図 8)。
したがって、職場組織全体のアウトカムの構成概念として妥当であると判断した。
図 8.職場組織全体のアウトカムの確認的因子分析
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