第 3 章 予備研究
I. 研究方法
質的記述的研究
2. データ収集期間 2012 年 8 月~9 月
3. 研究協力者およびリクルート方法
参加型職場環境改善活動を 1 年以上継続的に実施している事業場に所属する労働者および 産業保健専門職のうち、研究の協力に同意が得られた者を対象とした。
研究協 力者のリクルート方法は、論文や学会 発表、雑誌等で参加 型職 場環 境 改善活 動を発 表・公表している執筆者に研究の趣旨・概要を口頭・文書で説明し、研究協力 候補者の紹介を依 頼した。執筆者より研究協力候補者へ研究趣旨を説明してもらい、内諾を得られた研究協力候補 者に研究者が研究趣旨の説明を文書と口頭で行い、同意の得られた 14 名を研究協力者とした
(表1)。研究協力者は、3 名が病院職場、2 名がガラスリサイクル業、9 名が行政(地方公務)で働 いていた。年代は、30 歳代が 6 名、40 歳代が 3 名、50 歳代が 5 名、参加型職場環境改善に携わ った経験年数は、平均 3.2(±1.7)年であった。対象事業場の概要は表 1 に示す。
26 表 1. 研究協力者・事業場の一覧
事業場
X事業場 Y事業場 Z事業場
業種 病院 ガラスリサイクル業 地方公務
労働者数 約1,200人 49名(うち外国人40名) 1,585人 産業保健スタッフの構
成と人数
産業医 常勤 1人 産業看護職 0人
衛生管理者 2人 (専属なし)
産業医 非常勤 1人 産業看護職 0人
安全衛生推進者 1人 (専属なし)
産業医 常勤 1人 非常勤3人 産業看護職 1人
衛生管理者 12人 (専属12人)
参加型職場環境改善 の導入年
2004年導入し4年間事業場全体の 取り組みとして実施。現在は事業 場全体の活動としては継続してい ない
2011年に導入し、1年間継続的に 活動を実施。現在は形を変えて
(小集団活動)改善活動を継続中
2007年に導入
労働安全マネジメントシステムの一 環として現在も継続中
ターゲットとしている健
康課題 メンタルヘルス一次予防対策 労働災害防止 メンタルヘルス一次予防対策
導入した理由・背景
ストレス調査を実施したところ、中 堅クラスの仕事ストレスが悪化して いた。また、早期離職やインシデ ント件数の増加などもあり、院長か らのトップダウンによる指示で取り 組みを始めた。
ある職場で休業を伴う労働災害が 発生し、安全衛生教育を強化する よう本社からの指示があった。しか し、外国人労働者が8割を超え、コ ミュニケーションもままならない状 態であり、また安全衛生に関する 具体的な取り組みの方法も分から ないため、労働災害発生防止を目 指し、外国人労働者への安全衛 生研修を参加型アプローチにて導 入することとなった。
メンタルヘルス不調者が増加し、さ まざまな対策(相談窓口、管理者 教育、セルフケア教育など)を行っ てきたが、なかなかメンタルヘルス 不調者が減らず、かえって増加し ていたところ、文献で「参加型職場 環境改善」の取り組みを知り導入 をすることになった。
展開方法
①当時の病院長がメンタルヘルス 一次予防対策の実施のため参加 型職場環境改善の手法を導入す ることを決定する。
②大学の研究プロジェクトの一環と して技術的なサポートを受けなが ら取り組みを行うこととなり、大学に て病院職 員数 名がファ シリ テー ター教育を受ける。
③まずは、モデル職場で実施し、
その成果に基づき、翌年度は実施 職場数を広げた。
④実施職場は事務部門、確信両 部門、病棟などの単位で行った。
活動の全体的な運営や調整、管 理は医療安全管理部門と安全衛 生委員会の合同で実施した。
①法令による作業環境測定を委 託していた機関に労働災害防止 の取り組みを始めたいことを安全 衛生推進者が相談する。
②この作業環境測定機関を通じ て、研究機関へY事業場での参加 型職場環境改善の実施を打診。
研究プロジェクトの一環として、参 加型アプローチを用いた安全衛生 に関するセミナーを3回開催(現業 職場の労働者対象)した。
③セミナーで計画立案した職場環 境改善を実施、次のセミナーで フォローアップする形式で進める。
(現業職場で参加型職場環境改 善を実施する)
①職場の衛生管理者が大学(研究 機関)へ参加型職場環境改善の 実施について相談。大学(研究機 関)からの助言を受ける。
②まずは職員厚生課が中心となり モデル職場で実施。その後、各職 場の安全衛生委員会経由で職場 単位での取り組みをはかる。
③各職場の担当者へのフォローや 安全衛生委員会を活用した計画 立案、実施報告、評価を定期的に 行う
④その後、労働安全マネジメントシ ステムの一環として参加型アプ ローチを用いながら活動を継続
27 4. データ収集方法
2012 年 8~9 月に半構成的インタビューによりデータを収集した。インタビューは、1 回につき約 60 分で、1 職場につき 1 回とし、同じ職場で職場環境改善活動に取り組んだ研究協力者はグループイ ンタビュー、研究協力者がその職場では一人のみの場合は個別インタビューを行った。インタビュー の内容は、参加型職場環境改善により職場環境が改善されたこと以外に、労働者や職場に起こった 変化、自身の産業安全保健に対する考え方の変化、取り組みに関与したメンバーとの関係性の変化 について語ってもらった。インタビューで語られた内容は、研究協力者の承諾を得て、メモを取ると同 時に IC レコーダーに録音した。なお、研究協力者の所属する事業場の概要及び経験年数等の基本 属性については、面接開始前にフェイスシートへの記入を依頼し回収した。
5. 分析方法
インタビュー内容の録音記録から逐語録を作成した。データ分析は、参加型職場環境改善の実施を 通してもたらされた個人や職場の変化に焦点を当てて、質的記述的にインタビューの内容分析を行っ た。
まず、逐語録を繰り返して読み、「参加型職場環境改善活動によってもたらされた個人と職場の変化」
を取り出し、できる限り研究協力者の言葉を使うようにして、その内容を端的に表すコードをつけた。さら に複数のコードを「誰が変化したのか」、「何が変化したのか」に着目しながら、コードの共通性を見出す 中でカテゴリーを抽出し、抽象度を上げた。この過程を通じて、インタビューから抽出したカテゴリーをも とに、組織行動学における個人レベル、集団レベル、組織レベルでの 3 つのレベルによる分析(Robbins, 2009)を参考に、参加型職場環境改善活動のアウトカムを『労働者個人のアウトカム』、『推進者のアウト カム』、『職場組織全体のアウトカム』の 3 つの側面から検討した。分析の過程では、指導教授からスー パーバイズを受け、最終的な結果については、研究協力者全員から「参加型職場環境改善活動によっ てもたらされた労働者や職場の変化」を表しているかの承認を得た。
6. 倫理的配慮
研究協力を依頼する際は、研究目的、方法、データの取り扱い、プライバシー保護、研究協力の任 意性と中断の自由、研究成果の公表について事前に文書による提示を行い、インタビュー実施前に口 頭で説明し、文書による同意を得た。インタビューは研究協力者が指定する場所で、プライバシーが守 れるように配慮し、実施した。インタビューを実施する際、インタビュー内容は研究協力者の承諾を得て、
メモを取ると同時に IC レコーダーに録音したが、録音やメモを断られたケースはなかった。
28
なお、本研究は、聖路加大学研究倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号 12-014)。