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(1) 有効性

1) 有効性(二重盲検期)

有効性主要評価項目である ALS 患者の日常生活機能を把握するために作成された臨床評

価尺度 ALSFRS-R スコアの主要解析として「第 1 クール投与開始前」と「第 6 クール投与終

了 2 週間後又は中止時( LOCF ) 」の差について,動的割付に用いた 3 因子を共変量とした解 析を実施し,群間比較を行った.その結果( FAS ) , LSMean±S.E. は M 群: -5.01±0.64 , P 群:

-7.50±0.66 ,投与群間差の LSMean±S.E. とその 95% 信頼区間は 2.49±0.76 ( 0.99 ~ 3.98 )であり,

群間に統計学的に有意な差が認められ( p=0.0013 ) ,本剤が病勢の進行を抑制することが示さ れた.

また,すべての副次解析においても,群間に統計学的に有意な差が認められた.副次解析

として ALSFRS-R スコアが第 1 クール投与開始前から 6 点以上減少した場合をイベント, 6

点以上減少しなかった場合を打ち切りと定義し, 「前観察期 ALSFRS-R スコア変化量」を層 とした層別 Log-rank 検定,層別一般化 Wilcoxon 検定を実施し,群間比較を行った.打ち切 り日は観察終了日とした.その結果( FAS ) ,イベント数は, M 群: 23 , P 群: 33 であり群間 に統計学的に有意な差が認められた{ p=0.0338 (層別 Log-Rank 検定) , p=0.0180 (層別一般

化 Wilcoxon 検定)} . 12 点以上減少した場合をイベントとした解析も同様に行った結果,イ

ベント数は, M 群: 5 , P 群: 13 であり群間に統計学的に有意な差が認められた{ p=0.0261

(層別 Log-Rank 検定) , p=0.0208 (層別一般化 Wilcoxon 検定) } . 24 週間で ALSFRS-R スコ アを 6 点又は 12 点以上減少することを抑制したことから,本剤が病勢の重症化を抑制するこ とが示された.

また,副次的評価項目のうち ALSFRS-R スコア(球機能,四肢機能) , Modified Norris Scale スコア及び ALSAQ40 スコアの 4 項目において, 「第 1 クール投与開始前」と「第 6 クール投 与終了 2 週間後又は中止時( LOCF ) 」の差について,動的割付に用いた 3 因子を共変量とし た解析にて P 群に対し統計学的に有意な差が認められた.死亡又は一定の病勢進展までの期 間を検討するため生存時間解析を実施した結果,統計学的に有意な差は認められなかったも のの{ p=0.1284 ( Log-Rank 検定) , p=0.1415 (一般化 Wilcoxon 検定 ) } ,イベント数は, M 群:

2 , P 群: 6 であり, M 群は P 群に比して少なかった.

ALS の運動障害の評価尺度として考案された Modified Norris Scale でスコアの低下抑制が 認められたことは,主要評価項目 ALSFRS-R スコアの結果を裏付けるものであった.また,

疾患特異的 Quality of life (以下, QOL )スケールとして標準的である ALSAQ40 の増加抑制 が認められたことから,本剤が QOL の低下を抑制することが示された.

2) 有効性(実薬期)

二重盲検期に治験薬を 6 クール( 24 週間)投与したところ, ALS 患者の日常生活機能を把

握するために作成された臨床評価尺度である有効性主要評価項目 ALSFRS-R スコアの主要解

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析において, M 群と P 群の群間に統計学的に有意な差が認められ,病勢の進行を抑制するこ とが示された.その後、実薬期に治験薬を更に 6 クール( 24 週間)投与した結果, ALSFRS-R スコアの「第 1 クール投与開始前」と「第 7 クール投与開始前」の差(平均値 ±S.D. )は M-M 群: -4.1±3.4 , P-M 群: -6.9±5.1 であったが, 「第 1 クール投与開始前」と「第 12 クール投与 終了 2 週間後」の差(平均値 ±S.D. )は M-M 群: -8.0±5.6 , P-M 群: -10.9±6.9 であった.要約 統計量の平均値の経時的推移から, M-M 群は第 1 クールから第 12 クールまで直線的な経時 的推移を示し,治験薬の効果の持続が認められた.

また,副次評価項目のうち疾患特異的 QOL スケールとして標準的である ALSAQ40 スコア において,二重盲検期で M 群と P 群の群間に統計学的に有意な差が認められ, QOL の低下 を抑制することが示された.その後、実薬期に更に治験薬を 6 クール( 24 週間)投与した結

果, ALSAQ40 スコアの「第 1 クール投与開始前」と「第 7 クール投与開始前」の差(平均

値 ±S.D. )は M-M 群: 16.1±19.9 , P-M 群: 24.8±24.1 であったが, 「第 1 クール投与開始前」

と「第 12 クール投与終了 2 週間後」の差(平均値 ±S.D. )は M-M 群: 29.9±22.2 , P-M 群:

39.5±21.6 であった.要約統計量の平均値の経時的推移から, M-M 群は第 1 クールから第 12

クールまで治験薬の効果の持続が認められた.

以上より, M-M 群では 12 クール( 48 週間)を通して治験薬の効果の持続が示され,病勢 の進行抑制及び QOL の低下抑制の持続が認められた.

(2) 安全性

1) 安全性(二重盲検期)

M 群での有害事象発現率,肝機能及び腎機能を含む臨床検査値の変動は P 群と同程度であ り,本剤の安全性で問題となる点は認められなかった.

2) 安全性(実薬期)

M-M 群及び P-M 群での有害事象発現率,肝機能及び腎機能を含む臨床検査値の変動にお いて特筆すべき事項はなく,本剤の安全性で特に問題となるものではないと考えた.

(3) 全般的結論

ALS 発症後比較的早期で軽症の ALS 患者に MCI-186 60 mg を 6 クール投与したとき, P 群 に対して病勢の進行,重症化及び QOL の低下を抑制することが示された. 更に MCI-186 60 mg を 6 クール投与したとき, 12 クール( 48 週間)を通して治験薬の効果の持続が示され,病 勢の進行抑制及び QOL の低下抑制の持続が認められた.

また,安全性の面については, ALS 患者に MCI-186 60 mg を 6 クール及び 12 クール投与

したとき,特に問題となるものはないと考えた.

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2.7.6.1.4 死亡被験者及び重篤な有害事象の個別被験者の詳細(経過)

( MedDRA/J ver.17.0 )

2.7.6.1.4.1 二重盲検期に発現した重篤な有害事象(実薬期に発現した重篤な有害事象の

情報を含む)

二重盲検期で重篤な有害事象が発現した被験者について,二重盲検期及び実薬期で発現し た重篤な有害事象を叙述した.

(1) 症例番号 M190108(M 群):嚥下障害

症例番号

薬剤番号

投与群※1

M1901 08 99番 M群

性別

年齢

身長

体重 女

6 歳 148 cm 44 kg

観察期間※2

最終投与日

投与率(二重 盲検期)

投与開始1日目

~49日後

投与開始39日後 35.9%

合併症

疾患名(PT)

[MedDRA/J ver.17.0]

治療の 有無 動脈瘤

便秘 脂質異常症 慢性副鼻腔炎 変形性関節症 半月板損傷

なし あり あり あり あり なし

併用薬※3

リルゾール(継続~継続),ムコスタ錠(継続~継続),セレコックス錠(継続~継続),ツムラ(29)麦 門冬湯エキス顆粒(継続~投与開始29日後),シンバスタチン錠(継続~継続),ムコダイン錠(継続~

投与開始48日後),キプレス錠(継続~投与開始48日後),プルゼニド錠(継続~継続),アルツ(継続

~投与開始48日後),キシロカインポリ1%(継続~投与開始48日後),コフノール錠(投与開始30~44 日後),新レシカルボン坐薬(投与開始30日後~継続),ソリタT1(投与開始48日後),ダラシン(投与 開始48日後),ロセフィン(投与開始48日後),キシロカインゼリー2%(投与開始48日後),4%キシロ カイン(投与開始48日後),エンピナース・P錠(投与開始49日後~継続),サワテン錠(投与開始49 日後~継続),クラビット錠(投与開始49日後~継続),ベストロン耳鼻科用1%(投与開始49日後~継 続),リンデロン点眼・点耳・点鼻液0.1%(投与開始49日後~継続),キシロカインゼリー2%(投与開 始49日後)

有害事象名 (PT) 症例報告書 記載名

SOC

原疾患の悪化

程度

重篤度 判断 基準※4

発現日

発現時期※5

最初に重 篤化した 日

発現時期※5

転帰 転帰日

持続 期間※6

追跡未 実施理 由

治験薬の処置

治験薬以 外の処置※7

治 験 薬 と の 因

関 係

因果関係 判定理由

嚥下障害

嚥下障害

胃腸障害

はい 高度

重篤 (3,4)

投与開始 48日後

(二重盲 検期)

(1)48日目 (2)19日目 (3)10日目

投与開始 48日後

(二重盲 検期)

(1)48日目 (2)19日目 (3)10日目

未回復

投与開始 101日後 54日間

該当せず あり

気管切 開,胃 瘻造設

合理的な可能性なし

原疾患の進 行によるも の.

※1:M群:MCI-186群,P群:プラセボ群

※2:第1クール投与開始日~第6クール投与終了2週後/中止時のALSFRS-R評価日(欠測又は許容範囲外の場合,第6 クールの最終投与日又は中止日)

※3:処置時の皮膚の消毒薬,胃瘻へ注入する経腸栄養剤及び併用薬の希釈に用いる生理食塩液以外を記載.投与開始日 継続:仮登録前のALSFRS-R評価日前日以前から継続,投与終了日 継続:第7クール投与開始後(実薬期に移行 しなかった場合は,第6クール投与終了2週間後)又は中止日以降も継続

※4:1.死亡 2.死亡につながるおそれのあるもの 3.治療のために病院又は診療所への入院又は入院期間の延長が必要と なるもの 4障害 5障害につながるおそれのあるもの 6.上記1.~5.に掲げる症例に準じて重篤であるもの 7.後

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世代における先天性の疾病又は異常を来すもの

※5:1.第1クール投与開始日からの経過日数(第1クール投与開始日を1日目とした場合),2.発現クール投与開始日か らの経過日数(発現クール投与開始日を1日目とした場合),3.発現クール投与終了日からの経過日数(発現クール 投与終了日を1日目とした場合)発現クール投与終了日以降に発現しているもののみ記載

※6:発現日からの持続期間(発現日を1日目とした場合)

※7:第6クール投与終了2週後/中止時までに使用した薬剤が該当する場合,詳細は空欄

<上表※7 の処置に該当する併用薬

3

> 併用薬なし

<経過>

投与開始 91 日前 投与開始 6 日前 投与開始 1 日目 投与開始 48 日後

投与開始 49 日後

投与開始 53 日後 投与開始 65 日後 投与開始 101 日後

同意取得・仮登録.

本登録.

投与開始.

膿性鼻汁・膿性痰増量.排痰困難で他院受診.喉頭内視鏡にて大量に痰 が詰まっているのを確認.内視鏡で除去したが取りきれず,当院搬送さ れ即入院した.

球症状による嚥下障害のため気道閉塞を起こし呼吸困難となった.今後 の経過についてご本人・ご家族に説明し,気道切開をすることになった.

治験は本日をもって中止とする.

気管切開術(喉頭全摘術)施行.

胃瘻造設術施行.

本事象,未回復であることを確認した(追跡終了) . 治験責任医師コメント:

今回の事象は原疾患の進行によるものであり,治験薬との因果関係はないと判断する.