• 検索結果がありません。

結果②クラスター毎に必要とされるコンピタンス

3.  コンピタンス概念についての理解の深化

3.3.   コンピタンスとユーザビリティ活動の対応表作成

3.3.5. 結果②クラスター毎に必要とされるコンピタンス

クラスター分析の結果は、ほぼユーザビリティ活動リスト第1版の分類に対応したもので あった。すなわち、概ねユーザビリティ活動リスト第1版で示されていた活動分類の違いに よって、必要とされるコンピタンスも異なっているということである。 

詳細に見ると、ユーザビリティ活動リスト第1版では広く製品開発活動と分類されていた 7つの活動が、4つのクラスター(クラスター2,3,4,6)に分類されることとなった。これ らは上流から下流への開発工程に従って分類されており、製品開発活動が多岐に渡るために 必要とされるコンピタンスが活動によって異なるのではないか、という当初の仮説が支持さ れる結果となっている。 

また、ユーザビリティ活動全体は、調査評価活動と設計デザイン活動からなる直接的活動 と、戦略的活動とセンター活動からなる間接的活動とに大きく分類して捉えることができる。 

その他、コンサルティングとユーザビリティ組織のマネージメントが同一のクラスターと なったことは、当初のユーザビリティ活動の分類とは大きく異なっており、興味深い。 

となっている。 

   

表  3-21  特徴パターンのコーディング(分類毎) 

S 0.856

A+ 0.642 0.856

A 0.428 0.642

B+ 0.214 0.428

B 0 0.214

B- -0.226 0

C -0.452 -0.226

C- -0.678 -0.452

D -0.904 -0.678

D- -1.173 -0.904

E -1.441 -1.173

←標準的 コン タン が必要

←基礎的 コン タン が必要

←高度 コン タン が必要

   

表  3-22  コンピタンス/9クラスターの特徴パターン 

 

表  3-23  コンピタンス/4大分類の特徴パターン 

   

 

表  3-24  コンピタンス分類/9クラスターの特徴パターン 

C-B+ B+ B

B- B+ B

B-B A A B B- B- B

B+ B+ B

D- C B

B-B B+ A A B+ A B+ C

C- B B C C- C C- D

D-B- B B A C

C-A A B C D- B B C D

B- A A B+ B- B B+ B C

B- D C C- D

D-

C-B B+ A B B- B B+

C B+

C

C-B B+

B-B B B

B-B+ B+ B+ B+

C

B- B A A

B-

D-C B- B- B- C B- A C

C-C- D C- C- D C- A B C

   

表  3-25  コンピタンス分類/4大分類の特徴パターン 

B B B C

D

B-B B

B+ C- B

B+ B B+

B+

B-B- C- C-

D-B+ A

B B+ B C

C C- B D

B+ C

B+ B B+

C-A B

B+ B- B- D

B+ B

B- B- A

C-C- C- A C

 

以下、これら特徴パターンの分析から得られる知見を述べる。 

まず、直接的活動(調査評価活動と設計デザイン活動)を見ていく。 

調査評価活動は、設計デザイン活動にくらべると、若干 A.興味、関心、態度は低めでも 良いが、D1.思考能力、体力、E.ビジネス活動能力はやや高めが必要とされることがわかる。

中では、「2.ものづくりに対する興味、感心」がそれほど必要とされない。また、評価業務 においては、「1.ユーザビリティ活動に対する興味、関心」が非常に高く要求される。知識 については、B2.製品ドメインの知識はやや低めでも良いが、その他の知識はおしなべて他 の活動と比べて高く要求されている。ユーザビリティエンジニアリング能力では、当然では あるが、調査評価能力が要求される。特に、「44.リサーチデザイン能力」「45.インタビュー 実施能力」「46.観察能力」「49.分析考察能力」は、全ての調査評価活動において重要視され るコンピタンスである。 

設計デザイン活動は、まず高い A.興味、関心、態度が必要とされる。特に、「2.ものづく りに対する興味関心」や「4.問題解決に対する柔軟さ」が必要とされる。一方、D.基本能力 や E.ビジネス活動能力はそれほど高いコンピタンスが必要とされていない。知識について は、B2.製品ドメインの知識がやや高めに必要とされるが、一方で B1.ユーザビリティ関連 学問分野はあまり必要とされていない。B3.調査、評価手法に関する知識も、研究開発活動 を除けば同様にあまり必要とされない。ユーザビリティエンジニアリング能力では、設計デ ザイン能力が必要とされるが、調査評価能力はあまり必要とされない。 

このように、おなじユーザビリティの直接的活動でありながら、調査評価活動と設計デザ イン活動には少なからぬコンピタンスの違いがあることがわかる。 

端的には、設計デザイン活動は学問的な知識が十分でなかったり、リサーチがあまりでき なかったりしても構わないが、興味、関心、態度や製品ドメインの知識、設計デザイン能力 については十分なコンピタンスが必要とされる。また、基本能力についてもそれほどは要求 されない。一方、調査評価活動は、ほぼその裏返しであり、調査評価能力や関連学問分野の 知識、調査、評価手法の知識が必要とされる。 

続いて、間接的活動(戦略的活動とセンター活動)を見ていく。 

戦略的活動は、高い E.ビジネス活動能力と、調査評価活動と同等の A.興味、関心、態度、

D.基本能力が必要とされる。特に「1.ユーザビリティ活動に対する興味、関心」については 要求が高い。知識については、B4.活動理念、B5.マネージメントに関する知識が求められ ている。そして、F.ユーザビリティエンジニアリング能力はそれほど必要とされないが、

G.ユーザビリティマネージメント能力については全活動の中で唯一高く必要とされている。 

戦略的活動は、直接的活動とは異なるユーザビリティ活動であり、そのためにビジネス活 動能力やマネージメント能力が必要とされながらも、直接的活動に必要な諸コンピタンスに ついてもある程度の水準を要求されていることがわかる。 

一方、センター活動は全般的にあまりコンピタンスが要求されていない。その中ではビジ ネス活動能力が求められる方ではある。逆に B1.ユーザビリティ関連学問分野や調査、評価

必要とされるコンピタンスを見る限り、センター活動については、ユーザビリティ活動を 行う部署としての役割であって、他の活動と比較した場合、専門的なコンピタンスを活用し てユーザビリティ専門家が行うべき活動とはそれほど考えられていないようだ。 

ただし、これはあくまでユーザビリティ活動リストの範囲における相対的な比較にすぎな い。また、そもそものコンピタンス概念収集のインタビュー調査において、インフォーマン ト自身にこれらセンター活動がユーザビリティ活動として十分に認識されていなかった可 能性も考えられる。すなわち、センター活動に必要なコンピタンスが現在のコンピタンス概 念集合とは別に追加される可能性も否定できない。また一方で、センター活動はより一般的 なビジネス活動に類するものであり、他のユーザビリティ活動に必要なユーザビリティ専門 家としてのコンピタンスよりも、一般的なビジネス活動に必要なコンピタンスを必要とする ものである、という可能性も考えられる。 

これらのセンター活動が、実際にユーザビリティ専門家でない担当者による活動で十分で あるかどうか、また、一般的なビジネス活動のコンピタンスがどの程度必要とされるのかに ついては、今後のより詳細な検討が必要であろう。 

以上のように、ユーザビリティ活動といっても、必要とされるコンピタンスには様々な違 いがあることが見えてきた。直接的活動と間接的活動で異なるだけでなく、直接的活動にお いても、大きく調査評価活動と設計デザイン活動では必要とされるコンピタンスが異なって おり、また、それらの中でもユーザビリティ活動の分類毎に細かな違いが存在していること がわかった。 

実際の組織設計および運営においては、コンピタンスの観点のみから業務範囲を検討する 訳ではないが、業務担当者のコンピタンス適合度は、適切な業務遂行においては重要な意味 をもつもののひとつであり、そこに様々な方向性、特に直接的活動において調査評価活動と 設計デザイン活動という2つの大きな方向性があることは、ユーザビリティ組織の活動を検 討する際に、十分考慮に含められるべき内容であろう。