2. コンピタンスリストの作成
2.4. 本章の結論
表 2-30 コンピタンスリスト第3版への改定内容(続き)
第2版から第3版への改定においては、第1版から第2版への改定と比べ、改定内容は多 いものの、基本的な骨格はほとんど変更されていない。
第3版は、基本的な骨格、分類構成に比べてその妥当性の検討が十分ではなかった、それ ぞれのコンピタンス概念およびその表現についてより精緻化を図ったものといえる。
これらの関係をモデルとして図示すると、図 2-8 のように捉えることができる。
図 2-8 コンピタンスリスト間の関係
3版)としてまとめた。
コンピタンスリスト作成にあたっては、まず、ユーザビリティ活動を実践しているユーザ ビリティ専門家に対するインタビューを行い、コンピタンス概念に関するデータを収集し、
それを元に、ユーザビリティ専門家のコンピタンスリストを作成した。また、作成したコン ピタンスリストが広く支持されるものであることを確認した上で、その過程を通じて得られ た知見からコンピタンスリストの改定を行った。
最終的に、コンピタンスリスト第3版として、7分類 60 コンピタンスから構成されたコ ンピタンスリストを得た。
コンピタンスリストは、第1版から、第2版、第3版と改定されるに従い、全体構造や分 類、コンピタンス概念および表現について、それらの適切さを向上させている。
しかし一方で、コンピタンスリストという概念記述だけは、コンピタンス概念を捉えるに は不十分である。
まず、ユーザビリティ活動は開発の上流から下流まで多岐に渡っており、本章でまとめら れたコンピタンスが、すべての活動において均質に必要とされるわけではないと考えられる。
必要とされるコンピタンスの観点からユーザビリティ活動を改めて捉え直し、それぞれのユ ーザビリティ活動ごとに、コンピタンスリストの各コンピタンスがどの程度必要とされるの かを明らかにすることで、より適切なコンピタンスリストの活用が期待できる。
また、コンピタンスリスト第3版には、「ものづくりに対する興味、関心」、「論理的思考 能力」といった、ユーザビリティ活動に直結せず、より広く根源的と考えられるコンピタン スから、「ユーザビリティテスト実施能力」のように、特定のユーザビリティ活動に結びつ いていると考えられるコンピタンスまで、幅広く多層的にコンピタンスが示されているが、
その多層性についてはあくまでコンピタンス概念から推測されたものであり、実際的な多層 性の確認は行われていない。加えて、どのコンピタンスがどのように他のコンピタンスやユ ーザビリティ活動に影響を与えているのか、また逆に、ユーザビリティ活動はどのようにコ ンピタンスに影響を与えるのか、といった個々のコンピタンスやユーザビリティ活動同士の 関係性についても明らかにされていない。
これらの概念間の関係性についてさらに検討を行うことで、コンピタンスリストの多層性 を確認し、また、具体的に根源的なコンピタンスを明らかにすることによっても、更なる適 切なコンピタンスリストの活用が期待できる。
そこで、3 章では、これらの観点から、コンピタンス概念に対して更なる検討を進めてい く。
【付記】
本章の主要な内容は、佐藤・黒須・高橋・高橋(2005a)、佐藤・黒須・高橋・高橋(2005c)、
佐藤・黒須・高橋・高橋(2005d)、ニューメディア開発協会(2004)、ニューメディア開 発協会(2005)に収録されている。ここで示すものは、それらを修正・加筆したものであ る。