4. 収斂と改定
4.2. コンピタンスリストの改定
4.2.3. 検討③ユーザビリティ実務者のコンピタンス所有に関する実態調査
2.3 では、ユーザビリティ活動を行っている人々に対し、重要性の観点からコンピタンス についての評価を実施したが、一方で、ユーザビリティ活動に従事している人々がほとんど 持っていないコンピタンスがあるとすれば、それはユーザビリティ活動に必要なコンピタン スとしては疑問が残る。すなわち、ユーザビリティ活動を行っている人々のコンピタンスの 所有状況を把握することによっても、コンピタンスリストの妥当性の検証および改定要件を 得ることが出来ると考えられる。
また、コンピタンスの所有状況を把握しておくことは、人材育成を考察する上でも有益な 基礎情報となると考えられる。
そこで、現在のユーザビリティ活動およびコンピタンス所有の実態を把握することを目的 として、ユーザビリティ業界に対する実態調査を行うこととした。
4.2.3.1. 方法
2004 年 12 月 21 日から 2005 年 1 月 21 日にわたり、ウェブサイト(http://www.do-gugan.
調査対象はユーザビリティ活動に関わっている実務者、研究者とし、昨年度の調査回答 者、ヒューマンインタフェース学会ユーザビリティ専門研究会メンバー、日本人間工学会ア ーゴデザイン部会メンバー、JBMIA ヒューマンセンタードデザイン小委員会メンバー(計 200〜300 人程度)に対し、アンケート調査への参加を呼びかけた。
4.2.3.2. 質問紙
質問紙ウェブサイトは、導入部と本体(調査票)から構成されている。
導入部では、本調査の概要説明に続いて、本調査で用いる用語(コンピタンス、ユーザビ リティ、ユーザビリティ活動、など)に関する定義、個人情報の取り扱い、謝礼、回答時間、
問い合わせ先などが説明される。調査票部分は、縦に長い1ページで、以下に挙げる3部構 成となっている。
1. あなた自身について教えてください(8問)は、所属や業務経験などの基礎情報の質 問項目である。
2.ご自身の活動を教えてください(20 問)は、現在の所属組織におけるここ2年ほどの 回答者のユーザビリティ活動を回答してもらうものである。
3.ご自身の自己評価をお願いします(79 問)は、回答者のユーザビリティ活動およびコ ンピタンスに関する自己評価を回答してもらうものである。
コンピタンスに関する調査では、コンピタンスリスト第3版の 60 項目に対して、表 4-6 に示す質問を行い、選択肢から回答して貰うものとした。
2.ユーザビリティ活動状況に関する結果は、ユーザビリティ活動リストの改定に用いるた め、4.3.1 にて後述する。
本節では、3.ユーザビリティ活動に必要なコンピタンスに関する調査結果を詳説する。
表 4-6 質問および選択肢
調査票の例を図 4-1 に示す。
4.2.3.3. 結果
回答者(有効回答)は 96 名で、9割ほどが記名回答であった。回答者に極端な偏りは見 られず、ほぼ 2.3 で実施した調査と同様の回答者分布であった。
回答者の属性構成は、所属組織ではメーカーおよびデベロッパーが 70%、コンサルティ ングファームおよび事務所が 17%、職位ではエンジニアが 64%、マネージャーが 36%であ った。
度数分布および特徴パターン(上田, 2003)をそれぞれ、表 4-8、表 4-9 に示す。なお、
特徴パターン作成に際しては、表 4-7 に示すコーディングを行っている。
表 4-7 特徴パターンコーディング対応
2.0 1.3 2.0 1/2.0 1/1.3
0 1/2.0
表 4-8 コンピタンスに対する自己評価 度数分布
0 1 11 32 28 24 3 4 4.25
0 0 12 29 31 24 3 4 4.25
0 0 14 30 31 21 3 4 4
0 1 13 29 33 20 3 4 4
0 0 13 34 31 18 3 4 4
0 16 39 22 17 2 2 2 3
0 23 34 17 12 10 2 2 3
0 30 43 13 8 2 1 2 2
0 38 40 15 2 1 1 2 2
0 55 28 12 1 0 1 1 2
0 7 31 23 18 17 2 3 4
0 13 28 26 19 10 2 3 4
0 5 29 35 21 6 2 3 4
0 4 33 34 17 8 2 3 4
0 23 41 24 5 3 2 2 3
0 26 37 20 6 7 1 2 3
0 10 32 21 17 16 2 3 4
0 27 36 17 9 7 1 2 3
0 35 27 22 10 2 1 2 3
1 7 41 31 15 1 2 2 3
0 16 30 27 19 4 2 3 3
0 8 34 27 18 9 2 3 4
0 29 29 28 5 5 1 2 3
0 51 27 13 4 1 1 1 2
1 15 20 28 20 12 2 3 4
1 12 22 26 18 17 2 3 4
1 4 24 30 30 7 2 3 4
1 7 26 27 29 6 2 3 4
1 5 27 33 24 6 2 3 4
0 7 30 27 26 6 2 3 4
1 2 21 39 27 6 2.75 3 4
1 3 14 36 33 9 3 3 4
1 4 24 40 23 4 2 3 4
1 0 16 41 25 13 3 3 4
1 3 11 41 23 17 3 3 4
0 0 18 41 26 11 3 3 4
0 0 15 35 33 13 3 3 4
0 2 20 36 25 13 3 3 4
0 2 21 41 23 9 3 3 4
0 26 38 20 7 5 1 2 3
0 0 22 50 15 9 3 3 3.25
0 4 22 43 21 6 2 3 4
0 1 20 38 28 9 3 3 4
0 13 25 29 24 5 2 3 4
0 13 27 32 18 6 2 3 3.25
0 5 19 38 23 11 2.75 3 4
0 10 27 25 21 13 2 3 4
1 15 20 26 22 12 2 3 4
0 6 31 30 20 9 2 3 4
0 9 31 26 25 5 2 3 4
0 10 27 24 23 12 2 3 4
0 29 23 26 11 7 1 2 3
0 17 24 34 16 5 2 3 3
表 4-9 コンピタンスに対する自己評価 特徴パターン
特定の選択肢以上の回答割合を表 4-10、表 4-11 に示す。
表 4-10 「基本的なコンピタンスを有する」以上(2+3+4+5)の割合
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
99.0%
99.0%
99.0%
99.0%
97.9%
97.9%
96.9%
95.8%
95.8%
95.8%
95.8%
94.8%
94.8%
94.8%
94.8%
93.8%
93.8%
92.7%
92.7%
91.7%
91.7%
91.7%
90.6%
89.6%
89.6%
89.6%
88.5%
86.5%
86.5%
86.5%
86.5%
84.4%
84.4%
83.3%
83.3%
83.3%
83.3%
82.3%
81.3%
80.2%
78.1%
76.0%
76.0%
72.9%
72.9%
71.9%
71.9%
69.8%
69.8%
表 4-11 「高度なコンピタンスを有する」以上(4+5)の割合
57.3%
55.2%
54.2%
54.2%
51.0%
47.9%
43.8%
41.7%
39.6%
39.6%
38.5%
38.5%
38.5%
36.5%
36.5%
36.5%
36.5%
35.4%
35.4%
35.4%
34.4%
34.4%
33.3%
33.3%
33.3%
31.3%
31.3%
30.2%
30.2%
30.2%
28.1%
28.1%
28.1%
28.1%
26.0%
25.0%
25.0%
24.0%
22.9%
21.9%
19.8%
19.8%
18.8%
18.8%
18.8%
18.8%
17.7%
16.7%
16.7%
16.7%
13.5%
12.5%
12.5%
11.5%
10.4%
10.4%
8.3%
5.2%
3.1%
1.0%
これらの結果から得られる知見を以下に整理する。
まず、一部のコンピタンスを除けば、全体的には最低限基本的なコンピタンスを有してい ると自己評価されていることがわかる。一方で、高度なコンピタンスの所有の度合いにはば らつきが多い。
「A.興味、関心、態度」のコンピタンスは、他のコンピタンスと比較して非常に自己評 価が高く、本調査の回答者には十分に備わっていると考えられている。「B.知識」のコンピ タンスは、一部評価の高いものもあるが、全体的にはコンピタンスの所有水準としては他の 分類よりも低い。「B1.ユーザビリティ関連学問分野」「B3.調査、評価手法」は、知識の中 でも中〜低程度のコンピタンス所有となっている。「B2.製品ドメイン」「B4.活動理念」は、
知識の中では比較的コンピタンス水準が高く、他の分類のコンピタンスと比べても遜色ない。
「B5.マネージメント」は、知識の中でも特に低水準である。「C.経験」は、比較的均等に コンピタンス所有がばらついている。「D.基本能力」「E.ビジネス活動能力」は、全体的に 自己評価が高い。「F.ユーザビリティエンジニアリング能力」も、全体的に自己評価が高い。
「G.ユーザビリティマネージメント能力」は、中程度の水準となっているが、回答者のマ ネージャーの割合を鑑みれば、十分な水準といえる。
コンピタンスごとに見ると、「9.社会学に関する知識」、「10.人類学や民族誌学に関する知 識」、「24.経営学に関する知識」の所有水準が特に低く、現在のユーザビリティ活動に必要 とされていないことが伺える。その他、「15.法令や規格、基準に関する知識」、「40.英語」、
「52.プロトタイプ作成能力」についても、それぞれの分類内で回答傾向が異なり、所有水 準が低い。
4.2.3.4. コンピタンスリスト改定のための要件
本調査で得られた結果からは、表 4-12 に示す内容をコンピタンスリストの改定要件とす べきであると考えられる。
表 4-12 コンピタンスリスト第3版からの改定要件(検討③)