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産業界へのインタビュー調査①

2.  コンピタンスリストの作成

2.2.   コンピタンス概念の収集とコンピタンスリストの作成

2.2.1. 産業界へのインタビュー調査①

ユーザビリティ活動に実務として取り組んでいる産業界において重要視されているコン ピタンスを明らかにすることを目的として、産業界に対して、コンピタンスに関するインタ ビュー調査を実施した。 

2.2.1.1. インフォーマント 

2003 年 6〜7 月にかけて、日本のユーザビリティ関連学会(日本人間工学会、ヒューマ ンインタフェース学会、日本情報処理学会など)における 10 数年にわたる諸活動から、積 極的にユーザビリティに取り組んでいる会社およびインフォーマントのリストアップを行 った。その上で、人材やコンピタンスに対する意識の高さ、視野の広さを期待し、マネージ ャーを主な対象とした。次に、主要なコンピタンスを抽出することを目的とし、リストアッ プされた中でも比較的以前からユーザビリティ活動に取り組んできた主な業種である事務 機器、家電、情報通信に対象を絞った。 

最終的に、10 社から、2003 年 7〜9 月にかけて、データの収集を行った。業種の内訳は、

事務機器2社、家電4社、情報通信4社である。なお、これらのうち2社についてはそれぞ れインタビューに2名(マネージャーと部下、同じ部署のマネージャー2名)が出席したた め、インフォーマントは計 12 名となっている。 

表  2-1 にインフォーマントの内訳を示す。 

   

表  2-1  インフォーマント内訳 

2 1 1

4 2 10

 

2.2.1.2. 調査方法 

会議室や打ち合わせスペースなどで、1時間半〜2時間のインタビューを実施した。イ ンタビュアーは筆者が行い、インタビュアー及びインフォーマント以外の第三者は同席して いない。インタビューの記録には、インフォーマントの許可を得た上でボイスレコーダーを 使用した。 

インタビュー手法としては、半構造化インタビュー  semi-structured interview を用いた。

半構造化インタビューとは、標準化されたインタビューや質問紙による調査よりも比較的オ ープンに組み立てられた状況の中で、インフォーマントのものの見方、考え方をより明らか にすることを意図した手法である(フリック  Flick, 2002)。 

表  2-2 および表  2-3 に、本調査で用いた半構造化インタビューの質問項目を示す。 

   

表  2-2  半構造化インタビュー項目 

 

表  2-3  半構造化インタビュー項目(続き) 

   

2.2.1.3. インタビューデータ 

インタビュー記録を書き起こし、各社のインタビュー毎におよそ 8,000〜28,000 字のテ キストデータを生成した。 

分析には、このテキストデータを用いた。表  2-4 に、本データの例を示す。 

 

表  2-4  インタビューデータ(抜粋) 

 

2.2.1.4. 分析 

データの分析は、以下のプロセスで行った。 

(1)コンピタンスに関連する領域の抽出 

各データの中で、コンピタンスに関連するテーマが含まれる領域か否かという基準で第1 段階のコーディングを行い、コンピタンスに関連するテーマが含まれる領域を抽出した。 

(2)コンピタンス項目の抽出 

(1)で抽出した領域から、具体的にコンピタンスを示すものを抽出した。また、言及が冗 長なものや重複しているものについては、なるべく元の発話データを活かしながら、この時 点で多少のコーディングを行った。 

(3)コンピタンス概念生成と構造化 

(2)で得られた全データを統合した上で、類似するデータを行単位で隣接させていき、あ る程度(数行程度)のデータがあり、共通して単一の概念を形成していると筆者が判断した データ集合毎にコンピタンス概念を生成し、構造化を行った。 

構造化に際しては、①知能、②適性、③技能、④知識という、1.3.3 で示した関連する先 行研究におけるコンピタンス概念定義の視点を踏まえ、まず、「知識」概念を分類の1つと した。そして、知能と技能に当該すると考えられるものを「能力」として分類した。残りの コンピタンス概念については、適性に当該するものであるが、その集合に適した名称として

「考え方」という分類名称を付与した。 

2.2.1.5. 結果と考察 

生成されたコンピタンス概念をそのままコンピタンス項目とし、表  2-5 にしめす 19 項目 からなるユーザビリティ専門家のコンピタンスリスト(ドラフト:インタビュー調査①)を 得た9。 

コンピタンスは、知識と能力、そして考え方という3つのカテゴリーからコンピタンスが 捉えられている。この時点のデータには、インタビュー調査で最終的に得られるコンピタン スの3分の2、主要なコンピタンスのほとんどが含まれていたものの、この時点の分析では データが少ないために独立の概念として立てるほどではないと判断されたものが多い。その ため、各コンピタンス概念の捉え方はまだ粗く、十分とはいえないものであった。 

 

      

9  一部、ユーザビリティ活動に関連する専門用語について注釈する。2.の「UI」とはユーザーインタ フェースのことを示す。9.ヒューリスティック評価  heuristic evaluation、10.ユーザーテスト user 

表  2-5  コンピタンスリスト  ドラフト:インタビュー調査①