第2章 早期発見・治療とリハビリテーション
第2 節 精神疾患
精神疾患の患者数は近年増加しており、厚生労働省の「平成 2 3 年患者調査」では、約 3 2 0 万人となっています。また、患者調査によるとうつ病やアルツハイマー病など精神疾患の患者 が増えていることなどから、平成 2 4 年 3 月「医療提供体制の確保に関する基本方針」の一部 改正により、それまでの 4 疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)に加え、都道府県が 策定する医療計画の記載事項として新たに精神疾患が加えられました。
精神疾患は、症状が多彩であるにもかかわらず自覚しにくく、また、多様な疾患が対象と なっているなど、特徴を踏まえた各疾患への医療の提供が求められています。
早期発見と適切な精神科医療の提供により、再び地域や社会で生活できるように患者・家 族の生活の質を保つことが求められており、また、患者や家族、周囲の方たちが精神疾患に 対する正しい知識を持つことが重要です。
◇ 小項目分類の考え方
国は、団塊の世代が後期高齢者となる平成 3 7 年(2 0 2 5 年)には、約 7 0 0 万人(約 5 人に 1 人)が認知症になると推計しています。また、うつ病は精神的ストレスや身体的スト レスが重なるなど、様々な理由で脳の機能障害が起きている状態です。厚生労働省の「患者 調査」では、うつ病等気分障害の患者数は、平成 8 年は約 4 3 .3 万人でしたが、平成 2 3 年 には約 2 .2 倍の約 9 5 .8 万人となっています。統合失調症は脳の様々な働きをまとめること が難しくなってしまう病気であり、平成 2 3 年の同調査では、患者数は約 7 1 .3 万人でした。
内閣府の「平成 2 7 年版自殺対策白書」によると、平成 2 6 年の全国の自殺者数は 2 万 5 ,4 2 7 人であり、原因・動機別では「健康問題」が最も多く、自殺者数は 1 万 2 ,9 2 0 人、
また、内閣府の平成 2 6 年の地域における自殺の基礎資料によると、埼玉県の自殺者数は 1 ,3 6 9 人、全国と同様に原因・動機別では「健康問題」が最も多く、健康問題での自殺者数 は 8 9 8 人となっています。
精神疾患は誰でもかかる可能性のある疾患であり、自殺とも深く関わりがあることから、
小項目については(1)認知症、(2)うつ病・統合失調症等、(3)自殺防止対策の 3 項目 としています。
「こころの美術展」の様子
第 2 節 精神疾患
〔現状〕
国の「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)
(5 3
では、「認知症の人の意思が尊 重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる 社会の実現を目指す」ことを基本的な考え方としています。
「平成 2 5 年国民生活基礎調査」によると、介護が必要となった主な原因として、要介 護者では、脳卒中( 脳血管疾患) が第 1 位、認知症は第 2 位となっています。
〔本市の主な取り組み〕
認知症についての情報提供や相談窓口、家族の会について市ホームページ等で情報提供 を行っています。
医療・介護・福祉が連携し、認知症サポーター
(5 4
養成講座や市内の地域包括支援セン ター
(5 5
での介護予防教室
(5 6
や講座を実施しています。
認知症予防の取り組みとして、7 0 歳以上の偶数年齢に達する方で、要支援・要介護の 認定を受けていない方を対象に、「心とからだの健やかアンケート」を行い、回答者の 方へ認知症や介護予防に関する情報を掲載した「結果アドバイス表」を送付しています。
寝たきり・認知症予防講演会を開催しています。
〔保健・医療関係団体の主な取り組み〕
認知症・脳卒中ネットワーク協議会合同交流会(所沢市医師会)… 76 ページ参照
物忘れ相談医(所沢市医師会)…平成 20 年に設立した「所沢認知症ネットワーク」の参加医療 機関による認知症の早期発見・早期治療に向けた取り組み
認知症の原因疾患は、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症 などの種類があり、症状も様々ですが、高齢化が最大の要因とされています。また、認 知症に伴う身体合併症への対応が必要です。
認知症は、周囲から誤解されやすい疾患であることから、正しい知識や情報提供などの 普及・啓発が必要です。
早期発見、早期治療を行うため、相談できる身近な「かかりつけ医療機関(医科、歯科、
薬局)」を持つことが必要です。
認知症患者や家族に対しての情報提供や、住み慣れた地域で自分らしく安心して過ごせ る環境づくりが大切です。
(1)認知症
1 現状・主な取り組み
2 課 題
【認知症を正しく理解するための普及啓発を進めます】
関係機関と連携して認知症に関する普及啓発のほか、引き続き市ホームページ等を通じ た啓発を進めます。
【保健・医療・介護・福祉との連携を図ります】
認知症発症後の円滑な初期支援のため多職種の連携による認知症初期集中支援チーム
(5 7
の設置に関する検討を行います。
住み慣れた地域で適切 な医療や介護サービス を切れ目なく受けるこ とができる認知症 ケアパス
(5 8
の構築の検討を進めます。
多職種の専門職間で学べる機会の提供や、認知症に関する研修会の開催を進めます。
【認知症について学びましょう】
市ホームページや広報などの認知症に関する情報に目を通しましょう。また、認知症に 関する講演会や、介護予防教室、地域サロンやお達者倶楽部など地域ごとの活動に参加 しましょう。
「認知症サポーター養成講座」を受講し、講座を通じて認知症についての正しい知識を 習得して、自分のできる範囲で認知症の人や家族を応援する「認知症サポーター」にな りましょう。
【かかりつけ医療機関(医科、歯科、薬局)を持ちましょう】
ご自身やご家族の健康、病気に関する相談などを気軽にでき、症状など必要によって専門 機関へつなげる役割を担う「かかりつけ医療機関(医科、歯科、薬局)
(2 6
」を持ちましょう。
3 今後の市の方向性
4 期待される市民自らの取り組み
第 2 節 精神疾患
〔現状〕
本市における平成 2 6 年度の自立支援医療費(精神通院)支給認定件数は 4 ,5 0 7 件で、
うつ病
(5 9
等の気分障害と統合失調症
(6 0
等で 3 ,5 4 7 件となっています。
〔本市の主な取り組み〕
精神保健福祉士
(6 1
、保健師が精神保健福祉に関する相談及び訪問支援等を行っています。
市民を対象にしたこころの健康に関する講演会や、精神疾患を持つ当事者や家族を対象 とする病気や障害に関する正しい知識と理解を深めるための講座等を行っています。
うつ病や統合失調症をはじめとする精神疾患や利用できる医療機関及び福祉事業所、家 族会等の身近な情報を市ホームページで発信しています。
平成 2 7 年 1 0 月から、未治療者や治療を中断している患者等に対し、精神科医や看護師 等の専門職がチームを組み、必要に応じて、アウトリーチ(訪問)支援を行っています。
精神疾患は、原因が明確ではないことから疾患そのものの予防が困難であり、本人や周囲 の方がその変調に早く気づくためにも精神疾患に対する正しい知識の普及啓発が必要です。
精神疾患は、症状が多彩であるにもかかわらず自覚しにくく、精神科医療機関による治 療導入が困難となる場合もあります。重症化してから入院すると長期の入院が必要とな る場合もあるため、早期発見・早期治療を行える医療機関との連携が必要です。
精神疾患と身体的な疾患を併せ持つ方たちの健康管理は困難になりやすく、円滑に支援 を行えるようにするためにも訪問看護ステーションや医療機関相互の連携が必要です。
精神疾患に罹患しても安心して地域で生活することができ、社会復帰を目指すことがで きるように、地域全体で支えることや患者・家族が疾患について学び、交流できる機会 の提供が必要です。
(2)うつ病・統合失調症等
1 現状・主な取り組み
2 課 題
【精神疾患やこころの健康問題に関する情報提供を進めます】
市ホームページ等を活用し、精神保健福祉に関する情報提供などを継続します。
精神疾患やこころの健康問題に関する講演会や、当事者・家族に関する講座等の普及啓 発を進めます。
精神疾患の再発予防や社会からの孤立を防ぐことを目的とし、精神疾患がある当事者及 び家族のつどい等を継続して実施します。また、家族会等と連携していきます。
【精神疾患のある方が住み慣れた地域で生活できるよう支援を進めます】
精神疾患の当事者やその家族が住み慣れた地域で生活できるよう支援を進めるため、精 神保健相談を継続して進め、訪問看護ステーションや医療機関との連携を図ります。
未治療者や治療を中断している患者等に対し、引き続き精神科医や看護師等の専門職が チームを組み、必要に応じて、アウトリーチ(訪問)支援を行うことにより、新たな入 院及び再入院を防ぎ、地域生活が維持できるよう支援を行います。
【こころの健康づくりに取り組みましょう】
日々の生活の中で、ストレス対策やこころの健康に関心をもって生活をするよう心掛け ることが大切です。
栄養バランスの良い食事、適度な運動などは身体の健康だけではなく、こころの健康に おいても重要です。身近に行えることから取り組んでいくことが大切です。
【かかりつけ医療機関(医科、歯科、薬局)を持ちましょう】
ご自身やご家族の健康、病気に関する相談などを気軽にでき、症状など必要によって専門 機関へつなげる役割を担う「かかりつけ医療機関(医科、歯科、薬局)
(2 6
」を持ちましょう。
3 今後の市の方向性
4 期待される市民自らの取り組み