学術情報メディアセンターにおける組織的取り組み
学術情報メディアセンター センター長 美濃 導彦
本センターは,平成14年4月に大型計算機センターと総合情報メディアセンターの統合により創設され,平成 17年4月に情報環境機構に組み込まれ,現在に至っている.組織的には,ネットワーク研究部門(3分野),コ ンピューティング研究部門(2分野),教育支援システム研究部門(3分野),ディジタルコンテンツ研究部門(4 分野+2室)となっている.これに加えて,連携研究部門が併設されてここに1分野があるので,合計13分野+2 室から構成されている.情報基盤技術としてのネットワークからスーパコンピュータによる研究支援,マルチメ ディアを活用した多様な教育情報システム,学術資源の電子化・コンテンツ化,ビジュアリゼーションなど5つ の技術分野に関する研究開発を行っている.研究開発で得られた成果を,京都大学における教育研究等の高度化 に実利用するとともに,全国の教育研究機関の研究者等の共同利用に供することを目指している.
文科省の次期中期目標に向けて,全国共同利用,共同研究組織のあり方が国レベルで議論されている.その中 で,これまでの共同利用に加えて,地域貢献のあり方や共同研究の推進が重視されようとしている.このような 流れの中で,全国共同利用施設の開かれた運営が条件になっており,センター長の諮問に応じる全国共同利用運営 委員会を活用し,共同利用の事項だけでなく,センターの研究開発の方向,共同研究の推進などを議論していた だく体制を整えてきた.具体的には,センターが行っている共同研究の審査に全国共同利用委員会の外部の先生 方にもご参加いただくという改革を進めた.また,スパコンのユーザ会,NCA5の情報交換会を強化する方向で 検討も始めている.
センター全体としての研究は,「情報ネットワークと実世界のシームレスな統合による情報環境の構築」を旗印 に実利用できる研究を推進することである.これは,ネットワークで結ばれた多種多様なコンピュータや学術情報 データベース等で形作られる情報ネットワーク環境を,講義室や生態観測・フィールド調査現場といった教育研究 の現場(実世界)にマルチメディア情報技術によって双方向,リアルタイムに統合し,最先端の情報環境を構築 しようとするものです.研究成果の活用については,研究科では出来ないセンター独自の活動であるので,積極 的に推進している.また,情報環境機構と協力して,研究成果の実利用に向けた枠組みつくり,活用方法の検討,
研究成果の維持管理,メインテナンスの問題などをどう解決してゆくかを議論し始めている.これと同時に,情報 技術者の育成に向けた大規模ソフトウェアの構築実践の枠組みを情報学研究科とも協力して構築できないかに関 しては情報学研究科の大学院に対する全学共通教育,スパコンを中心とした学際計算科学の推進などに関連して 検討してゆきたいと考えている.
今後,情報環境を教育支援にも利用してゆくべきであるとの考えの下,全学の教育の情報化を進めることを目 的とした教育の情報化タスクフォースを立ち上げた.この活動に関する報告については第I部2.6節を参照いただ きたい.これは学内の話であるが,対外的には,教育支援環境の構築,教育支援の実践などの世界的な情報交換の ために,アメリカの組織であるEDUCAUSEに京大が海外メンバとして加盟した.これは,全米の教育機関と関連 業界をメンバとし,高等教育における情報技術の利活用を考える非営利団体で,関連する情報の調査,発表がで きる.センターが費用を負担しているが,メンバとしてのメリットが全学の構成員に得られるというものである.
今後はこの会議で海外の大学の状況を見ながら,全学の教育の情報化のプロセスを進めてゆきたいと考えている.
各教員は,研究に必要な資金を外部資金から獲得しなければならないだけでなく,情報環境の構築を支援する という業務もあるので,効率的に研究を進めることが重要である.そのため,外部資金が獲得できる研究を推進 するだけでなく,獲得した外部資金で若い研究者を積極的に採用している.大学の情報基盤の構築,運営,維持管 理を雑用と考えるのではなく,これを情報基盤の現場があると捉え,実践的経験を積ませながら研究活動を進め るというセンター独自の研究スタイルを確立しつつある.また,大学内のいろいろな研究者が大学の情報基盤を 利用するので,センターにいろいろな相談が持ち込まれることを積極的に利用して共同研究を進め,異分野の研 究者との交流,共同研究を進めている.教員の採用においては,このようなセンター独自の研究を理解し,その 趣旨にそって研究が進められるというセンター独自の基準を作り,広く人材を確保しようとしている.
センターには外国人客員分野があり,この分野を活用して積極的に国際共同研究を立ち上げる努力をしている.
昨年度には国立シンガポール大学の先生が客員教員として滞在されたことを契機に,現在ディジタルコンテンツ,
遠隔講義などで共同研究が進められないかを議論している.今後はMoUを締結し確実な交流を目指してゆきたい
と考えている.2年前に客員教員を受け入れた国立台湾大学とは,毎年,遠隔講義の実践を継続している.毎年,
台湾の学生が京都を訪問し講義を受講した学生同士の交流が進んでいる.このプロジェクトに対しては,残念な がら外部資金の獲得は出来ていないが,それぞれの費用を持ち出して地道に学生交流,共同研究を進めている.
センター内の研究交流にも力を入れている.同じ組織にいながら,隣の研究室でどんな研究を行っているかを 知らないという状況を改善するため,大学院学生に異分野の話を聞かせるため,共同研究を進めるために,メディ アセンターセミナーを毎月開催している.センター内の各研究分野が,その分野での技術の最新動向を紹介した り,研究室で行われている研究を紹介したり,内容はいろいろであるが,毎回活発な議論を行っている.メディア センターセミナーは全国共同利用の研究支援活動としての位置づけも併せ持っており,センター外の参加者にも 公開されている(実績データ参照).これとは別に,年1回開催する学術情報メディアセンターシンポジウムも開 催している.今年度は,京都で行われたアメリカのIEEEが主催する国際会議(MMM2008) と併催して国際的に 開催した.センターの研究が内容的にも関連が深く,多くの海外からの参加者があった.今後も,センターとして 積極的に海外との交流を進めてゆきたいと考えている.
センター推進研究
平成18年8月29日開催の教員会議において,以下の(1)から(5)の条件を満たす研究を「センター推進研究」
として選定し,センター長裁量経費,学内研究経費などの研究予算を重点的に配分することとした.
(1) センターの将来業務に役立つことを目指した研究であること.
(2) 二つ以上の分野による共同研究であること.
(3) センター教員会議において,年1回以上研究経過,成果を発表すること.
(4) センターの年報に成果を掲載すること
(5) センターのHPに研究経過,内容を半年ごとに更新し掲載すること.
平成19年度について,教員会議で種々検討を重ねた結果,メディアセンター南館1階のディスプレイ装置が古 くなっているので,それに変わるものとして「センター推進研究」として「タイルドディスプレイ」を導入し,こ れを用いての共同研究の実施,研究成果の発表等の活動を行っていくこととした.
タイルドディスプレイの設置: 代表者 中村裕一教授[7,380千円]
タイルドディスプレイは複数のLCDを格子状に配置して,大画面かつ高解像度表示が可能なシステムである.
この大画面上に,複数のPCからの入力コンテンツ(画像,動画,リモートデスクトップなど)を同時表示できる ため,複数のユーザ間で視覚情報の共有が可能である.今回導入したシステムの概要を図0.6.9,図0.6.10に示す.
40枚のLCDを8×5に配置し,10台のDisplay NodeでDVI 4画面出力を行う.Master NodeとDisplay Nodeは LANで接続する.平成19年度にはシステムのうち,LCDディスプレイを先行設置し,既存のPCを利用して8面 のみ情報提示に使っている.平成20年度に計算機類を調達しシステムを完成させる予定である.
総長裁量経費
平成19年度総長裁量経費採択課題
○「全学展開を目指したe-learningシステム技術の評価」
代表者 美濃 導彦 教授 (7,300千円)
【実施概要】
近年の大学教育における様々な要求に対応するために,CMS(コース管理システム),LMS(学習支援システム)な
どe-Learningシステムの導入が急速に進んでいる.学術情報メディアセンターでは平成18年度に総長裁量経費の
補助を得て,調査研究「e-learning技術による京都大学における教育の支援戦略の調査」を実施し,他大学の先行 事例の現状調査,本学教員対象のアンケート調査を行い,技術シーズ,学内ニーズなどの把握に努めた.また,そ の成果に基づき,センター内に「教育の情報化タスクフォース」を編成し,本格的なCMS/LMS導入を検討する