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科学コミュニケーションの展開

第2章 教育リソースの投入と活用

4 科学コミュニケーション

4.1 科学コミュニケーションの展開

科学的なコミュニケーションのきっかけは,自身の見方,考え方を発信し,共有す ることから始まる。発信する方法としては,プレゼンテーション,ニュースレター,雑 誌のコラム等の媒体があるが,現在ではインターネットやソーシャルメディアを用いた 発信も多方面で活発に行われている。いずれの方法においても,いかに「視覚化」する かが重要であり,それによって受益者(ステークホルダー)の参加形態や意識も異なっ てくる。このようなきっかけを通じ,社会の課題に対する個人の意思決定,地域社会で

外部支援実地検教科横断学習展社会的背景の調査教育リ投入議論と

の合意形成の機会は増し,その中で個々人が独自に考え,意見を持ち,知的に議論する ことが望まれる [高橋, 2012]。このためには,実社会において,多様な背景を持った人 間間や異なる年齢間においても,自身の見方,考え方を論理的に主張し,意思疎通でき ることが欠かせない。

ここでは,視覚化,合意形成,問題分析に取り組む上で有効な手段として活用され る,ファシリテーションおよびKJ法を導入する。両方において役割を果たすファシリテ ータは,ステークホルダー(受益者,もしくは生徒)が意見や経験,情報を出し合い,

議論を深め,新たな気づきや学びが生まれるような環境を整える。ファシリテータを中 心として学びの場が成り立つというよりも,ファシリテータがいることで,生徒が課題 に取り組み,それを解決していくといった能動的な学びを生むことが望ましい。これら2 つの手法の最大の特徴は,生徒全員のすべての考えが尊重され,グループ内で独創的に 問題解決の方法を見い出していくことである [前林, 2010]。

開発教育,持続可能な発展のための教育(ESD)

社会開発の中で,特に教育は人間開発(Human Development)の側面を持つ。国 連開発計画(UNDP)によれば,人間開発とは「国家の富(人的資本)となる市民が,

各自の可能性を十全に開花させ,それぞれの必要性と関心に応じて,生産的かつ創造的 な人生を開拓できるような環境を創出すること」と定義される [UNDP, 2011]。この人間 開発を進める上で3つの領域が存在する。1つ目は「民主的ガバナンス」,2つ目は「危 機予防と復興」,そして3つ目は本研究で注力する「環境と持続可能な開発」となる。

持続可能な開発は,「将来の世代の欲求を満たしつつ,現在の世代の欲求も同時に満 足させることができる開発」とされ,1992年に,環境分野での国際的な取り組みに関す る行動計画である「アジェンダ21」が採択,さらに2002年には,「持続可能な開発に関 するヨハネスブルグ宣言」が採択された。その際,水(Water),エネルギー(Energy),

健康(Health),農業(Agriculture),生物多様性(Biodiversity)といった5 分野にお

いて,緊急の課題として,各国が取り組みを進めることが求められた [外務省, 2005]。 本研究では,その後日本で認識されるようになった,持続可能な発展のための教育(ESD) を,価値創生を促すための科学コミュニケーション活動の中心に据えて進めていくこと になる。

ファシリテーション

開発教育に用いられるファシリテーションは,受益者間の地位,立場,生い立ち等 の違いから格差が生じ,弱者の声が地域の開発や発展に反映されない状況を改善する役 割を持つ。つまり,本来貴重であるはずのグループやコミュニティ等の受益者全体の見 方,考え方が,政策判断や決定に取り入れられることなく,かつ狭くなりがちであった 選択肢を,可能な限り広げるような機能を持っている。グループやコミュニティにおい ては,促進者もしくは調整役としてファシリテータを配置し,このようなファシリテー ションを成り立たせる。生徒の見方,考え方(アイデア)の視覚化は,次の基本的なル

ール [FASiD, 2007]に基づいて実施されることが望ましい。

1) 自分のアイデアを自分でカードに書く 2) 1枚のカードには1つのアイデアを書く 3) 簡潔な文章で表現する

4) 議論の前にまずカードを書く 5) 誰が書いたカードかは問わない

6) カードを外す場合はコンセンサスをとる

本研究で提案される学習展開においては,次の2つの活用の場が設けられる。

1つ目は,メディアから得られた情報を簡潔な文章でカードに書き取り,グループ内 でKJ法により分析を行う。KJ法は,情報,データ,考えをカードに記述し,そのカー ドの内容によりカテゴリーに分別し,図解していく手法である。ここでのグルーピング の際には,例えば,科学的な現象,社会への影響,人間の取るべき行動といった分類に 分けることができる。

2つ目は,実験を始めるにあたり,どのような手段を用いるかということに対する自 身のアイデアをカードに書き出し,グループ内での議論を経て,それを並べかえて実験 の手順を構築したり,必要があれば仮説や予想も書き足していく。実験を進めるために,

どのように実験器具を組み立てていけば良いのかが分かる外観図を適宜入れることとす る。

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図 4-1: ファシリテーションとアイデアの視覚化作業